『ギャオオオオオオオオオオオオオオ!』
坑道の先では、なんかバカでかいてばさきみたいな怪獣が大暴れしており、そいつとランスお兄ちゃん達が戦っていた。
後で震えているのはパンピーらしき男女二人組。坑夫とかかな?
「ランス様!」「お兄ちゃん!」
あたし達は駆け寄って武器を構える。
「ちっ、遅いぞお前ら!」
「大丈夫ですか? いたいのいたいのとんでけー!」
「ひゃー……なにこいつ?」
「カナリアンってモンスターだ! 毒ガスも吐くから気を付けろ!」
ミリさんが注意する。
「毒ガス? 面倒だなあ……」ヘルマンの工兵からガスマスクでも剥ぎ取っておけばよかった。
「……行くわ!」「はあっ!」「てりゃー!」
カナリアンがクチバシや爪で攻撃してくるのを避けつつ、剣や忍者刀がカナリアンの体に叩き込まれるが、羽毛が厚くたいしたダメージにならない。
「もっふもふで剣が通らないよ!」
「ちっ……おい! 志津香! 魔法だ!」
「わかってる……! ファイヤーレーザー!」
志津香さんの放った炎が一直線に延びてカナリアンの顔面を直撃する!
『ギャアアアアアアアア!!』
悲鳴を上げるカナリアンの喉がもごもごと動き、ミリさんが警告した。
「気を付けろ! 毒ガスの予備動作だ!」
「ひゃー!」
「皆さん、こっちに!」
走ってシィルさんの後ろに回り込むと同時に、
『ピィーーーーーーーーーッ!』「きっ、木の壁ーっ!」
甲高い音を立てて毒ガスが吹き付けられ、シィルさんが防御魔法で遮った。
「げほっげほっ……防いでこれか……」
「こほっ……いたいのいたいのとんでけ、いたいのいたいのとんでけー!」
壁の影で手当たり次第にヒールして回る。
皆軽く咳き込むくらいで済んでいるが、ミリさんの顔色が特に悪い。これまでの疲労があるのかな。
「ミリさん……大丈夫ですか?」
「ゴホッ……ああ、なんでもないさ」
ミリさんは口を拭って、ペッと口の中のものを地面の亀裂の奥に吐き捨てる。
「ガスが晴れた! 畳み掛けるぞ!」
お兄ちゃんの声で、あたしたちは再びカナリアンに襲いかかった。魔法や剣がカナリアンに叩き込まれ、徐々に動きが鈍っていく。
『ギャアアアアアアアア!』ブンッ!
「っっ! くっ、きゃああああ!!」
「エールちゃん!?」
足が苦しまぎれに振り回され、避けきれなかったあたしは吹き飛んで壁に叩きつけられた。
「がはっ……げほっ……」
背中への衝撃で肺から空気が押し出され、痛みと息苦しさで膝をつく。
「そこっ……隙アリだ!」
体勢をわずかに崩したカナリアンに、ミリさんが素早く間を詰めて、喉に両刀を突き入れた!
『ビッ……ィーー────-ーッ!?』
毒袋の辺りを貫いたのか、喉から血に混じって黒い液体を吹き出しながらカナリアンは悶える。
「とっととくたばれ!」「炎の矢!」「ファイアーレーザー!」
魔法が叩き込まれ、お兄ちゃんの一撃を頭に食らったカナリアンは、地響きを立てて崩れ落ちた。
「大丈夫ですか? エールちゃん」
シィルさんが寄ってきて背中をさすってくれた。
「ううっ……もうダメかも……げほっ……おぶってくれなきゃ動けない……」
あたしはシィルさんに寄りかかる。
「ひゃっ!? ええ……それは大変です……どうしましょうランス様……エールちゃんが……」
「どうもこうもあるか」ぽかぽかっ「いたっ」「あたっ」
あたしとシィルさんの頭がはたかれた。
「エールお前、吹き飛ばされる前に後ろに飛んで剣で受けとったし、どうせその後自前でヒーリングしとるだろ」
「ちぇー。バレてた」むくっ
あたしはすっと立ち上がってぱっぱっと土を払う。
「は、はぇー……」呆気にとられるシィルさんに笑いかけて誤魔化した。
「……よく見てるのね」
志津香さんがボソリと言う。
「ふん、目が離せんだけだ。……手間ばかりかかるし、手は出せんし……まったく妹なんてろくなもんじゃない」
「まぁまぁ。エールちゃんが妹で助かったじゃないか。これが弟だったら大変だぜ?」「ぐ……それは……」
ミリさんが笑ってたしなめると、お兄ちゃんはあたしをじろじろと見る。
目のそばでピースしてばちこーんと美少女ウィンクを返すと、お兄ちゃんはすごくイヤそうな顔をした。
「すごくイヤそう!」
「……そうだな。俺様の女に手を出す心配がないだけまだましか……」
坑夫のカップルの案内で少し先に進むと、目当てのヒララ鉱石はあっさり見つかり、あたしたちは手当たり次第に詰め込んで持って帰ったのだった。
鉱山から出る途中で全身真っ黒になって倒れていたシミターの冒険者さんを思い切り踏んでしまった。
謝ってヒーリングをすると、「気にしないで良い、間違いは誰にでもある」と許してくれた。踏んでもこれで済ませてくれるなんて心の広い人だなあ。
お兄ちゃんも少しは見習って欲しい。