【二章完】ちょっと早めのエールちゃんの冒険   作:砂嵐36

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うひょー戦場シーン描くのたのしー


30.エールちゃんは帰郷する

 いよいよレッドのヘルマン軍との決戦のときがきた。

 自由都市解放軍が出撃すると、ヘルマン軍も今度は解放軍を叩き潰すつもりなのか間の平原で横に大きく広がって布陣した。

 あたし達が持ってきたヒララ鉱石で、マリアさん達は突貫工事でチューリップの弾薬を製作し、『秘密兵器』とやらも完成させたらしい。

 けれども、解放軍の戦力はせいぜい3000といったところだが、ヘルマン軍は一万近くいる。

 いくらランスお兄ちゃんやアリオスさんが居て、その秘密兵器があるとは言え大丈夫なのかなあ? 

 

 そんなことを思っていた時期もありました。

 

「がーはははははは!!!!!! 見たか! これが……」

「これがチューリップ3号の実力なのよ!」

「がーっはっはっはっは!」「あーっはっはっはっは!」

 お兄ちゃんとマリアさんの高笑いが、静まりかえった戦場に響き渡る。

 マリアさんの秘密兵器、銀色にきらめく戦車ことチューリップ3号。

 その主砲からから轟音と共に放たれた砲撃が、遠く離れたヘルマン軍の中央前衛を木っ端みじんに吹き飛ばしたのだ。

 

 敵も味方も現実を受け入れられず、戦場が一瞬静まり返る。

 お兄ちゃんは剣を高く振り上げ、その静寂を切り裂くように振り下ろし、叫んだ。

「全軍、突撃! ぶち殺せ!!」

『……お、おお……おおオオオオオオオオ──!!!』

 解放軍全部隊が弾かれたように走り出す! 

 無論その先頭を行くのは戦車とお兄ちゃん、そしてあたし達だ! 

 

「と、止めろー!」脇から回り込んできた一団があたし達の前に立ち塞がる、が! 

「ひゃっは────!」どっかーん! 

「「「「ぎゃあああああ!!!!」」」

 ヘルマン兵たちが主砲の一撃で吹き飛ばされ、陣形がめちゃくちゃになったところにお兄ちゃんが切り込んだ! 

「邪魔だ雑魚共!」がきぃん! 

「がっ……ぐっ!」「ふんっ! 死ねー!」ざくっ「ぎゃああ──!」「次!」

 上段からの力任せの打ち込みで指揮官らしきヘルマン騎士を押し込み、そのまま肩からぶつかって騎士を転倒させる。転んだ騎士に迷いなくトドメを差し、そのまま止まることなく駆けていく! 

 

「こ、ここは通さんぞ!」おっと。やや後ろを走るあたしにも兵士がつっかってきた! 

「はあっ!」「ほい」きぃん「よっと!」ひゅん! 「がっ……」

 気合を込めて突き出してきた槍を体に沿わせた神官ソードで絡めて弾き、その勢いでリーザス聖剣を体ごとぐるんと一回転。

「なむなむ……っと!」

 首筋から血を吹き出して倒れる兵士の脇を適当に祈りつつすり抜け、ひたすらに走る! 

 

「木の壁! 炎の矢!」「火爆破!」どかーん! 「ぐわあああ!」

「魔法使いだ! 仕留めろ!」

「させっかよ!」「蜂のように刺す!」

 魔法を使うシィルさんと志津香さんに狙いを定めた連中にはミリさん達が突っ込んでいく! 

「おら、ちょっと遊んでいきな!」ずばばっ! 「ぐはっ……」

「食らえ! 俺の華麗な舞を!」ぺちっ「いてっ」

「くっ……ボウガン! 狙え!」「了か……(ぐさっぐさっ)ぎゃああ!」

 接近を妨害され、弓を構えようとした兵士達の手や顔に手裏剣が突き刺さった! 

 

「ラアアアアアアアア!」

「うわっ!」「なんだあれ……があっ!」「ぎゃああああ!」

 右翼を見れば、地上灯台からも見えた赤い閃光がヘルマン兵の間を駆け巡ったかと思うと、血飛沫をあげて兵士達が倒れていく。

 あれがリーザスの赤い死神? 良くあんなのと戦って無事だったなあ……

 突出する赤鎧の軍団の背後を突こうとヘルマン部隊が回り込むが、その側面に解放軍の傭兵隊が襲いかかった。

「くそっ、なんだこいつら……」

「こんなもんだろ、お疲れちゃん。一旦下がるぞ」

 確かヴィヤンとか言う疲れ顔の槍使いが率いる傭兵隊は、ヘルマン部隊にほとんど被害を与えずに退いたが、その時には赤軍は既に方向転換を終えていた。

「ラアアアアアアー!」

 また赤い閃光が走り、あっというまに兵士達は次々に崩れ落ちる。

 

 一方左翼では、見覚えがあるかっこいい銀光がヘルマン兵たちを次々に切り裂いている。

「はああっ! 壱式・ハヤブサ!」ずばーっ! 

「「ぎゃあああああ!!!」」

「なんだこいつ! 囲め!」

「今だ! 突撃! アムロ都市長の無念、今こそ晴らすべし! 続けー!」

「「うおおおおおおお!」」

 アリオスさんがこじ開けた隙間に、全身鎧のおっさんカリオストロを先頭にラジールの義勇兵隊が突っ込み乱戦となった。無論アリオスさんも大暴れだ! 

 

 もっと見ていたいけど、今はまだこっち優先だよね! 頑張ってねアリオスさん! 

 偵察してきたかなみさんが伝える。

「ランス! 両翼とも押してる! 回り込まれる心配はないわ!」

「よーし! このまま一気に本陣に突っ込むぞ!」

「「おー!」」「科学ばんざーい!」どかーん! 

 声と同時に主砲が放たれ、本陣の後ろに控えていたサイクロナイトやデカントたちが吹き飛んだ。

「フ、フレッチャー様をお守りしろ!」

 さすがは本陣だけあって気合のある連中が守っていたが、あたし達の敵ではなかった。

「局地地震!」「A魔法剣!」「木っ端微塵だ! ランスあたたーっく!」「βスラッシュ!」「デビルビーム! あたしなにやってんだろー!」

「「ぐああーっ!!」」

 魔法で、剣で、必殺技で薙ぎ払われて。護衛兵たちが倒れ伏した先には、怪しいマントのイケメンと、四人のマッチョが担ぐ輿に乗ったぶたバンバラ……じゃない。ものすごいデブがいた。

「偉そうなのは……そっちだな!」

「ぶ、ぶーっ!? お前達! さっさと逃げるぶー!」

 お兄ちゃんがデブに剣を向けると、デブは情けないことを喚く。

 すると、なんと担ぎ手のマッチョ四人はすごい勢いでレッドに向けて逃げ出した! 

「は、はぁ?」大隊長……指揮官が? あっさり逃げ出した? しかもいつの間にかイケメンもいない!? 

「ぬっ……バレース!」

「はっ、ランス殿!? なんですかな?」

 一瞬苦い顔をしたお兄ちゃんがバレスさんを呼びつけた。

「お前、残りの雑魚どもを追い散らしておけ! 俺様達は敵の大将を追う!」

「は……しかし敵はまだこちらの二倍以上で……」

「やかましい! それくらい適当にどうにでもしろ! サボるんじゃないボケジジイ!」

「さっ、サボ……ボケ……!?」

「お兄ちゃんめちゃくちゃ言うなあ……」

 呆気に取られるバレスさんを置いて、あたしたちは輿を追って駆け出した。

 

 残されたバレスさんはしばし呆然としていたが、やがて顔を伏せて低く笑い始めた。

「ふふ……ふふふ……くくく……ふははははっ! サボるんじゃない、ボケジジイか……!」

「バレス様……?」

「ふふふ……確かに……確かに儂は怠けて呆けておったようじゃ! ……敵軍は多数とは言え分断され大将を失った烏合の衆、両翼にはそれぞれ龍と馬! この局面、詰ませられぬようではリーザス黒将の名が泣くわ!」

「おお……」「バレス将軍!」

「各部隊に伝令! これより、掃討戦に移る!」

「「「「おおおー!」」」」

 

 あたし達は解放軍の兵士達の雄叫びを背に走り続け、レッドの正門にたどり着いた。

「門にも壁にも兵士はいないわね……」

「ふん、町中に逃げ散ったか。探し出して捻り潰してやるわ!」

「うん! 案内は任せてお兄ちゃん!」

 先導して門を潜ったあたしにとって、あの日レッドの門を出てから、およそ半年振りの帰還になったのだった。




ミーキルの父親の名前は出てきてないと思うので鬼畜王から取ってます

エールちゃんの一人称なのでめちゃめちゃ地獄耳の割にあんまり内容聞き取れてないみたいなことになってますが、描きたいのでご勘弁ください

原作ではアリオスは参戦描写がありませんが、たぶん食中毒が長引いてたんでしょう
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