【二章完】ちょっと早めのエールちゃんの冒険   作:砂嵐36

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33.エールちゃんは女神に祈る

 フレッチャーはどうやら暴食癖と最後の醜態以外はまともな指揮官だったようで、レッドの街は降伏した後は略奪やら暴行やらはそんなにはなかったらしい。

 たぶんそういうことが好きな奴はヘンダーソン隊に混じってたんだろな。

 宿のおかみさんや武器屋のワヨソちゃんをはじめとした知り合いもみな無事で、問題と言えば開店休業状態のギルドでマスターが酒浸りになっていたくらい。

 

 と、いうわけで安心したあたしは、レイラさんの治療に呼ばれていったセルさんが留守にしている間、このオレリィ大聖堂で、神官服を着て椅子に座りながら干しプリンをかじっているのだった。

「留守番? いいですけど、あたしでいいんですか?」と聞いたが、

「エールさんは扱いとしてはこのレッドの街の教会に所属する神官見習い、ということになっていますから。問題ありませんよ」だそうな。まぁ留学なんかさせてもらったし当たり前か。

 

「もっちゃもっちゃ……ふぁーあ……平和だなぁ……」

 お兄ちゃんは志津香さんから『報酬』をもらうのに忙しく、解放軍のみんなは今後の方針を話し合っている。

 そしてこのオレリィ大聖堂、大と名前がつくだけあってでかい。

 が、なんかの祭日とかのお祈りとかの機会でなければ街中の小さい祈禱所で用は済んでしまうので、平日は観光客くらいしか実際こないのだ。

 そして、こんなご時世で観光客なんかいるはずもなく……あ、午前中に二人来てたか……すぱぱぱぱーんとやかましいのとイラついてるのと…… まぁ、ほとんどいるはずもなく。

 

 つまり、あたしは一人あぶれてヒマなのだった。

(う~ん……退屈…… でも留守番頼まれてるから出かけるわけにもいかないしなぁ……)

 干しプリンを食いちぎって噛む。あ──このままあたしフレッチャーみたいになっちゃうのかなー。

 AL教の神官としては女神ALICEにお祈りでもすべきかもしれないが、昔からなんかあんまり祈る気しないのだ。

(あ~あ……アリオスさんでも遊びに来ないかなぁ……そしたら女神ALICEにめっちゃお祈りするのに……)

 あたしがそんなことを考えながら干しプリンの最後のかけらを口に放り込んだ瞬間。

「ごめんください、どなたか居ませんか?」

 通用口の扉が開き、普段着のアリオスさんが姿を見せた。

「あ、アリオスさ……んぐっ!?」

 慌てて立ち上がった拍子に干しプリンが喉に詰まった。がたーんと椅子ごと倒れてしまう。

「えっ? エカルちゃん!? どうしたの!?」

 アリオスさんが駆け寄ってあたしを抱き起してくれた。

「げほっ……ごほっ……はぁ……すみません……大丈夫です……」

 その拍子に干しプリンは飲み込めたが、あたしはアリオスさんの胸に体を預ける。

(女神ALICE~~!! 感謝します!!)

 だいぶ久しぶりに女神ALICEに感謝を捧げながら、アリオスさんの胸板や二の腕の感触を確かめる。

(あ──鍛えられた戦士の筋肉……お兄ちゃんも結構なもんだけど、なかなか抱き着かせてくれないもんね……)

「す、すみません……まれにある持病の発作でして……すぐに良くなります」あたしは適当なことを並べた。アリオスさんはあたりを見回して、

「そうか……ちょっと失礼するよ」とあたしの背中と足に手を回し、抱え上げた。

 こ……これは……! 孤児院の女子の間で定期的に開催されていた女の子の将来の遭遇したいシチュエーションランキング第6位! 『お姫様抱っこ』!! 

(グッジョブ!! 偉い! よっ、気が利く美少女女神!! 崇めたい神ランキング10年連続一位!!!)

「きゃっ」あたしは適当な祝詞を脳内で垂れ流しながら、バランスを崩したふりをしてアリオスさんの首に手を回した。

「大丈夫かい?」「……ええ」「じゃあ、あの長椅子まで運ぶから……」「はい……」

 しおらしく受け答えしつつ、あたしは首に回した手に力を込めた。

 長椅子まで運ばれてそっと横たえられる。

「……落ち着いた?」「ええ。ありがとうございます。ずいぶん楽になりました」

 いや~勇者気取り君がさんざん投げかけてきた台詞と笑みでも、強いイケメンがやると違うもんだなぁ……

 

 少し落ち着いてから、アリオスさんを隣の応接室に案内してお茶を入れて向かいに座った。

「……こほん。ところで、アリオスさんは何の御用ですか?」

「ああ、新しい街に来るとなんでか教会に来ちゃうんだよね」

「そうですか……敬虔なことはいいことですよね」

「エカルちゃんは何でここに?」

「ああ、あたしは元はレッド所属の神官見習いなんです。ちょっと戦争のせいで戻れなくなってて……」

 あたしはいろんなことをアリオスさんとしゃべった。

 冒険者もやってること、カイズに行ってたこと、兄のこと、仲間のこと。

 アリオスさんの話も聞いた。何やら使命があるらしいが、ヘルマンの侵略を見過ごせなかったらしい。

 今は離れているけど、小さい男の子のお供がいるそうだ。

 いやぁ、退屈な1日になるかと思ったけどいい日になったなぁ…… というか、あれか? 決めに行くか? 

 時間になって教会を閉めたあとデートして、食事のあとは部屋に……ね? 

 というかあたしも年頃の女の子なのだ。お兄ちゃんが毎晩毎晩隣の部屋でおっぱじめては漏れてくる声を聴いても何も感じない訳ではないのだ! 

(アリオスさんならお兄ちゃんに切りかかられてもどうにかなりそうだしね……よーし!)

 

「あの……よかったら!」あたしが意を決して切り出そうとしたその時。

「すみません、エールさんはいらっしゃいますか?」解放軍の兵士らしき人が教会に入ってきたのだった。

「エール?」「あ、えーっと……苗字です(きっぱり)……はい、なんでしょう?」あたしは適当にごまかして、兵士に返事した。

「バレス将軍が、レイラ殿の治療についてエールさんに意見を伺いたいとのことです! なんでも将軍の術を解かれたのはエールさんだそうで!」

「……あっ」ああああああああ! あの時はただチョップしただけなのに! バレスさんに適当なこと言わなけりゃよかった! 

「そうなんだ、大変だね。忙しそうだから俺は帰るよ。またね」

「あっ……はい……また……」

 アリオスさんは帰ってしまい、あたしは肩を落として戸締まりをして、司令部に向かうのだった。

 




Xでエールちゃんがトレンドにはいるとドキッとしますね
まぁ、メイケイエールのことなんですが
前に織音さんが茶エールちゃんのウマ娘ネタを描いてたような気もしますがどこだったかな

しばらく1日1投稿してきましたがちょっと辛くなってきたのでそのうちペース落とすかもしれません
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