【二章完】ちょっと早めのエールちゃんの冒険   作:砂嵐36

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38.エールちゃんはスキルをもらう

 目の前で、あたしをぶっとばしてくれた例のガーディアンが戦車に轢かれてスクラップになっている。

 何が起きたかと言うと、お兄ちゃん一行はあたしを加えてもう一度ハイパービルに突入し、ガーディアンを全員でボコボコにしてどうにか倒した。

 が、また復活してこれどうするねん……となったところでマリアさんのチューリップ3号が突入してきたのだ。

 激突! ガーディアンVS戦車! レッド最後の日! という感じでどかーんちゅどーんどがががーっと取っ組み合った挙げ句、戦車の突撃&ゼロ距離射撃で壁にめり込んだガーディアンはようやく動かなくなったのだった。

「げほっ……はぁ……なんとかなったあ……」

「お疲れさま、マリア」

「うう……でも3号がぁ……」

 転がり出てきたマリアさんに志津香さんが手を貸している。

 マリアさんも何だかんだ言ってシィルさんが心配らしい。

 

 階段を上っていくと、リヤカーとかいう金属のクモみたいなよくわからん機械モンスターがぞろぞろ出て来る。

「足が多くてキモい!」「いいからとっとと蹴散らすぞ!」

「うわっ、後ろに魔法使い!」「ゲーリングだ!」厄介なことにリヤカー垣の後ろに魔法を使うモンスターがいるっぽい! 

「ぐぬおおおお!」「おりゃー!」わさわさと押し寄せるリヤカーをお兄ちゃん、あたし、ミリさんその他の前衛組が食い止める! 

「いっけーチューリップ!」「はぁっ!」

 放たれた砲弾と手裏剣でゲーリングの足が止まった……と思うと影からにゅっとスーちゃんが出現。斧でゲーリングの頭をかち割った。

 どこから出てきたんだ……油断ならない子だなあ……

「……下がって。火爆破!」

 志津香さんの魔法でリヤカーは焼き払われ、あたしたちは先に進んだ。

 

 5Fにたどり着き、エロヤックとかいうよくわからん管理人に出会った。なんでもエレベーターはバグってモンスターのせいで動かないらしく、バグ退治を依頼された。

 お兄ちゃんはめんどくさがったが、階段で200階までいくよりはましだろうと結局引き受けることにした。

 

 手分けしてバグをしばき回っていると、急に視界が白くなった。

 気がつくと草原のような場所で、目の前にはよくわかんない生物……いや……

「突然ダンジョンに現れて冒険者にスキルを与えるという、聖人ALICEMANレディー!?」

『あー……ようこそいらっしゃいました……エールさん……』

「は?」

『それではスキルの方がこちらになります……』なんかキラキラした光をこっちに差し出してくる。

「あんた、偽物でしょ!」あたしはビシッと指差した。

『え? いや、そんなことは……』

「えー? ALICEMANレディーと言えば人を嘗め腐ったふざけきった態度で、試練を与えて乗り越えたものにキックでスキルを与えるって文献で読んだし! そんな丁寧口調でスキルを差し出すなんて偽物に決まってる!」

『そんなこと言われても……あ、ごめんちょっと電話……』

 謎生物は後ろを向いてぼそぼそ喋り始めた。

『えっ? はい? いつも通りにやれ? そんな無茶な……!? 試練はどうすれば……えっ! ご自分で……!? あ……はい……』こちらに向き直る。

『ちょっと研修中なもんでー。サーセンwww』

 聖人にも研修なんてあるのか……

『ってわけで~。そこのギザ歯生意気ガール! スキルが欲しいなら試練を受けろっていうか~? 欲しくないなら帰れって言うか~?』

 どうやら本物らしい。「モチのロン受けます!」

『んじゃあ試練? いってみー』

 

 あたしの視界がまた白く染まり……

 目の前にはなんかものすごい神聖な光を全身から放つ、豪華な衣装を纏った金髪碧眼の神々しい女性がにこにこ笑いながら立っていた。

「えっ?」

『螂ウ逾暸LICEが一体出現!』システムメッセージが流れる。

「いやこんなん勝てるわけないでしょ! めちゃめちゃ強そうだし、なんか神々しいし、なんならタッチ違うし! 

 ALICEMANレディーは乗り越えられない試練は与えないって言ってたのに……」

 あたしは立ちすくんでいたが、目の前の女性はにこにこ笑うだけでなにもしてこない……と思ったら木のカンバンをどこからともなく出してきた。

『ダメージチャレンジ』と書いてある。なるほど、反撃してこないのか。

「でも剣で斬るのはなんか気が引けるんですけど……」と口に出すと、またカンバンが出てきた。

「え……『武器、打撃、魔法無効』……? そんなのどうやってダメージを与えれば……? えっ? 『絞め技とか』!? そんなんでいいんですか?」

 女性はただにこにこしている。

 ……服とかシワになんないのかな……まあ、やるしかない。

 あたしは両手を開いて構えた。

「うおおおおお! エールコブラツイスト! エール裸締め! エール横四方固め! エールスリーパーホールド! ……まぁいいや! なんだこの試練! エール式プルマ・ブランカー! エール……」

 あたしは思い付く限りの絞め技をかけまくった。

「……これで最後……エールベアハッグー!」

 あたしが渾身の力で思いきり抱きついて締め上げると、女性がビクッと震え、くたっと横になった。

「……はぁ……はぁ……どうよ?」

 女性は少し震えながら『合格』とカンバンを掲げ……

 視界が白く染まった。

 

 気がつくと目の前にはALICEMANレディーがいた。

『あー。試練クリア、おめでとじゃん?』

「なんだったのアレ……?」

『さあ……強いて言うなら食券濫用……あ、すいませんごめんなさいなんでもないです。ってわけでスキル、プレゼンツフォユー!』

「ぐえっ!」

 

 エールは、ゼロスリースキル『CTコッポス』を習得した! 

『時々よくわからん力で戦闘参加者全員のCTを消す』

 

「あいたーっ」ごろんと転がると、そこはハイパービルで、目の前にはお兄ちゃんがいた。

「何を遊んどるんだお前は」

「いや、ALICEMANレディーに会ってさあ……」

「ほう、ではスキルをゲットしたわけか。せいぜい俺様の役に立つんだな、がはは」

 スキルは役に立つとは思うんだけど……

 変な試練だったなあ……あの女の人なんだったんだろうか……

 姿を思い出そうとしたか、なんだか記憶が変にぼやけてうまく行かない。金髪できれいな人だったなーくらいしか思い浮かばない。

 不思議なこともあるものだ。まあでも、そんなこともあるか。

 

 バグ退治を終わらせたあたしたちは、復活したエレベーターで最上階を目指したのだった。




尊敬してやまない自分のすべてを捧げたい主人がいて
その主人が子犬に変身して遊んでいるときに

その子犬の前に立って邪魔してみたら
一生懸命甘噛みしたりぺろぺろ舐めてきたり体によじ登って来たりしている

みたいな状況です
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