【二章完】ちょっと早めのエールちゃんの冒険   作:砂嵐36

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40.エールちゃんはコーに行く

 いろいろあったけど魔人サテラとガーディアンたちを撃退してシィルさんを取り戻したあたしたちは、レッドに戻って今後のことについて話し合った。

 へルマン軍がいるジオとの間には砂漠地帯があり、ろくに道もないので軍隊は通れない。

 通り道になるのはホッホ峡と呼ばれる岩石地帯くらいだが、ここも狭いし脇道は多いしで大軍は長居したくないところだ。

 というわけで相手の出方を調べてからぶん殴りたい……のだが。

「というわけでかなみ。ジオに潜入して適当に士官を一人さらってこい。あ、美人限定な」

「はぁ~!? いきなりそんな無茶なこと言わないでよ!」

「がははは、女の子をさらうのはお手の物だろ」

「あ、あー! 忍者の里でね! 訓練をやったからね! あははははは……」

 という感じでお兄ちゃんに無茶振りされたかなみさんはずだ袋を背負ってジオに出かけて行った。忍者は大変だなあ。

「さーて俺様たちはどうするか……軽く運動でもしたい気分だな。うむむむ……おいエール。この街のギルドはやっとるのか?」

「冒険者がヘルマンの侵攻時に負傷したり逃げたりして、残ってたのも義勇軍に加わったりで開店休業なんだってさ。マスターは酒飲んでふて寝してたよ」「美人か?」「ヤンキーに似てる」

 お兄ちゃんは舌打ちしてうむうむうなりだした。

「お、前にあの名前忘れたが……なんか声が俺様に少し似てるモヒカンがアイスでもうけ話があるとかいっとったな。今から行くか!」

「え? 今からアイスに戻るんですか?」シィルさんが驚く。

「がはははは、かなみがジオから戻るまで4~5日はあるだろ。それより前に片付ければ問題あるまい」

「そ、そうでしょうか」「そうなのだ」

「……はぁ……」「わ、私も? 3号の修復作業があるんだけどなぁ……」頭を抱える志津香とマリアさん。

「じゃあ、あたしうし車借りてくる~」あたしは外に出て走り出した。冒険か~。楽しみだな~。

 

 うし車を走らせてアイスに到着し、早速キースギルドに乗り込んだ。

「おいキース! 儲け話を俺様に隠しておくとはどういうつもりだ!」

「あ? ランスじゃないか。忍者の子がいないが、リーザスを救うとかいう話はどうした。クビにでもなったか」

「ふん、今は俺様の華麗な大活躍の下準備中なのだ」

「ほー、そりゃ大したもんだ……で、儲け話だったか。ハイニ。悪いが例のファイルをとってくれ……ん?」

 キースさんはあたしに目を止めた。

「エールじゃないか。まだこいつと一緒にいるのか。レッドは解放されたっていうし、帰れたんだろ?」

「はい、でもお兄ちゃんが心配なので……」

「……ランス、女に手を出すなとは言わんが、兄呼ばわりさせるのは流石に趣味が悪くないか?」

「違うわ! そいつが勝手にだな……」「ほう、そうかい。まぁほどほどにな」

 なんか勘違いされとる! 

「あ、あの……エールちゃんは本当に妹さんなので……」シィルさんが説明する。

「へぇ、マジでか……ランスに妹がいたとはなぁ。まぁなんか似てるなと思ったことはあるが……」

 キースさんはあたしをじろじろ見る。

「まぁ、ランスはめちゃくちゃな奴だが、できるだけ見放さないでやってくれ。俺はこいつの結婚式でクソ危ないスピーチをしてやるのが夢なんだ。あんたも参列してぜひ聞いてくれ」本気でやめてほしい……

「ええい、それより儲け話はどうした!」

「はいよ。コーが滅んだって話は聞いただろ?」

 廃棄都市コー。前に聞いた。アイスの南にあるキャンスレー干樹海にあった都市だが、住民が次々にゾンビ化して……とうとうこの間放棄されたそうだ。

「ふん、それで?」

「なんとかって魔法道具の開発者が、コーのゾンビたちが持ってる変な腕輪が欲しいらしくて高く買い取ってるんだよ。そいつは現地にいるから、会って直接話を聞いてくれ」

「よし、では早速行くか」

「廃棄都市コー……噂には聞いていましたが……ゾンビは神の意志に背く存在。残らず破壊すべきです」

 なんかセルさんがやる気だ。まぁAL教の教義に背いてるもんね。あたしもなんかキライだし。

「よーし! 張り切ってゾンビ退治するぞー!」

 

 コーの入り口では、オブ・フィールとかいうおっさんが待っていた。

 ゾンビと言えばネクロマンサーがいろいろやって生みだすもののはずだが、カイズから来た調査隊が調べてもネクロマンサーは見つからなかったそうだ。

 そりゃジフテリアからも近いしね。AL教としても調査はするか。

 ネクロマンサーはいないし、ゾンビは多すぎるし、もう人もいないし、新規発生はしていないらしいし、でしばらく放置して腐った死体が腐りきって、さらに腐って骨と液体になって動かなくなるのを待とう、という結論になったらしい。

 で、このおっさんは『ドリーム★リング』と名付けたゾンビが持ってる黒い腕輪がゾンビ化の原因ではないかとにらみ、できるだけ腕輪を回収して研究したいのだそうだ。

 

 お兄ちゃんは承諾して、早速町に入ろうとしたのだが、志津香さんとマリアさんがおっさんに少し聞きたいことがあるそうで、しばらく待った。

 なんだろ。魔法関係の話かな? その割にちょっと表情硬かったけど……

 

 で、侵入したコーだが。まぁ右を見ても左を見てもゾンビゾンビゾンビゾンビだった。

「あ~……う~……」「おほー……」「ひゅるる~……ひゅるる~……」「……」

 声だかどっかから空気かガスが漏れる音なのかよくわからない音を立てながら四方八方から塊になってにじり寄ってくる。

「まとめて吹っ飛べ! ランスアターック!」「火爆破!」「うう……グロい……いっけー!」どんどんどーん! とお兄ちゃんと志津香さん、マリアさんが群れを景気よくぶっ飛ばしていく。

 残ったぴくぴく動いているゾンビをあたしとスーちゃんで適当に始末し、ついでに無事そうな腕輪も探している。

「これは……だめか。割れてる」「ア、腕輪ミッケ」「やったねスーちゃん。これで4つ目かな?」

 なにやら気持ち悪いので腕輪はあんまり触れずに袋に放り込んだ。

 その辺をシミターの冒険者さん……バーニングさんがうろついていて、こちらと目が合うと黙って首を振る。あの人も腕輪探しをしてるのかな? 

 時折こんにちはだのピンキーだのと言ったちょっと手ごわいのもいるのだが……

「邪悪よ、退きなさい!」「ガアアア……あ……」セルさんの浄化であっさり灰になっていく。

 ゾンビがうろうろいるような不浄な場所にはいつの間にかアンデッド系のモンスターが湧く。AL教がネクロマンサーを敵視する理由の一つだ。

 アンデッド系のモンスターとゾンビは厳密に言えばなんか違う存在らしいが、あたしにはよくわからないな。

 

 この辺りはしけっていて帰り木が使えないので、安全を確保しながら少しづつ進む。

 ふらふら歩いてきた腐った死体の四肢を斬って蹴り転がし、数が多いばっかりだけどまぁ修行にはなるかなぁ、と思いつつ前を見ると。ゾンビではなさそうな色黒のおねーさんが立っていた。

「あらん、ランスにシィルちゃんじゃない。奇遇ね」

 その露出度の高いおねーさんは、にっこり笑って声をかけてきたのだった。

 




ホッホ峡の戦いでエールちゃんにどのルートを辿らせるかで結構悩んでます。
アリオスがいるはずのミリ隊にするか、正面のチューリップ隊にするか、それともランス本隊にまぜるか…リック達に付き合わせてロバートと遭遇させるのも面白そうで…悩む…
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