エールちゃんがハーレム入り(シィル死亡が条件)しています。
リーザス王となったランスは、即位直後に発生したエクスの反乱をあっさりと鎮圧したのを皮切りに、自由都市、JAPAN、ヘルマン、ゼス。またたくまに各地域を征服し人類圏を統一した。
その後、魔人筆頭ホーネットとの戦争に勝利し侵攻してきた魔人ケイブリスをも撃破。魔物の世界も含めて大陸全土を制圧。
世界征服という人類史上始めての偉業を成したその英雄ランスは……
「はい、ダーリン。あーん」「あー……ん。むぐむぐ……」
めちゃめちゃだらけていた。
「うふふ、美味しい?」「あー……まーな……ふぁぁ……」
豪華な玉座の間で、巨大チョコパフェをリアに食べさせてもらいながら、ランスは暇そうにあくびを漏らした。
「世界を統一してみたはいいものの……することもなくて暇だなあ……」
「いいじゃない、平和で。ねーダーリン。私もそろそろ赤ちゃんが……」
ランスにリアがしなだれかかったその時、玉座の間の扉が開いた。
「ただいまー」入ってきたのはランスの妹、エールだ。
テンプルナイトを率いるリーザス軍の将でもあり、ヒマだから、という理由で遠隔地探索を志願して出撃していたが戻ってきたらしい。
「おう、戻ったか。どうだった?」
「どうってことなかったよー。はい。お宝のビリケンさんと、お土産の温泉まんじゅう」
「ふむ……」ランスはビリケンさんを手にとってチラリと見て、その辺に放り出すと温泉まんじゅうの包装をばりばりと破りもぐもぐ食べ始めた。
「お帰りエールちゃん。疲れてない? もう休んでいいわよ?」
「んー。おまんじゅう食べたらそうするね、お姉ちゃん」
「ふん、もう全部食べてやったわ」
「えー!? お兄ちゃんのバカー!」
「がはははは、もたもたしてるからだ……ふぁーあ……」
ランスは大あくびをして、エールはそれをじっと見た。
「お兄ちゃん、退屈そうだねえ? 最近ハーレムにもあんまり来ないし……」
「んー、まあ少し気乗りがな……」
「ダーリンにはリアがいれば十分だもんね!」
腕に抱きつくリアに視線も向けず、ランスは窓から遠くの空を見上げてぼやく。
「……暇だ……どっかからよくわからん敵でも攻めてこんかなあ……」
「えー? そんなことあるわけ………………」
急にエールが言葉の途中で動きを止めた。
「ん? どうかしたか?」
「…………例えば、空の彼方から謎の軍団でも攻めてきたー、とか?」
「がはは、そんなのもいいかもしれんな」
「そっかー……そうだったんだあたし……えへへ、へへ……くすくす……」
エールは顔を伏せてくすくすと笑い始めた。
「……エールちゃん?」「……エール?」
二人が怪訝な声で尋ねると、エールはゆっくりと顔を上げた。
「ひっ!?」
まるで口でも裂けたかのような満面の笑みを浮かべたその表情に、リアが悲鳴を漏らす。
「そっかー。そうなんだ……くすくす……くふふ」
「おい! なに笑っとるんだ!」
「うん。じゃあ……そうしよう。そうしよっかあ。……じゃ、すぐ準備するね! 頑張ってね、お兄ちゃん!」
ランスが笑うエールに向けて手を伸ばし……その手が空を切る。
エールは一瞬で姿を消していた。
「……なっ!? 消えた!?」
「どういうこと!? マリス! マリスー!」
徹底的な捜索が行われたが、エールの行方は杳として知れなかった。
そしてしばらく後。リーザス城は大騒ぎになっていた。
世界各国の拠点に次々と天使……エンジェルナイトの軍勢が襲来し始めたのだ。
「ログBに天使の軍勢が襲来! 防衛にあたったレリューコフ将軍は撤退せず戦闘中!」
「あの数相手に一部隊でどうにかなるか! とっとと撤退しろと伝えろ!」
「サバサバの街はマジック殿が遺憾ながら防衛を放棄、ガンジー殿と合流するとのことです!」
「なげきの森にも襲来したと報告が!」
各拠点から舞い込む報告にバレスやエクスたちが頭を抱えている。
なにせエンジェルナイトの軍勢は空を飛んで襲ってくる。大群なので準備して迎え撃たねばならないが、次はどこの拠点に来る、という予測が成立しないのだ。
同時に大陸の各所で断続的に地震が発生しており、その被害も馬鹿にならなくなっていた。
「なんだなんだ、攻めてきたのはどこの誰だ」
「天使の軍勢、エンジェルナイト。つまり……神の軍勢です。命令を下せるのは……ルドラサウムしかいません」怒鳴るランスに、香姫が告げた。
「ああ、あの夢で見たやつか……、この世界の創造神だとかいう」
「ランス王……今の話……」マリスが顔を青くして訪ねてくる。
香姫はルドラサウムの夢について話し、マリスはルドラサウムの伝説について皆に説明した。
「ダーリン……」リアがランスに身を寄せる。
「なるほど、今度の敵は、めちゃめちゃわがままでガキ見てぇな神様らしいな……」
決意を固めたランスにマリスが申し出た。
「ランス王。まず、神のところに行くには、古代の遺跡の神の扉をくぐらねばなりません」
「おう、そうだったな。で、鍵はいくつか手に入れてるあの黄金像……」
「はい……そして、天使軍の本拠地も古代の遺跡であるようです。
各拠点を襲撃する天使たちが出入りするのを確認しました」
「ほう、そうか……手間が省けたな……」
「はい。そしてもう一つ、お耳に入れたいことが……」
「ふん、なんだ?」
「エール殿の所在がわかりました」
「何!? どこでだ!?」
「……その……」
「どうした、さっさと言え」
言い淀むマリスをランスが問い詰める。
「古代の遺跡で、天使軍と共に居るようです。どうやら、指示を出しているようで」
「はぁ? なんであいつがそんなことを」
「不明です。報告によれば、同じ年頃の少年少女、合計四人で指揮を取っているようです」
「ったく! あのアホ妹め! 兄に逆らうとはいい度胸だ。俺様がたっぷりお仕置きしてくれるわ!」
ホ・ラガの塔に再度赴き、適当なイケメンを押し付けて最後の黄金像を手に入れたランス達は、精鋭軍を率いて古代の遺跡に進軍した。
古代の遺跡には世界各地に飛来するエンジェルナイトの部隊が布陣し入り口を防衛していた。
「おー、おるおる……確かに天使連中がうじゃうじゃ守っとるな、それに……」
天使たちは完全に同じ容姿なので、外見が違うものが混じっているとよく目立つ。
「ふん、確かにエールの奴だな」
4つの天使の部隊を、それぞれ4人の少年少女が指揮しているのがわかる。
そのうちの一人は、確かにリーザス城から姿を消したランスの妹だ。
エールはリーザス軍の方に目を向けた。ランスと視線が合う。
「……」
にっこりと笑ってエールはランスに手を振った。ランスが顔をしかめる。
「ったく、どういうつもりだ?」
「王、ほかの3人の指揮官の情報がつかめました」
「ほう、話せ」
マリスが手に持った資料を読み上げる。
「一人目は、ヘルマン軍地方警備隊の新人、エール・オークデルタ。16歳の少年です。
二人目は、ゼス地域警備隊の小隊長、春川詠流。18歳ですね。
三人目は、リーザスで傭兵として活動していたエール……」
「おい、待て。それは……」
「はい、妹君を含めて、全員『エール』という名前を持つ少年少女です。
さらに、いずれも高い技能と才能限界を持ち、将来を嘱望されていたという共通点があります」
「……うーむ、偶然ではなさそうだが……」
「……推論は、できます」
マリスは言いにくそうに続ける。
「なんだ、どうした。言ってみろ」
「……はい。おそらくあの4人は……おそらく神……ルドラサウムの手の者であったのでは」
「そんなことはアレを見れば分かる」
ランスは古代の遺跡に布陣する天使とエールたちを見た。
「何時からそうだったのか、については調査の必要がありますが……」
(あるいは、生まれた時からそうだった可能性も……)
「ふん! そんなめんどくさいことする必要はない!」
ランスは剣を抜き、天使たちに突き付けた。
「なぜなら俺様が連中をぶちのめしてヒィヒィ言わせて全部白状させるからだ!」
ランスが久々に剣を抜き、号令を下す。
「全軍、突撃! ぶち殺せ!」
エール・H/エンジェルナイト(直接) 2000
対ランス
エール・H「世界を統一したリーザス王ランス……僕の槍がどこまで通じるか! 勝負!」
散り際
エール・H「かはっ……流石……ですね……見事……」 エール・H は戦場に散った。
エール・L/エンジェルナイト(弓) 2000
対ランス
エール・L「あんたがランスか! ハーレム作ってんだって? 羨ましいなオイ! 俺が勝ったら譲ってくれ!」
散り際
エール・L「へっへへ……まぁ、いいかぁ……楽しかったしよ……」 エール・L は戦場に散った。
エール・Z/エンジェルナイト(魔法) 2000
対ランス
エール・Z「……せっかく世界が収まったのに……申し訳ありません。でも、すぐにわかると思います……」
対ガンジー
エール・Z「ガンジー王……感謝しています。でも、全ては無意味なんです……」
散り際
エール・Z「すみません……でも……これで……」 エール・Z は戦場に散った。
エール/エンジェルナイト(直接) 2000
対ランス
エール「やっほーお兄ちゃん! いらっしゃい!」
ランス「こら、エール! 何をやっとるんだ!」
エール「えー? お兄ちゃんが言ったんじゃん。謎の軍団でも攻めてこないかって……」
ランス「そういう事じゃないわ! えーい! とっ捕まえてお仕置きしてくれるわ!」
エール「よーし! いっくぞ────!」
散り際
エール「えへへ……やっぱりお兄ちゃんはつよくてかっこいいねぇ……」 エール は傷つき動けなくなった。
天使達の軍は強力だったが、リーザス軍はなんども攻撃をしかけ、ついに古代の遺跡を陥落させた。
ランスの前には捕らえられたエールが縛られて引き出された。負傷もそのままだ。
「さて、どういうつもりなのか白状してもらおうか」
「この子はきっと神の回し者よ。ダーリンの妹っていうのもきっと嘘に違いないわ」
「えー。それはほんとだよー。回し者ってのは間違いじゃないけど」
エールはひょいと立ち上がった。打たれていた縄はいつの間にかほどけており、傷も無くなっている。
「なっ……」「いつの間に……」
警戒するランスたちをよそに、エールは訥々と語り始めた。
「……そうだねえ、例えば、男女がセックスしたとしても子供が出来るとは限らないでしょ? あるいは夫婦が仲たがいするとか、片方が死んじゃうとか……」
「……まあ、あるな」
「そんな生まれるはずがなかった運命をいじくって、子供をつくるの。そんな員数外の子供には割り当てられる魂がないから、その空き枠に……あたし……じゃない。ルドラサウム本人をほんの少しだけ千切って用意した魂を入れる。んで、ちょちょいと技能と限界をいじって……それがあたしたち、『端末』だよ」
「つまり、お前は体は生まれなかったはずの俺様の妹だが、魂はルドラサウムの野郎のものということか!」
ランスが剣に手を掛ける。
「そーだね。でもそんなこと言ったらこの世界にルドラサウムのものじゃない魂なんてないよ?」
「なんだと!?」
「かつてルドラサウムは自らの体を千切り、この世界と生物、魂を産み出したといいます……伝説が正しいとすれば……」
マリスが口を挟んだ。香姫も頷いている。
「そうそう。お兄ちゃんの魂だってなん万年か前に同じようにルドラサウムから切り取られたものなんだから」
エールはクスクスと笑い、ランスは苦い顔をして剣から手を離した。
「で、この後お前……貴様はどうする気なんだ」
「あたしは負けちゃったからお兄ちゃんの言うことを聞くよー。どーする? ハーレムに行ってエッチする? やーん♥️」
「そういうことではないわ! 天使の軍団と地震をとっとと止めろ!」
くねくねするエールを怒鳴り付けるランス。
「あー……。それはもうあたしの一存じゃ……んー……?」
「ん? どうした」
「うん、えーと『本体』から連絡だよー。『僕のところまで直接来れたら話を聞こうじゃないか。待ってるよ。でも途中は怪獣が徘徊してるから気をつけてね。くすくす』だってさ」
「ダーリン……」
リアがランスに不安そうに寄り添った。
「チッ……どうやら行くしかないようだな……」
四つの黄金像が置かれ、開かれた神の扉にランスたちリーザス軍は突入した。
その先には怪獣がうろついていたが、これまで何度も魔人相手に戦ってきたランス達。足止め部隊を置いて本体はそのすきに潜り抜け、階層を下っていく。
「ぜぇぜぇ……けっこうしんどいな……」
「あたしが足止めしよっか?」
エールの背後には天使の軍が控えている。
「そいつらはなんでこっちを襲ってこんのだ」
「あたしの言うことを聞くように命じられてるからね」
「……いいからおとなしくさせとけ」
「くすくす……はーい」
途中でレベルの低いものが存在感に耐えられず倒れるも、かまわず進んでいき……
そして、光の壁を越えると……地平線が見えないほどの広い空間に出たのだった。
「なんだぁ、この空間は……地下にこんな場所があったとは……」
驚くランスの目の前で、白い壁が動く。
『ん……来たね……くふふ……ようこそ……ぷちぷちの王様……くふふ……』
目の前の存在が身じろぎし、それが巨大な、あまりに巨大なくじらのような存在であることが分かった。
その体は白く光る神聖なオーラに包まれ、存在するだけで身をすくませ、心を折るような雰囲気をまとっている。
「あ、ああ……」「ランス王……」それだけで兵士たちどころか将軍の一部まで気を失い、胸を押さえて倒れていく。
「こいつが……ルドラサウム……」
(でかすぎる……さっきの怪獣がおもちゃみたいなサイズじゃないか……これは流石に……)
ランスが一瞬恐怖したそのとき。
『ああ……うーん……驚かせたいわけじゃあないんだ……だから……』ルドラサウムがわずかにその光を弱め……そして。
ランスの横から、ゆっくりと進み出るものがいた。ルドラサウムとランス達の間に立ち、振り返って笑う。
「くふ……ふふふふ……こっちの、『端末』でお話しさせてもらうね。お兄ちゃん」
エールの体は白く輝き、ルドラサウムと同じオーラを発している。
「ほら、地上のぷちぷち……あ、ごめん。人間を良く観察するのにはさ。こうやって人間の視点から見るのが一番なんだよねー」
「てめぇ……そうやって俺様達をだましてやがったのか!」
「人聞きの悪いなあ。言っとくけど、あたしも自分が『端末』だなんてついこの間、リーザス城で別れたときまで知らなかったからね?」
不満そうに口を尖らせるエール。それは何度も見た妹……エールそのものの態度だ。
「信号も命令も一方通行なの。あたしは、普段は普通に自分の意思で動いていろんなものを見て、聞いて、感じて、それを本体に送っているだけ。こうして本体が命令を送ったときだけ、情報を共有して、あたしは『端末』になるの」
「……」
ランスはエールを……ルドラサウムを黙って睨んでいたが……息を吐いて口を開いた。
「で、貴様らエンジェルナイトなんぞ寄越しやがって。なにが目的だ」
「落ち着いてくれてありがと。立ち話もなんだし。座ろうよ」
エールがくすくすと笑い、指を鳴らすとエンジェルナイトがどこかからテーブルと椅子を運んできた。
ランスとリア、エールが机につき、マリスがリアのそばに控えた。
エールが早速切り出す。
「それでなんだけどねー。この設定での展開もだいぶたくさん見たから、そろそろ本筋に戻ろうかな、って思うんだ」
「設定? 本筋? なんのことだ?」
「うん。この世界はね。何て言えば通じるかなあ……言うなれば、『難易度』が低いんだよね」
「はぁ? 難易度? 簡単と言うことか?」
「うん。お兄ちゃんの直属の精鋭軍が……まあ10万くらい? それと魔剣がいくつか、魔人が少しいる……そんな程度で魔物の世界も含めての世界統一なんてできるわけないじゃない」
「……なんだと?」
「この世界の人口は三億、本来モンスターもそれくらい。大体人口の1%として、まあ兵士が300万……お兄ちゃんでも最低100万は必要だと思うよ。魔物界を一時的にでも制圧するにはね」
黙り込むランスにエールはクスクスと笑い、続ける。
「それにさぁ、お兄ちゃん。今LP何年だかわかってる? お兄ちゃん今何歳?」
「あん? 今はLP38年だから……40……だと?」
ようやく不自然さに気がつき愕然とするランス。
「そ。あたしもそろそろアラフォーだよー。でもぴちぴちでしょー? バレスさんもずいぶん長生きだよねー? ミルちゃんやリセットちゃん、アスカちゃんはいつまで子供なのかな?」
数々の異常事態、そしてこれまでそれらに違和感を感じていなかった事実に、ランスの顔面が蒼白になる。
「が……ぐ……おい! どういうことだ!」
「くすくす……ちょっと面白い袋小路のルートに踏み込んだもんだから、設定をいじって……今のお兄ちゃんが率いられる兵士で世界統一が出来るくらいの難易度にしてみたの。ホーネットはともかくケイブリスの認識をごまかして魔物の数を1/10に削るのはちょっと大変だったな~」
「袋小路だぁ?」
「うん、だってお兄ちゃん、普通だったら絶対王様になんてなろうとしないし。ある意味レアかなって……でも、まさかこんなに早く統一しちゃうとは思わなかったよ! すぐ投げ出しちゃうかと思ってた」
すごいすごーいと拍手するエール。ランスは苦虫を噛み潰したような顔でそれを見る。
「で、貴様は俺様に自慢話をするためにここに呼んだのか?」
「そんなんじゃないよー。ここまで来れたご褒美ってことで、なにか一つだけ願いを聞いてあげようと思って」
「なに? 願い? じゃあ人間に手を出すなと言えば……」
「天使たちは引っ込めるよー。地震も止める。お兄ちゃんが生きてる間はね」
「それは本当なんだろうな? なにか裏が……」
「大丈夫大丈夫。どっかのKYじゃなくて人間歴30年以上のあたしがいい感じに調整するし! カオスさんたちみたいなことにはしないよー」
「やったわね、ダーリン! 問題解決じゃない!」
「ああ……うむ……」
「くふふふ……でもさあ……お兄ちゃんの願いはそんなんじゃないよねぇ……」
エールは後ろに浮かぶ巨大なくじらと同じ、割れ目のような笑みを口に浮かべる。
「お兄ちゃんはそんな、退屈な平和に耐えられるような人じゃないもんねえ……それにシィルさんもいないし……」
「ふん、ダーリンには私がいるもの! 大丈夫よ! ねぇダーリン……ダーリン?」
「……」
ランスは不機嫌そうに黙っている。
(もしかしてこいつに頼めば……シィルの奴を……?)
「で、これはあたしからの提案なんだけどさー。世界を巻き戻さない?」
「は? そんなことが出来るのか?」
「うん。お茶の子さいさいだよ。例えば……ヘルマンで盗賊を退治して……隣にシィルさんがいたあの日に巻き戻す……とか」
「……っ……」
「まあお兄ちゃんもこの世界線での記憶はなくなっちゃうけど。リアお姉ちゃんと結婚した事実もね」
「はー!? そ、そんなの認められないわよ! ねぇダーリン!?」
「あー。ごめんねお姉ちゃん。話がややこしくなるから黙っててもらえる?」
「えっ……あれ……?」「リア様……? うっ……」
エールが視線を向けると、リアとマリスが気を失ってくたっと倒れた。寝ているようだ。
「くふふふふ……それで、どうする? 『お兄ちゃん』」
嗤うエールに対して、ランスの回答は……
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「あんたの強さに惚れた! 頼む! 親父に代わって俺達の頭になってくれ!」
「……あん?」
ランスは、自分が剣をもって山中に立っていることに気がついた。
目の前には土下座する男。
「ねぇ、アタシからも頼むよ! 強い男ってタイプなんだよね!」
傍では目付きの鋭い女の子も頭を下げている。
(あー。そうだ、俺様は山賊をカッコよくぶちのめしたところだったのだ。そしたらボスの子供たちが俺様の手下になりたいと……)
我に返ったランスは盗賊の女の子を見る。
(そこそこの上玉だし、とりあえず承諾しておくか! 楽しんだら盗賊団なんぞ放り出してしまえばいい……)
「がはははは!」「ランス様ぁ……」
よかろう、返事をする前に隣から声がかかる。
反射的にそちらを向くと、ピンクのもこもこヘアの奴隷……シィル・プラインが涙目でランスの袖を掴んでいた。
「……」「ひっ……」
ランスが腕を振りあげ、シィルは反射的に頭をかばった。
しかし、伸ばされたランスの腕はシィルの頭ではなく体に伸び、腰を掴んで抱き寄せた。
「へ……?」「……」
ランスはそのままなにも言わず、シィルを両手で優しく、しかし強く抱き締める。
まるで長く離れていた大切なものを取り戻したかのように。
「ランス様……?」「む、い、いや……なんでもないぞ」
ランスは我に返り、あわててシィルを解放した。
(なんでか知らんが、こいつを初めて見た時のような感覚だったな……昨日もさんざん抱いたのに……)
「あ、あの……ランス様……いったい……?」
「はっ! や、やかましい! なんでもないと言っとるだろ!」(ぽかっ
「ひんひん……」
(ほっ……いつものランス様だ……)
「あ、あのー……」
二人がいつもの調子に戻った後ろで、盗賊の兄妹が所在なさげにしていた。
「それで、アタシたちの頭になってくれるって話は……?」
「ふーむ……まあよかろう、と思っていたのだが……」
「……だが?」
「なんでかこいつともんのすごいスケベなセックスをしたくなった! なので貴様らの相手などしている暇はない!」
じゃきーん! ランスはポーズを決めてシィルを指差した!
「ええっ……ランス様……ひゃっ!?」
「というわけでさらばだ! がーははははははは!」
ランスはシィルを抱えあげ、ものすごいスピードでどこかに走って行ってしまった!
「「えええーっ?」」
「そ、そんなー!」
「ランスー! 待ってよー!」
盗賊の兄妹の悲鳴がへルマンの山中に響く。
そんな光景を離れたところから、茶髪の少女が見ていた。
「……これでよし……かな。えへへへ……くふ、ふ……ふふふふ……」
笑いながら踵を返す。
「次の冒険はどうなるかなあ? 今度はあんな風には行かないよ……楽しみだねぇ『お兄ちゃん』」
少女はコートを翻し、姿を消した。
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鬼畜王ランス エンディングNo.XX
『回帰』盗賊の頭などゴメンだEND
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ちみちみ書きためていたら大分長くなりました。
今年応援いただいたお礼にと思って書いていましたが、いかがでしたでしょうか?
これが今年最後の投稿になります。
来年も頑張りますので、よろしくお願いします。
※次の話を投稿するときに番外編に移動します。