【二章完】ちょっと早めのエールちゃんの冒険   作:砂嵐36

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死神の剣と無限の剣
そしてかわいいエールちゃん
ヘルマン共に目にもの見せちゃる


45.エールちゃんは背中を見る

「ラァァァァァァ!」「ぐわっ……」「ぎゃあああ!」「うわああああ! 赤い死神だー!」

 先陣を切る赤い光と共に、雄叫びをあげて突き進む赤軍。

 あたしとレイラさんはそれぞれリックさんの背後について走っていく。

「死ね!」「ふっ!」あたしに突き出された槍を見切ってかわし、がら空きの脇腹に剣を突き込んで軽く捻る。「ぐはっ……畜生……」血を吐く兵士を蹴倒して隣を見た。

「おおおお!」「はぁ!」「がっ……」

 レイラさんの剣がヘルマン騎士の突き出された剣を擦り上げて、兜と鎧のわずかな隙間を切り裂いた。

 相変わらずすごい剣の冴えだ。ついつい見とれてしまう。

 流れ出る血は、後続の兵士達に踏みしだかれてすぐに土と見分けがつかなくなっていく。

「おのれ! 小娘とて容赦はせんぞ!」おっと、あたしにも騎士がかかってきた。

 ぎゃりぃん! と力任せに振り下ろされるヘルマンソードを神官ソードで受け流す。ここまではよし。

 流した勢いで体を捻り、両手の剣を振りかぶる。……ここだ! 

「……AL……魔法剣!」ずばざしゅっ! 

 魔法で強化しながら、全身のバネを効かせて体を一回転! 

 神官ソードが肩当てを打ち砕き、リーザス聖剣が深々と騎士の体を切り裂いた! 

「が……ぐ……はぁ……げぼっ……へ、ヘルマンに栄光……あれ……」

「いたいのいたいのとんでけー……」肺が潰れたか、血を吐いて倒れる騎士。両腕の軽い痛みを応急ヒーリングで治療する。

(よし……いける! 使える!)

 あたしが確信を持って前に振り向くと、リックさんがこちらにちらっと視線を向けていた。背筋を軽く冷たいものが伝う。

 今の視線、問題なさそう、という確認目的だっただろうけど、なんていうかちょっと品定めみたいなのも混じってたな……

 そういえばお兄ちゃんのことも割とじろじろ見てた。

 もしかしてそういう趣味なのでは、とちょっと美少女汁が口から垂れそうになったこともあったが、こりゃ相当の剣マニアだな。

 少しなら気持ちはわからんでもないけど。

 とか言ってる場合ではない! 先に進まないと! 

 

「ラァァァァァァ! バイ・ラウェイ!」「ぎゃああああ!!!」

 重装兵たちの堅牢な陣が圧倒的な斬撃密度で文字通り切り開かれ、混乱した兵士達をあたしの、レイラさんの、兵士達の剣が蹂躙する。

「そりゃー! うりゃ! はぁ! AL魔法剣! ヒーリング! AL魔法剣!」

「お留守ね! 打ち抜く!」

「うおおおおおおお!」

 このままなら突き通せるか、と思ったとき。兵士達の密度が急に上がった。

「ヒャハハハハ! さあ! 来るぞ来るぞ来るぞ来るぞ! 死神が鎌持って来るぞ! 野郎共! 尻穴掘られたくなかったら気合い入れてケツ締めろ!」

 指揮官らしき男の声が下品な台詞を吐き散らかしている。本気で止めて欲しい! 面倒なことになる! タグとか! 

「……前衛の指揮官ですね。こちらに兵力を集中したか……」

「思いきりがいいと言うか頭がおかしいと言うか……」

「で、どうするんですか? 迂回します?」傷を負って肩を押さえている赤兵にヒーリングをしつつ尋ねた。

「無論、押し通ります」「了解」「ですよねー」

 これがリーザスの赤い死神、これが赤軍なのだろう。

 お兄ちゃんの背中に続いている時の、なんでも出来そう、やってやれそうな気持ち。それと少し似てるが、より攻撃的で、視界が真っ赤になる。そんな雰囲気だ。

「行きます。ラアァァァァァァ!」「スクラム組んでお出迎えだ! 野郎共! 根性見せろや!」

 密度が高い兵士達の間を赤い剣が走る。リックさんに向けて両手では効かない数の武器が突き出されるが、ほとんどは弾かれ、返す刀で切り捨てられていく。

 それでも無傷ではない。「いたいのいたいのとんでけー! いたいのいたいのとんでけー! とんでけったらとんでけー!」あたしが兵士をあしらいながらも片っ端から治療する。

「死神のケツにオムツの神官が張りついていやがる! 仕留めろ!」げっ、こっちにボウガン陣地の狙いが向いた。

「遅い!」「「「ぎゃああああ!!」」」ヤバイと思った瞬間、踏み込んだレイラさんの剣が霞んで突き抜けた! ボウガン兵たちは全員正中線近くを穿たれてのたうち回っている。

 横から見ててもこれかー……真正面だったらもっと見えないな……

「はぁ!」「ぐっ……」正面を守る最後の壁をバイロードが斬り倒し、あたし達はようやく指揮官に相対した……のだが。

「ファック! ファックファックファーック! かわいい顔してふざけ倒してくれるじゃねえか、死神!」

 そこには、P音だらけになりそうな台詞を吐く、髪の薄くなった下半身ブリーフ一丁の男がいた。

「変態だ──────────!!!!!」あたしは思わず叫んだ。

「なんだぁお嬢ちゃん。他人のファッションにいちいち口出すんじゃねえ。ガキは帰ってパパの(ピーッ)でもしゃぶって寝な!」

「本格的な変態だ──────────!!!!! お兄ちゃーん!!!!!」あたしは思わず叫んだ! 

「あん? お兄ちゃんだ? それはさぞかし……」「貴様がここの指揮官か」リックさんがシリアスにツッコんだ! 偉い! 流石! 

 一応言っておくが、シリアスに突っ込んだとか言っても尻のアスにナニを突っ込んだとかそういうこととではないからね! 相手があれじゃなかったならちょっと興味はあるけど! 今は面倒だから! タグとか! 

 あたしはどこの誰に何を注意してるんだ!? 

 混乱するあたしをよそに変態は盛り上がっている! 

「ははは! その通り! そしてここからがサプライズ! お楽しみの時間だ!」

 咥えていたタハコを投げ捨て、それが地面に触れた瞬間。撒かれていた液体に引火してあたりは火の海になった! 

「こ、これは……油!? あらかじめ撒いてたの!?」「罠だった!?」変態の癖に! 

「ふん、お前らみたいに靴を履いてるとわからん事もあるのさ。俺みたいに裸足になれ! 大地を感じろ!」

「貴方はどうする気!? このままじゃ全員死ぬわよ!」

 レイラさんの問いに、変態ははっとした顔で

「そうか、不味いな。そこまで考えてなかった……まあいい! ここでお前らを殺すのが俺の仕事だ! それ以外を考えるのは人生の無駄だ! ズボンと一緒に捨てちまえ! 蒸れるからな!」

「狂ってる……」「変態だ……」「本格的に燃え広がる前に脱出しましょう。多少の傷は負うでしょうがエール殿が居れば……」

 開いた口が塞がらないあたしとレイラさんを制してシリアス男のリックさんが口を開く。思った通り戦場ではものすごく頼りになる。こういう方向で頼りになるとは思わなかったけど! 

「逃がすと思うか? お前ら三人はここで足止めさせてもらう」変態がにじり寄ってきた。見るからにしつこそうだ。どうしよう……と思った瞬間。

「兄さん!」黒髪おかっぱの女の子が炎の壁を突破して入ってきた! この声……ずだ袋の中身の? 

「この馬鹿!? 何をやってる!」

「兄さん! 持っていくポリタンクを間違えてる! その中身はいつもの油よ! 火を防ぐぬるぬる水はこっち!」

「ワアッツ!? 俺はギリギリで逃げ出す瞬間に油を被るところだったのか!」

 女の子は変態の妹らしく、二人でわあわあと騒いでいる。

「一応は脱出の策は持っていたのね……抜け目のないやつ……」「抜け目はなくても間は抜けてるみたいだけどね……」

 変態の声色がすこし変わった。なにかを思い出すような……

「それよりそのぬるぬる水は一人分だ、お前はどうするつもりだ!」「ドジ踏む兄のフォローも妹の仕事でしょ? それに何より……」女の子が顔を伏せる。「……ふん、バカが」変態の拳が女の子のみぞおちにめり込んだ。

「がっ……ロバート……兄さん……なんで……」「兄の言うことを聞かない妹には……こうするしかないだろう……」倒れた女の子にロバートというらしい変態はポリタンクの中身をぶちまけた。

「悪いな、かわいこちゃん達。俺はこのバカの面倒を見なきゃならん。勝手に抜け出しな」ロバートは女の子を大事そうに抱き抱えた。

「その子を抱えて脱出する気……?」「しかも裸足ブリーフで……」

「しょうがねぇだろ……妹を守るのが兄の仕事でな……」変態は踵を返しかけ、あたしの方に顔を向けた。

「おっと、お嬢ちゃん。忘れてたぜ」「な、なに……?」

 ロバートは背中越しに振り返り、こっちを睨みつける。

「お前の兄貴に言っときな。妹は、大事なものはちゃんと近くで守ってやれってな……俺は、どうもこいつを守ってやれなかったらしい……」

「……」妹さんにひどいことしたのはたぶんうちの兄です、とは言えなかった。

「だから……俺は、駄目な兄貴は……こうするしかねぇのさ!」

 ロバートは女の子を抱えて火の海に飛び込んでいった。……裸足ブリーフで。

「……我々も脱出しましょう!」「ええ! エールちゃん! こっち!」「あ、は、はい!」

 あたしたちは業火の中を息を止めて必死で走り抜け……どうにか炎を抜けた。

 

「ご無事ですか! 二人とも!」「ぷはっ、ええ、何とか……」「あたしも平気! いたいのいたいのとんでけー!」さすがに皆少し火傷はしている。あたしはヒーリングで一通り治療する。

「ありがとうございます! では、進みましょう!」「ええ!」「はい!」

 あたしたちは炎に背を向けて走り出す。その向こうから、誰かの断末魔が聞こえてきた。

 それを聞いてあたしは、あの変態……ロバートの、妹さんを前にしてる時の声は。

 ちょっと昨日のお兄ちゃんに似てたな、と思ったのだった。




設定がないので妄想です。

ロバート・ランドスタ―
32/38
物理戦闘1  軍師1

セピア・ランドスター
28/28
魔法0 簿記1

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未プレイの人はぜひこの機会に購入してほしいですね!
特に03,6,戦国,9,10はプレイして絶対損はしないゲームだと個人的に思います!
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