【二章完】ちょっと早めのエールちゃんの冒険   作:砂嵐36

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いつの間にか50話まで来ててびっくりですが
まだ終わりが見えないのもびっくりです


50.エールちゃんは魔法を覚える

 一晩明けて、いよいよヘルマン軍とジオで決戦だ。

「よーし! お前ら! 準備はいいな!」

 偉そうにふんぞり返るランスお兄ちゃんの前にはずらっと並んだ解放軍の兵士たち。休息もばっちりで勝利で士気もばっちりだ。

 あたしももやもやが晴れてすっきり爽快。剣を握る手にも力が入る。

「敵将はトーマとか言うジジイらしいが、所詮俺様の敵ではない! 突撃だ!」

「「「うおおおお──ー!」」」あたしたちは勢いよくジオに突入したのだった。

 

 が。

「誰もいませんね……」「うむ、民間人はおりますが、兵士の姿は一人も……」

 ジオに迫っても市壁に兵士の姿はないどころか門は空いている。

 バレスさんはなんか……九条の軽? みたいなものを警戒していたがお兄ちゃんは構わず突っ込み、そして市街には誰もいなかったのだった。

「これは……ジオを捨てましたかな?」バレスさんがひげを捻っていると、前方から身なりのいいおっさんが歩いてきた。

「解放軍の皆さんですな? わたくし、このジオの都市長を務めております、パパデマス・シルサブンと申します」

「おー。司令官のランス様だ」お兄ちゃんは果てしなくどうでもよさそうに返事をした。

「おお、ランス殿と申されますか……この度はヘルマン軍を追い払っていただき、感謝の極みにございます!」

 おっさんはわざとらしい鼻声で深々と頭を下げる。

「で、ヘルマン軍の連中はどうしたんだ」

「ええ、連中は一人残らずオクへと逃げていきましたとも!」

「一人残らず、とは限りますまい」「ええ、残党はいるかも。念のため調べたほうが……」

 バレスさんとレイラさんが口を挟むが、「いーえー。居ません居ません! さぁさ、そんなことより解放軍の皆さんのために酒宴の用意をしておりますので、こちらに……」

「むぅ……しかし……」

「ふむ……おお! 実はですなあ!」(しゅばっ)

 バレスさんの反応が鈍いとみるや、おっさんはお兄ちゃんに矛先を変えてすり寄った。

「天満橋ありすのステージなどもご用意しております……当人も、皆様に大変感謝しているとのことで……個人的に、お礼もしたいと……」

「ほう、ほほう、お礼とな? 個人的な? よかろう、行こう」

 あ~お兄ちゃん釣られた。これはもう行くしかない。

 というかこのおっさん、都市長をやるだけあってやり手だなぁ……

「「はぁ……」」ため息をつくと、ちょうど同じくついていたシィルさんと目が合った。二人で仕方ないなぁ、という感じに笑いつつ、スキップで案内されるお兄ちゃんについて行くのだった。

 

「がーはははははは! もっと飯! 酒! 肉! もってこーい!」

 長い机にはずらーっと皿が並べられていて、角に座ったお兄ちゃんが片っ端から手を伸ばして平らげている。

「どうぞ、ランス様。いろいろお持ちしました」

「おう、シィル。お前もちょっとづつなら食べていいぞ!」「わー。ありがとうございます」

 あたしたちの前の机にも大量の料理が並べられている。大きなうし肉の塊に、あれはもじもじスープだろうか? でっかいサカナが尾頭付きになっている。見たこともないごちそうだ。

「わ、スメルスメルがある。一度食べてみたかったんだよね」

 早速とって食べてみる。うーん。お肉の味とお肉の味がする。

「わ、ぷちハニーが皿に?」「あーこれはぷちハニーのカレーソテーだよ。難しい料理なんだぜ」驚くセルさんにミリさんが説明している。

「昔ミルが挑戦しようとして厨房が吹っ飛んでな……」「ええ……」

 挑戦する料理はへんでろぱとかの簡単なのにした方がいいと思うなぁ……

 部屋の隅っこでネカイさんは高そうなお酒を飲んでいるし、スーちゃんもまんがみたいな骨付き肉にかじりついている。うーん、とても似合っている。

 あっ、隅でバーニングさんがコロッケそば食べてる。ここって一般の人にも開放しているんだね。

 

 かなみさんは料理には手を付けずに、丸薬みたいなものを口にしていた。

 流石は忍者、こんなところでも修行なんだ……と思ったが。ほかの皿の料理をめちゃめちゃ未練がましそうにチラチラ見て、手を伸ばしかけては引っ込めていた。

 あ、お兄ちゃんに見つかった。目の前でおいしそうに肉を平らげるお兄ちゃんを恨みがましい目で見てる……うーん……

 

(あれ? 志津香さんとマリアさんはどうしたのかな)

 ダボラペペをもぐもぐ食べながら探したのだが宴席には見当たらない。

 用事でもあるのかな? などと思っていると。

「おっ! わらび餅! 全部いただきだ!」お兄ちゃんのダミ声が響いた。わらび餅? 

「あーっ! お兄ちゃん! あたしも! あたしもわらび餅食べたい!」

「がはははは! 自分で探すのだな!」「ちょっとくらいわけてよー!」

 宴席は大騒ぎで、ほかの事を気にする余裕はなくなってしまった。

 

「げーっふ。食った食った」「うーん……お腹いっぱい……」

 満腹の状態でジオの街並みを歩く。ジオは自由都市で一番栄えた町、というだけあって街並みも綺麗で美しい。先ほどと違って普通に人通りも出てきている。

 目を引くのは都市のそばに突き出している巨大な白っぽいとんがった……謎の物体だ。

 あれがなんなのかは今もってわかっていないらしい。個人的にだけど、何かの怪獣の死体じゃないかと思う。

「で、どうするんだランス? レイラさんが言ってた司令部に行くのか?」ミリさんが尋ねる。

「ふーむ、まぁせっかくだしその辺をぶらついていくか。お、武器屋があるぞ。とーうっ!」

 お兄ちゃんがその辺にあった三戒堂という武器屋に飛び込んでいった。

「おっ……お? おー! ミリーちゃんじゃないか!」中からお兄ちゃんの声。知り合いがいたのかな? 

 あたしたちも店に入ってみると、儚い雰囲気の女性ががはがは笑うお兄ちゃんのまえでうつむき加減に立っていた。

 ミリーさんというリーザスで武器屋をやっていた人で、武器屋の寄り合いでジオに来たら戦争が勃発してリーザスに帰れずここでお世話になっているらしい。

 ヘルマンの人に乱暴とかはされなかったみたいだ。やっぱり不埒なことを考えてる奴はヘンダーソン隊に集まってたのかな? 

「私は無事でしたけど……パティさんや町の人たちは心配です……」ミリーさんが肩を落とす。

「がはははは、任せておけ。リーザスなど解放軍リーダーの俺様がすぐ奪回してやる」

「ランスさんが……解放軍の?」ミリーさんの疑わしそうな視線がお兄ちゃんの左右に泳ぐ。

「え、あ……ほ、本当ですよ。ランス様はリーザスのために戦ってて……」

「不本意だけど……今はそういう事になってるのよね……」

「不思議だよねぇ。お兄ちゃんが司令官でうまくいってるの」

 あたしたちは口々に言う。

「……本当っぽいです…… ……お兄ちゃん?」一瞬納得しかけたミリーさんの視線があたしに戻ってくる。

「初めましてー。ランスの妹のエールでーっす☆ミ」ばちこーんと美少女スマイルをかますと、ミリーさんは「あ……どうも……」と蚊の鳴くような声で答え、お兄ちゃんに目を向けた。

「……ランスさん……そういうプレイがお好きなんですか……? まさかパティちゃんにもそういうことを……」

「するわけなかろう! 本物だ! 一応な!」「……そうですか……大変ですね」あたしに同情の視線を向けるミリーさん。

「うむ、全く面倒ばかりかかる奴なのだ」

「……そっちじゃないんですけど……でも。……頑張ってください。パティちゃんたちのこと……よろしくお願いします……」

 

 ミリーさんとひとしきり話したのち、せっかくなので武器を見ていくことにした。

「相変わらずミリーちゃんの店には変なものが多いな……」

「何これ? やわらかクナイ……?」「やわらかいの? やわらかくないの?」「さぁ……私手裏剣派だから……」

「うわっ、またぷちハニー爆弾じゃないか」「……うふふふ……V5爆弾ですよ」

「こっちには冷凍のマグロとかお肉が……」「本当に武器屋なのかしら……」

 色々見て回っていると、何かの杖が置いてあった。

「なになに……ぷち雷の杖……振るとちょっとぴりっとするくらいのぷち雷の矢がでます……?」

「お? ちょっと貸してみろ」お兄ちゃんが手に取ってぶんぶんと振ると、ようじくらいの雷の矢が出てかなみさんに向かって飛んでいく。

「きゃっ……わ……いたっ……ちょっとぴりぴりするー!」

「忍者なのに避けられんのか、がははは」「魔法を避けられるわけないでしょー!」逃げ回るかなみさんにひとしきり杖を振り、お兄ちゃんは杖を放り出した。

「がはははは、面白かった」「おっと」あたしはそれをキャッチする。

「さーて、ほかに面白いものは……」「……えい」あたしは何気なく杖をお兄ちゃんに向けて振った。

 ぴしゃーん! 大きな雷の矢が飛び出してお兄ちゃんのお尻に命中した。

「おぎゃ────!」「うわっ」お兄ちゃんはびっくりするほど飛び上がってこっちに振り向く。

「こら! エール! 何してくれとんじゃ! この……あたた……」尻を抑えて前かがみになるお兄ちゃん。

「大丈夫ですかランス様! いたいのいたいのとんでけー!」シィルさんがお兄ちゃんにヒーリングをかけている。

「ごめんお兄ちゃん。でもなんでこんなん出たのかな……」杖をしげしげと眺めていると、脇からにゅっと手が伸びてきて杖を取り上げた。

「……うん、これゼスで発売中止になった雷の杖じゃない」

 リュックにメガネ、パーカーの女の子だ。同い年くらいかな? 

「あなたは?」「ゼスからの観光客よ。名乗るほどのもんじゃないわ」

 女の子は杖を確認するとぽいと返してきた。

「この杖、雷魔法の素養がある人じゃないとまともな雷の矢が出ない……ってんで不良品として回収になったはずよ。在庫処理のために自由都市でジョークグッズとして売りさばいたのね」「へぇー……」しげしげと杖を見ると、どっかのメーカーのロゴが塗りつぶされている。

「じゃあエールちゃんには雷魔法の才能が……?」「あるんじゃない? 知らないけど」女の子はさっさと去っていった。

「へぇー……」なんかの役に立つかもしれない。今度志津香さんにでも習ってみようか……あれ? 最近見てないな? マリアさんに聞いてみよう。

「ミリーさん。これくださーい」「……はい……こちらにどうぞ……」

「それより俺様の尻はどうしてくれるんじゃ!」「しょうがないなぁ……」

 あたしはお兄ちゃんの尻にヒーリングをかけるのを手伝ったのだった。




ミリとミリーでややこしい…

エールちゃんがスキル4を覚えました。
☆☆☆雷の矢

いろいろあって急に使えるようになった雷魔法
威力はランスが飛び上がる程度

設定が固まる前はランスが魔法を覚える作品もあって
雷の矢なんかを使っていました
そういう事もあってエールも2部カードで電磁結界を持っていたんだと思います
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