【二章完】ちょっと早めのエールちゃんの冒険   作:砂嵐36

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53.エールちゃんはヤジを飛ばす

「ふっ、判らないのも無理はない。俺もだいぶ変わっちまったからな……」

 ラークとか言うバカボンは変な持ち方でグラスの中身を飲み干し、目を閉じてかっこつけた。

 心当たりがあるらしいシィルさんとかなみさんを見ると首をかしげている。たいして変わってないらしい。

「いつ会ったんです? てか誰?」ひそひそ

「キースギルドの冒険者さんです……ラーク&ノアって有名な方たちだったんですけど……」ひそひそ

「エールちゃんと会う前にリスの洞窟で魔人のサテラにやられて……」ひそひそ

 あー。そういえばラーク&ノアって聞いたことあったわ。確か名の知れた冒険者ペアだったはずだ。

「あの女に負けて……墜ちて流れて……俺はここにたどり着いた。そしてようやく知ったのさ……力があればいいんだ……勝てばいいんだってな……」

 カウンターに寄りかかったラークはなんかあたりまえなことをカッコつけて喋っている。

「どうするお兄ちゃん? それなりに強そうだけど」

「気に入らんし、要らん」だよねー。ウザいし。

 あたしたちは誰も聞いてないのに気づかず一人で喋り続けるラークをほっといて酒場を出た。

 将来辛いことがあってもアリオスさんやお兄ちゃんはああなってほしくないなぁ……

 

 そしてしばらく後。あたしたちはジオに引き返していた。

「ものすごい人だったわね……」

「ええ……」

「お兄ちゃんがドン引きするくらいだからね……」

「さすがにあそこまでオープンだとな、どうにもやりにくいぞ」

 あの後、デンをうろついたあたしたちはモンスーンの館というピンク色っぽい店を見つけ、お兄ちゃんは喜んで飛び込んだ。

 そして、この街の元締めだというヘクトミリバール・千津さんと出会ったのだが……

 どう見ても女学生にしか見えない千津さんは元締めでありながら現役の娼婦でもあり、そしてお兄ちゃんが引くほどのとんでもない性豪であった。

 話の内容を描写できないほどだ。面倒だからね。タグとか。

 で、金を出すから兵をだせ、と言ってみたのだが乗ってこなかった。

 金は欲しいし解放軍が押してるのも知ってるが、ひっくりかえった時にヘルマンに睨まれるのはごめん、だそうだ。

 力づくというわけにもいかないし、お兄ちゃんの常套手段を使おうにも料金とオプションを提示される始末。

 あたしたちは仕方なくいったんジオに戻って対策を練ることにした。

「ふん、よく考えればジオの方が人口も多いだろう。ジオで兵を募るぞ」

「でも都市長さんが援軍は出せないと言ってませんでしたか?」

「そこは俺様のカリスマをもってすれば問題ない。軽く演説すれば3万……いや、10万人は楽勝だ」

「そんな自由都市全域で大規模徴兵するわけじゃないんだから……」

 でもお兄ちゃんの根拠のない自信はいつものことだし、ワンチャンどうにかなるかも……

 

 なりませんでした。

 ジオの人たちはヘルマン軍に別にひどい目にあわされてはいなかったらしく、焚きつけても素通りするばかり。飽きたお兄ちゃんはかなみさんを壇上に上げてしゃべらせてからかう始末だ。

「あ、あの! い、今ヘルマン軍はリーザス国内にまで……その、押し戻されてて……」

「声が小さいぞー」「聞こえねぇよー!」

「は、はい! 今がチャンスなのでっ! 皆さんの! 力がぁ……うう」

 ヤジを受けながら耳まで真っ赤にして慣れない大声を出すかなみさん。気の毒だけどちょっと面白くもあるな……

「がはははは、どうしたどうした! もっと声張れー!」

「きゃーかなみさん可愛いー。こっち向いてー。ひゅーひゅー」

「こ、こいつら……」「ふ、二人とも……やめてあげましょうよ……」

 などと騒いでいると。

「何事ですかこれは!?」都市長のおっさんがやってきた。

「おお、やはりここで兵を募ることにした。さっさと兵を出せ」

「こ、困ります! ジオは無防備宣言9条を批准しておりまして……」

「眠たいことを言ってんじゃない、出せと言ったら……」あ、左手がぴくっとした。ヤバいな……

「大変だ────────────!」あたしが止める前に、誰かが走りこんできた。

「あれ……ラークさん?」「あん? なんだどうした」

 見ればさっき別れたばかりのラークだ。何があったか知らないが、あの痛々しい感じを維持できないほど慌てている。

「大変なんだ! デンで魔獣が……カースAが出たんだ!」

「なんだそりゃ? カースA?」「どっかで聞いたような……」

「とんでもなくヤバい人食いの魔獣なんだよ!」

 ああ、それを聞いて思い出した。

「ああ、前にラーク&ノアが倒したっていう魔獣!」

「じゃあ今回もお前が倒せばいいではないか」

「俺が倒したのはまだでっかくなる前だったんだ! デンのは完全に成長してる! このままじゃ街は全滅だ!」

 それを聞いても都市長のおっさんは涼しい顔で、「そうですか……お気の毒に……」などとのたまっていたが

「何言ってんだ! デンを食いつくしたらここに来るに決まってるだろ!」

「ひぃぃぃ! なんですと!?」顔を真っ青にして飛び上がった。

「だから警告に来たんだよ!」「そ、そんなぁ……私のジオが……」

「ふぅーん……へぇー……ジオもお気の毒になぁー……」

 おっと、お兄ちゃんがつけこんだ。これならどうにかなるかな……

 

 どうにかなった。

 お兄ちゃんはカースAの排除の交換条件として資金と兵力の提供を要求し、おっさんはそれを飲んだ。各所に指示をすると、すごい勢いで志願兵が集まり始めたのはちょっと驚いた。仕事はできるらしい。

 兵士が集まったらオクに向かわせるよう指示して、あたしたちは早速デンに戻ることにしたのだった。




ちょっと短いけどきりがいいのでここまでです。
ここからボスラッシュだー!
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