「うわあああ!」「うわあああ! 放せ! やめろ! あああ」「あっ……助け……があああああ!」
たどり着いたデンは大混乱だった。
地面を這いずり回る……なんていうか、目玉があちこちについた青白い肉塊? が次々に人々を絞め殺したり……あ、ぶわっと広がって人を丸ごと飲み込んだ。うえー……
「うむ、ひどいことになっとるな」
「もうこんなところまで……くっそおお! 誰だこんなモン持ち込んだのは!」
あたしたちと一緒に来たラークが剣を抜いて触手に斬りかかった。
「はぁぁっ!」ズバババッ! と一息で何度も斬りつける。
(へぇー……)思ったよりだいぶ強い。触手は崩れ落ち……そのまま分裂してうねうねと動き、また襲い掛かってきた。
「えぇー! 分裂した!」「厄介だな……どうするランス?」
「ふん、決まっている」剣を抜いて迷いなく進み出るお兄ちゃん。
「ランス……お前?」
「えーと……ポリポリワン君だったか」
「違ぇよ!」
あたしたちもそれぞれの武器を抜く。
「がはははは! その他大勢は下がっていろ! 行くぞ!」
お兄ちゃんが剣を抜いて斬りかかった!
「どりゃー!」お兄ちゃんがうねる触手を力任せに真っ二つに斬り飛ばすが、しかし触手は構わずうねうね動く。気持ち悪いなぁ……
「おりゃ! おりゃおりゃ!」目の前に落ちてきた触手を両手の剣でザクザク斬っていくが、グネグネしていてあんまり切れない上にかけらになってもまだ動く。
「この……!」小さいかけらを踏んづけてみるが靴の下でぐにぐに動いて気持ち悪い。
「何これ! 気持ち悪いしめんどくさい!」
「くっそ……武器じゃあ厳しいぞこれ!」
「なら魔法だ! 志津香……はいないんだったか! シィル!」
「は、はい! えいっ……炎の矢!」シィルさんの魔法が触手に直撃するが、表面で散ってしまいあまり効いた様子がない。
「どいて! いっけーチューリップ!」どーんとマリアさんの砲弾が直撃して触手が千切れ飛んだ。
「お、効いたぞ!」「よし! 畳みかけろ!」
びちびちもだえる触手が剣や斧でザクザクと切り刻まれてようやく動かなくなる。
「ふぃー……ようやっと倒したか……」
「チューリップが効いてよかった……」
「厄介な魔獣だねぇ……でもこれで……」
「なにやってんだ! まだ終わってない! あっちを見ろ!」
武器を収めかけたあたしたちにラークが叫ぶ。そっちを見れば通りに何体かさっきの触手がうねうねして人を襲っていた。
「えー!? あんなにいるの!?」
「本体から触手が分裂してってんだ! どんどん倒さないときりがないぞ!」
「面倒な……本体とやらはどこだ?」
「最初に騒ぎが起きたのは街の真ん中あたりだが……」
「待って、ランス。この触手もほっといたら大きくなって厄介になるんじゃ……?」マリアさんが口を挟む。
「いや、カースAは卵で増えるからな。触手は成長はしないし……それに本体が叩かれると触手を集めて身を守る性質があるんだ」
詳しいな。まるで魔獣博士だ。
「本体とやるときに触手がうねうねいると厄介だな……道中の触手を仕留めつつ本体をぶっ潰しに行くぞ!」
お兄ちゃんの号令で触手と戦いながら町の真ん中を目指す。ひときわ騒ぎがでかい場所が多分そうだろう。とはいえ……
「この! この!」「一匹一匹仕留めるのに時間がかかるな……」「食ッタラ、歯ゴタエアリソウ……」「やめときなさい」
本当にこの魔獣は厄介だ。殴っても効かないし炎も効きにくい。グネグネしてるので斬撃も効果が薄い……チューリップだって弾が無限にあるわけじゃないし……誰かほかの魔法が使えればいいのに……あ。
「うわっまた来た!」「ちっ……面倒な……」
「雷の矢!」杖から飛び出した雷の矢が直撃すると、触手はびくびくと痙攣して動きが鈍った。
「おっ! なんか効いてる!」「今だ!! やっちまえ!」
動きが鈍った触手はズタズタに切り刻まれて倒れた。
「エールちゃん、いつの間にか魔法なんて覚えたの?」マリアさんが尋ねてくる。
「ちょっとね。お兄ちゃんの尻が大変なことになった甲斐があったよ」
「えっ? ランスのお尻に何が!?」
「嫌なことを思い出させるんじゃない! さっさといくぞ!」
あたしが雷の矢でしびれさせた触手をボコボコにする、という作戦で触手討伐の速度はだいぶ上がった。
「おらっ!」「この! この! やっと動かなくなった……」「なんかもう戦闘っていうか駆除だな……」
あちこちで動きの鈍くなった触手をお兄ちゃんたちやデンの住民が切り刻んでいる。
「食らえ! 俺の華麗な舞を!」
お、あっちで戦ってるのはバーニングさん……戦うの見るの初めてじゃないんだけど。
なんていうか、そんなに強くない……というか。戦い方がちぐはぐなんだよなぁ……体格はそれなりなのに武器が短いシミターで接近しての回転斬り……しかもそんなに素早くもない……華麗と自分で言うだけあって動きは無駄になめらかではあるけど。
剣も大してうまいわけじゃなさそうだし、頑丈な鎧着て槍でも持って振りまわしてた方がいいと思う。レベルはそれなりにあるんだしね。
「はぁ! Bスラッシュ!」今もたいそうな掛け声とともに触手に斬りつけ、二筋の浅い傷を与えただけ……
ん? 二筋……? 一回しか切ってなかったよね? あれ?
「エールちゃん! こっちにも触手が……わっ、きゃー!」
「あ、ごめんなさい!」あたしは触手に雷の矢をぶつける作業に戻った。
どうにか触手をあらかた駆逐し、町の中央部にたどり着くと、そこには触手の親玉のような怪物が鎮座していた。
「うげー……気持ち悪い……」「目のほかに口もあるわね……なんか食べてるし……」
あんまり描写していると別の方向でタグが面倒になりそうだ。さっさと片付けよう。
「いくぞ! スーパーランスあたたたーっく!」お兄ちゃんがであいがしらに必殺技をぶちかます。
「シャ……ギャアアアアアアア!」しかし魔獣は一部が少し吹き飛んだだけで、軽く身を震わせいくつもある口で吠えると、こちらに触手を伸ばしてくる。よーし!
「いっけーチューリップ!」「炎の矢!」「雷の矢!」
砲撃や魔法が叩き込まれるが、サイズが違うせいか動きが鈍る様子はない。
「はぁっ……! ダメだわ! 刺さらない!」
「触手以上にグニャグニャで全然効いてる気がしねぇ!」
近接組のみんなも苦戦してるようだ。
「ぬおっ……」「ランス様!」見ればお兄ちゃんに触手が殺到している!
「雷の……」「軟体凍結!」いきなり飛んできた魔法が触手に直撃し、ぴきぴきと凍り付いていく!
「おっ? なんだ?」「ミー!」スーちゃんの投げた斧が直撃すると、凍り付いた触手はあっさり折れて倒れ、バラバラになった。
「わー。すごいアテンちゃーん!」「はぁ……はぁ……うっさい……!」
魔法を飛ばしたのはゼスの観光客さんのようだ。アテンさんという名前なのか。何やら服が乱れているが気にしない。タグとか面倒だからね。
「なんだお前ら?」
「あんたら解放軍でしょ! さっさとこのセクハラ怪物をやっちゃいなさい! 軟体凍結!」
アテンさんが魔法を乱射し、カースAの本体や触手が凍り付く!
「誰だか知らんがよくやった! 総攻撃だ! いくぞ!」
「はぁっ!」「そりゃぁ!」「仕留メル!」「いっけーチューリップ!」「AL魔法剣!」
「シャギャア! シャギャアアアア……」
あたしたちの攻撃がカースAに叩き込まれる。今度は手ごたえがある、効いてる!
「今だ! お前らやっちまえ!」「蝶のように舞う!」「うおおおお! ぶっ殺してやる!」「ケヒャー!」
勝ち目があると見たのか、ラークやバーニングさん、住民たちも魔獣を攻撃し始めた。
バカでかいカースAは体力もそれに見合うだけあり、なかなか動きを止めないが、それでも凍り付いたところを囲んでボコボコにされて少しづつ弱っていく。
「がはははは! いいぞ! トドメはいただきだ!」お兄ちゃんが勢いをつけて走りこむ!
「とうっ! スペシャルランスアタック! 超ランスアタック! ウルトラランスあたたたーっく!」どんどんどかーん!
そして、ようやくついに、カースAはお兄ちゃんの必殺技乱打を食らってバラバラになったのだった。
はぁ……めんどくさかった。
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感想、お気に入り、評価、ここすき 一つ一つが本当にありがたいです。
解放戦争終結までは一気に書きたいと思っていますので、よろしくお願いします。
妄想ネタも募集してますので、感想にいただけたら助かります。