【二章完】ちょっと早めのエールちゃんの冒険   作:砂嵐36

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56.エールちゃんは黒騎士と戦う

「「「「オオオオオオオオオオ!」」」」

 雄叫びを上げ、一塊となって突っ込んでくるヘルマン軍。よく見たら兵士はほとんどいない。騎士ばっかだ! 

「近寄らせるな! 弓放て!」両翼の部隊から弓や砲撃が降り注ぐが、遠くからの矢なんか全然効果がない。

 チューリップや戦車の砲撃が直撃したものは吹き飛ぶが、それ以外は意に介さず駆けてくる! 

「まっすぐこっちに突っ込んでくるわ!」

「いきなり本陣狙いか! 俺様の真似をしおって……ぬおっ!?」お兄ちゃんに先頭の騎士が襲い掛かった! 

「はああ!」「ぬがっ……この……雑魚がー!」「ぎゃああ!」力任せに振り下ろされる剣を負けじと力任せに弾き返し、体勢を崩した騎士を叩き切った。

「ちっ! こいつらそこそこ強いぞ!」

「こいつら本物のヘルマン黒騎士……ブラックナイツだ!」ミリさんも騎士と激しく切り結んでるな。

 ってこっちにも来た! 

 

「うおおおおおおお!」力を込めて振り下ろされるヘルマンソード。

(受け……流せない!)「たー!」とっさに判断して横に飛びのく。振り下ろされた剣が地面に食い込んだ。

 回転して起き上がりざまに、手に魔力を……そのまま集めて、ぶつけるイメージ! 

「雷の矢!」突き出した手から小さめの雷が騎士に直撃した。

「がっ……」一瞬硬直した騎士に、間髪入れずに走りこむ! 

「AL……魔法剣!」駆け抜け、飛び越えざまに身を捻る。振り抜いた両手の剣が防御を突破して、騎士の鎖骨を断ち割った。

「っ……へ、ヘルマンに栄光……あれ……」崩れ落ちる騎士。来る途中に参考書読んでてよかった……

「火爆破! ファイアーレーザー!」「デビルビーム! ダイアンコク! あーもう面倒くさい!」

 流石に魔法は効果があるようで、アテンさんや志津香さんの魔法は次々と騎士たちをなぎ倒していくが……数が多い! 間に合わない! 

「「「「オオオオオオオオオオ!」」」」

 また次の一団がこっちに突っ込んでくる! 

「邪魔な連中め! いくら来ても皆殺しにしてくれるわ!」

 お兄ちゃんが叫んで突っ込む! その剣がオーラを纏って……

「だ──ー! ランスアターック!」力を込めたランスアタックが集団に直撃。先頭の騎士が吹き飛んだ。

「しょ、小隊長殿が!?」「くっ! 強い!」

「いくらでも来い! いくぞ!」

「おー!」隊長を失って混乱する一団にあたしたちは襲い掛かった! 

 

「雷の矢!」「なん……ぐっ!?」「そりゃあ!」「ぎゃっ……」

 よそ見していた騎士に雷の矢をぶつけ、動きが鈍ったところを駆け抜けざまに脇腹を抉った。金属鎧に雷はよく効く。イメージだけど。

「おのれ小娘ェ!」おっと、別の騎士が掛かってきた。

「雷の矢!」「がっ……」これで痺れさせて迎撃を……と思ったが。

「舐めるなアアア!」足を止めずに突っ込んでくる! 抵抗された!? 

「はぁ!」ガキィン! 「んぐっ……!」思い切り振り下ろされた剣をかわす余裕もなく、あたしはまともに交差させた剣で受けるしかなかった。

「おおおおおおおお!」「ん……くっ……あっ……! くぅ……」やばい……重い……圧し切られる……? 

 そう思った瞬間、風を切る音がして騎士の首筋に斧が突き刺さった。

「ご……はっ……?」「く……おりゃー!」力を込めて圧力が緩んだ剣を弾き飛ばし、剣をねじ込んでとどめを刺す。

「えーる、ダイジョブ?」「……ありがとうスーちゃん……」覗き込んでくるスーちゃんに返事した。

 やっぱ油断しちゃいけないな……

 

「うおおおお!」「あわてるな! こっちの方が数は上だ! 3人で同時にかかれ!」

 あたしたち本陣が敵の突撃を持ちこたえたことで、解放軍の各部隊も混乱から回復してヘルマン軍を押し返し始めている。これはどうにかなるかな……

 と、そう思った瞬間。

ドゴォン! 

 最前線で爆発のような音がした。

「なんだ?」「ランス様! あそこです!」

 シィルさんが指さす方を見ると、解放軍の一部隊が丸ごと吹き飛んでいる。いったい何が……? 

「おおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

 土煙の中から、黒い影が飛び出してきた。

 よく見れば人間……だよね? 

 バカでかい体を冗談みたいな分厚い鎧に包み、とんでもない大きさの鉄球が2個付いたハンマーを振り回しながら突撃する黒鉄の騎士! 

「うわあああああ! トーマ・リプトンだあああああああああ!」

「その通り! 儂こそがトーマ! トーマ・リプトン! この皴首、取れるものなら取ってみよ!」

「「「「「おおおおおおお!」」」」「「「わあああー!?」」」

 ヘルマン軍の歓声と解放軍の悲鳴が重なり合う。

 トーマとか言う騎士はハンマーを振り回して吹き飛ばし、拳を振るって頭蓋を砕き、兵士をゴミのように弾き飛ばしながら一直線に戦場を突っ切っていく! 

「あれホントに人間なの……?」

「なんつー爺だ……」

 お兄ちゃんと二人であっけにとられていると、

「あの人……チューリップの方に向かってる!? 守らないと!」

 マリアさんが慌てて駆けていく。

「おいマリア! ちっ聞いちゃいないか……おい! スー! マリアを守れ!」

「リョーカイ……」お兄ちゃんの命令でスーちゃんが前線に向かっていく。

 

「それが戦車とやらかぁ!」トーマが戦車に迫る。

「いっけー!」マリアさんが砲撃した。砲弾がトーマに迫るが……

「甘い!」裏拳で砲弾を叩き落とした!? 

 戦車が動き、主砲が放たれたが……トーマは飛びのいて直撃を避けた。

「その程度かぁ! ……むぅ!」

 キャタピラが唸りを上げ、戦車がトーマを轢き殺しにかかった! 

「ぐ、ぬ……おおおおおおおおおおオオオオオオ!!!!!」

 トーマは全身に力を込めて戦車の突撃を抑え込んだ。マジかよオイ。

 そして、突撃が緩んだ隙に片手で剣を抜いて思い切り戦車をぶん殴った。

「秘剣! 骸斬衝!」ドガァアアン! 

 信じがたいことだが、人間に剣でぶん殴られて戦車がちょっと吹き飛んだ。

「あ……砲身がひん曲がってる……」

「これで砲やらは使えまい……! とどめだ!」

「カスミー! 全力後退! 振り落として!」マリアさんが援護の砲撃を放った。

 それに合わせて戦車が勢いよく後退していき、トーマは戦車から降りた。

「よくもチューリップを……わっ!?」「トットト退ク」

 頭に血が上ったマリアさんを、スーちゃんが抱えてこちらに走ってくる。

「鉄の車を後退させたぞー! さすがはトーマ様!」「ゆくぞ! トーマ将軍に続け!」くじけかけていたヘルマン軍が勢いを取り戻し、再び乱戦になった。

 

「……なんだありゃあ……人間か?」

「人類最強って大層な二つ名は伊達じゃなさそうだな……」

 お兄ちゃんとミリさんがぼやく。

「お兄ちゃんさっきはいくらでも来い! とか言ってたじゃん……」

「それはそれ、これはこれだ……おいフェリス! アレを……」

 呼び出された悪魔フェリスは全身全霊で『無理!』を表現している。無理そうだ。

「仕方ないな……」お兄ちゃんがめんどくさそうな顔でどっこらと剣を担いだ。

「あ、どうするの? 逃げる?」お兄ちゃんに声をかける。

「バカを言うんじゃない。よく見ておけ」「わぷっ」頭を軽く小突かれた。

「おい! シィル!」

「は、はい? なんでしょうランス様……?」

 お兄ちゃんは駆け寄ってきたシィルさんの鼻先に指を突き付ける。

「あのジジイぶっ殺したら、セックスするぞ。そりゃもうすんごいエロエロな奴だ!」我が兄ながらとんでもない時にとんでもないこと言うな……

「えっ……えー?」「いいな!」「は、はい……!」

 お兄ちゃんはシィルさんに言質を取ると、いつもの自信満々な表情でトーマに向かっていく。

 

「ぎゃああああああああ!」兵士が吹っ飛ばされて、トーマとお兄ちゃんが向かい合った。

「……貴様か。貴様が頭だな!」

「ほう、見る目があるな。やはり英雄のオーラは隠せんか」

「ふん、やはりか。他人には従わぬ目をしておる。儂はトーマ! トーマ・リプトン! 皇帝陛下より第三軍を預かる将である!」

「あん? 将? トップがわざわざ殺されに来やがったか」

「貴様がさんざんやってくれたことだろう。幾度も我が軍をかき回してくれたな」

「ふん、馬鹿の群れなんぞ俺様にかかれば何でもないわ」

「見事という他なし! ヘルマンに生まれておればと思わずにはいられん」

「けっ、あんな寒い国こっちから願い下げだ。ま、これでてめぇらも終わりだな」

 お兄ちゃんが剣を構えた。

「終わり……? 妙なことを言う。頭を……貴様を潰せば終わるのはお前たちだ」

 トーマが鉄球ハンマーを構える。

 

「抜かせジジィが! このランス様の邪魔をする奴は、どこの誰だろうがぶち殺す!」

 

「我が名とヘルマンの誇りにかけて! トーマ・リプトンが相手してやる! こわっぱ、かかって来い!」




いや~やっぱ人間相手の方が描写はしやすいですわ
トーマ戦は明日になります
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