【二章完】ちょっと早めのエールちゃんの冒険   作:砂嵐36

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64.エールちゃんは対象外

 折れた剣がしゃべった。

「俺……私……俺様……? 儂……? うむ。儂だな」

 久しぶりにしゃべるせいか、剣が一人称について悩んでいる。

 気持ちはわかる。あたしもたまにボクとか言いそうになることがあるし……

 いや、そんなことはどうでもいいな……

「け、剣がしゃべった!?」

「そりゃしゃべるともさ。儂、魔剣だし。すごいのよ?」

「しかもなんかバカっぽいぞ……」

「なーにを言っとる。ジルはともかくノスに手も足も出なかったへっぽこが」

「なんだと! 貴様こそノスにあっさり折られたポンコツだろうが!」

「儂様ほら、長ーく封印されて起き抜けだったから。目が覚めてから本気出すつもりだったの」

 折れた剣と口喧嘩をしてる人は初めて見た。

「……しかし、人格があろうと折れてしまっていては……」マリスさんがもっともなことを言う。

「ノンノン! このくらいエクスタシーパワーがあればビンビン丸よ!」

「はぁ……? エク……」

「ゥエクスタスィー。パゥワー。要するにエロいことさせろってことね」

「はぁー!? 剣のくせに何を言っとるか!」

「無機物差別反対ー。女、女をくれ。そしたら復活する」

 なんちゅーセクハラ剣だ。

「貰ってどうするのだ。お前剣だろ。何もできんじゃないか」

「ぐふふふ、心配ご無用。儂の心のちんちんはすごいのよ」

 なんか柄の当たりから白っぽい……オーラ? みたいなのが伸びてうにょうにょと空中をまさぐる。うっわぁ……絶対持ちたくない。

「これが……カオス? なんか……」

「うん、お兄ちゃんに似てるね……」

「はい……」

「おいそこ、何をごちゃごちゃ言っとる」

 お兄ちゃんににらまれてあたしたちはさっと目をそらす。

「言っとくが他に方法はないぞー。儂もジルはぶっ殺したくてたまらんのだ。さ、お互いのためにも女プリーズ」

「ちっ、仕方ないか。かなみ、ゴー」

「な、なんで私が!」

「ん~。なかなかいいんだが、儂JAPAN系はダメなのよ」

「なんだとこの剣……ワガママ言うんじゃない」

「仕組み仕組み。そういうふうにできてんのよ。JAPAN系の冷たい女にトラウマがあって……」

 意外と繊細な剣だなぁ……

「むぅ……それならわからんでもない……となるとマリスもダメか……」

 わかるんか。そして冷たい女呼ばわりされたマリスさんがちょっと眉を動かした。

「はっ! まさか! リアの体を? いやー! この体はダーリンのものなの!」

「いや、淫乱はパス」「むかー!」

「フェリスは?」「悪魔は珍しいが……ちょっと違うな……」

「めんどくさい剣だな! 何が好みなんだ!」

「そうねぇ……できれば処女かのう……」

「この中で処女というと……」

 全員の視線がこっち向いた。うわーっ勘弁してほしい! 

「えっ……えー!?」「ほーん……ふむ。確かに処女っぽいが……」

「確かにあたし確かにまだだけど! 初体験がオヤジ臭い剣なんてやだ──ー!」

 世紀の美少女神官戦士であることがこんなときに仇になるなんて! 

「ふーん、あの子まだ処女なのね……」リア様はなんかこっちみてるし! 

「悪いけど、儂清楚系がいい。ピーピーうるさいガキはちょっと……」

「ふんっ!」げしげし「痛っ! こら! 儂えらい魔剣よ!? 踏まんといて!」

「エールちゃん……どうどう……」シィルさんになだめられる。

「お、その娘ならいいぞ」

 カオスがシィルさんに視線を向けていた。

「え、ええっ!? 私ですか?」

「おお、そうそう。やらせてくれたら儂一発で……」

「却下だバカ者! それは俺のだ」

「えー……それなら儂、復活せんよ? 世界のために一回くらい……」

「ダーリンダーリン。一回くらいいいじゃない……ね?」

「駄目だ。世界が滅んだとしても駄目だ」

 ……お兄ちゃん以外の全員が一瞬息を吞んだ。

 お兄ちゃんそんなこと言うんだ……あたしまでドキッとしたよ……

 シィルさん、顔を赤くして目がちょっとうるっとしてる……

 いいなぁ……ちょっとうらやましい。言われてみたいよね。

 リア様の方は怖いから見ないでおく。

「あ、ち、違うぞ。俺様なら折れてても魔王の一人二人楽勝だということだ。おい馬鹿剣、折れたまま手を貸せ」

「儂、手ないんですけど……」

「……では、条件に合うものを外で探してみましょう」

「うむ、ジルも相当弱っとったし。回復にはだいぶかかる。時間はあるだろ」

「アレで相当弱ってたの……?」

「そんなことはどうでもいい。こいつ好みの女を探しに行くぞ」

「わっほーい! 感謝するぞい」

 こんな事態なのに変なミッションが始まったなぁ……

 

 地下から出ると、城内での戦いはまだ続いていたが一階は解放軍が制圧したようだった。

 駆けてきたのは……リックさんか。

「リア様! ランス殿! ご無事で!」「あら、リック。ご苦労様」

「戦況はどうなっていますか?」

「あ、マ、マリス殿……そちらもご無事で、何よりです……」「はい、おかげさまで」

 なーんかリックさん態度が変だなぁ……マリスさんをじっと見て動かないし……ほーん? 

「それで、リック。どうしたの?」リア様が問うと、リックさんは慌てて状況を説明し始めた。

 

 解放軍はリーザスの城下町を制圧、城門を突破して、一階も大半を制圧した。

 しかしまだ中庭では戦闘は続いているし、西の塔と東の塔にこもった連中はまだ掃討できてないとか。

 魔人や魔王との遭遇報告はないそうだ。二階とか三階にいるのかな……

「ふーむ、どうするか……ん?」「あっ! ランスいた! 大変だよー!」

 思案をし始めた矢先にミルちゃんが走り込んできた。あとからはメナドも追いかけてきている。

「いきなりどうしたんだ」「あのね! お姉ちゃんとセルさんが……」

 なんでも、ヘルマン軍が東の塔に逃げ込んだのをセルさんとミリさんの部隊が追っていったのだが、さらにそのあと別のヘルマンの部隊が西の塔に逃げ込んでいったのだという。

「やばいじゃんそれ! 挟み撃ちになっちゃうよ!」

「だから、助けに行きたいんだけど人がいなくて……」メナドが心配そうに言う。

「ふむ、よし! 俺様が行こう。ミリに貸しを作って……おっと」

 何考えてるかは丸わかりだけどまぁいいや。ミリさんだし。

「それなら私もお礼するよ! しまいどんだよ!」

「アホ、子供は飴ちゃんなめてろ……お、そうだ。馬鹿剣。ミルはどうだ?」

「どうだって……そのちっちゃいのか? アホー! ガキは食えんって言ったろう!」

「一応だ一応……やかましい剣だな」

 言い争う二人……いや、一人と一本を見てメナドは目を丸くする。

「その剣……しゃべるの?」「見ての通り折れてて役立たずだがな」「へぇ……」

「うーむ……惜しい……かなりいい感じだが……清楚というより活発……それに処女じゃないじゃろ」

「えっ!? な、なにを……」顔を赤くするメナド。

「分かるのか、変に嗅覚の発達した奴だ」

「お前さんがやったのか? なかなかやるのう」

 なんかだんだん仲良くなっていくな……

「ええい、結局どういうやつがいいんだ! はっきり言え! 処女なら何でもいいってわけじゃなかろう」

「うーむ。清楚系の美人で……できれば神官がいいのう」

「神官?」視線がまたあたしに集まる。ええー……

「お嬢ちゃん神官なのか……うーんうーんそれなら着替えればなんとか……」

「おっ行けるか?」

「でも胸無いし……ギザ歯はなー……やっぱなし……」

「ふんがー!」びたーん「ぐえ!」

 あたしはカオスを手に取って思い切り床に叩きつけた。

 あ、つい触っちゃった。まぁいいか……なんともないし。

「あ、じゃあセルさんはどうでしょう?」

「おお、セルさんなら条件にピッタリだな! よーし! 東の塔に行くぞ!」

 まぁ、確かにその条件ならあたしよりセルさんだよね……

 ミルちゃんはこっちについてくることになり、メナドとリックさんは中庭の制圧に向かうことになった。

 

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