「うおおおおおおおおおおお! 死ね侵略者が!」
「うるせぇ! お前が死ね軟弱なリーザス野郎!」
どかーんばきーんわーわー!
西の塔は大して広くもないのに入り組んでいて、あちこちでリーザス兵とヘルマン兵が押し合いへし合いしている乱戦状態だ。
そんなところにもお兄ちゃんは当然構わず突っ込んでいく。
「雑魚共が俺様の邪魔をするんじゃねー!」「ぐわっ!」「なんだこいつ!」「ぎゃー!」
ヘルマン兵たちを蹴散らしていくお兄ちゃん。
「ぬおおおお!」おっと、あたしにも何人かが掛かってきた。
「よっ、はっ!」突いてきた槍を身を捻って躱し、返す刀で肩をばっさり。次の兵士の槍を上に弾いて潜り込み、脇腹を抉った。
「おのれぇ!」おっと、騎士もいたか。
「雷の矢! AL魔法剣!」「ぎゃあっ!」初見殺しコンボでさっさと片付けると、残ったヘルマン兵はとっとと逃げてしまった。
「む、解放軍か……!? 助太刀感謝……」「やかましい! 邪魔だ!」「いてっ……なんだこいつ!」
青い鎧の兵士の尻を蹴っ飛ばしてどかしずんずん先に進む。
しかしヘルマン兵のほかにちらほらモンスターも見えるな……ヘルマン軍が連れてきたのかな? 魔人のお供だったのかもしれない。
「1階には二人ともいないみたい!」
「よし! 2階に行くぞ!」
かなみさんの報告で、お兄ちゃん達はさっさと階段を上り始めた。あたしもさっさと行かないと……
そう思った瞬間、目の前にしゅぱっと誰かが立ちふさがった。
「ここは通さない!」変身モンスターのライカンスロープだ。
こいつはなんかコスプレだかなんだかよくわからないがとにかく変身して、変身した姿によっては結構強かったりするので面倒なのだ。
「あーもう邪魔!」両手の剣を振るってボコろうとするが、ぱっと後ろに下がって躱された。
「ふふふ、私をその辺の同族と一緒にしないほうがいい……変身!」
ぴかっと光って姿を変えるライカンスロープ。光が収まった先に居たのは……
「は!? あたし!?」
両手に剣を持ち、レディチャレンジャーを着こんで美少女フェイスに不敵な笑みを浮かべる女の子。つまり、あたしだった。
「私……いやあたしはライカンスロープZ! 目の前の人間そっくりに化けることができる! お前を倒してからあいつらに何食わぬ顔で合流し……隙を見てぐさーっとやってやる!」
確かにこれまでのコスプレとは格が違う変身だ……!
「させるかこのー!」あたしは二刀流でライカンスロープ……いや、ワーエールに斬りかかる!
袈裟斬りから突き、戻して切り上げ、両手での斬り下ろし。しかし弾かれ躱され、反撃で繰り出される剣を必死で防ぐ。
負けじと切りつけるがあたしの連撃をワーエールは涼しい顔でさばいていく!
ていうかこれ……まさか……
「……AL! 魔法剣!」「なんの! AL魔法剣!」ガガキィン!
あたしの放った必殺剣は、ワーエールの放った同じ技と衝突して防がれた。
「姿だけじゃなくてあたしの剣までコピーしてんの!?」
「さっきよーく見せてもらったからね……雷の矢の不意打ちも効かないよ!」
っこの、面倒な……早く追いかけないといけないのに!
……つまり、ここでやるしかないか。あたしは剣を構えた。
「ん? AL魔法剣? 同じ技で返すだけだよ!」
……あの日のあの人の足さばきを思い出す。練習はした。成功率は低いけど……やる!
ワーエールに駆け寄りながらヒーリング9で両腕と、両足も強化する。
いつも通りに剣を振りかぶり……魂を燃やして足を踏み切る!
「AL……スラッシュ!」「AL魔法……」ガガキキィン! 「がっ……あうう……」
超高速の2回転からの4連撃が、相手の剣を弾き飛ばして傷を負わせた。こっちも手足がめっちゃ痛むしくらくらするけど……成功した!
「あー痛い……ったく、手こずらせてくれて……」ヒーリングかけつつ間合いを詰める。
早くとどめを刺さないと……剣を振りかぶったその時。
「おいエール! 何をやっとるか! とっとと……ん?」
階段を下りてきたお兄ちゃんがこっちを見ていた。
「えっ……エールちゃんが二人!?」「え……どっちが……」かなみさんとシィルさんが戸惑いの声を上げる。
「お兄ちゃん! 助けてぇ! こいつライカンスロープなの!」ワーエールの方が涙で目を潤ませてお兄ちゃんに助けを求めた! あっこいつかわいいな! さすがあたし……とか言ってる場合じゃない!
「ち、違うよ! あたしが本物……!」
「うむ! 任せておけ!」笑いながらお兄ちゃんは剣を抜いて……こっちに突っ込んでくる! マジか!
「ちょ!? お兄ちゃん!?」「食らえ! ラーンス……」お兄ちゃんはオーラを纏わせた剣を振り上げ……放り捨てた。
「えっ?」
「三角飛び!」お兄ちゃんは壁を蹴って急旋回、ワーエールに覆いかぶさった。
「キャー! なんで……」「がははははは! 俺様がそんなもんに騙されるか!」
そのまま廊下の隅でおっぱじめるお兄ちゃん。
「がはははは! やはりツラだけならそこそこだな! ほーれほれ!」「いーや──ー!」
外見あたしでもお構いなしか……ちょっとドキドキするな。
そっちの方を見ないようにしつつ自分でヒーリングをかける。
描写すると面倒だからね。タグとか。
「えっと……あなたが本物でいいのよね?」かなみさんがおっかなびっくり尋ねてくる。
「一応……なんなら証明します? かなみさん、悪魔回廊でリターンデーモンに……」
「あーいい! いいわ! 思い出したくないから……」
そうこうしているうちにお兄ちゃんが戻ってきた。
「がはははは、偽妹を成敗してやったわ」普段できないことをやってすっきりした、という風情だ。まぁいいけどね……
「それにしても、よくわかったわねランス……私どっちが本物かわかんなかったわ」
「ふん、それくらい見れば分かるわ」
「お兄ちゃん……」ちょっと感動してしまう。
「本物はあんなに可愛くないからな……(げしっ)いてっ! 尻を蹴るな! 尻を!」
あたしはそっぽを向いたのだった。
二階、三階と上がっていくと、段々ヘルマン兵の密度が増えてきた。セルさんとミリさん、無事だといいけど……
「きゃっ! 嫌! やめてください!」「手こずらせてくれやがって!」「神官が戦争に肩入れなんかすんじゃねえよ!」
曲がり角の向こうから声がする。セルさんだ!
「セルさんだ! お兄ちゃ……」「俺様の女に何してやがるカス共がー!」「「「ぎゃあああああ!!!」」」
あたしがなにか言う前に怒りのお兄ちゃんが突っ込んで全員叩き斬った。
「無事か? セルさん。無事だな」
「あ、ありがとうございます……しかしむやみな殺生は……」
セルさん、この期に及んでもこれか。
「ミリはどうした?」
「は、はい、私を逃がすためにヘルマン兵を引き付けて四階に……」
「む、それはいかん。急ぐぞ」
「おお、その子が儂にくれるっていう神官ちゃんか?」
カオスがなんか言い出した。
「ひゃっ……? 剣がしゃべった……?」
「おお、清楚そうでおとなしくて処女……儂の好みにかなりストライクよ」
「あ、あのランスさん……これはいったい……」
「あとで話す。今はミリが先だ」「は、はい……」
セルさんも気の毒に……けどまあ人類の危機だしね。多少は仕方ないか……
四階に上がると部屋の隅で囲まれているミルさんがいた。
「ぜぇ……ぜぇ……ったく、しつこいったら……」
「この女! エロい格好しやがって! いい加減諦めろ!」
「そうそう、優しくしてやっからよお!」
「俺もストライクゾーンは広いつもりだけど……あんたらはお断りだ!」
カキンキンキィン! 数人を相手にしてなんとか渡り合うミルさん。
そこにあたしたちが突っ込んでいく。
「がはははは! 俺様参上!」「ランス!?」
「うわっ……くそ、新手か……」「幻獣アターック!」ミルちゃんの後ろからなんかよくわからない透明な物体がヘルマン兵に襲いかかり絡み付いた。
「うわっなんだこれ……ぎゃっ!」
「ミル! こんなところで何やってんだ!」ミリさんがヘルマン兵を斬りながら叫ぶ。
「ミリねーちゃんを助けに来たんだよ!」
「そういうことだ! とっとと死ね!」
ヘルマン兵たちはあっという間に制圧された。
部屋の隅でなんか変な鉄人形みたいなのをいじくっていた兵士がいたけど、起動させる前にお兄ちゃんにずばーっとやられていた。
「なんだこりゃ? ガーディアンか?」
「それ、ゼスから買ったNATOっていうすごい強いガーディアンよ。高かったの」
「ふーん、めんどくさそうだ。起動しないでよかったな」
「ふぃー……助かったぜ、ランス」ミリさんはまだまだ元気そうだ。
あたしの頭突きで死にかけてたのはなんだったんだろうか?
「おう、貸し一つだな」
「どうせセックスだろ? 今からやるか……おっと」
ミリさんにミルちゃんが抱きついていた。
「ミリねーちゃん! 無事でよかった……」
「何かってに前線に来てるんだ。危ないだろ」
「うっ……えーと……」「でも、助かったぜ。ありがとな」
ミリさんの手がミルちゃんの頭を撫でる。
うん、よかったよかった。
「ふん、これでここでの用は済んだな……」
「そう! そして儂様のターン! ぐひょひょ!」
そしてカオスがわめきだしたのだった。
エールちゃんのスキルが成長しました。
☆5 ALスラッシュ
魔法で肉体を強化して無理やり繰り出す
常人には2連撃にしか見えない4連撃
ある燃える男の奥義を参考にした