【二章完】ちょっと早めのエールちゃんの冒険   作:砂嵐36

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66.エールちゃんは一服する

 カオス復活の儀式(要するにスケベ行為)について説明されたセルさんは当然断ったが、お兄ちゃんとカオスの二人がかりで説得されては……というか口車に乗せられるというか……ともかく抗えるはずもない。

 突っ込むこともできたけど、カオスが復活しないと人類があぶない。ごめんねセルさん! 

 城の中は騒がしいので、制圧が済んだ城下町でやろう、ということでリーザスの城下町に戻ってきた。

 すでに日は上っていて、美しい町並みもよくみえる。

 多少荒れてはいるが被害は大したこと無さそうだ。

「おお、そうだ。奈美さんはどうしているかな」

「奈美さん?」

「はい、以前の事件でリーザスに逗留したときにお世話になった宿屋の方です。たしか……『氷砂糖』って宿でしたよね」

「うむ、たまには大和撫子もいいものだからな」

 ふーん……ミリーさんのほかにも知り合いが居たんだね。

 お兄ちゃん、どこに行っても女の子を引き連れてるんだろうなあ……

 ニコニコしてついてきてるけど目は笑ってないリア様のことは気にしないでおく。

 

 そのあたりの通りは人通りこそ少なかったが暴行や略奪の被害を受けた様子もなくきれいなもので、『氷砂糖』と看板を出している宿屋の前でホウキをもったきれいな女の人が掃除をしていた。

「おう! 奈美さん。無事だったか」

「あら? ランスさん? お久しぶりですね……お仲間も大勢……お泊まりですか?」

「うむ、少し部屋を貸してくれ」

「わかりました。ではこちらに……」

 うーん、つつましやかな和服美人だ……一つ一つの所作が洗練されている。もしかしたらなにか武道でもやっているのかもしれないな。

 カオスとセルさんを一つの部屋に押し込んで、あたしたちはお兄ちゃんが使っていた部屋に通された。お茶菓子は全部お兄ちゃんが食べてしまったのでお茶だけいただく。

「シィルさんは以前もご利用いただきましたが……他の方は初めてですね。堀川奈美と申します。皆さんはランスさんのお仲間ですか?」

「ああ、俺はミリで、こっちは妹のミル」

「私は……」

 順番に自己紹介していく。

 リア様とマリスさんのときは流石の奈美さんも目を丸くしていた。

「で、最後に。あたしエールっていいます。ランスの妹です」

「まぁまぁ……ランスさんにこんなにかわいらしい妹さんが……」

「ふん、やかましいばかりで抱けもしない女なぞ面倒なだけだ」

 

 あたしたちは数ヵ月前のお兄ちゃんの冒険の話を聞きながらお茶を飲んで一服した。

 なんか奈美さんはお兄ちゃんの剣をカタに宿代をツケにしているらしい。大層な額がたまっているそうだ。

 けど今は金があるから、と払おうとしても受け取らない。

 ふーん。へーえ。ほーう……

 などと話していると、戸が開いてセルさんが顔を見せた。

「……あの……終わりました……」セルさん顔が真っ赤だしもじもじしてる……うわー色っぽい……正直、あたしじゃ駄目って気持ちもわかるなこれ……

「うほほはほーい! 儂、復活!」

 セルさんが抱えているカオスは見事に治っている。すごいんだけど工程を知っていると最低のセクハラにしか見えない。

「よし、セルさんが動けるようになったら戻るぞ」

「うむ、心の友。早く魔人を斬りにいこう」

 あたしたちは頷いたのだった。

 

 氷砂糖を出てから城に向かう途中で、お兄ちゃんが飯でも食っておこうとふらんだーすという酒場に入ると、パルプテンクスというまたしてもお兄ちゃんの知り合いの女の人がいた。

 パルプテンクスさんはお兄ちゃんを見ると泣きながら抱きつき、ヘルマン兵に乱暴された経験を赤裸々に語った。詳細に書くとタグが面倒になるほどだ。

 けど、話のなかでめちゃくちゃにされたはずの店内は荒らされた様子はないし、酒瓶も手付かずだし、何より本人が元気だし……もしかしなくても妄想の産物じゃないかなあ……

 ともかく落ち着いた後料理をたくさんだしてくれたので話しながら食べたけど……

 自己紹介したらやたらあたしに「お姉ちゃんと呼んでいいのよ」とやたらすり寄ってくる。正直怖い。

 それにリア様の方は怖くてみれないし、お兄ちゃんの好物について笑顔で語るパルプテンクスさんを見るシィルさんの笑顔が微妙に固いしで……腹ごしらえは出来たけど正直味がしなかった。

 美味しいんだろうけどね……もったいない……

 

「ふーんふーん、ぶっ殺し~♪ ぶっ殺し~♪ (高く)ぶっ殺し~♪ ぶっ殺し~♪ (低く))」

 城に向かう途中、剣が自分でコーラス入れながらだみ声で歌い始めた。

「突いて~斬って~滅多切り~♪ ああ殺しが剣人生~♪」

「やかましいわ! この馬鹿剣が!」

 あ、お兄ちゃんがキレた。まぁずっとだもんな。

「いやぁ、パワー充填1000%なのは千年ぶりでのう! もう魔人だろうが魔王だろうがざっくざくよ! さぁ斬らせろ殺させろー!」

 物騒なことを言うなぁ……

「あの顔だけ野郎とジジイはともかく……赤毛の魔人ちゃんと魔王は殺さんぞ。何しろ美人だからな」

「「「はぁ……?」」」

 カオスも含めて周りのみんなが何言ってんだこいつという顔をした。

「悪いことはしてるみたいだからお仕置き! そしてセックスだ。どんな美女も俺様の手からは逃れられんのだ!」

「お兄ちゃん……アレは流石に無茶だよ……人間サイズの怪獣みたいなもんだったじゃん……」

「ムリかどうかではない、ヤルのだ」

 うわぁ……この人本気だ……ものすごいアホだ……魔王に対して少しもビビってないのはすごいけど……

「おいおいおいおい……心の友よ。そいつは甘い……というか、アホだぞ……? あ、もしかしてジルの話ってもしかして伝わってないのか……?」

 いつの間にか心の友呼ばわりするようになったカオスが割と真剣な声を出す。

「ジル……ですか」マリスさんが切り出した。

「この国が建国される500年以上前の話ですので……薄れてはいます。ただ、『史上最悪』の魔王であるとは伝わっています」

「史上最悪……」かなみさんが顔を青くする。

「千年の治世の間暴虐の限りを尽くしたのち、行方をくらまし……ガイが次の魔王となった、と……」

「あ~ガイの奴が次の魔王に……ガイが儂をジルにぶっ刺して禁呪で封印したのよ。魔人だったんだけどね。なんかいろいろあって命令権を無視できたの。あいつ」

「ふん、歴史のお勉強などに興味はないわ」お兄ちゃんがハナクソをほじる。

「あのな……ジルってのは本当にとんでもなくヤバいんだって……地獄だったぞ? あいつの治世は……」

 お気楽だったカオスの口調に影が差した。

「夜が来るたびに身がすくみ、朝が来るたびに生きてることに感謝する……そんな生活がしたいのか? それとも人間牧場にでも行くか?」

「に、人間牧場……?」知らん言葉だけどなんか嫌な感じだな……

「あー。なんでかは知らんけどジルがあんま人間を減らさんようにって各地に設置してたんだよ……詳しいことは説明せんよ。さっき食った料理を道端にぶちまけたくないだろ?」

「うぇ……」

 本当にろくでもないところというのはよくわかった。

「ふん、魔物どもが押しかけてくるなら俺様が皆殺しにするまでだ」

「ほう、数十万の魔物と24の魔人、そして魔王。一人で何とかするのか。タダでは死ねんぞ? ジルは人を殺さずに痛めつけることを千年追及していた。ありとあらゆる手段でいたぶられ、殺してくれと懇願するようになる」

「……ぐ……」

「誰も勝てない。魔王は、魔人は、魔軍は強すぎる。勝てるとしたら、奴が弱ってる今だけだ、そして儂と心の友だけだ……な? だから妙な考えは捨てて、バッサリいこ? な? ほかに美女はいくらでも……」

「だーっ! やかましいわ!」

 必死に説得するカオスをお兄ちゃんは地面に叩きつけた。

「ぐえ~……暴力反対……」さっき歌ってたのはなんだったのかな……

「あのノスとか言うジジイは殺す。あの顔だけ野郎もだ。魔王ちゃんに関しては……その時になってから考える。まずはお仕置きだ」

 う~ん……まぁ、とりあえず話は倒してから……ということで。うん。

 

 城に戻るとまーだ飽きずにドンパチやっていた。元気だなあ……

「うーむ、中庭はまだまだ派手にやっとるなあ……めんどくさそうだ。先に西の塔にしよう」

 というわけで西の塔に向かうと、やっぱりこっちでもドンパチやっていたが……

「うおおおおおおおおおおお! なんだお前たち!」

「があああああああああ! 殺す! 殺す殺す殺すうう!」

 リーザス兵同士が同士討ちしていた。狂乱している方の兵士の目の光には見覚えがある。

「あーアレ……」「洗脳されてるわね……」

「ということはあのまるだし使徒ちゃんたちがいるな! よーし! まずはその娘たちからお仕置きセックスだ! がははははー!」

 お兄ちゃんは笑いながら突っ込んでいったのだった。

 




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めっちゃうれしいです!!ありがとうございます!

いつもの妄想です。

堀川(武田)奈美
LV8/43

剣戦闘1
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