【二章完】ちょっと早めのエールちゃんの冒険   作:砂嵐36

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話が煮詰まってきてオリジナル展開を入れる隙間がなくなってきた…


67.エールちゃんは忘れていた

「がはははははは!どけどけ雑魚共ー!」「ちょっ…ランス…早い!」「待ってよー!」

伝説の魔剣というだけあって、魔人相手でなくても切れ味は相当なもののようで、

カオスを手にしたお兄ちゃんはまさに鬼に金棒、押し寄せるモンスターやヘルマン兵、洗脳リーザス兵を近寄るはしからズバズバのボッコボコにして突き進んでいく。

「きゃー!ダーリンやっちゃえー!」洗脳リーザス兵の集団をランスアタックでぶっ飛ばしたお兄ちゃんにリア様が歓声を上げる。自分とこの兵士だけどいいんか…いやまぁいいけどね…

「リア様!あまり前に出られると…」かなみさんが止めにかかる。

「なによ!ダーリンの活躍がよく見えないじゃないの…ってきゃあ!」

「うおおおお!」お兄ちゃんに吹っ飛ばされた赤兵が突然起き上がり、リア様に向かって剣を振り上げた!

割り込み…間に合わない!と思った瞬間、光が突き抜けた。

糸が切れた人形のように倒れ伏す兵士。

「…今度は、間に合ったみたいだね。」金色の鎧の女剣士がにこりと笑って剣を血振るいした。

はえー…前に見たレイラさんの太刀筋、あれをもっと極端にしたような…うーん…?

「あ、サウスで貼り付けにされてた…」

「おや、あの時は恥ずかしいところを見せたようだね。私はユラン・ミラージュ。お見知りおきを」ぱちりとウィンクする。はぁーファンサ慣れしてる…

「へぇー…あなたがコロシアムのチャンピオンっていう…?」

「これは王女殿下。まさか私の名などご存じで…恐悦至極に存じます」

頭を下げる動作も優雅だ。

「気取ったところも相変わらずか」「何分性分でね…」「ユラン!」

お兄ちゃんとユランさんが話していると、レイラさんが追いついてきた。

「レイラ。そっちは片付いたかい?」

「まぁね…調子はどう?」「コロシアム向けの一撃必殺の剣だからね…実践だと…ま、うまくやるさ」

レイラさんと話すユランさんを見ていて、なんとなく違和感の正体が分かった。

ユランさんの剣は文字通り目にもとまらぬ速さなのだが、それでも目で追えたのだ。

レイラさんの視界から霞んで消える剣とは似ているが対照的だ。

こうして話していても、ユランさんの動作は一つ一つがいちいち大げさでまるで役者みたい。

おそらく、だけど。剣を振るときもその大げさな動作がフェイントになっているのかも…?少なくともあたしが正面から食らったら見切れそうにはない。

世の中にはいろんな剣があるもんだなぁ…

「なんだ、二人は知り合いだったのか…」

「まぁね。昔からの馴染みなの。ところで、ここに来るまでにリック君に会わなかった?」

「リック?赤いのも来とるのか」

「うわー…あの人また洗脳されてたらどうしよう…」

「そうなのよ…この人たちも私たちと一緒に突入した兵士なのだけど…」

「ふん、洗脳されるのが悪い。赤いのが洗脳されてたら同じようにボコボコにしてくれるわ。行くぞ!」

あたしたちはレイラさんとユランさんを加え、塔の上部へと進んでいった。

 

3階についてすぐ、通路の先で見慣れた赤い閃光が走った。

「ラァッ!」

どちらも洗脳されているヘルマン兵とリーザス兵が同時に槍を突き込んでくるのを一刀でまとめてはじき返し、切り返しの刃がヘルマン兵の喉とリーザス兵の肩をまとめて裂く。意味が分からないけど別の個所を同時に弾いて同時に斬っているとしか言いようがない。

膝をついたリーザス兵のヘルメットを打ち抜いて気絶させ、次の敵へ。

はえー…相手によってきっちり手加減もしつつ…だいぶ長く戦ってるだろうに…

というか結構長く描写したが、実際はほぼ一瞬の出来事だ。常人には赤い光がちかちかしたら血を吹いて二人が倒れたとしか見えないだろう。

あ、そばにメナドもいる。槍はどっかにほっぽったみたいで、剣を振り回しているけど結構堂に入った戦い方だ。素早い動きで懐に入り、鋭い一振りで兵士を打倒している。

おや、二人が何事かぼそぼそと会話している。メナドが少し顔を赤くして…あー。

「こらーっ!」案の定お兄ちゃんがリックさんに向けて切りかかった。

「…っ…なっ!ランス殿!?」迎撃しようとしたリックさんが慌てて距離をとるが、お兄ちゃんはわけわからん速度の踏み込みで間合いを詰めて剣を打ち込む。

「貴様洗脳されとるな!そうだろう!」「い、いえ…そのようなことは…」鍔競り合いしながら言葉を交わす二人。

「いーやされとるに違いない!俺様の女にコナかけようとするなど…」

「へ!?ランス!?俺様の女って…えー?」メナドはあっという間にデレデレふにゃふにゃになる。

「もー!そんなんじゃないってばー!」(ぐいぐい

「ランス殿。私は正気です。誓って妙な真似は致しません」

「ちっ、次はないぞ」

メナドがお兄ちゃんのベルトを引っ張り、リックさんが弁解してようやくお兄ちゃんも剣を収めた。

「メナド、無事だったんだ」

「あ、エールも!…カオスは無事に復活したみたいだね…折れてたのに。やっぱり伝説の剣はすごいね…」

「うん、あたしもいきさつを見てなかったら感心してたと思う…」

印象はすっかりセクハラブレードだ。

「おい!お前ら!いつまでごちゃごちゃ話してる!とっとと行くぞ!」

お兄ちゃんがあたしとメナド、リックさんとリア様に声をかけ、あたしたちは急いでお兄ちゃんの後を追った。

 

4階に向かう階段を上ろうとすると、上から何かがごろごろと転がってきた。

「うわっ!何これ…ってチーズじゃん!」

樽みたいな大きさのチーズ!しかも結構高い奴だこれ!もったいない!

「がはははは!こんなもんこうだ!」お兄ちゃんはジャンプして転がってくるチーズに飛び乗ると、ぽいーんぽいーんとチーズを飛び移りながら上に向かっていく。

実にヒアウィゴーでマンマミーアなアクションだ。正直人間とは思えない。

「チーズならば斬れます。後に続いてください」

リックさんがチーズを細切れにしながら進んでいく。こっちもこっちでとんでもない芸当だが、ともかく後に続いて階段を上っていく。

「こらーっ!お前かチーズ転がし祭りをやっとるのは!」

上につくと、お兄ちゃんと黄色の丸出し使徒がいた。

「ああっ!ホッホ峡の黄色丸出し使徒!」

「そういうアンタは…フランチェスカだったっけ?」

「えっ…あ…あー!」そういやとっさにそんな名前を名乗ってたっけ。すっかり忘れてた…

「その様子だと偽名?やっぱりね。そんなことだと思ってた…けど今はそれより大事なことがあるの」黄色の丸出し…トパーズはお兄ちゃんに視線を向けた。

「魔剣カオス…そしてその持ち主。うふふふふ、見つけちゃった。アイゼル様に褒められるーららるるー。」

ローテンションのまま浮かれてくるくる回るトパーズ。やっぱちょっと不気味だな。

「ふん、また俺様の前に立ちはだかるということは、お仕置き希望だな?」お兄ちゃんが剣を向ける。

「あら、怖い怖い。というわけで皆さんゴー…!」

「うおおおおおおおおおお!」

「がああああああああああ!」

うわっまーた洗脳兵の集団が突っ込んできた。が。

「邪魔だランスアタック!」「バイ・ラ・ウェイ!」ずばばばどっかーんとあっという間に蹴散らされた。そりゃそうだよね…

「雑魚は片付けた!覚悟しろ丸出しつるぺた!」お兄ちゃんがトパーズに突っ込んでいく。

「えー?でもこういう健気なボディも悪くないでしょー?」

「いやいや、そんな程度ではメインディッシュには…」しなを作るトパーズにお兄ちゃんが急ブレーキをかけた。あっ。

「えいっ」「え…あ…」お兄ちゃんの鼻先に突き付けられたトパーズの指が光る。

「が…う…あ…」「あはははは!4秒フラット!新記録!」お兄ちゃんの手からだらんと力が抜けた…マズい!

「お兄ちゃん!」「あいつ、一瞬で洗脳されたぞ」「行かせるか…」あたしたちは武器を構えたが

「それじゃあねアンタたち!ランス!私をここから連れ去って!」「うがー!」

お兄ちゃんはカオスを持ったままトパーズを抱えると、ものすごい勢いで走り去ってしまった。あーあー…

「うわー…足早い…」

「早く!早く追いかけて助けるのよ!あ、もちろんダーリンに傷でもつけたら許さないから!」リア様がヒステリックに叫ぶ。

「うー…でも暴れられたら力づく以外でどうすれば…」

「そこはもちろんリアが愛情をこめてキスすれば…」「そ…そうですか…」

宮仕えは大変だぁ…

「まぁ、少々の事なら大丈夫だろ。」「お兄ちゃんだからねぇ…」

「エール…もっとまじめに心配した方が…」「うーん…まぁそうなんだけどね…」

ギャーギャー騒ぎつつもあたしたちはお兄ちゃんを追いかけた。

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