【二章完】ちょっと早めのエールちゃんの冒険   作:砂嵐36

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72.エールちゃんはドラゴンに遭う

 ノスとの熾烈を極める戦いは長く続いた。

「オオオオオオオオオオオオ!」

「があああああああああああ!」

「ラァアアアアアアアアアア!」

 肩をいからせ突っ込んでくるノスにタイミングを合わせて斬りかかるお兄ちゃんとリックさん。

 必殺技がノスの装甲を吹き飛ばし、赤い光が傷口を抉る。

 足を止めたノスがかざした手からとんでもない熱量を込めた火球が乱射され、白色破壊光線が衝突し大爆発を起こす。

 わずかにノスが動きを止めた瞬間、左右から4人が同時に襲い掛かる! 

「歪空幻夢剣!」「鑿空無現剣!」「ALスラッシュ!」「クア・ル・レーン!」

 それぞれの必殺剣が叩き込まれ、ノスの全身に傷が刻まれる! 

 しかしノスは吹き出る血にもかまわず、腕を大きく振り回した! 

「グハハハハハハハ!」「がっ……はぁ!」

 お兄ちゃんはよけ損ねて吹き飛ばされる! 

「死ね……ぇ!」「させん!」「いけーっ幻獣!」「ぐ……鬱陶しィ……!」

 追撃に入ろうとするノスの顔をバイロードの連撃が襲い、幻獣がまとわりつく。

「今よ! 撃って!」「ミー!」「行けチューリップ!」「はいはい!」

 さらに手裏剣、砲撃、手斧、チャクラムの連射が足を止めた。

「げほっ……ちっ……」「ランス様! いたいのいたいのとんでけー!」「主よ……どうかご慈悲を……」

 そのわずかな時間でヒーリングを受け体勢を立て直したお兄ちゃんはカオスを手に再び斬りかかる。

 剣が、斧が、魔法が、砲撃が。ありとあらゆる角度から打ち込まれる。

 カオスの傷以外はあっという間に治ってしまうが、それでもあたしたちはひたすらに攻撃を続けた。

 

 ……あたしたちに有利な点があったとすれば、ノスの戦闘スタイルだろうか。

 ノスは装甲と再生能力にモノを言わせて敵の攻撃を全て受け止めながら戦うタイプであり、カオスの魔人特効、そして回復阻害の特性が抜群に効いた。

 攻撃を躱そうにもこれまでろくに回避というものををしてこなかったためか、動きは固く、カオスが破壊した部分を狙うことであたしたちも攻撃を通すことが出来た。

 流石は魔人殺しの剣……とはいえ、ノスには特に相性がいいようだ。

 しかし、それでも、それでも魔人。ノスは圧倒的だった。

 一撃で岩をも砕くような豪腕が振り回され、甲殻に包まれた体での体当たりは頑丈な石柱をまとめて数本容易に粉砕する。

 放たれる魔法には志津香さんとアテンさんが必死に対抗しているが、二人とも息が荒くなり、足元がおぼつかなくなってきた。

 そんな状況でもあたしたちがギリギリ持ちこたえられるのは、それぞれカオスとバイ・ロードを持った二人の戦士がノスの真正面に立ち続けてくれているお陰だ。

 どちらか一人だけでもダメだっただろう。先ほどのように立場を、場所を変えつつ二人は災厄に抗うように戦い続けた。

「グフ、グフフフフ……久しく味わっておらなんだ……血ィ……鋼ェ……戦いの味……」

 何度も砕かれては再生した甲殻はその度に分厚く、硬くなり、カオスの刃すらそう簡単に通さぬほどになっていた。

 全身に傷を負い、血を流しながら、それでもノスは暴れ続ける。

「ぜーっ……ぜーっ……まだ死なんのかこの岩ジジイ……」

「……くっ……」

 しかしそろそろ二人の体力も限界そうだ。このままでは押しきられる……そう思ったとき。

「お待たせいたした!」

 広間の横から声が響き、柱の向こうからバレスさん、そして数台の台車のついた巨大な弓矢が姿を表した。

 ヘルマン軍が置いていった攻城兵器、バリスタだ! 

 見れば広間の反対にもバリスタの一群。率いているのは白い鎧に眼鏡の男性だ。

「遅いわジジイ!」

 お兄ちゃんとリックさんが飛び退く。

「放てぇ!」「撃て!」

 両側からの号令と共に、大槍のようなサイズの矢が装甲を貫いてノスの体に突き刺さる! 

「ガアアア!!! 虫けら共ォ!」

 矢で床に縫い付けられ、悲鳴をあげるノスにお兄ちゃんが踏み込んだ! 

「だらあああああああ!!!」力を込めたカオスの一刀がノスの右腕を切り飛ばす! 

「今です! 畳み掛ける!」リックさんを先頭に悶えるノスに向かってあたしたちは殺到した! 

「……っ! ALスラッシュ!」

「ファイヤーレーザー!」

「たああああああ! クア・ル・レーン!」

「チューリップは……最強なんだからー!」

「神聖分解波!」

「ゴ……オ……」動きが止まったところを集中攻撃され、揺らぐノスにお兄ちゃんが踏み込む! 

「ぬおおおおおお! ランス……アターック!」

「お、ご、あああァァァ……ッ!」

 真正面から縦に切り裂かれ、ノスはゆっくりと地面に倒れた。

 

「は──────ー……っは────……や、っただろ……流石に……」

 ひざを突いて深い息をつくお兄ちゃん。

 リックさんも立っているのがやっとだ。皆疲労困憊で、次々と激闘でボロボロの床に座り込んでいく。

 無論あたしも例外ではない。メナドと背中合わせに座り込んでため息をついた。

「全員無事……? 信じられないね……」「ほんとにね……あたしもうヘロヘロだよ……」

「ふ──ー。すごいぞ俺様。こんな化け物も仕留めてしまうとは……」

「は、はい……ランス様……すごいです……おめでとう、ございます……」

「うむ、よくやった心の友。あとは…………ん?」

 カオスが怪訝な声を出す。

「……いかん! ノスの奴、まだ死んでおらん! 構えろ! 心の友!」

「な、なんだと?」「ええ!? こんなにボロボロなのに!?」

「魔人はくたばったら魔血魂……赤い球になる! その気配がないということは……」

「ふ……ふふふ……」

 カオスの警告通りに、ノスの体が身じろぎをする。

「マジで……?」「しぶといジジイめ……」あたしたちは必死に身を起こす。

「久しく、この感触を忘れていた……流れる血、鉄、炎……殺し、殺される喜び……」

 ノスの体がどくん、どくんと脈を打ち始め……一つ脈を打つたびに、巨体が震え、その体積を増していく。

「さぁ……まだまだ……楽しませてくれ……」

 切断された腕が宙に突き出され、骨が生え、血と肉がまとわりつき、皮が……いや、鱗が覆っていく。

 黒い金属質の鱗に覆われた、小山ほどもある巨体。

 うしも丸のみにしそうな口からバラバラのサイズの乱杭牙が覗き、片手では足りない数の眼が開いてこちらを睨む。これは……まさか……

「……ドラゴン! 地竜!?」「ドラゴン……?」マリスさんの声にレイラさんが呆然と呟く。

「こ、これが奴の正体……!?」「貴様! 知り合いじゃなかったのか!」「何でも知っとるわけじゃないわ!」

 カオスが焦った声を出し、問い詰めるお兄ちゃんと無益に言い争う。

「おいマリア! 戦車だ! 戦車持って来い!」「あるわけないでしょー!?」

「じゃあバリスタだ! バレス!」

「こっ、心得ました! 構え……」「邪魔ダ!」

 ノスの口に火がともり、矢が放たれるより早く火球が放たれた。

「っ……退避ー!」一瞬でバリスタは火に包まれ燃え尽きていく。バレスさんたちが吹っ飛ばされたのは見えた。

 反対側のバリスタと兵士たちも、尾の一撃でまるでおもちゃのように片付けられた。

 巨竜はゆっくりと……余裕たっぷりにこちらに向き直る。

「サァ……小僧……カオス! これで終わりダ……」

「くっ……クソうっとうしい野郎が……」

 あたし達は必死に武器を構えるが、もはや体力は限界に近い。隣に立つメナドのクア・パッソも軽く震えている。

「来るぞ! 心の友!」

「ええい! 邪魔するならぶち殺して……む?」

 ノスの眼が、別のところを向いていた。

「……おォ……ジル……さ、マ……」

 空気が、変わった。

 




カオスが特効である上で、今の手札で押し切れるのはノス通常体までという感じです。
バリスタは白メガネくんの包囲作戦で命中率上がってますね。

以下、妄想です。

魔人ノス
LV180/195
ドラゴン1
物理戦闘2
プロレス1
魔法1
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