【二章完】ちょっと早めのエールちゃんの冒険   作:砂嵐36

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2 エールちゃんは冒険者になった

 冒険者になった、と言ってもなりたてほやほや、ペーペーの女の子に名指しの依頼なんて来ない。

 合同で街道をうろうろして魔物が出たらやっつけるような間引きの仕事や、どうってことない薬草採取なんかをこなしつつ、レベルを少しづつ上げていくのが基本だ。

 ただ、あたしは回復魔法が使えたのでそんなに苦労はしなかった。

 生傷が耐えない商売なので、ギルドに詰めてるだけでも仕事はあるのだ。

「おーい、嬢ちゃん。ちょっと頼むわ」

「はいはーい」

 マスターに呼ばれてすてて、と駆け寄ると腕を負傷した中年冒険者がいた。

「おいおい、こんなちんちくりんの女の子で本当に大丈夫なのか?」

「は? 髪の毛むしってもいいですか?」

 失礼な中年に思わずガンをくれるあたし。

「落ち着けって……ほら、頼むよ」

「ったくもう……いたいのいたいのとんでけー!」

 なだめられて渋々ヒーリングをかけるとみるみる傷が塞がっていく。

「おお、お嬢ちゃん大したもんだ! 疑ってすまんな!」

「わかってくれればいいんですよ。さ、お代は5000Gです」

「ぼってんじゃねーよ。シスターに言いつけるぞ」

「すいません、20Gです」

 

 あたしのヒーリングにそこそこ効力があると知れ渡ると、いくつかのちゃんとしたパーティーから誘われることもあったが、あたしは単発で冒険をともにすることはあってもどこかに加入はしなかった。

 理由は特にないが、新生活や冒険をもっと楽しみたかったのだ。

 ……まぁ、ちゃんとしてない連中からの誘いもあったけどね。思い出したくもないのでここでは触れない。

 

 けっこう危ないこともあった。合同の仕事で街道に沸いたイカマンの群れを適当にしばいていたら、なんとぶたバンバラが襲ってきたのだ。

「ぷぎーっ!」「うわーっ! ぶたバンバラだ!」

「なんでこんなところに……ぎゃー!」

「ああっテケッツが!」

「逃げろー!」

 ぶたバンバラがぶんぶん振り回す槍の前に、イカマン討伐なんてどうでもいい仕事を受けた連中はあっという間にやられるか逃げるかしていく。

「お嬢ちゃん何やってんだ! 早く逃げないと……」

「あーはいはい。逃げたら報酬がもらえないからいいです」

「ちっ……そうかい! 勝手にしろ!」

 剣を抜いて前に出たあたしを尻目に男は逃げていく。

 あっという間にあたし以外誰もいなくなってしまったな。

「うーん、しょうがないなぁ……」

 あたしはぶたパンパラと向かい合う。本で読んだよりもなんかでっかく見えるなぁ。

「よーし、いくぞー! おりゃりゃー!」ずばーっ! 

「ぷぎー!」ぶん! 「わっ! このー!」

 自信はあったのだが、思った以上に体力があり、かなり苦戦してようやく倒した。

「はぁ……はぁ……いたいのいたいのとんでけー……」

 ヒーリングが使えなかったらやられていたかもしれない。

「10レベルになったくらいで油断しちゃいけないんだなあ……」

 気を引き締めたあたしだった。

 

 そうそう、レベルアップと言えば近所のレベル屋でやってもらっているのだが、なんでかあたしの才能限界はよくわからないそうだ。

「そんな、無責任じゃないですか?」

「すまんが、分からないものは分からないよ。

 レベル神様にあったら聞いてみるといい」

「レベル神なんて一握りの英雄にしか付いてない存在になんて会うことあります?」

「さあ? まあお嬢ちゃんは若いから、そのうち会うこともあるかもね」

 これ以上話しても無駄そうなので、あたしはとっとと店を出たのだった。

 

 レッドの町にはオレリイ大聖堂というやたら立派な教会があり、よく行っている。

 最初に訪ねたとき、扉を叩くと若い女性が出てきたので少し驚いた。

「すみません、あたしはエールって言います。シマイコム孤児院から来ました。これはシスターから司祭様への手紙です」

「あら、ご丁寧に。私がこの教会の責任者を勤めております……セル・セッテントマイ・カリフラジリスティック・パイポノシューリンガン・カーチゴルフと申します」

「……あの、すみません。もう一度お聞きしても?」

 余りに長い名前に面食らっていると、

「セル・カーチゴルフで結構ですよ」と笑って手紙を受け取り中に招いてくれた。

 

 最初にやたら長い名前をすらすらと名乗るところからただ者ではないとは思ったが、そのあとすんなりとAL教の経典や神魔法の本などの閲覧許可をくれた。

「神の教えについて真摯に学ぼうとするものに対して閉ざす門は持っていません」とのこと。

 

 たまに通っては奉仕活動の手伝いをしたり本を読んだりして過ごしているうちに、たまに一緒にお茶をのんでしゃべるようになった。

「この教会にはほかに年の近いの女の子が居なくて……時々話し相手が欲しくなるんですよねー」と、もそもそクッキーをもそもそ食べつつ愚痴をこぼすセルさんは普段と違って砕けた感じだ。

 こちらのほうが親しみやすいと思うのだが、責任者ともなるとそうはいかないのだろう。

 

 そんな感じでバタバタしているうちにレベルも上がり、装備も少しはましになり、剣もヒーリングも上達した。

 ギルドのほうでも多少は信頼されたのか、護衛や採取、討伐といった冒険者らしい仕事をちょくちょく振られるようになった。お陰でギルド内のランキングもうなぎ登りだ。

 それなりに順調な冒険者生活を送りつつ、時折孤児院に手紙を送ったりしながらあたしのLP1年は過ぎていったのだった……

 




セル・(略)・カーチゴルフ
Lv22/44
神魔法Lv1
レッドの街の神官さん。まだ16歳の結構な美少女。人格者だが、頑固で融通が利かない。
『主人公』の仲間になれるけど冒険の後半では出番がなくなるくらいの能力を持つ。
なおこの世界では聖職者も飲酒も性交も溺れない程度ならいいよ、というスタンス。

才能限界
この世界の生物が大体持っているレベルの上限。
モンスターを倒したりして経験点を得ることでレベルを上げて強くなることができるが、
上限は人ごとに異なっている。
目安として
1~ 一般人
10~ 兵士・並の冒険者
20~ クラスで一番できる奴・下士官
30~ 学校一の秀才・優秀な軍人
40~ 達人・将軍クラス
くらいの感じ。
無論上限だけ高くても意味はない。

G(ゴールド)
ルドラサウム大陸全てで流通している貨幣。
金色でキラキラしているが金ではなくてゴールデンハニーの死骸をハニー造幣局が加工したもの。
だいたい1G=100円と思ってくれればオッケーです。

イカマン
イカから人間の足が生えてるようなモンスター。
どこにでもいてイカ部分は食用になるのでよく狩られる。
すごく弱いが流石にレベル一桁前半の一般人では勝てない。

ぶたバンバラ
槍持ったオークみたいなモンスター。
わりかし強いしタフ。
武器持っただけの一般人ではとてもかなわない。
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