【二章完】ちょっと早めのエールちゃんの冒険   作:砂嵐36

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74.エールちゃんは魔王と戦う

 空間の割れ目の先にあったのは、どこまでも続く真っ暗な空間だった。

「うっわー……なにここ……」

 あちこちに入ってきたのと同じような割れ目があって、向こうには見たことない植物の森だの変な色の空だのマグマだのと言った景色がひろがり、見たことない生物がうごめいている。

 近くをサカナが泳いでいるな……と思ったらだいぶ遠くにいる島みたいな大きさのサカナだった。

 なんちゅうところだここは……あんまり長居すべきじゃないな……

「おい、魔王はどっちだ」

「お、おお……えーと、あっちだ。心の友」

 カオスが示した先はなにやら炎やら雷やらが渦巻いている。

 宙を泳ぐバカでかいサカナが炎に突っ込んでいき……一瞬で骨も残らず焼き尽くされた。

 光ってから数秒遅れてバリバリ鳴っている雷の渦は、比較対象がないからわからないけど、街くらいのサイズはありそうに見える。

「うーん……アレに突っ込むの?」

「……大丈夫だろ。お前のヒーリングもあるしな。行くぞ」

「あ、待ってよー!」

 どういう理屈かわからないが、どっちが上だか下だかさっぱりわからないこの空間でも先に進もうと足を動かせば割とすいすい進むことができた。

 それでまぁ移動には不自由しないので、お兄ちゃんにの後に続いて進んでいくのだが……

「あたっ……いたっ」「あちち……」

 炎の渦や雷の渦に突っ込むたびに肌がぴりぴりしたりちりちりする。

 時々空間から顔を出す恐竜みたいなのとかでかいサカナとかも攻撃してくる。

 炎も雷もたぶんちょっと鍛えた冒険者でも一発で死ねる威力だし、恐竜やサカナもたぶんすごく強い。

 けど、今のあたしたちの障害にはならない。ならないのだが……

「ガオオオオオオオオ(ズバッ)ギャアアアアアアアアア!」

 何匹目かの恐竜を真っ二つに切り捨てて、前を行くお兄ちゃんを見る。

 お兄ちゃん本人には大してダメージは入っていないけど、鎧やマントがだいぶボロボロになっている。

 まぁお兄ちゃんのお尻がちょっと見えるくらいどうってことないのだが、あたしの服……レディチャレンジャーも同様にあちこち破れて千切れてきてるんだよね……

「うう……! ちょっと待って……」どうにか掻き合わせたり縛ったりして見えないようにしてはいるのだが……

「がはははは、さっさとついてこい。置いてくぞ!」

 お兄ちゃんは全く気にせずどんどん進んでいく。

「もー! こっち見ないでよ!?」

「ばーか、お前のようなちんちくりんなど見ても仕方が……」「雷の矢!」「どわーっ!」

 途中でちょっとしたアクシデントもあったが、お兄ちゃんの尻が少し焦げる程度で済み、服もどうにか原型を保った状態で危険地帯を抜けることができた。

 

「むっ! いたぞ!」

 カオスが示す先を見ると、ジルが一つの割れ目を抱えるようにして何かやっていた。

「くくくく、射程圏内だ。おとなしくするんだな、魔王のねーちゃん」

「うん、観念しなよ! お兄ちゃんだけじゃなくあたしもいるんだから!」

 あたし達が剣を向けるとジルはゆっくりとこちらを向いた。

「……ここまで、来るか……」

 ジルが抱える割れ目が、脈動した。そこからまた風が吹き出すが……噴出した風はこちらに向かわず、ジルの周りを吹き荒れる。

「むっ!?」「何をする気!?」

「魔王の血は足りず……レベルでも互角……それが2匹……だが……私は……もっと壊す……もっと殺す……」

 割れ目はバチバチと稲妻を発生させながら小さくなっていき……ジルは、異形の腕でそれを掴む。

「たとえわずかな命を削ることになろうと……貴様らに……人間に、負けるわけには……いかん!」

 ジルが、空間の裂け目を自分の腹に押し付け……押し込んだ!? 

「はぁ?」「そ、そんなことできんの!?」

「ぐっ……うあっ……くああああああああああああああっ!」

 驚くあたし達を前に、ジルの全身がボコボコと盛り上がり……縮んで、口からは甲高い悲鳴が漏れる。

「やばいぞ! 心の友! 嬢ちゃん! 今のうちに!」

「むっ! だりゃああああ!」「てりゃああああ!」

 お兄ちゃんに続いて、あたしも二刀で斬りかかったが……

「がああああああああああああああ!」「ぬおっ!?」「ひゃー!?」

 ジルを中心に巻き起こった魔力の爆発に、あたし達は押し返された。

「な、何が起こりやがった……?」

 爆発の中心を見ると、ジルの姿が……なんというか、成長していた。

 先ほどまでの幼い少女の肉体ではなく、成人女性の姿だ。胸も結構ある。

「おほー! さっきまでも十分なかわいこちゃんだったが……なんつー美人だ!」

「そんなこと言っとる場合か心の友!」カオスが叫ぶ。

「ジルの奴……次元の割れ目ごと息吹を取り込んで、大量の経験値でバグを起こして無理やり限界を突破しやがった!」

「はぁ?! そんなことできるの!?」確かに先ほどよりも威圧感が段違いだ! 

「人間のお前たちにできることが……魔王たる私にできぬはずがない……!」

 ジルが、こちらに向き直った! 

 お兄ちゃんもカオスを目の高さに構える。

 あたしの最初の冒険……思ってたよりだいぶすごいことになっちゃったな……けど、ここがクライマックスかも! 

 思いつつ、あたしも双剣を構えた。

「あたし、まだまだもっと冒険したいんだ! だから、負けないよ!」

「魔王が! 人間に! 敗れるわけにはいかん……! 滅びよ! 人間!」

「人間人間とやかましい! この超英雄ランス様がお仕置きしてくれるわ!」

 そして、戦いが始まった! 

 

 ==========================================================================

ジル(オルケスタ共鳴)が出現! 

 

「よーし、きちっと殺すぞ」

「エールちゃん見参!」

 

ジル(オルケスタ共鳴) 『通常属性:無効』

 

 PLAYER TURN! 

 

「ぶっ飛ばす!」エールのAL大魔法! 

 クリティカル★ジルに58709のダメージ! ジルの耐性を破壊した! 

 

「バーニンッ!」エールのALスラッシュ! 

 ジルに24416のダメージ! エールのHPが0回復! 

 

「ちょりゃー!」エールの超エール斬りW! 

 ジルに15983のダメージ! 

 

「カウントダウンだ!」ランスの超ランスチャージ! 

 ランスは物理攻撃が上昇! 耐性突破状態! 

 

「でりゃ!」ランスの超ランス斬り! 

 スーパークリティカル★★ジルに58130ダメージ! 

 

「だぁりゃあ!」ランスの超ランスアタック! 

 スーパークリティカル★★ジルに54073ダメージ! 

 

「がっはっは!」ランスのウルトラ襲う! 

 ハイパークリティカル★★★ジルに114630ダメージ! 

 

 ENEMY TURN! 

 ジルの攻撃! 

 ランスに2045ダメージ! エールに1967ダメージ! 

「痛って!」「きゃーん!」

 

 

 PLAYER TURN! 

 

「いたいのとんでけー!」エールのヒーリング2+! 

 エールは1370回復! 

 

「たりゃー!」全く効果がないエールの超エール斬りW! 

 ジルに0のダメージ! 

 

「邪魔だ!」ランスのウルトラ襲う! 

 スーパークリティカル★★ジルに81193ダメージ! 

 

 ENEMY TURN! 

 ジルのオルケスタ共鳴! 

 ジルの魔法攻撃が上昇! 

 

 

 PLAYER TURN! 

 

「ちょっと本気でやるぞ」ランスの超ランスチャージ! 

 ランスは物理攻撃が上昇! 耐性突破状態! 

 

「死ね!」耐性を突破したランスの超ランス斬り! 

 スーパークリティカル★★ジルに59111ダメージ! 

 

「よっと!」ランスのウルトラ襲う! 

 スーパークリティカル★★ジルに81193ダメージ! 

 

 ENEMY TURN! 

 ジルの魔法攻撃! 

 ランスに3194ダメージ! エールに2910ダメージ! 

「許さんぞ!」「何すんのよー!」

 

 PLAYER TURN! 

 

「なんか出ろー!」エールのAL大魔法! 

 ジルに41994のダメージ! ジルの耐性を破壊した! 

 

「だりゃりゃりゃー!」エールのALスラッシュ! 

 クリティカル★ジルに36416のダメージ! エールのHPが1980回復! 

 

「いっくぞー!」エールの超エール斬りW! 

 ジルに16843のダメージ! 

 

 …………………………………………………………………………

 

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 戦いは長く、本当に長く続いた。

 ジルのよくわからない魔法が吹き荒れ、お兄ちゃんの剣がどういう理屈か不明だがそれを吹き飛ばした。

 城くらいある瓦礫が余波で粉々になるのを無視してお兄ちゃんはカオスで切りつけ、ジルは腕をかざしてそれを防ぐ。腕と剣を咬み合わせたまま蹴りがお互いに数発交錯し二人は離れる。

 あたしがいつの間にか使えるようになっていた魔法をぶっぱなすと、でかい羽根がジルをタコ殴りにする。その隙にヒーリングをかけまくった。

 以上の行動が0.1秒くらいでこなされる感じだ。全部説明していると10年くらいかかると思う。

 レベルが上がりすぎたあたしたちの体感時間がめちゃくちゃになっていることを差し引いても、長い戦いだったはずだ。

 もともとボロボロだった衣服は戦いに耐えきれず、あたしもお兄ちゃんもぼろきれが体にまとわりついている程度だが、そんなことを気にしている余裕はなかった。

 描写はしない。タグが面倒だからね。

 とにかく、必死ですさまじい速度で剣を振り、なんで耐えられるかわからん魔法をこらえ、えげつない攻撃魔法を放ち、気持ち悪いほど回復するヒーリングを唱えまくった。

 

 その果てに、とうとう。

「ぶっ飛べ!! AL……大魔法!」

「全治百万年! ウルトラッ……ランス……! アタタターック!!!!!!」

「かっ……はっ……ああっ……!」

 お兄ちゃんの一撃がいろんな結界ごとジルをぶった切り……ジルは崩れ落ちた。

「俺の勝ちだ! 魔王!」

「はぁ……やった! やったの!?」

「おお……おおおお……ジルが……魔王が……真正面から……!」

 口々に言うあたし達の前で、ジルはピクリとも動かない。

「がーははははははははは! 魔王と言えど、俺様の敵ではないわー!」

 ジルがかすかに身じろぎし、寝返りを打って仰向けになる。

「……お前たちのような存在が……この世にあるとはな……」

「む、生きてやがる。トドメだトドメ」

 騒ぐカオスを無視して、ジルの眼があたしを、そしてお兄ちゃんを見た。

「そちらの男……勝ったら……どうすると。言っていたか」

「ほーう?」あ、やっべ。この人この期に及んでおっ始める気だよ! 

「よーし! ならば遠慮なく!」お兄ちゃんの手が腰当たりに行き……ズボンの残骸を下ろそうと動く。

「アッ……アホかー! そいつは魔王なんだぞ! しかも最悪の!」カオスがキレた。

「そうだよ、お兄ちゃん……正直こんな奇跡は二度とないよ……」

「今が唯一のチャンスなんだよ! 早く!」「ね?」

「うーむ……なるほど……そういう事なら」

 お兄ちゃんがカオスをあたしに押し付けた。肩を掴まれ、後ろを向かされる。

「へ?」「お兄ちゃん何を……」

「やかましい! お前らはどっか行っとれー!」

 げしっ。

「「にょわああああああああああああああああああ!?」」

 おしりを蹴られたあたしとカオスは、すごい勢いでそこから飛ばされてしまったのだった。

 




レベル500オーバーの戦闘なんか描写できるかー!
ランス03ジル戦のBGMを流しながらのゲーム風描写でご勘弁ください。

ジル戦はPT固定なので、ほぼイベントバトルになるのですが
通常属性が効かないのでランスのランス斬りが無効、
エールに至ってはエール斬りとALスラッシュが無効です。
二人とも耐性を突破するスキルは持っているのでうまく利用してしばく必要があります。
魔剣カオスの効果でランスの攻撃はすべてスーパークリティカル以上が確定の上、
セクハラ属性の『襲う』が★6になっていたので助かりました。

次回、第一章最終回です。
もう少しおつきあいください。
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