「ぎゃおおおおおお!」「たりゃー!」ずばん!
吠え声をあげて突進してくるばかでかい恐竜。その素早い噛みつきを見切って躱し、二刀を振るって首をはねた。
「はぁー……」
崩れ落ちる恐竜から、比較的柔らかくて美味しいお尻と腿のあたりの肉を適当に削いであとはほっとく。
あたしが居なくなれば、そのあたりに隠れている小さい恐竜が群がってあっという間に骨にしてしまうからだ。
あの後、何があったのか話そうか。お兄ちゃんにお尻を蹴っ飛ばされたあたしとカオスは、そのままの勢いでどこかの次元の裂け目に飛び込んでしまった。
飛び込む直前になんかどこがが光って、「我はG……あっ早っ……待っ……あっ……」とか誰かが言っていたような気がしたが、気のせいだろう。
そして、裂け目の先はジャングルが広がり、恐竜たちがうろつく世界。
いきなり大量の恐竜に襲われ、訳もわからず戦う羽目になった。
レベルが上がりまくっていなかったら持たなかっただろうなあ……
ここに来て半月くらいが過ぎたが、人里みたいなものを探してみても全然見つからない。
それどころか恐竜以外の生き物が全然見当たらない。
服がずたぼろなのでせめてなにか……と探したけど、なにしろ獣すらいないので毛皮をはぐことも出来ない。
服の残骸とそのへんの葉っぱやら茎やらでどうにかこうにか胸と下半身を隠している。
「はぁーあ……」
ため息をつきながら肉をかついで帰るあたし。
はたから見たらどっかで立派な剣を拾ったスーパー美少女原始人にしか見えないだろう。
「ただいまー……」
拠点にしている洞窟に入って声をかける。
「おかえりなさーい。水浴びにする? お肉にする? それともわ・し……」「ふんっ!」(びたーん!)「グエーッ!」ぐさっ
壁にかけてあるカオスがふざけたことを言ったので、ひっつかんで壁に叩きつけ、そのまま恐竜の肉にぶっ刺した。
「よっこいしょ……っと」そのまま雷の矢でおこした焚き火の上にかけて肉を焼き始める。
「だから儂を焼き串にするなっての!」
「他にないんだから仕方ないでしょ!」
「お前さん二本も剣を持っとるだろ!」
「こっちはあたしの武器だもん! 借りものだから壊れたら困るし!」
「儂だって伝説の魔剣じゃぞ! そんな武器の100倍は斬れるし!」
「うるさいよセクハラソード! そんなすごい武器なら次元ぐらい切り裂いてあたしをもとの世界に返してよ!」
「だまらっしゃいアーパー娘! そんなこと出来たら苦労せんわ!」
「「はぁ……」」
「このやりとり何度目だっけ……」「さあのう……」
何度目かわからないカオスとの口喧嘩にもすっかり馴染んでしまった。
……とはいえ話し相手がいるのはありがたいんだよね。
こいつがいなかったら頭おかしくなってたかも知れない。最初の方こそお嬢ちゃん気分は悪くないか、大丈夫かなどと心配そうだったカオスだが、最近はすっかりセクハラブレードである。
「もぐもぐ……はぁー……」いい感じに焼けた恐竜肉をカオスから直にかじりついてため息をひとつつく。
持つものを狂わせるというので最初はおっかなびっくり扱っていたが、なんかもう慣れちゃったな。
あたしにも特に悪影響もないみたいなのでいろいろ便利に使ってる。
「はぁ……こんなにモンスター倒してるのになんかどんどんレベル下がってるし……」
「レベル神もおらんからのう、それに……」
「それに?」
「異世界の理はその世界でしか通じんのじゃろ。こうしている間にもお嬢ちゃんから例の息吹が少しづつ抜けていくのを感じるし」
「えー……じゃあそのうちあたし恐竜に食われて死んじゃうじゃん……」
「この世界から脱出できなければ遅かれ早かれだのう……気の毒に……」
「あんたもあたしが死んだらどっかに埋もれて恐竜の化石と一緒に数億年後に掘り出されるんだからね!」
「い、嫌じゃ~! 千年の眠りから覚めたばっかりなのに今度は億年とか! 勘弁してくれー!」
「あたしだって嫌ー! 冒険がしたいとは言ったけど! こんな若い身空で原始人暮らしはやだー!」
「「はぁ……」」
ひとしきり叫んでふたりでため息をつく。
「ランスの……」「お兄ちゃんの……」
「「バカヤロ──────────────ー!!!!!!!」」
あたしとカオスの叫びはジャングルを揺らし、そのへんから翼竜がギャーギャーと飛び立ったのだった。
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それからほどなくして、あたしはぶかぶかの黒いドレスを着て、ガイコツの戦士達をつれた魔法使いの女の子に出会った。
その子はミラクルという名前で、最初はあたしをこの世界の原住民と思っていたようだが、ルドラサウム大陸の生まれと知ってちょっとがっかりしていた。
でも、お兄ちゃんとの冒険とその顛末について説明すると興味深そうに聞き入り、腹を抱えて大笑いし、あたしをもとの世界に返してくれた。
口は悪いけどすごくいい人だ……
いろいろ歓待もしてくれて、服もくれた。服の趣味はちょっとあれだけど……
なんでもアテンさんの親戚らしく、元気そうだったと聞いて安心しているようだった。
「面白い……魔剣の主……さしずめカオスマスターか……ふふふ……」とか
「うーむ……女でなければな……しかも二刀はキャラがなぁ……」
などと言っていたけどなんだったんだろう?
ミラクルさんにお礼を言って別れ、リーザスに帰る途中、寝てる間にいつのまにかスターブラスターはなくなっていた。
盗まれちゃったかな? その割にリーザス聖剣には手を触れてないけど……拾い物だし、まあいいか。
リーザスはまだ戦の後処理の真っ最中だったが、あたしが帰るとすぐに城まで通され、血相を変えたリア様にお兄ちゃんの行方について聞かれた。
異空間であったことを話し、お兄ちゃんに蹴っ飛ばされてからあとのことはわかんないと答えると、そう……とだけ言って下がってしまい
あたしとお兄ちゃんが空間の裂け目に飛び込んだあとのことについては、バレスさんが説明してくれた。
あたしたちが飛び込んでからすぐに裂け目が急に小さくなりはじめ、近くにいたシィルさんが飛び込んだ。
その直後に裂け目は閉じてしまったらしい。
そのあとは特になにも起こらず、あたしとお兄ちゃん、シィルさんが行方不明な以外はみんな無事だったそうだ。
あたしのレベルが下がるペースは多少落ちてはいたものの、この時点でレベルは120くらいになっていた。
他の息吹を浴びた人たちもすぐに元のレベルに戻ってしまったらしく、あたしもたぶん40ちょいくらいで止まるんじゃないかな。
あたしはセルさんたちと一緒にリーザスの戦後処理を手伝い、リア様にいろいろ親切にしてもらったりリックさんやメナドと訓練したりして過ごし……
そして、もろもろの用事が済んで、とうとう出発の日ががやってきた。
リックさんやレイラさんから赤軍や親衛隊に誘われたし、リア様もいつまでも居ていいのよと言ってくれたけど、そういう気にはまだなれないからね。
リーザス聖剣も返して、お暇することにした。
志津香さん、ミリさんミルちゃん、セルさんも一緒だ。
マリアさんはなにかリーザスでやることがあるらしく、しばらく残るらしい。
「それじゃーねー! お兄ちゃんのことについて何かわかったら教えてねー!」
「わかったー! かなみちゃんに伝えておくよー!」
「また来てくださいねー!」「じゃーねー!」「……お元気で」「またのお越しを……」
メナド、パルプテンクスさん、パティちゃん、ミリーさん、奈美さんに見送られて、あたし達はリーザスの城門から旅立った。
「はぁー……それにしても大変な旅だったなぁ……」
「ホントね……いろいろありすぎたわ……」疲れた顔でぼやく志津香さん。まぁ色々大変だったよね……
「ま、ランスの奴と一緒なんだ、滅茶苦茶になるのはいつもの事だろ?」
「ランス、どこに行ったんだろうねぇ……」ミリさんとミルちゃんは相変わらずだ。
「お兄ちゃんの事だから、心配するだけ損だよ。どーせどっかで生きてるし、そのうち戻ってくるって」
お兄ちゃんの事は、なぜか全く心配する気にならないのだ。必ず戻ってくるという確信めいたものがある。
「そーそー。あんな奴のこと心配することないない」あたしの背中でカオスが騒ぐ。
「エールさん……カオスの事……本当に大丈夫なのですか?」セルさんは心配そうだ。
「ん~。まーね。サウルスモールにいた間さんざん使ったけど平気だったし」
「そうですか……何かあったらすぐに言ってくださいね……」
「儂、セルちゃんのそばがいいー! 貞操を狙うチャンスがあるかもしれんし……」
「お、その時は俺も一緒させてくれよな」
「もう! 二人とも!」
「……やっぱあたしが預かってた方がいいでしょ?」
「……そうですね……」
道々話しながら旅は進み、あっという間にレッドにたどり着いた。
志津香さん、ミリさんミルちゃんとはここでお別れだ。
別れ際にセルさんがミリさんと何やら話していたが、セルさんはなぜかすごくほっとした顔をしていた。
教会に帰るセルさんとひとまず別れ、あたしは街のみんなに顔を見せて回った。
ギルドのマスターに変わったことがなかったか聞いてみると、先日このあたりでちんちんを八つ裂きにされた少年が死んでいたらしい。
はぁー怖い。戸締まりしとこ。なんでか知らないが、彼の冥福を祈ることにした。
ワヨソちゃんは相変わらず罠の調整と恨みノートの作成に余念がなかった。ノートのお兄ちゃんの名前は頼み込んで消してもらった。
今度新調する武器と、レディチャレンジャーの正規版をここで買うことになってしまったが……まぁ仕方ないよね。
シマイコム孤児院もなんだかんだ無事だったようだ。今度手紙を書いて送ろう。おやつをたくさん持って帰るのもいいかもしれないな。
「ふぅ……」
あたしは懐かしい下宿の一室に返ってきた。
長いこと留守にしていたが、おかみさんが部屋をそのままにしておいてくれて助かった。
「ふーん。ここがお嬢ちゃんの……色気がない部屋ね……」「うるさい」「ぐえ────!」
やかましいカオスを布で固くぐるぐる巻きに縛り、木箱に入れてベッドの下に放り込んだ。
「これでよし……と」
あたしはベッドの薄い布団に寝転がり、今回の冒険について思い返した。
思えば、あたしがカイズに行くためにここを出てから……4か月くらいかな? 本当に長かったような、あっという間だったような……
修行したこと。お兄ちゃんに会ったこと。無理やりでもついて行くと決めたこと……
思い返せばきりがない。大変だったし、死ぬかと思ったこともあった。素敵なこともあったし、そうじゃないこともあった。でも……うん。
「あー……すっごく……楽しかった」
ベッドの中でニコニコ笑いながらゴロゴロ転がっていると、なんだか眠くなってきた。
まぶたが重い。布団をかぶって、目を閉じる。
「えへへへへ……次はどんな冒険に出られるかなぁ? 楽しみだなぁ……えへへへ……くふ、ふ……ふふふふ……」
「……楽しみだねぇ、お兄ちゃん……」
そうして、あたしの意識は眠りに落ちていったのだった。
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大陸のはるか地下深く。神界のさらに奥に存在する、巨大な空洞。
その中央に、それはいた。
羽で出来たヒレを持つ白いくじらにも似た、巨大な、あまりに巨大な存在。
そのくじら……ルドラサウムは、うとうとと夢見るようにまどろんでいる。
そばに控えるは神々しい光を放つ女神ALICE。目を閉じていた彼女がピクリと反応し、恭しく口を開く。
『……お目覚めですか。……此度は、いかがでしたか?』
『うふ、くふふ、ふふふふふ……』
ルドラサウムが身じろぎし、ゆっくりと目を開いた。
『……うん……楽しかったなぁ……うふふ……人間の眼で、いろいろ世界を見てみるのは何度かやったけど……あの個体……いや、「お兄ちゃん」はいいよ……自信に溢れ、勇敢で……なにより愚か。気に入っちゃったよ……うふふ……』
楽しそうに目を細め、尾びれを揺らすルドラサウム。
『では、今回の「観測用端末」は……』
『うん……。まだまだ使うよ。もっといろんな冒険が楽しめそうだしね……』
『かしこまりました。次元の狭間のあの個体については、予定通りにGODを向かわせます』
『うん……そうしておいて……飛ばす先は……そうだな……あの、何とかって連中の、浮いてるおもちゃがあったじゃない? あそこがいいかな……』
『はい、伝えておきます』
『よろしくね……じゃあ、僕はまた眠るから……』
ルドラサウムのまぶたが落ちていく。
『ふふふふふ……次は、空の都市での大冒険かぁ……どんなことがあるかなぁ……くふ、ふ……ふふ…… えへへ……』
『……楽しみだねぇ、お兄ちゃん……』
そうして、ルドラサウムの意識は眠りに落ちていったのだった。
以下、妄想です。
ルドラサウム
LV ???/???
世界創造3 生命創造3 神3 読心3 …~~~(中略)~~~… シミュレーションゲーム3 冒険1(←New!)
ヒマだなーそろそろ適当に魔王かなんかにぷちぷちを殺させて見て楽しむかー
でも飽きてきたなーとか思っているときに
ひょんなことから別次元の自分が分身を世界に下ろしていろいろ楽しんでいることを知り、自分もやってみることにした。
思ったより楽しかったし、面白い個体も見つけたので、今後もいろいろ楽しめそうだと思ってわくわくしている。
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これにて第一章完になります!
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
布団の中で寝る前にやっていた妄想話を形にしてみよう、誰が読むわけでもないだろうしと投げつけ始めて2月ほど。
なんだか一日でも休むとエタってしまうような気がして、できる限り続けてみようと毎日投稿をしていましたが、
感想をくれる皆さん、評価、お気に入り、ここすきをくれる皆さんのおかげで最後まで走り切ることができました!
重ねて申し上げますが、本当にありがとうございました!
今後は流石に毎日書くというわけにはいかないので、次の章の構想を勧めながらぼちぼち番外編でも書こうかなと思います。
感想欄にこんな話が読みたい、とか希望をいただければ、書けたら書きます。
その時はまた読んでいただけたら嬉しいです。