「お金がなくなりました」
あたしは開口一番そう言った。
「それは…そうでしょうねぇ…」
テーブルの向こうのセルさんはジト目で答える。
「…エールさん、あなたのここしばらくの生活を思い返してごらんなさい」
「うーん…?」
例えば、昨日の事を思い出してみようか。
朝起きたら下宿で朝御飯を食べて、映画館のチラシを見たけど面白そうなのはやってなかったので、ザナゲスサーガーを読んだ。
昨日は21回目の一騎討ちの相手が実はJAPANから来た殺人カンフーの達人うろろん卿であり、その正体は18回目の巨大たこやきとの一騎討ちの時に助言をくれた謎の人物、戦闘仮面バトルファイターマスクであったことがわかるとこまで読んだかな。
そしてお昼ごはんを食べに出掛けた。昨日はちょっとお腹が減ってたので李立酒家で金龍コース(9800G)を食べた。ボリューム満点で大満足だった。
午後は服屋やアクセサリー屋を覗いて、気に入ったのがあったから買って、古着屋も見て…で、夕方に気が向いたのでちょいとギルドに顔を出して怪我人にヒールした。
晩御飯をやっぱり外食で済ませて…昨日はステーキだったな。
で、帰ってお菓子食べながら魔法ビジョン見て寝る。
んー…。冷静に考えると…
「あたし全く働いてない…食ってばっか…」
頭を抱えるあたしにセルさんが追撃をかける。
「それに…です。エールさんが持ってきたこのお菓子ですが…あの表通りの高級店のものですよね?」
セルさんは皿に乗っているお茶菓子を指さす。途中で買ってきたクッキーの詰め合わせだ。
「あ、うん。キライだった?」
「そうではありません。とっても美味しいですが…エールさん、このくらいのお菓子をいつも食べているのですか?」
「あ、うん…」
「いくらかは覚えていませんが…これもそれなりの値段はしたはずです。この分だと…ほかにも私生活でお金を使いすぎているのでは?」
「うっ…」心当たりは結構ある。
「はぁ…お金を使うな、とは言いません。貴方は以前のヘルマンの件でも大いに働きましたし…しかし、過度なぜいたくは堕落の元ですよ。なんでそんなことになってしまったのです?」
「うーん…」
リーザスに滞在していた時は、しばらく王宮に泊めさせてとらったのだが。
リア様がよくお茶だなんだーと連れまわしてくれて、ごちそうとか美味しいお菓子とかたくさん食べさせてくれたもんだから舌が肥えてしまったのかもしれない。
「困ったらいつでも頼って来てね!リアは貴女のお姉ちゃんなんだからー!」
「はーい!ありがとうリア様…じゃない、お姉ちゃん!(もぐもぐ」
みたいな感じにもてなしてくれていたが…これはアレか…あたしを抱き込むためにエサをやっていたのか…やっぱ怖いなあの人…
晩御飯の後に誘われた『パジャマパーティー』とやらを遠慮してよかったのかもしれない。タグが面倒になった可能性もある。
たぶんまた訪ねていけばいろいろとくれるんだろうな…そしてリーザスから、リア様から離れられなくなる…こわっ。
さすがにまだ宮仕えはしたくない。とはいえお金がないわけで…
「セルさん…どうしよう…このままじゃあたし飢え死にしちゃうよ…」
「働きなさい。確かにへルマンの件もイラーピュの件も大変でしたが…流石にだらけすぎです。レベルもすっかり下がって…神もそろそろ働けとそうおっしゃっているのでしょう」
「はーい…」
「というわけで仕事ない?マスター。すぐに終わって簡単で大金が稼げてイケメンと知り合いになれるような」
「久々に顔を見せたと思ったら…お前なあ…そんな仕事があったら俺がやってるよ。イケメンは要らんが」
そこそこ賑わってるギルドでマスターはため息混じりに答えた。
「まぁ、ないわけじゃないが」
「え?あるの?」「ほらこれ」
マスターが取り出した依頼書を見てみると…
『依頼人・リーザス王宮
内容・庭の草むしり10分
報酬・20万G+終わった後依頼主と食事
備考・剣と魔法と治癒魔法が使えて茶髪のロングヘアでギザ歯の20歳未満の女性限定』
「…」あたしは黙ってマスターを見た。
「戦争で活躍しただけあって、先方にずいぶんと買われてるみたいだな。そのまま就職しちまえよ」
「やだよ!なんか怖いし!」
「なら、まともに仕事するんだな。ほれ」
マスターが別の紙を付き出してきたので手に取って見る。
「なになに…徳用魔池を20個集めてほしい?」
「ああ、ハイパービルのロンメルから集められるだろ」
ロンメル系というのは正式には聖骸闘将といい、昔あった聖魔教団が魔法使いの死体を使って作ったモンスターなのだそうだ。
変な名前の魔法をぶっぱなしてくるので結構面倒なんだよね。
こいつらは体内に魔力を貯める装置を持っていて、うまいこと倒して剥げればそのまま使えるのだが…まあ結構難しい。
ロンメル系は元々死んでいるし、魔法を使うので結構大きく破壊しないと無力化できない。
それに大抵他のモンスターも一緒にいるので悠長に剥いでいられない。
しかもほっとくと再生するためどっかいってしまい、魔池が取れなくなってしまう。
「ふーむ、めんどくさそうだけど報酬は結構いいし、まあやってみようかな。」ちょっとは面白そうだし…
「他にも受けてるやつはいるからな。早い者勝ちだぜ。とはいえ受けてるやつは多いが持ってきたやつは居ないんだよな…」
「…?わかりましたー。」
あたしはその依頼を受けて、久々に町の外に出たのだった。
ハイパービルはレッドからも見えるが以外と遠い。単純にバカでかいのだ。とはいえまっすぐ目指して歩いていくだけだ。
と、思ったのだが、なにやらハイパービルの入り口の前で突っ立っている男がいた。
「お?冒険者か。へっへっへ…ちっと貧相だがなかなかの上玉じゃねえか」
「うわぁ…」
ボコボコにされた歯並びの悪いヤンキーみたいなツラした男が斧を持って道を塞いだ。肌の艶を見るにもしかしたらそんなに年は行ってないのかもしれないけど…
ブ男はニヤニヤしながら続ける。
「俺様はドギ・マギってんだ。ここに来るってことは魔池を集める仕事を受けたんだな?」
「え、ええまあ…」
「そういうことなら俺様が手伝ってやろうじゃねえか!女一人じゃ不安だろ、仲良くやろうぜ?ゲヘヘ…ま、分け前も多めに3割くらいはくれてやるからよ」
うわー。こうして無理やりパーティーを組ませて自分は報酬の上前を跳ねようって算段か。そしてあわよくばそれ以上も…
この仕事を受けた冒険者が戻ってこないのはこいつのせいか。
「結構です要らないです近寄らないでください」
「ほーう。そうかい。んじゃここを通すわけには行かねえなあ…」
予想通り斧を構えるブ男。
「ふーん。魔王とも闘ったあたしに喧嘩売るとはいい度胸じゃん!」
「あ?魔王?なに言ってんだお前?」
「うっさい!覚悟ー!」
あたしは双剣を抜いて襲いかかった!
「おらっ!」「ぐえーっ!」
斧の平でぶん殴られて派手に吹っ飛ばされるあたし。受け身も取れずに地面に転がった。
「ぐへへへへ!威勢はよかったけどこんなもんかよ!」
「うぅ…くそー…」
思ったよりこいつ強い…そして思っていたよりもだいぶあたし弱くなってる…!
ALスラッシュどころか魔法剣すら無理…レベル下がりすぎか…
「へへへへへ、まあこれでわかったろ?俺様の女になって仲良くしっぽりやろうじゃねえか。可愛がってやるからよぉ…」
こうなっては仕方がない。
「うう…わかりました…優しくしてくださいね…」「おっ?」
あたしは胸元に手をやる。ドギが鼻の下を伸ばして顔を寄せてきて…
「雷の矢!」「なっ…ぐえーっ!」
その顔面に不意打ちの魔法を食らわせ、そのまま剣を拾って逃げ出した。
「誰があんたなんかの女になるか!ばーかあーほうしのけつ!るろんた相手にでも腰振ってろ-!」
「…なんだとコラー!待ちやがれこのくそアマー!」
「はぁー…」
あたしはため息を付きながらレッドの町に帰ってきた。
ドギのブ男を撒いたはいいけど、あいつがいたら仕事ができない。
とはいえ、あいつはそこそこ強いし…
そもそも今のあたしだとハイパービルの中でロンメル狩りなんて出来ないだろう。
「レベル上げするしかないかあ…よーし!やるぞー!」
あたしは腕を突き上げて決意したのだった。
エール・クリア
Lv10/999
剣1神魔法2魔法1冒険0
冒険直後は40くらいあったがサボりまくったせいでここまで落ちてしまった。
なお体重も微増している。
本人は大人のレディに近づいていると主張している
いつもの妄想です。
ドギ・マギ
22/44
斧1 ブサイク1
まだ16歳だが既に原作通りの見た目。
山賊とチンピラと冒険者のあいのこのような仕事をしている。