次の日、再びハイパービルの前に行くとやはり入り口の前でブ男のドギが突っ立っていた。
ていうかあいつはずーっとあんなところで突っ立って…辛くないのだろうか?
その辺で野営するにしてもお風呂とか入れないとつらいだろうし…
まぁ、風呂も歯みがきもしてなさそうだからそういうの気にしないのかもね。
あたしがずかずか近づいていくと、ドギはこちらに目を向けた。
「あ?いつかのアマじゃねーか。今度は容赦しねぇぞ?」
「ふん、あたしを先週までのあたしと同じと思わないことね」
斧を構えるブ男に対し、鼻で笑ってこっちも剣を抜き、間合いを詰めていく。
「ずぉりゃああ!」
ブ男が力任せに振り下ろす斧を横にステップしてかわす。うん、見えてる。レベル上げた甲斐があった!
「よっ…はぁっ!」「ぐっ!」
そのままの勢いで斬りつけるが、とっさに飛びのかれて脇腹をかすめただけだ。
「ぐぬがああああああ!」
「おりゃ!そりゃ!雷の矢!」
ドギは力任せに斧をひたすら振り回す。それなりに振りは鋭いが、注意して間合いを取ればどうってことない。回避して一撃、または魔法でじりじりと削っていく。
「ぜぇぜぇ…ちっ…前より動きがよくなっていやがる…」
ニヤついた笑みがドギの顔から消え、あたしはどやさ、と胸を張った。
「鍛えなおしたからね。それにもうアンタの事は舐めたりしないから…こういう事もするのよ!電磁結界!」「ぎゃああああああああああ!」
唱えておいた広範囲呪文をぶっぱなし、しびれるドギに突っ込む!二刀を構え、気合いをいれて…
「AL…魔法剣!」
「ぐがあああああああああ!」
一刀目が斧を弾き飛ばし、続く二刀が肩を深くえぐった。
「ぐっ…畜生…」
ドギはそれだけ言ってばたりと倒れた。ま、こんなもんだろう。
「次はもうちょっとましなツラと性格に生まれ変わって来ることね!」
ぴくぴくするドギを放置して、あたしはハイパービルに久しぶりに足を踏み入れたのだった。
ビルの内部でロンメル系…ゲーリングを探してうろつきまわることしばし、曲がり角の先を覗き込んだ。
「おっ…ゲーリング…けど…」
ゲーリングの周りをリヤカーだのザコだのが囲んでうろうろしている。
「あれを一人で相手するのは面倒だなぁ…まぁやってみようか」
あたしはむにゃむしゃと呪文を唱え…
「電磁結界!」「がびーっ!」「ビビビビビ!!」「おりゃー!」
雷の嵐に巻き込まれてしびれる機械系の間をすり抜け、ゲーリングに突っ込む!
「…」「ぐっ…」ゲーリングがとっさに放ってきた小火球…Ⅳ号をもろに食らうが、大してダメージはない。無視して斬りかかった。
「どっ…りゃー!」左で袈裟に切り裂き、右の剣で胸元を貫いた。
「HEAL MMルーン」
わけわからんことを言って倒れるゲーリング。よし!
「さーて魔池は…うわっ」
ゲーリングの服…でいいのか?とにかく布を剥いでみると、下はなんかガイコツの中によくわからん機械がいろいろ収められていて、それがなめらかな細い紐みたいなものでつながっていて…で、そんな体のあちこちにちょっと肉がへばりついてうねうねしていた。正直気持ち悪い。
「うー…えー…魔池はこれかなぁ…ふんぐぐぐ」
奥にある四角い機械がそれだろう。気持ち悪さをこらえて手を伸ばしてもごうとするが、結構…固い…。
「ぐぐぐぐ…どりゃー!」ばきっ「あー!?」
力を籠めると魔池が真っ二つに折れてしまった!案外壊れやすいな!?
「うーん…これじゃあ使えないな…」
ため息をつくあたしの後ろでガシャガシャという音。見ればしびれていたリヤカー共が立ち直っていた。
「あーもうめんどくさい!」
あたしは二刀を振り回してそいつらをぶっ壊したのだが…戦闘が終わったころにはゲーリングの死体(?)はどっかに行っていたのだった。
「はぁ…」
ため息をつきながらレッドの街に帰るあたし。
あの後何回かゲーリングを倒したのだが、無事な魔池は結局一つも手に入れられなかったのだ。
ゲーリングを不意打ちで仕留めるには派手に破壊しなければならず、そうすると魔池は壊れてしまう。
上手く仕留めても慎重にはぎとらないといけないのでぐずぐずしているとほかのモンスターに襲われる。
「単純に手が足りないなこれは…」
仲間を探すしかないかもしれない。けどレッドのギルドにはあんまり人がいないし…
お兄ちゃんが強い女の子をほいほい集められるのはすごいことだったんだなぁ…
どうしようか?セルさん…は回復魔法は間に合ってる。
カスタムに行ってミリさんや志津香さんを誘ってみようか?もしくはアイスの街まで行ってお兄ちゃんに頼むか…
「でも、これはあたしが受けた仕事だしなぁ。まずは自分で仲間を探してみよう!」
そして翌日。
「ろくな人がいない…」
あたしは頭を抱えていた。
魔法や回復はあたしがいるからまあいいとして、戦士が一人…それからゲーリングから魔池を取り出すとなれば盗賊が居ればいいな、とギルドで聞いて回ってみたのだが…
「うん?ハイパービルで?済まんが護衛の仕事があってな」
「これからダンジョンでお宝を探すのよ。ごめんね」
「それどころじゃねーんだよ!カスパー私有林に幸福きゃん…」「おいバカ!」「おっと、なんでもねぇ!とにかく忙しいんだ!」
実力のありそうでまともな人はたいてい何かの仕事や自分の探索をしている。
「え?ハイパービル?ちょっと俺の腕じゃあ無理かなぁ…」
「お、おれ!俺はイケるぜ!」「お前レベル4じゃねーかムリだよ」
「へっへっへ…お嬢ちゃんがちっとはサービスしてくれるってんなら考えても「ぷち雷の矢!」ぐへぇ!」
「な?一人じゃ無理だろ?だからこのドギ様と組んで…おい待てって」
「キキッ…キキキッ…俺…手伝う…グヘッ(ナイフを舐める」
「ぐぴゅらあっあばーっあぴゃっぱー!!」
ヒマそうな人は弱いか下心があるかどう見ても怪しいかで…
「マスターこれ…」
「ま、仲間集めはいつだって大変なもんさ。悪いが紹介できそうなやつはいねぇぞ」
「うーん…」
これはカスタムやアイスに行くことも考えないといけないかなぁ…
あたしは仕方なくギルドを出て、とりあえず下宿に戻ることにした。
下宿でおばさんに困った困ったとぼやきながらカレーを食べたが、特に解決策が思いつかなかった。
こういう時お兄ちゃんはその辺を適当にうろついてたな、と思い出して特に目的もなくうろついていると、ワヨソさんの店が目に入る。
何か便利アイテムでどうにかなる…わけないか。せっかくなので入ってみよう。
「いらっしゃいませ…あら、エールちゃんじゃありませんの」
ハンモックのワヨソさんは相変わらず眠そうだ。
「こんにちはワヨソさん…なんかこう、魔物からアイテムを一瞬で剝げたりする道具ない?」
「そんなのがあったらシーフは商売あがったりですわー」
「だよねー…はぁ…信用出来て腕が立つ盗賊と戦士のペアがその辺に居ればいいのに…」
「あらん、呼んだ?」ため息をつくあたしの背後から声がかけられた。「え?」
振り返ると、そこには色黒で露出度の高い格好をしたどう見ても盗賊な女性が一人…
「って、ネカイさん!?」
「久しぶりねエールちゃん。リーザス以来?」
笑うネカイさんの後ろから顔に傷のある鎧の男が出てきた。
「おーいネカイ、世色癌はこれくらいでいいか…ん?君は…」
「あ、貴方は…こまわりくん!」
「ラークだっての!」
鎧の男…ラークは顔色を変えて言い返したのだった。