【二章完】ちょっと早めのエールちゃんの冒険   作:砂嵐36

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5.エールちゃんは打ち上げをする

ワヨソさんの店で買い物を済ませた後、あたし達は歩きながら近況について話していた。

「本当に久しぶりですね…レッドにはなんの用事でこられたんですか?」

「それがねぇ…」

ネカイさんが言うには、なんでも二人ともキースギルドで冒険者をしていたのだが、アイス周辺はここのところ平和そのものでめぼしい仕事がないんだそうだ。

昨年にあったハピネス製薬の工場がモンスターに占拠された事件もお兄ちゃんがスパーっと解決してしまったとか。

それで少し河岸を変えてみようということで、ハンナに移るつもりらしい。

「私もともとあの辺の生まれでね。わりと詳しいのよ。リーザスも考えたんだけど…ちょっとね」とネカイさん。

「へえー…じゃあここでは仕事はしないんですか?」

「いや、あてがある訳じゃないからな。道中で路銀を稼ぎながらのつもりだけど」

こまわり君…じゃなくてラークさんが答えた。ふーむ…

「あの~実はですね…」

あたしは魔池集めがうまく行ってないことを話した。

「…というわけで、あたしひとりだといつまでたっても終わりそうにないんで…良かったら手伝ってくれませんか?」

「報酬は頭割りね?私は構わないけど?」

「ああ、俺も異存はない。ハイパービルには一度行ってみたいとノアのヤツとも話してたんだ」

ちょっと懐かしそうな顔をするラークさん。

「ノア?」

「ノア・セーリング…いや、今はノア・ハコブネか。俺が前に組んでいた女魔法使いだよ」

「あー。ラーク&ノアって聞いたことあります。」

あたしの脳裏にラーク&ノアにあこがれた勇者気取り君に聖女候補として誘われ続けた苦い思い出が蘇った。

とはいえ、この人に罪はないよね…

「ちょっととんでもない怪物に出遭って、二人ともボロボロになって…なし崩しにペア解消になっちまったんだ。けど、この間再会できてな。元気そうにしてたよ」

しみじみと言うラークさん。

「へぇー。あ、苗字変わったってことは…」

「ああ、結婚して引退するらしい。相手はラジールの新都市長だそうだ…」

「あー。ラジールであった昔の知り合いってその子なの。都市長なんていい相手捕まえたじゃない」

ネカイさんが口を挟む。

「まったくだ。幸せになってほしいもんだな…」

ラークさんには別段ノアさんに対する未練はないらしい。ちょっと意外だな。

「話が逸れたな。というわけで俺たちは問題ない。いつから始める?」

「やった!明日からでいいですか?」

「いいぞ。ネカイもいいよな?」「ええ、問題ないわよん」

そういうことになった。

 

宿をまだ決めてないというのでうちの下宿に案内したところ、おばさんも問題ないという事なのでご飯を食べてそのまま泊まることになった。

半分道楽って言ってもたまには売り上げに貢献しないとね。

そして翌日からハイパービルだ。

「電磁結界!」「「ガガビビビーッ!」」

「よし!行くぜ!」「はいはーい」

あたしが毎度おなじみの電磁結界で雑魚共を痺れさせ、ゲーリングに二人が突っ込んでいく。

「…」「てりゃああああ!」「ざっくりー!」

身構えるゲーリングをラークさんが素早い剣撃で切り刻み、ネカイさんがチャクラムで首をはねた。

「ネカイさん!お願いします!」

「まっかせといてー!」

ネカイさんは指をこきこきと動かしてから小さいナイフを取り出して倒れたゲーリングにかがみこんだ。

さっきのラークさんの剣…斬り下ろしてから刃を返して斜めに切り上げ、そこで倒れたけどさらに切り下ろしまで行けそうかな。

わりかし強いっちゃ強いな…

剣もそんなに重くないものだし、基本的には柔らかい相手…鎧を付けてないモンスター相手を想定した速さ重視の剣術かなあ?

方向的にはアリオスさんの正統派な剣に似てはいるけどキレが段違い…まぁ比較対象が悪いか…

って、ぼーっと見ている場合ではないよね。

「どっこいしょっと!」

あたしは剣を抜いてびりびりしているリヤカーの基部に剣をねじ込んで捻って破壊した。

「はっ!たぁ!」ラークさんも起き上がりかけたザコにガンガン剣を打ち付けて倒している。

生き残ったほかのリヤカーやザコも二人で適当にボコボコにして回った。

そしてその後ろではネカイさんがゲーリングの身体に手を突っ込んでごそごそとやり…

「ん-…こうして…こう…やって…そりゃ!」

引っこ抜いた両腕には完全な形の徳用魔池が抱えられていたのだった。

 

その後もあたしたちはそんな感じの戦闘を繰り返していった。

ネカイさんが抜き取りに失敗することもあったが、順調に魔池は集まっていき…そして、三日目には魔池20個を集めることができたのだった。

 

「ひのふのみの…よし、徳用魔池、20個そろってるな。確かに受け取った。」

マスターが数を確認して棚に慎重にしまい込む。壊れないように梱包するのだそうだ。

「ってわけで、これが報酬だ。三等分でいいんだよな?ちょっとおまけしといたぜ」

とさとさ、とあたしたちの前にGOLDが入った袋が置かれる。

「やったー!」「あら、ありがと」「ああ、確かに」

「また頼むぜ…っと。エール。悪いけどまた頼みたい仕事があるから、明日ギルドに来てくれるか?」

「いいですけど…また変な依頼じゃないですよね?」

「失礼な…ちゃんとした奴だよ。ま、また明日な」「はーい、また」

手を振るマスターに背を向けて、あたし達はギルドから出た。

「このままお別れってのも味気ないし…せっかくだしどっかで打ち上げでもしない?」

「あたしいいお店知ってますよ!中華ですけど」

「お、いいな。久々に食べたい」

「よし、じゃあそこに行きましょ!」

「はーい!こっちです!」

あたしは二人を案内して李立酒家に向かったのだった。

 

「「「おつかれさまー!」」」

机にホイコーローやトロピカル餃子、ネギネギポーンなどいろいろな料理が並べられ、好き勝手に食べながらいろいろと話をする。

「むぐむぐ…3人でやったら結構あっさり終わりましたねー」

「そうだな。エールもあいつの妹ってだけあって剣も魔法も回復もできるのは驚いたよ。でも、一人でできることにはやっぱり限度があるぞ」

ラークさんが肉まんを割りながら言う。

「そうですねー…お兄ちゃんと冒険してた時はいっぱい女の人がいたからなぁ…」

「あーあの時はね。リーザス城に入るまでバーニングくらいしか周りに男いなかったわよね」

ネカイさんは葡萄酒をちびちびやりながらネギネギポーンをつついている。

「バーニングさん…懐かしいですね。あの人どこで何してるんだろう」

「ああ、あのシミターの男か?キースギルドをやめてどっかに旅立ったそうだぜ。西に行くとかなんとか」

「西って…ゼスかな?魔法使いじゃないのに…物好きねぇ」

「ゼスってそんなに厳しいんですか?」

前にミラクルさんのところから帰るときは別にそんな感じはしなかったけどな…

「大部分はちゃんとしてるんだが…魔法使いじゃないなら人じゃない、って思想の人もいるらしいな。土地柄にもよるけど…」

「へぇー…そういえば前に行ったとき、関所で魔法を使えるのか尋ねられてぷち雷の矢を見せたらあっさり通されたりしました」

アレは魔法使い以外立ち入り禁止とかそういうところだったのかもね。あんまりいい国じゃなさそうだなあ。

「そういえばお兄ちゃん達は最近どうしてるか知ってます?」

「あー。ランス?出てくる前に挨拶しとこうと思ったんだけどね。キースに聞いてみたらちょっと前から…ブハードって地下組織を調査する仕事をしてるらしいわ」

「ほえー…地下組織…ですか?」なんだか物騒だなぁ…まぁ、お兄ちゃんなら平気だよね。

「あいつも頑張ってるんだなぁ…俺も負けないぞ!ハンナで再出発だ!」

「はいはい、まぁ適当にねー」

「あたしも頑張るぞー!」

 

「それじゃあ二人ともお元気で!」

「エールちゃんもねー!」

「あいつに、ランスによろしくなー!」

そのあとも3人でいろいろ話をして、そのまま別れた。二人はMランドを通ってハンナに向かうらしい。

せっかくだしついて行ってMランドでちょっと遊ぼうかと思ったけど、サボってるときに結構行ったしね。

バルチック焼きそばももう売ってないらしいし…しばらくはいいかな。

「よし、あたしも明日から次の仕事頑張るぞー!」

あたしは気合を入れて宿に帰って寝たのだった。

 

そして翌日。

「こんにちはマスター。仕事って何ですー?」

「おう、来たかエール。実はお前が集めた魔池をな、リーザスの城下町まで運んでほしいんだ」

「へ?配達ですか?」

驚くあたしの前にマスターは一抱えほどの箱を置いたのだった。




この二人は今後さっぱり出てこないので、今後さっぱり舞台にならないハンナ辺りに移ってもらうことにしました
まあ組んだり組まなかったりして第二次魔人戦争くらいまでは無事に過ごすんじゃないでしょうか

ランスが出てこない話をしばらく書いて、ランスが持つ物語を推進させるパワーというものをようやく実感した気がします…
というか格上相手でも勝つんで話が面白くなるし、ランスがやりたくなったから、で何でもやらせられるのですごく動かしやすい…
正直悩みどころですが、行けるところまで頑張ろうと思います
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