【二章完】ちょっと早めのエールちゃんの冒険   作:砂嵐36

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6.エールちゃんはまた旅に出る

リーザス向けと聞いて、最初はまたリア様の差し金かと思ったが、話を聞いてみればあたしが集めた魔池を依頼主に届けてほしいという話だった。

魔池は職人さんがいらないカバーとかを外してコンパクトにまとめてくれたそうで、あたしのリュックにもギリギリ押し込めそうだ。

「まあそういうことなら…届け先はどこですか?」

「えーとだな、リーザス城下町の…情報屋I・NET。そこのアイ・コムって人だな」

「へぇー、情報屋ねえ…」

これからの時代そういう商売も必要になってくるんだろうか。

アイ・コムさん…どんな人かな…情報屋っていうからには胡散臭いおっさんなんだろうか?

「わかりました。旅費を差っ引いても結構な報酬ですし。早速明日にでも出発しますね」

「ああ、報酬は本人からもらってくれ。ちょうどリーザスはそろそろ王女の戴冠式だろ?ヘルマンを追い出した後だし、結構盛大にやるらしい。見物してきたらどうだ?」

「そうですね。向こうにも知り合いいますし…」

 

リア王女はあの後すぐにご両親の王様と王妃様を隠居させて自分がリーザスの実権を握ったらしい。

で、もろもろの手続きを済ませて、そろそろ女王に即位するのだそうだ。

うわーお兄ちゃん、女王様の恋人になっちゃうのか…でも本人は興味ないんだろな。

王様にはほかにも子供がいたらしいが…あんまりご飯がおいしい話ではないので詳しくは言わない。

けど、うん。まああの事件が起きたときにはもうだれも居なかったそうだ。はい。

そんな人に「お姉ちゃんって呼んでね!」とか言われても正直…怖い。

でもまぁ、城下町をうろつくくらいなら危険はないだろう。メナドとかにも会いたいしね。

 

下宿のおばさんやセルさん、ワヨソさんたちに挨拶をして回り、ついでにやかましいカオスはセルさんに預かってもらうことにする。

さすがにおばさんのところに置いておくわけにはいかないだろう。

セルさんも「女神ALICEのお膝元たるこの大聖堂ならば安全でしょう」とか言ってたし…

 

次の日の朝、あたしはレッドの城門を出発した。

一人で旅に出るのはカイズ留学に出発した時以来だ。なんだかもうずいぶん昔の事みたいで懐かしくなる。

北に向かえばすぐにホッホ峡に差し掛かる。前にお兄ちゃん率いるリーザス解放軍がヘルマン軍と大立ち回りした場所だ。

レッドとジオを結ぶ街道でもあるので、本道はだいぶ片付いてはいるが、封鎖されているわき道を覗けば壊れた鎧や折れた剣がその辺に転がっているし、もう少し行けば骨とかもあるそうだ。

戦争だから仕方ないとはいえ、あたしもここで何人か斬った。

後悔はないけど、あの人たちにもたぶん家族とかいただろうなあ…

「えーと…主よ?どうかここで死んだ人たちに憐れみを…だったかな?」

軽く手を合わせて冥福を祈りながらその場を通り過ぎた。

 

ジオは相変わらず賑わっていて、戦争の影響はまるで感じられなかった。

なんとなく前にミリーさんが働いていた武器屋に行ってみると、そこはなんとアイドルグッズの店になっていた。

ポップが置かれ、歌ラレラレ石やポスターなどのグッズが所狭しと並べてある…

あ、隅の方に一応武器もあるな…建物はそのままだし、商売替えしたのかな?

店内の掲示によると、1週間後に天満橋ありすちゃんと彼女がプロデュースするアイドル達のコンサートがあるそうだ。

ちょっと気になるけど、さすがにそこまでは滞在できない。今回はパスかな…

でも、ポスターを見ると大写しになってるありすちゃんに対してユニットの女の子たちの扱いはだいぶ小さいような…

注意して品揃えを見てみると、グッズのほとんどはありすちゃんのもので、ほかの子たちの分は結構売れ残っていた。結構かわいいのにな。

近くで男性二人が何やら話している。

「おっ、あったあった。ありすちゃんのアクスタ!」

「何件も回った甲斐があったな…でもそろそろ引退するんじゃ?」

「まだ発表はないけど…そういう匂わせはあるんだよな…今度のライブでもしかしたら…って」

「そうしたらアイドルブームもひと段落かなぁ…ほかの子たち、正直小粒だし…」

「カパーラちゃんとか可愛くない?」

「可愛いけどちょっとな…歌が…」

「あー。確かに効果でカバーしてるけどヤバいよなアレ」

男性たちは去っていった。

(どこの世界も厳しいんだなぁ…)

あたしは隅っこの値引きコーナーにあったお菓子を見る。

その辺で20Gで売ってるチョコボールにアイドルの子のキーホルダーがついて50G…が値下げで10Gになっている。

各アイドルの分あったようだがありすちゃんのはないな…

ちょうど甘いものが食べたかったのでチョコボールを2個買い、知らないアイドルのキーホルダーは捨てるのも忍びないので荷物に放り込んだが、いつの間にかどっかにいってしまった。

まぁキーホルダーはいつの間にか千切れてどっか行っちゃうもんだからね。仕方ないね。

 

ジオを出発してオクを通り過ぎ、ノースに到着した。

着いたのは夕方だったが、前は戦争のせいで静かだった通りにも今は人がごった返している。

こういうのを見ると、なんか頑張った甲斐があったなぁって思う。ヘルマンのバカ皇子に支配されてたらこうはいかなかっただろう。

例の変なビルも相変わらず変なことをしているようだ。

「がんばれー…がんばれー…」

なんとなく応援の念を送ってからその場を去った。

 

ノースからちょっと歩いてとうとうリーザスに着いた。相変わらずでかい町だ。

「メナドは城門に行けば会えるかなあ…ま、その前に荷物のお届けだね」

マスターのくれたメモの住所を探して歩くことしばし。

なんか全面メタリックな妙な建物が見つかった。

「えーと…ここかなあ?」

みれば看板に『情報屋 I・NET』と書いてある。間違いないね。

「ごめんくださーい。お届け物でーす」

店内に入ると、以外と広い空間にところ狭しとよくわからない四角い機械やモニターが積み重なっていて、それぞれをカラフルなつるつるのヒモが繋いでいた。

ちょっとゲーリングの体内に似てるな…

『…いらっしゃいませ、WELCOME』

奥からスーッと何か出てきた。プカプカ浮かぶボールにまたがった女の子…?

なにやらピッチリした服にショートパンツをはいている。

だれだろ?依頼主さんの娘さんとか?

「えーと、アイ・コムさん居ますか?」

「…」『はい、アイ・コムは私です。』

ボールから電子音が流れる。どこかからこのボールを通して話をしているのかな?

「えーっと…お届け物なのでハンコが欲しくて…直接出てきてもらえません?」

『いえ、ですからわたしです』

「いやあの…」「…たしです…」「え?」

「…わたしが…アイ・コムです…」

ボールに乗った女の子が、ちょっと涙目でこっちを見て、か細い声で名乗った。

 

意外だったなあ…情報屋がまさかこんな小さい女の子とは…

あたしが必死で謝り、アイさんも落ち着いたようでようやく話せるようになった。

『ALLRIGHT 魔池20個、品質に問題ありません。』

なにかの計器で魔池を調べていたアイさんが顔を上げる。

『こちら、報酬です』

差し出された金袋の中身を確かめて仕舞う。

「はーい、確かに。毎度ありがとうございます…ところで、魔池なんて何に使うんですか?」

『この設備の再起動に使います。BOOTStrap』

「?靴ヒモ?」

 

ちんぷんかんぷんなあたしにアイさんは説明してくれた。

へルマンが攻めてきたときにこの設備はめちゃめちゃに壊されてしまったらしく、その時も結構ピンチだったが通りすがりの戦士に助けられたらしい。

で、そのあと情報屋を立て直すために設備を直したのだが、初期起動魔力が確保できず、まだ動かせていないそう。

今でも動いている一部の設備で情報屋としての仕事はできているのだが、やはり性能が足りないらしい。

あたしが収めた魔池はそのためのもので、フル充魔すれば起動魔力を確保できるのだという。

それにしても…

「あのー…その戦士って緑色の服ででかい口でがはがは笑うような…」

『LAN,ランスをご存じなのですか。』

相変わらず女の子のピンチに出会うのが得意だなぁ…リーザス解放戦の時だよね?

いつの間に助けてたんだろ?

「ええ…うちの兄なので…」

『それは驚きです。彼は元気でしょうか…』

「ええ、この間会いましたけど元気にやってましたよ」

『いつかこちらに来ることがあったら顔を見せてほしいと伝えてください。お礼も言いたいので』

「ええ、いいですよ」

なんかその時は当然タグが面倒になりそうなことも要求しそうだけど…まぁいいか。

「ところで、その魔池。魔力を注ぐ人のアテはあるんですか?」

『残念ながら…NO PLAN。自分で少しづつ注ぐつもりです』

「あの…よかったら…」

 

「ふんぎぎぎぎぎぬおおおおおお!」

魔池に取り付けられた端子に向けて全力で魔力を込める。

『ALLRIGHT. その辺にしましょう』

アイさんの言葉に答えて端子から手を離す。魔法をぶっぱなすのとはまた違った疲労感だ…

「はぁ…どれくらい貯まりました?」

『11.3%ほどですね。』

「そんなもんかあ…」

『いえ、普通の魔法使いだと3%くらいがせいぜいなので、とても優秀ですね。たまに魔力を込めに来てくれると助かります。無論お礼はしますので』

「うん、わかった!じゃあしばらくリーザスで過ごそうかな…」

あたしはリーザスで何をしようか、色々と考えを巡らせたのだった。

 




以下、妄想です。

天満橋ありす
LV8/31
歌1 性技1 教育0

アイ・コム
LV14/26
情報魔法1 格闘1

評価が1200行きました、ありがとうございます
1上がるだけでもニヤニヤできる単純な思考をしているので
見ているだけで書く気力がわいてきます

これからリア戴冠式のクーデター未遂について書いていくつもりです
すでにリアは両親を隠居はさせて実権を握っていますが
なんか継承の儀式だの吉日を待つだのなんだのでまだ戴冠はしていない という設定でいきます
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