【二章完】ちょっと早めのエールちゃんの冒険   作:砂嵐36

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やっぱりろくに情報もキャラもいないレッドよりリーザスのほうが書きやすいですね…


7.エールちゃんは三人目に出会う

I・NETでの充魔作業にも報酬をもらい、外に出るともう夕方だった。

城門に行くのは明日にして今日は宿を取ろうか、と思ってその辺の宿屋に入ってみたのだが…

「えー!?普通の部屋は全部満室?」

「ええ、もうすぐ戴冠式がありますからね。見物にいらした方で一杯なんですよ。特別室なら空きがありますが…」

「うーん、仕方ないか…特別室って一泊いくら?」

「8000Gになります」

「アホか!そんなんに泊まる人いるわけないでしょ!」

「そういう方もいらっしゃいますので…またのお越しをお待ちしています」

あたしは宿屋を出た。別に高級ホテルとかそんな感じではない普通の宿屋でこんな感じとは…がめついというかたくましいというか…

どーせ特別室って言っても普通の部屋をちょっと豪華にするだけだろうに…

その後、何軒か宿屋を回ってみたが似たような状況だった。

「困ったなあ…あ。そうだ。奈美さんのところにも行ってみようか」

奈美さんの宿屋…氷砂糖って言ったっけ。

いい立地だったし絶対満室だろうけど、この際従業員部屋とか物置でいいから泊めてもらえないか頼めるかもしれない。

そう思って足を向けると、奈美さんはいつも通りほうきで道を掃除していた。

「こんにちは奈美さん!」

「あら…貴女は…エールさん。どうなされましたか?」

「実は…」

あたしは宿が見つからないことを話した。

「はぁ…なるほど。ところで、ランスさんはおられないのですか?」

「今回はあたし一人なんですよ」

「そうですか…」奈美さんは一瞬頬に手を当ててから、

「では、お部屋をご用意しますね。」

「え?いいんですか?」

「うちも今ほぼ満室なんですが…一部屋でしたら大丈夫です。ランスさんがおられると…部屋を分けないといけませんので…」

「ああ…そういう…」

お兄ちゃんが居たら絶対おっぱじめる。そしたら面倒だからね。タグとか。

「じゃあお願いします!お代は…」

「いえ、ランスさんにツケておきますので大丈夫ですよ」

「え?いやあたしお金は…」

「いえ、大丈夫ですから…ね?」

「あ、はい…」

「ではこちらに…」

リーザスの女のひとは迫力がある人が多いんだろうか?

まあ、別にいいか。ともかく宿は取れた。

通されたのはリーザス解放戦の時に使わせてもらった部屋だった。

もしかして、この部屋はずっと開けてあるのかもしれないなあ…

前にお兄ちゃんが使ってた部屋だって言ってたし。

いじらしいというかなんと言うか…お兄ちゃんにたまに顔を出すように言っとこうかなあ…まあ聞くわけはないけど…

 

翌日、あたしは城門に向かう前にその辺をうろつくことにした。

表通りを歩いているだけでいろんな店が目にはいってくる。

服屋に武器屋に道具屋に土産物屋…おっと、パルプテンクスさんの酒場だ。

リーザスの城下町をうろつくのは久しぶりだし、懐も奈美さんのお陰で余裕がある。あちこち見て回るのもいいかもしれないな。

城下町の門の近くまでやってきた。物音がしたので見てみると、脇にあるお店の前で大工のおじさんたちがかけられていた看板を下ろしていた。

下ろされ、脇に置かれた看板には『藤崎レベル』とある。レベル屋さんだったのかな?

となりにおいてある看板は、布がかけられていて半分は見えない。『レストラン…』という文字が見える。

…レベル屋さんがつぶれたのを居抜きで借りて飲食店をやるのかな。

今度様子を見てみよう。

 

一通りうろついて満足したので城門に向かうと、門の前に見覚えのある青髪の少女の姿を見つけた。

「おーい!メナドー!」

「えっ…あれ?エール?どうしたの急に…」

そしてきょろきょろと辺りを見回す。

「ランスは…?」

うーむ。またこれか。まぁ仕方ない。

「あーうん。今回はあたしだけ…」

「そっか…あ、戴冠式を見に来たの?」

「うん。その前にリーザスをあちこち観光しようと思って…」

「じゃあそろそろ僕のシフト終わりだから案内しようか!」

「いいの?じゃあお願い!」

「うん!じゃあちょっと待っててね!」

メナドは城門の奥に入っていき…鎧から平服に着替えて戻ってきた。

腰には見覚えのある剣…クア・パッソが揺れている。

「その剣、まだ使ってるんだ?でも門番してるときは普通の剣だったね」

「いやぁ、周りが制式剣使ってるところでこれ吊ってると目立っちゃって…でもランスからのプレゼントだから。大事にしてるんだ!」

「へぇー…」

いい子だ…なんでこんなまともな子がお兄ちゃんに惚れてるのかわからないな…

でもまぁ、なんとなくこのままの方がいい気がするし、ほっといていいだろう。

「あ、お昼はまだだよね?どうする?」

「あたし、一回メナドのちゃんとした料理食べたいなー」

「え?もともとお昼は自炊するつもりだったからいいけど…そんなのでいいの?」

「もちろん!」

 

メナドの家に上がらせてもらい、お昼ご飯をごちそうになった。

市壁の側にある普通の一軒家で、お父さんは事務の仕事に、お母さんはパートに行っていて留守なんだそうだ。

出してもらったメニューは厚焼き玉子に芋の煮っころがし、豚汁と言った普通のものだったが大変美味しかった。

特に厚焼き玉子がやばい。ふわふわしていてほんのり甘く、罪の味がする。

お兄ちゃんもオムライスとかうどんとか、卵料理が好きみたいだからきっと気に入るよと言ったら顔を赤くしてくねくねしていた。

 

その後、お腹ごなしに歩きながらリーザスを案内してもらうことになった。

メナドの家の近くにあるマーガリン英雄墓地にはたまにゾンビが湧くらしい。ゾンビ退治の仕事を手伝ってもらい、そしてピンチになった時に助けられたのがお兄ちゃんとの出会いだったそうだ。

話を聞いていると、どうもピンチになったのは誰かの差し金のような気がするな。誰とは言わないけど。

メナドは来たついでに、と割と新しい墓に軽く手を合わせていた。たぶん死んでしまったという弟さんのだろう。あたしも並んでお祈りをした。

 

墓地から中央公園に行く途中にあった廃屋は、キエン屋敷と言って有名な幽霊屋敷なのだという。

以前は夜な夜な女の子の悲痛な声が響いて来たりしたそうだが、ここのところはそういうことはないらしい。

なんか除霊でもされたのかなぁ?恨みが晴れたならいいことだと思う。

 

中央公園はなんてことない公園だった。さすがにアイスのロマンス公園よりはだいぶ大きいな。

グルーっと一周してみると、やたら大きいゴミ箱が置いてあった。ポイ捨てでも問題になっているのだろうか?

なんとなく覗いてみると色々ながらくたが捨ててあった。

折れた神官ソードの柄とか破れた帽子とかマルガリータとか…なんか見覚えがあるな。ってかあたしが捨てたヤツじゃないだろうか?

不思議なゴミ箱だなぁ…

その脇になんかこう…形容しがたい金属製の物体がある。なんだこりゃ?船?

「エール、ゴミ箱を覗くなんて行儀が悪いんじゃない?」

「いや、ごめん…なんか変なものがあってさ」

「なにこれ…あ、名前が書いてある。『63式特雷型駆逐艦』…?」

「なんだろうねこれ?」

やたらクールタイムが長そうだし、使い物にはならないだろう。

木刀持った足の速いヤンキーにでも持たせればちょっとは役に立つかもしれないが…

「男の子向けのおもちゃじゃない?」

「ふーん、変なの」

あたし達は興味ないので放っておいた。

 

そのあと、門から出てメナドがロードワークに使っているというコースを一回りしてみることにした。

るろんただのげこげこだのが出てくるけど、あたし達にとってそんなの障害にもならないよね。

すぱすぱすぱーんばしーんぼかーっと二人でやっつけて進んでいく。

「エール、その…だいぶ弱くなってない?いや、十分強いけどさ」

メナドがクア・パッソを拭いて収めながら聞いてくる。

「あのオルケスタの風を浴びた時と比べられても困るよ…」

あたしも双剣をすちゃっとしまって答えた。

「あはは、そうだよね…僕もあのあと結局レベル25くらいに戻っちゃったよ」

「でもメナドは相変わらず強いねぇ、騎士にでもなれるんじゃない?」

「いやぁ、僕なんか無理だよ…あ、見て。あの洞窟なんだけどさ…」

メナドがなんてことない丘にぽかっと空いた洞窟を指さした。

「しばらく前は盗賊が住み着いてたんだけど、だいぶ前に誰かに退治されて居なくなったんだってさ。

で、洞窟の奥にコンクリ男が居るらしいよ」

「コンクリ男?ストーンガーディアンみたいなの?」

「いや、首から下をコンクリートで固められた男。ずっと昔からそのままなんだってさ」

「えー…なんで死んでないのその人…ていうかずっとっていつから…?」

「さぁ…でも、たまに親衛隊の子がご飯あげてるみたい」「へぇー…」

世の中には変な人がいるもんだなぁ…

 

そのまま道なりに進んでいき、ALICEMANの石碑を過ぎたあたりところで曲がってリーザスに戻った。

ここで直進してしまうと、ハチ女の大群とかF・リンクスとかが居る地帯に突っ込んでしまうのでシャレにならないらしい。

それくらいならともかく、ウルンセルというよくわからん生物の巣もあって、踏み込むとまず戻ってこられないそうだ。

ちょっと気にはなったけど、おとなしくリーザス城に戻ることにした。

そのあと、もう夕方だったのでメナドの家にまたお邪魔して、ご両親と一緒に夕食をいただいた。

部屋は空いてるから泊っていってもいいといってくれたが、そこまでしてもらうのは悪いよね。

弟さんの部屋だろうし…丁重にお断りして、宿に戻った。

 

「ふんぎぎぎぎぬぐおおおおおおお!どりゃあああ!」

翌日、あたしは美少女らしく充魔作業をこなした。

このペースなら戴冠式の前にはどうにかフルチャージできるだろうか。

お礼をもらってI・NETを出たらちょっとお腹が空いたなぁ…。

「どうしようかな、パルプテンクスさんのところに行こうかなぁ…」

でも、あそこの料理おいしいけどちょっとくどいし、またいろいろ意味深なこと言われながら食事するのもなぁ…

そんなことを考えていたら、先日見かけた新装開店準備中のレストランを思い出した。

「せっかくだし行ってみようかな!」

確か門のすぐそばだったはずだ…まだ空いてなかったらほかのところを探せばいいや。

そんなことを考えつつ足を向けてみると、

「いらっしゃいいらっしゃーい、新装開店だよー。おいしいよー」

「日本…JAPAN風のお料理もありますよー、ふぅ、お客さん来ないねぇ、健太郎君」

「まだ始めたばかりじゃないか。くじけちゃいけないよ、美樹ちゃん。…あっ、そこの茶色いおじょーさん。どうですか!おいしいですよ!」

おそろいのひよこエプロンを付けた黒髪の男性とピンク髪のほわほわした女の子が客引きをしていたのだった。




健太郎と美樹が飲食店を開くのは本来タイミング的にもう少しあとなんですがまあ何かあったんでしょう
この飲食店の名前とか調べたけどわからなかったので適当につけようかと思います
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