【二章完】ちょっと早めのエールちゃんの冒険   作:砂嵐36

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10.エールちゃんは巻き込まれる

いよいよ戴冠式の当日だ。

町に出れば通りのあちこちが浮かれポンチな感じに飾り付けられ、出店が出て土産物や食べ物を売っている。

リア女王戴冠記念コイン、ペナントに饅頭、おせんにキャラメル、◯い恋人のパクリみたいなやつ…

はぁー。こりゃお祭りだわ。でも、こういう雰囲気は結構好きなんだよね。

「むぐむぐ…うん、お祭り味だわ」

普段より大分高いイカマン焼きなどをかじりつつ歩いて行く。

…お、スズラン亭の支店が鈴カステラの屋台出してる…けどすっごい行列…残念だけどパスかな…

その隣を見れば、美樹さんたちが店の前でたこ焼きを売っていた。

「いらっしゃいいらっしゃーい、美味しいたこ焼きですよー…はぁ、お隣はすごい繁盛してるなあ」

「人気店の出店らしいですね。美樹、めげずに頑張りましょう」

「そうだね!あ、エールさん!」

美樹さんがこっちに向かって手を振っている。見つかってしまったら仕方ないね。値段も良心的だし…

「一つ…いや二つくださいな」

「はい、いつもありがとうございます。」

Gを渡して日光さんから袋を受け取る。

「健太郎さんは中?」

「うん、今がんがん焼いてるよー。もう少し貯まったら箱に詰めて売り歩きに行くんだー」

美樹ちゃんみたいなぽわぽわした子が売り子なんてしたら危ないんじゃ…と思ったが日光さんがいるか。なら平気かな。

たこ焼きも珍しいし、値段もそこそこで味もいい。きっと売れるんじゃないかな。

「それじゃーがんばってねー」

「はーい。お祭り楽しんでねー!」

 

たこ焼きとイカマン焼きとまんごー飴とチョコバナナとバルチック焼きそばを持ち、リア様のお面を頭に引っ掛けたあたしが正門前に着くと、既にメナドが待っていた。

ちょうど市中警備のシフトを終えたところなのか、まだ鎧姿だ。

「あ、来た。うわぁ、エールずいぶん買ったねぇ!」

「えへへ…お祭りだからね!メナドの分もあるから一緒に食べようよ」

「いいの?じゃ、こっち来て」

メナドの案内であたしは正門に向かう。見張りをしていた目付きの鋭い男にメナドが近寄っていき色々話す。少し長引いてるな…?

あ、戻ってきた。

「お待たせー。入っていいって。」

「時間かかったけど何かあった?」

「いや、門番してるの知らない人でさー。僕たちが今日入ることは上に許可取ってあったんだけど伝わってなかったみたいで。でもどうにかなったよ。」

「ふーん。」

こんな忙しい日だ、そんなこともあるだろう。いろんな所から応援が来てるんだろうな。

あたしたちは正門を潜り、門の脇、コロシアムのそばにある地味な建物に上がり込んだ。

「こっちだよー」「うーん狭い…」

狭苦しい通路を抜け、急な階段を登って梯子を上がるとそこは屋上だった。

一応有事にはここから矢を射たりするつもりはあったのか、凹状の胸壁がある。

ついこの間あたしたちに攻められたときはまるで役に立たなかったけどね。

でも確かにいい場所だ。その辺にある木箱を引っ張ってきて腰掛けると大通りと城門がよく見える。

「確かにここはいい席だなー…うわぁ、ものすごい人出。路地までぎっしりだよ」

「こうなるとたぶんスリとか置き引きが増えるんだよねー…守備隊も街中に結構駆り出されてさ。その分警備に手が回らないから、周りの街から応援を呼んで警備してもらってるんだ」

「ふーん。さっきの門番の人もそうなのかな?」「たぶんね。見たことない人だし」

あたし達はいろいろとしゃべりつつチョコバナナをかじって時間を潰した。

「で、そしたらお兄ちゃんが貝殻を…」「あはは…ランスは変わんないね…でも元気そうで…」

ずずん、と音がして、あたりが少し震えた。

「…ん?何今の?」「なんだろ…え?城門が…閉まってる?」

見れば、城門の頑丈な格子が下ろされている。これじゃパレードが出発できないけど…

「…儀式の手順か何か?」

「いや、そんなことは僕も聞いてないな…どうしたんだろ?」

「……なんとなく、嫌な予感しない…?」

「うーん、そうかな…じゃあ、一応様子を見に行こうか。」

メナドは残りのチョコバナナを口に押し込んで梯子を降りた。

正直勘違いの可能性はあるけどね。用心にしくはない。

あたしが梯子を下りると、メナドは更衣室から自前の槍と剣…クア・パッソを持ち出していた。

「メナド、それ持ってくんだ」

「念のためだけどね。なんでもなかったら…僕たちが心配症だったってことで」

「そうだね。一応ね」

確信が持てないままあたし達は、詰所の扉を押し開けて外に出た。

城門の外からの喧騒に混じって聞こえてくるのは、兵士たちが鎧をガチャガチャ言わせながら城内を走り回る音。

「リア王女はどこだー!」「探せー!」「こっちにはいないぞー!」「必ずいるはずだ!」

そしてリア様を探して怒鳴り合う声だ。

「「………」」

あたし達は黙って顔を見合わせた。

どう見ても反乱です。本当にありがとうございました。

「…た、たた大変だよ!軍はなにを…って城の外だ!どうしよう!リア様を守りにいかないと!」

メナドは槍を構えて飛び出しかけ、遠慮がちに振り向いた。

「あ、エール…その…」

「水臭いこと言わないでよ。あたしも行く。」

あたしは外していた双剣を腰に差し直した。

「ありがとうエール!」

「いいよ、お礼はリア様からもらえるだろうし。それでどこに行くの?」

「まずはリア様の居室かな!行こう!」「おー!」

あたし達は詰所から飛び出して右往左往する兵士たちの間に突っ込んでいった!

 

「でりゃあああああ!」槍を構えて邪魔な兵士に突っ込むメナド。

「うわっ!なんだこいつ…ぎゃあっ!」

「ぐっ!本物の守備隊が残ってやがったか!」

一人突き倒して、もう一人に叩きつけた槍は相手の槍に受け止められた。

「ほいっと」「げぼっ…」あたしはその兵士の背中をグサッとえぐって仕留める。

「くそっ!」もう一人残った兵士は槍を捨てて逃げだしたが、

「逃がすか!雷の矢!」「ぎゃっ!」「えいっ」

魔法でダウンした隙にメナドが駆け寄ってトドメを刺した。

「この人たち、そんなには強くないね」

「うん、まあさすがにヘルマン軍と比べるとね…ん?」

メナドが振り向いた方を見ると、向こうの廊下を赤い服の忍者が走っていた…って、かなみさんじゃん。

「くっ!」「待てー!」「逃がすな!王女の部下だ!」

そして兵士達に追いかけられている。

「おーい!かなみちゃーん!」

「え!?メナド!?それにエールも!?」

気がついたかなみさんがこちらに走ってくる。

「ちっ、仲間か!おい!他の連中を呼んでこい!」「はっ!」

兵士たちの一人が反対方向に駆け出した。

「まずいなあ、仲間が集まってくる前にやっちゃおう!」

あたし達はかなみさんと入れ違いに兵士達に突っ込んだ!

 

「たぁあああ!」メナドは小柄な体で槍を振り回し、兵士達を牽制する。

「うわっ!」「くそっ、意外と力があるぞこの女!」「囲め囲め!」「くっ…」

兵士の質は高くはないが、さすがに三人相手にするのはきついかな。こっちはこっちでやらないとね。

「おいガキ!おとなしくその忍者を渡せ!」「剣を捨てろ!」

こっちにも残りの兵士達がにじり寄ってくる。

あたしは肩をすくめて素直にゆーっくりと双剣を鞘にしまい…

「電磁結界!」「「ぎゃあああああっ!」」

こっそり唱えた魔法をぶっぱなした。殆どはそれで倒れたが、隊長格とおぼしき男は一人だけ立っている。

「魔法だと…くそっ…!……げはっ…」

そいつは踵を返して逃げようとしたが、その首筋がかなみさんの忍者刀で掻き斬られた。

よし、こっちは片付いた。

目を転じれば槍を放り投げて間合いを取ったメナドが剣の柄に手を添えていた。

腰を落とした姿勢からクア・パッソが抜き放たれる!

「…っ…!クア・ル・レーン!!」

「「「ぐああああああ!!!」」」

曲線を描く剣撃の嵐が兵士達を吹き飛ばした。

ひゅー。いつもながらきれいな技。リックさんのバイラウェイに比べるとさすがに密度は劣るけどね。

「ふぅ…よし。かなみちゃん、大丈夫?」

「うん、ありがとう二人とも…メナドはともかくなんでエールがここに…ってそんな場合じゃないわ!」

「そーですよね。反乱?クーデター?」

「それが…」

 

かなみさんの言うところには、どうやら他の町から派遣された都市守備隊がまるごと刺客の集団に入れ替わっていたらしい。

恐らくはリア様の政敵、どこかの貴族の差し金だそうだ。

「今はリア様達は地下の隠し部屋に籠っているから安全よ。預かったこの鍵で門を空けて軍と合流できればすぐに鎮圧できるはず。それで門に向かってたんだけど…」

「兵士が思ったより多くて突破できず逃げてたのね。」

「ぐっ…うん。そうなの…」

「まああの数じゃね…じゃあ、僕たちも一緒に行くよ!」

「うん、お願い。三人ならなんとかなると思う。」

「よーし!行こう!」

あたし達は門に向けて走り出したのだった。




クア・ル・レーンは見まねらウェイからの派生なので、たぶん連撃技。
優美な曲刀のクア・パッソで繰り出すのでたぶん曲線の軌道、という感じでこんな描写にしてみました。
R10でも実装してくれればよかったのに…AP累積1倍2連撃とかでいいので…

反乱の内容についてはまあ妄想ですが、ことあるごとに反乱が起きてるリーザスなので政敵の貴族の一ダースや二ダースおるでしょう。
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