※この健太郎たちはまだ異界の門で日本に帰っていません。
年表からちょっと順番が前後しています。
「…ということなのよ」
リーザス解放戦のあらましを語り終えたあたしは、お茶を一口すすって湯呑を置いた。
「へぇー…エールちゃんってすごいんだねぇ…」「うんうん」
美樹ちゃんと健太郎くんが感心したようにこくこく頷く。
お姉様…リア様がお兄ちゃんの事は伏せてほしいと言っていたので、
解放軍リーダーがお兄ちゃんだったことと、カオスとお兄ちゃんが結局どうなったか、についてはぼかしてしゃべったのだがどうやら通じたようだ。
「…ええ。本当に…ところでエールさん。」「なんですか?」
冷静な顔のまま日光さんが尋ねてきた。
「話に出てきた魔剣カオスでしたが…言葉を交わしたのですよね?どのような方でしたか?」
「一言でいえば…神官フェチのスケベ親父かな」
「…なるほど、話が突拍子もないので少し信じ難かったのですが…本当のようですね…」
日光さんがため息をついた。まあ簡単には信じられないのもわかる。それにこの反応は…。
「日光さん、カオスと会ったことが?」
「ええ。以前に縁がありまして。しかしジルと一緒に次元の狭間にですか…ある意味本望ではあるのかもしれませんね…」
お茶をすすって窓の外を見る日光さん。
千年封印されてたカオスと知り合いって…少なくとも千年以上生きてるってこと?
うーん。そんなに古い知り合いなら場所を教えてあげたほうがいいかもしれないな。
「あの、カオスが心配ですか?」「いえ全く」「あ、はい」
きっぱりどうでもよさそうだった。
「いえ、どうせそのうち戻ってきますから。」
「はぁ…」
日光さんが少し微笑んで答えた。信頼…?みたいなものはあるらしい。実際あたしにくっついて戻ってきたけどね。
『次元の狭間で永遠に漂う、などという退屈な末路をあの『神』が許すとは思えませんし…』ぼそっ
小声で何か言ったがよく聞こえなかった。
「え?どうかしました?」
「いえ、なんでもありませんよ。それよりも、ミラクルという魔法使いについて教えてください」
「うん、そうそう。どこに住んでるか教えてください。」「教えてくださーい」
身を乗り出してくる三人。
「うーん。あの時はゼスに魔法テント張ってたけど、あの時も世界中ふらふらしてるって言ってたし、今は異世界含めてふらふらしてるだろうからなぁ…」
「連絡する手段はないのですか?」
「別れる時に聞いてみたけど、『用があるときは余から連絡するゆえ、不要』だってさ。」
「うーん…そうかぁ…わかんないか…」うなだれる美樹ちゃん。
「でも、手掛かりには違いないよ美樹ちゃん。あの物知りのおじいさんが言ってたゼスに帰る手掛かりがあるって話は本当だったんだ!」
「物知りのおじいさん?」
「ええ、北の賢者と呼ばれる私の古い知り合いで、深い知識を持っているのです。尋ねて帰る方法を聞いたのですが…」
「『ゼスにその手段はある…もっとも、今は不可能だがね。詳しい場所を言っても意味はない。いずれ分かることだ。』だったかな?
それで、とりあえずゼスを1年近くうろうろしたんだけど、手掛かりはさっぱり見つからなくて、そのうち魔物によく襲われるようになっちゃって。逃げてきたんだ」
「へぇー…はぁー。そうだったんだ…」
人に歴史ありというか、この人たちこんなポヤポヤしてるように見えてとんでもない冒険をしてるんだなぁ…
「うーん。でもミラクルさんを探し出すのは簡単には行かないよねぇ…」
「そうだねぇ…どこかに元の世界に帰るための装置とかあればいいんだけど…」
…ん?帰るための装置?
あたしはミラクルさんと一緒にこの世界に帰還した時のことを思い出した。
ほわんほわんほわん(回想の音)
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「ぷはー…ようやく人心地着いたー…」
ミラクルさんの魔法テントにあるお風呂を借りて久々に熱いシャワーを浴び、用意された下着と服(どれも真っ黒だった)に袖を通して脱衣所から外に出ると、机の上に置かれていたカオスがそのあたりをきょろきょろと確かめていた。
「うーむ、儂ら本当に帰れたんじゃのう…お嬢ちゃんと一緒に化石にならずにすんでよかった…」
セクハラソードも感慨深げだ。
がっちゃがっちゃと音がして、ガイコツが運ぶ玉座に腰掛けた女の子がテントに戻ってきた。
「うむ、着替えは済んだか。エール・クリアよ」
この、ちょっとぶかぶかなドレスに身を包んだ女の子がミラクル・トー。
ゲートコネクトで彼女がサウルスモールと呼ぶ異世界に赴き、偶然出会ったあたしたちをこの世界に戻してくれた恩人だ。
「はい!ありがとうございました!」
「うむ。異世界で出会ったときには原住民かと思って面白くなりそうだと思ったのだが…別の方向で面白くなりそうだな。それに…」ミラクルさんがちらりとカオスを見る。
「魔剣カオス…人類が魔人に対抗するためのほぼ唯一の手段…くくく…」
「うわぁ…なんか嫌な視線で見られとる…」
「あのー…できればアレお兄ちゃんの剣なので…」
「む?ああ、わかっている。持ち主がいないならば余がふさわしい男を探して下賜するのもやぶさかではないが…使いこなせる人間の手にあるのなら、手を出す必要もあるまい」
礼にそれを寄こせ、とかは言わないでいてくれるらしい。
「しかし魔剣の使い手、ランスと言ったか。くくく、興味深い…さしづめカオスユーザー…いや、カオスマスターか。…我が騎士の一人にふさわしいかもしれんな…」
何やらニコニコと盛り上がっているミラクルさん。お兄ちゃんに興味を持ったようだが、たぶん害はないだろう。
それになにより美人だしね。きっと喜ぶ。
「さて、エール・クリアよ。少し確かめたいことがある。こちらに来い」「はーい」
ミラクルさんの後について魔法テントの外に出ると、そこは石造りの大きな部屋だった。
あちこちに何かの機械やその残骸、何に使うかよくわからない道具や箱なんかが転がっている。
「ここどこなんです?空気からして…地下?」
「ゼスのフルーツ遺跡という迷宮の奥深くにある隠し部屋だ。現在では失われた魔法装置や遺産などが保管してあった…余が発見し、調査している。」
よく見れば入り口をガーディアンが守っている。魔物避けだろう。
「ところでエール・クリアよ。そこに立つがいい」
ミラクルさんが何か…高さと幅2mほどの立っている輪っかにいろんな機械や管が繋がったような…よくわからない装置を指さした。
「へ?なんですこれ?」「いいから立て。すぐにわかる。」
あたしがその装置の前に立つと、何やら機械はフォーンと音を立てて光って動きはじめ…プスンと何事もなく止まった。
「ふむ、やはりなにも起きんな。」
「…なんなんですこれ?」
「異界の門と言われる装置だ。帰還用のな」
「異界の門?帰還用?」
「うむ、この門の前に異なる世界からの来訪者が立った場合、その者が元居た世界への門を自動的に開く仕組みになっている。
余はこの門の働きを解析し、ゲートコネクトの魔法を編み出したのだ」
「へぇー…あ、じゃあ何も起こらなかったのは」
「お前は間違いなくこの世界の存在ということだ。一応確かめたくてな」
「そっか…」
変に動いてまた別の世界に飛ばされたりしなくてよかった。
あたしは胸をなでおろしたのだった。
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ほわんほわんほわん(回想終わりの音)
「あ!異界の門!」
「え?」「なんですかそれは?」「ええと…」
あたしは異界の門について3人に話した。
「じゃ、じゃあその門の前に立てば日本に帰れるってこと!?」
「分かんないけど…」「可能性は高そうですね…」
「うわーっ!エールちゃんありがとう!」「ぶわっ」
美樹ちゃんに抱き着かれて礼を言われる。
「私、日本にどうしても帰りたくて…帰りたくて…うっ…ひっく…」
うわー、泣き出した。どうしよう…
「ほらほら、美樹ちゃん泣き止んで。うれしいことがあったんだから喜ばないと。」
「うん、そうだね!健太郎君!」
うわっホントに泣き止んだよ。
「では、まっすぐゼスのフルーツ遺跡に…いえ、サーレン山に寄ってヒラミレモンを確保してからですね。ヘルマン経由で向かいましょう」
「よーし!早速明日には出発だ!」「うん!」
盛り上がる三人を眺めていて、あたしは一つ決心をしていた。面白そうだしね。
「あ、エールちゃん!どうお礼をしたらいいか…」
「いや、お礼なんていいよ。それよりも…」
あたしは一つ咳ばらいをして、
「あたしも、その旅について行っていいかな?」
ミラクルはこの装置を発見してどういうものなのか解明し、
そのへんからポリ系モンスターを捕まえてきてこの装置の前に立たせて異界の門を開きました。
たどり着いたのがポリポリワンです。
その後、この装置を解析してゲートコネクトを開発し、自由に門を開けるようになりました。
という妄想です。
健太郎一行がホ・ラガから帰る方法についての情報を得てから実際帰るまで結構間が開いているので、あんまり詳細なヒントは教えてもらえなかったから、
他にたくさんの世界があるのに次元3E2にまっすぐ帰れたのは門の方にそういう機能があるから、という想定です。
カオスを持って帰ったことについては三人に教えてません。