「うーーーーーーーーん…」
あたしはマルグリッド迷宮一階の片隅で腕を組んで唸っていた。
目の前には四つの台座と岩の扉。回りにはちょうど誰もいない。
噂は聞いたことがある。マルグリッド迷宮の一階には曰くありげな四つの台座と扉があり、どうやっても開けられないのだとか。
おそらく鍵になるなにかを捧げねば開かないのではないかと言われていて、
奥にはものすごいお宝がある、とか、魔人やとんでもない怪物が封じられている、とか、別の世界への入り口だ、とか。いろんな説が唱えられている。
あたしもいろいろ想像して、周りの人と議論して楽しんでいた。
そんな扉なのだが…めっちゃ開いている。
あたしが一階をうろついたあと、この岩戸の前にたどりつき、
「これが噂の台座と扉かー。へぇー…んぎぎ…開かない。」
「まぁいいや!ちょうどいい高さだし座ってピロシキでも食べよっと」
などと台座にお尻をのせた瞬間。
ぱかーっと軽い音を立てて開いてしまったのだ。
「どうしよこれ…」
とりあえず手元のピロシキを全部食べて、手に着いた油をよく拭いてから頭を抱えた。
まさかピロシキを食べているスーパー美少女神官戦士が鍵だったとはな…ってんなわけないでしょ。
しかし実際扉は開いている。うーん。この先には何があるのか。そりゃあ気になるけど…
やっぱ引き返すべきだよな。こんな未調査区域に一人で突っ込むなんて危ないよ。何があるか分からんし…
と思って顔を上げると、
『試練の間/勝てばお宝GET!☆おすすめ☆』
などとセンスがない感じのカンバンがいつのまにか立っていた。
「…えー……どうみても怪しいって…それに試練?死んじゃうかも…」
あたしがひとりごちるが早いか、
『簡単!』『豪華賞品プレゼント!』『本年度死傷者0!』『実際安心だ』『ただいまサービス中♥️』『AL教お墨付き!』どすどすどすどすっ。
どこからともなく飛んできた看板が次々に突き立った。
えー…ええー…こんなんでいいのか…ほんとに…ほんとにこんなんで…
あたしの奥の奥でなにかがちょっとだけ頭を抱えたような気がした。
…………………………まぁ…仕方ない…入るか………。
そこはかとなく神聖な雰囲気を感じないでもないし、この気配はなんとなく覚えがあるようなないような。主にハイパービルとかで。
あたしはゆっくりと慎重に扉をくぐった。
「…」『…』
あたしは黙ってそこにいる…人?と見つめあっている。
扉を潜ると、どこかでみたような光に包まれた空間が広がっていて、目の前には神聖なオーラを全身から放つ、豪奢な衣装を纏った金髪碧眼の神々しい女性がにっこにこ笑いながら立っていた。
ていうかまたこの人か…人なんかな?まあそれはおいといて…
この人、明らかにタッチ違うし、なんかそこそこ等級の高い神様なのかもしんない。とりあえず女神さまと呼んでおこう。
「あの、何か…」
またプロレスまがいのことでもさせられるんだろうか…あたしが声をかけると、仮称女神さまが笑顔のまま手を前方にかざし、急にあたりの光が強まりはじめた。
「えっ?まさかもう?そんな急に…」
慌てて武器を構えるあたしの前に光が集まり、収束して…
「あなたに会えてHAPPY!」
幸福きゃんきゃん が1体 あらわれた!
「…えーーーー…」
「遊んで!遊んで!遊ばない?」
脱力するあたしに幸福きゃんきゃんはにこにことじゃれてくる。
「あの…試練って…これだけですか?」
女神さまに顔を向けて聞くと、首をかしげて不思議そうにして、微笑んで光が強まり…
「「「「「遊んで!」」」」」
ぼんぽんぽーんと音がして、幸福きゃんきゃんがもう5体出てきた。
「いやあの、そういう意味じゃ…」
頭痛くなってきたな…なんなんだこの女神さま…まあいいか…
「…えーい!もう知るか!おりゃおりゃーーー!」
「「「「「「ひゃーん」」」」」」
あたしは剣を振り回して幸福きゃんきゃんたちをしばき回した。
「「「「「「貴女に倒されてよかった!」」」」」」がくっ…
「はぁ…終わった…」
跳ね回る幸福きゃんきゃんをしばき倒して振り向くと、女神さまは笑顔でぱちぱちと控えめに拍手をしていた。
「あっはい…」
こんなんでいいのか?本当に…なんかどっかの皆さんが知ったらすげー複雑そうな顔をしそうな気がする…
女神さまが手をかざすと、そこから溢れた光がふよふよと飛んできてあたしの目の前に浮かんだ。
取れってことかな?意を決して手を伸ばすと、光が強まり、視界が真っ白に染まっていき…
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「…あれ?」
気がつくと、あたしはマルグリッド迷宮の入口の前に突っ立っていた。
「あたし、今まで何してたんだっけ?」
マルグリッド迷宮に記念だから、と足を踏み入れたところまでは覚えている。
それであちこちを歩き回って…その後なんかいろいろいろいろあったような…?あれ?
「うーん…」「おい」「わっ!?」
隣から急に声をかけられて振り替えるとレベル神のマッハさんが出てきていた。
「びっくりした…マッハさんどうしたんですか急に」
「経験値が貯まっている。レベルを上げるか?」
「え?あ、はい。お願いします。」
マッハさんは黙って頷いてぶつぶつと呪文を唱え…
「完了した。レベルは38になったぞ」
「38!?さっきまで32だったのに!?」
「間違いはない。ではな」
いつも通りにぶっきらぼうに言い放ってマッハさんはぱっと消えた。
「うーん…?なにがあったんだろ…?」
幸福きゃんきゃんの群れでもしばいたか…?
いや別にレベル上がって困ることはないけども…
「おーいエールちゃーん」「どうしたの?そんなところで。」
一人で首を捻っていると、トイレから戻ってきた健太郎くんと美樹ちゃんが声をかけてきた。
「あ、うん、今行くねー!」
あたしはうし車の方に引き返した。
わけのわからんまま古代の遺跡を出発してしばし。カップルのぽやぽや会話を聞き流しながらあたしがうし車を運転していると、日光さんが声をかけてきた。
「お疲れさまです、エール。」
「日光さん。どうしました?ヤンクーツクはもうちょっと先ですよ」
「あの、腰の剣。取り替えられたのですか?」
「え?」
言われて腰を確かめると、両方とも別の剣に変わっていた。柄の部分に女神ALICEの顔が彫り込まれている。
荷物を確かめると、元から持ってた双剣もカバンに入っていた。
「えーっと…なんていうか…その…親切な人にもらったって言うか…?」
「そうですか……なかなか良い物のようです。大事にされるといいでしょう」
「あ、はい…」
それだけ言って日光さんは引っ込んだ。
日光さん、刃物だけに刃物に詳しいのかな…?
確かに抜いて確かめてみるとなかなか…いや、結構すごいなこれ。軽くて鋭くて…握りも良い。
これまで使っていたのも結構な高級品だったけど段違いの振り心地だ。なんだか魔力もみなぎる気がする。
誰にもらったんだったかな?なんか…扉の向こうでいろいろあって、誰かに逢ったような…
ちょっと気になるけど…うん。お兄ちゃんならきっと細かいことはどうでもいいって言うよね。
「うーん…ま、いいか!がははー、グッドだー!」
あたしは気にしないことにしたのだった。
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エールは、Sランク武器の ALICEの双剣 を手に入れた。
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お気に入り評価ここすき感想誤字報告ありがとうございます。
PL「うーん、直接相対するとちょっとな…そうだ、アイツにやらせよ。人間とかかわり多いし慣れてんだろ」
AL「えっ、いいんですか?」
みたいな感じでした
ALICEの双剣
攻/魔 14/14(R6基準)
柄に女神ALICEの装飾が付いた優美な双剣。1gの狂いもなく同じ重量、同じ形で作られた一つがい。
切れ味もさることながら神魔法の触媒としても優秀で、回復魔法の効率上昇、ヒーリング9の身体負荷の軽減などの効果がある。
神の加護が込められているので魔封印結界の触媒にも使える。
本来は無敵結界も斬る、鉄もスパスパ斬る、体力満タンだとビームが出る、切れたキュウリがくっつかない、持ってれば不死身、なくしても手元に戻ってくる等チート機能がてんこ盛りだったのだが、
R・P「何考えてんの?」(※意訳)
PL「いいんじゃない。え?ダメ?」(※意訳)
HM「いかんでしょ」(※意訳)
LD「頑張ってるのはわかるけど…」
等と作成者が上司にダメ出しされた結果、ただのとてもいい武器に落ち着いた。
なお、作成者に愚痴を聞かされる羽目になった魂管理局の仕事が2000時間ほど遅れた。