御伽学園戦闘病   作:はんペソ。

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第一章「始まり」
第一話


御伽学園戦闘病

第一話「出会い」

 

コツコツそう石の床を踏むような音が聞こえる。その音に気づき目を開ける。

暗い地下のような場所だ、目をこらす、だんだんと見えてくるここは牢屋のようだ、何も覚えていない。いや正確にはそこに至るまでの記憶がない。

 

「…誰やこいつ…もしや今日くる転校生っていうやつか!」

 

誰かが話しかけて来る、地下なのだろうか?声が響いている。暗いせいで顔はよく分からないが声で男と分かった。

 

「ごめん、記憶がないんだ。」

 

「そういやそうだったな。とりあえずこんな檻に入ってる必要はねぇな」

 

そういい男はネックレスにしてある鍵を取り出し牢屋の鍵を開けた。

 

「大丈夫か?歩けるか?」

 

「なんとか」

 

「そりゃよかった。あぁ名乗るん忘れてたな。わいは[管凪 礁蔽(カンナギ ショウヘイ)]って言う、とりあえずここ出よか。」

 

「うん、僕は[櫻 流(サクラ ルイ)]って言うんだ」

 

「おおそうか覚えたぞ、じゃあこっちだ。」

 

軽い自己紹介を終え、礁蔽は歩き出す。流は寝起きで頭が働いていないのか呆然と礁蔽に付いていく。軽く見渡して分かった事と言えば右手の壁には牢屋、左手には何もない、そんな道が遠くまで続いている、と言った事ぐらいだ。

少し歩いていると遠くの方から数人が走ってきているのが見えた。女の人と黒髪の男が口喧嘩している。その横には三人並走している。その後ろには中年の怒りを露わにしながら追いかけている。

 

「ん?あれ礁蔽だ!おーい礁蔽逃げるぞー!」

 

「おう分かった!流もついて来てな」

 

その人達は流と礁蔽の目の前に来たところで何も無いはずの壁際に寄り、目を凝らしても見えない程小さな階段を駆け上がり始めた。そして床下扉を無理矢理押し開ける、唐突な光に目が眩む。

 

「よし!行くよ!」

 

そう女の人の声が響くと同時に全員外に走って行った。横から見ていた流はその女の人の声を聞いて何か恐怖に似た感覚を覚えた。最後の人はポケットから落ちたお金が宙に浮いた瞬間、すごい勢いで手に取った、相当金にガメツイのだろう。

 

「おい!待て!」

 

おっさんの怒号など無視して礁蔽と共に先の三人と同様に駆け上がる。上り終わると礁蔽は床下扉を勢いよく閉める。バンッと言う音と共に微かな叫び声は消えていった。

 

「ふー、とりあえず逃げまっせ!」

 

礁蔽が走り出す。流もそれを追うように無我夢中に走る。なぜか逃げなきゃいけないと思ったのだ。どこに走ればいいかは分からない、ただひたすらに礁蔽に付いて行く。

何分か走った後、礁蔽はスピードを落として息を切らしながら話しかけてくる。

 

「よしここまで来ればいいか…説明はもうちょっと待ってくれな。あるところまで行かなきゃいけんから。」

 

もう安全なのか先程とは違って歩き出した。もうおっさんは完全に撒いたのだろう。また数分進んだ所で立ち止まる。そこには何の変哲もない一本の木があった。

 

「随分歩かせて悪かったな。52536753」

 

礁蔽がパスワードのような数字を口に出すと、目の前にあった木の一部が自動ドアのように開き、何か機械的なものが現れた。正真正銘エレベーターだ。

 

「ほな乗るで!ここにわいらの基地があるんや」

 

「うん、わかった」

 

エレベーターに乗り込み、上に向かっているのか下向かっているのかが分からない感覚を感じ始めた頃にドアが開く。するとそこには先程いた人達がリラックスしていた。

 

「あ!礁蔽!遅い!」

 

そう言ってきたのは制服を着ている女の子だった。ボブヘア、茶髪、そして非常に整っている顔立ち、可愛らしい子だ。

礁蔽は流の事を説明する。だが「能力があるかは分からない」と言った瞬間女の子は態度を変え半分呆れながらキレ出した。

 

「は!?分からないのに連れてきたの?!」

 

「スマン」

 

「まぁいいわ…あ、初めまして、私は[樹枝 蒿里(ジュシ コウリ)]って言う。これからよろしく。ある程度記憶戻った?」

 

そう言われると心の整理がついたのか流の頭の中に忘れていた基礎的な情報が流れ込んでくる。だが思い出した!と堂々言えるような事では無い日本語や体の動かし方等の超基本的な情報なのでとりあえず頷くだけにした。

 

「ほら!あんたたちも挨拶ぐらいしなよ!仲間になるかもしれないんだから!」

 

「そうか」

 

今度は、和服で紫に似た長い髪、下の方で少し縛っていて、身長は180cmぐらいある刀を持った男が出てきた。

 

「我は[杉田 素戔嗚(スギタ スサノオ)]、学生というのもあって金に困っている、金が落ちていたら教えてくれ。よろしくな転校生君、ところで名前はなんて言うんだ?」

 

「[櫻 流]です」

 

「やはりいい名前だな。ラック、お前も挨拶しろ!」

 

ラックと呼ばれた男は渋々ソファから降りゆっくりと扉の方に近付いてくる。

 

「[ラック・ツルユ]、よろしく」

 

そう言いながら頭だけ下げ、ソファに戻りぐったりしている。ラック・ツルユは名前的に外人なのか、髪が水色、そして襟袖の方に少しだけ白髪も混じっているようだ。眼鏡している、あと妙にダルそうだ。

 

「皆さんーご飯できましたー」

 

という声と共にキッチンと思われる部屋から背が小さく、白髪、赤目、白ワンピースの少女が出てきた。

 

「あ!あなたが流さんですね。私は[ニア・フェリエンツ]です。主に家事を担当しています。よろしくお願いしますね」

 

自己紹介を終えたニアは再びキッチンに入って行った。

ご飯が出来た事を察知したのか一人でスマホをいじっていた男が動き出す。

 

「お、飯か」

 

礁蔽が挨拶するよう促すと少しだけ面倒くさそうに自己紹介をする。

 

「ん?あぁ気付いてなかった、よろしく。[空十字 紫苑(クウジュウジ シオン)]」

 

そして紫苑もキッチンに入って行った。

 

「よし!一通り紹介は終わったな!」

 

そう言いながら肩を叩いて来る礁蔽の容姿を再度確認する。髪はピンク、黄緑のニット帽、服は作業服のようなものを着ていた。

礁蔽の姿を再確認しているとニアと紫苑がキッチンから料理と食器を持ってきた。

 

「では早速食べましょう。」

 

「おお、美味しそうだ!」

 

「えへへ…ありがとうございます」

 

全員机を囲う様にして一斉に食い始めた。流はどうすればいいか分からず戸惑っていると礁蔽が「さっさと食え」と言ってきたので流されるまま食べることにした。全員非常に食べるスピードが早い、一瞬で平らげてしまった。

 

「はぁ…それにしても、紫苑今日のは無いわー。次からは気をつけてね」

 

「わりぃわりぃ、にしても竹山のやつ一段とキレてたな」

 

「それもそうだ。下手したら斬首だろうからな」

 

楽しそうに話している皆の会話に首を突っ込むのは少し嫌だが竹山という名前が気になったので直球で訊ねる。

 

「竹山って?」

 

「あの叫んどったおっさんや」

 

「あの人か。君たちと竹山はどう言う関係なの?」

 

「そりゃ敵だ」

 

ラックが口を挟むと六人の顔が変わった。怒っているような呆れているような、複数の感情うが混ざっているのであろう表情を浮かべた。

 

「まぁまぁご飯食べている時ぐらい落ち着きましょう」

 

変な顔をしている事を自覚したのかニアが注意する。

 

「そうね…にしてもやっぱ美味しい、ニアのご飯は世界一ね$301C」

 

「ありがとうございます」

 

気恥ずかしそうに照れている、蒿里がそれを茶化すように「かわいいー」などと言ってニアは更に赤面してニヤニヤしている。

食後の雑談が終わるとニアと紫苑の二人は片づけのために全ての食器を持ってキッチンに入っていった。その場から二人減り数秒の静寂が場を包む。すると礁蔽が喋り出した。

 

「さーて本題入ろか」

 

「そうだな」

 

「あぁ」

 

ラックは相槌を打ちながら机の上に手形が型取られている機械を取り出た。見た感じ謎の型があるデジタル秤のような物だ。

 

「さぁ、この機械に手をはめるんや」

 

「う…うん」

 

言われる通りに型に手を入れ止まる。すると数秒してピピと機械音がした。それと同時に礁蔽がもういいと合図を出したので型から手を外す。

 

「よーしあとは一日待つだけやな」

 

「この一日待たなきゃいけないのなんとかできないの?」

 

「無理だな。ここじゃ資源もある程度限られているんだ、外でなら大量生産して改良できるかもしれないがな」

 

「さて帰るか、今日やること終わったし」

 

ニアと紫苑もいつの間にか戻ってきている、皆礁蔽の提案に納得し各々帰る準備を始めた。蒿里が帰り支度中にふと気付いたように質問を投げかけてくる。

 

「流はどうするの?」

すると一秒の迷いも無く礁蔽が答えた。

 

「わい一人暮らしだから来てもらおうと思ってる」

 

「え?」

 

「なんやニアや蒿里の方がええか?」

 

「いいやいや違う違う、泊まっていいの?」

 

「全然ええで!もう同級生やからな。明日は可能やったら学園の詳しい説明するからよろしくー、今日と変わらず朝集合な!」

 

明日のスケジュールを伝えあいながら帰り支度を終わらせた。だがニアと紫苑は帰る準備をせずエレベーターにも乗る気配がない。その二人を除いてエレベーターに乗り込んだ、上がるボタンを押すと徐々に動き出し停止した後にドアが開く。

 

「じゃ皆明日の朝ねー!」

 

そう言いながら蒿里は走り去ってしまった。元気よく走っている姿は元気を貰える背中だ。

 

「元気やなぁ」

 

「じゃあ我々はこっちだから、また明日!」

 

礁蔽と流を置いてラック、素戔嗚も別方向へと行ってしまった。二人になった礁蔽は「あっちや」と指を差しながら静かに歩き出す。流もそれを追うようにして歩く、他愛もない無い会話をしながら数分歩いて到着したようだ。

 

「ここや!」

 

再度指を差した先には結構家賃などが高そうなマンションがあった。礁蔽はオートロックであるはずのドアをネックレスの鍵で開き、エレベーターに乗りこむ。

 

「はよ()いや!」

 

「うん」

 

初めての高そうなマンションの少し興奮しつつ誰も乗っていないガラガラのエレベーターに入った。礁蔽は5階のボタンを押す。

エレベーターはゆっくりと動き出し数秒後、5階という表示になったと共に音声を流しながらドアを開いた。二人はさっさとエレベーターから出て部屋へと向かう、そして105号室の前で止まった。

 

「ここや」

 

そしてオートロックを解除するときに使っていたネックレスの鍵を取り出した。その鍵は牢屋にいた時に開けてくれた鍵と全く同じ物である、にも関わらず鍵は何ら異変なく鍵穴に差し込まれ開錠の音と共にドアが開いた。

 

「なんも無いけどゆっくりしてな」

 

「いやいや、泊めてくれるだけ嬉しいよ!お邪魔します」

 

「いらっしゃいー」

 

靴を脱ぎ中に入る、3LDKのようで学生でこんな場所に一人暮らしとはどうやってお金を稼いでいるのだろうと疑問にも思う。がそんなこと聞いてもどうにもならない。

礁蔽は着替えを持って風呂場に行ってしまった。その際に「布団二人分敷いといてや」と頼まれたので背後にある押し入れから引き出し、二人分の布団を敷いた。

 

「ふぃーやっぱ風呂は速攻で出るのがいいわー、流も入ってき。わいは疲れたからもう寝る」

 

とんでもない速度で風呂から戻って来た礁蔽はジャージを一セット手渡してきた。サイズが合うか分からないと言っているが何故かサイズはぴったりだ。問題ないと言うと気の抜けた返事をしながら布団に入って行った。

流は風呂場に向かう、服を洗濯機の中に入れてお風呂に入った。浴槽は無いタイプだったのでシャワーだけ浴びる。風呂から出て、ジャージを着て、髪も乾かし布団が敷いてある部屋に戻った。すると礁蔽は既に寝ているようで、流は起こさないように静かに電気のスイッチを消して布団に入った。

 

 

「そうか今から行く」

 

その声で目を覚ました。どうやら礁蔽が電話をしていたらしい。流が起きた事に気付いた礁蔽は目を擦っている流に大きな声で基地に行く事を伝えて身支度を始めた。

流もすぐに布団を畳み身支度を始める、時刻は六時半だった。学校もあると言っていたので早起きして、朝から基地に行っているのだろう。

身支度を終え、礁蔽に手渡された学園用であろうカバンを背負い一緒に部屋を出た。

外に出るとまだ橙色の日が登っている、昨日通った道を辿るようにして進む。特に会話をする事もなく歩き続けた。数分経つとあの木が見えて来る。礁蔽は木の前に立つと昨日と同じパスワードを唱える。

 

「52536753」

 

昨日と何も変わらず、木の表面がドアのように開きエレベーターが姿を現した。昨日と同じように乗り、降りる、数秒すると基地に着きドアが開いた。

既にラック以外は来ているようだ、他のメンバーが挨拶をしてきたので流は挨拶を返す。

 

「おはよう…ございます」

 

「堅苦しいぞー」

 

「…おはよう」

 

「おはよう!」

 

蒿里が満面の笑みを返してきた、非常に可愛らしい。皆流の挨拶に返事をしてくれた。

ひとまず荷物置き、ソファに座る。するとエレベーターのドアが開いた、ラックがやって来たのだ。

挨拶を返さずにそのまま机に向かいながら全員をジェスチャーで呼んだ。

 

「さてどうかなー」

 

蒿里だけでは無くよく分かっていない流以外の四人は目を光らせながらソワソワしている。ラックは慣れた手つきで昨日の機械をいじる。すると驚きながら手を止め、少し考えた後にゆっくりと話し始めた。

 

「落ち着いて聞け」

 

「なんや?」

 

「能力はある」

 

「よっしゃ!」

 

ラックは礁蔽の歓喜の声を()き消すように続ける。

 

「だが!こいつはちょっと…仲間に入れない方がいいかもしれない」

 

「なんで!?」

 

叫ぶ蒿里を落ち着かせ静寂が訪れてから口を開く

 

「すごく厄介な事になる可能性がある…とりあえず流も落ち着いて聞け」

 

 

「お前の能力は『殺したいと思ったものを殺す』能力だ」

 

 

第一話「出会い」

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