御伽学園戦闘病
第百八話「凄まじい憎悪」
須野昌は二人の位置を移動させてから合図も無しに戦闘に入った。すぐに霊を召喚し同時に殴りかかる、フラッグは歪めて後ろに下がり回避する。だが須野昌は殺す気で襲いかかる。今までの奴らはここまで勢いは無かった、それは心の奥底では自分には関係ないと思っていたからだろう。端的に言えばこの国がどうなろうと生徒会やTISには大した問題では無いのだ。刀迦と來花は代償は多いものの呼び起こせば良いだけだからだ。
だが須野昌は違う、何故こんなにも躍起になって飛びかかって来るのだろうか、フラッグはそれが不思議でならない。ただ今は戦闘に集中しなくてはならないと前を向く。
「やるぞ!紫苑から教わった流れだ!」
霊と共に走り込み体術を使って追い詰めていく。その動作はまるで水のようにぬるぬると気持ちの悪い動きだ。だふがフラッグは冷静に殴って来た所を攻撃する、右手を消滅させた。だが須野昌は怯まず足で顎を蹴り上げた。フラッグは腕が消えてもこんなに冷静に次の攻撃を繰り出せるなんて流石に恐怖を覚える。
「何ぼーっとしてんだよ!」
その声と共にフラッグは脇腹に強烈な蹴りをくらう。そして痛みに悶え苦しんでいると絶え間なく霊と須野昌の攻撃が飛んでくる。一度逃げなくてはと歪みを発生させた、だが一瞬の時空の歪みを察知した須野昌が無理矢理引っ張り移動を失敗させる。ただ歪みを発生して左腕だけ飛んだせいで少し後方にフラッグの左腕がボトリと落ちた。
「いい気味だな!」
そう煽る須野昌を無視して歪みでくっつけようとする、だがそれすらも妨害し止めてしまう。歪みで体をくっつけるのは通用しないと知ったフラッグは途端に焦り出す。須野昌もそれを理解しドンドン攻撃の手を増やしていく、フラッグは体が動かなくなったら終わりだと弱い攻撃をする様になった。
「雑魚が!」
フラッグはたちまち窮地に立たされる、須野昌の猛攻と負けるかもしれないと言う危機感が合わさり非常に緊張しているのだ。
そんな事お構いなしどころかチャンスだと思っている須野昌は勝てると思っていた。だがフラッグもそう簡単には倒れない、反撃に左腕に向けて歪みを発生させる。だが須野昌はそれを逆手に取ってフラッグの体を欠損させようと掴み位置を反対にさせる。だがそれこそが本当の狙いだったのだ。
「そう来ると思っていたよ」
その瞬間須野昌の腹部に風穴が空く。なんとフラッグは自爆覚悟で須野昌が位置をひっくり返して来るだろうと考え自分がいる場所にも少し遅めに効果が出るように歪みを起こしたのだ、こんなギャンブルの様な事を軽々とやって来る男だと知った須野昌はもっとワクワクして来る。そして本気を出して戦う事に決めた。
『降霊術・唱・混狐』
すると須野昌の中からあの香澄の狐が出て来る。その狐は何も状況を見ずにとりあえず知っている須野昌に噛みつこうとする、須野昌は「あっちだバカ!!」と言いながらフラッグの方を指差す。
狐はつまらなさそうにしながらフラッグの方を向く、すると一瞬で形相が変わり怒りを露わにする。そして須野昌の指示も聞かず突っ込む、須野昌も一緒に攻撃する事にした。
圧倒的な力の前にフラッグは何も出来ない、ただ無抵抗に傷を増やしていくだけだ。狐の力は思っている以上に強かった、鋭い牙に体が引き裂かれそうになった瞬間歪みを発生させ全てを跳ね返した。するとその攻撃は狐ではなく須野昌に当たった。
どうやら右目がおかしくなったようだ、血が流れている右目を抑えフラフラしながらフラッグに説教をする。
「お前は伊豆の街を壊した。それがどれだけ印象を悪くしたか分かっているのか?お前のせいで迫害がより一層増したんだ!そのせいで香澄の親も死んで香澄はあんな思いを…」
そう言いかけた所で狐が須野昌にタックルをした。須野昌は吹っ飛び壁に当たり血を流す、狐は近付きもう一発大きなタックルをかました。須野昌は何を言う間もなく気絶した。だが狐は体の中に戻ろうとしない、フラッグはまだ攻撃して来るかもしれないと構えていたが狐は一番大きなガラス窓を突き破り何処かに行ってしまった。
やっと休憩を取れると思っていたフラッグだったがそんな甘い考えは一瞬で消える。声をかけられたのだ、聞いた事は無いが面影がある声だ。
「何やってんだよ…皆んなをこんな状態にして…何やってんだよ!!」
それはルーズだった。フラッグはすぐに殴りかかろうとするが体が動かない、おかしいと思い正面を見てみると康太の霊が立っている
ルーズは動けないフラッグの背を見ながら叫ぶ様に叱責を続ける。
「ずっとずっと探してたよ!なのに死んでてエンマさんに迷惑をかけてるなんて大人としておかしいだろ!お前がいなければニアはもっと幸せになれたかもしれない、あんな状態にならなかったかもしれない!」
「あんな?」
フラッグはニアが話に出ると反応する、だがそれにルーズが更に嫌悪を表す。
「今更ニアに会いたいなんて言うなよ!?今頃になってから父親面なんてきっもちわりぃ!!もう死んでくれよ!!クソ野郎!!」
「…私もお前を息子だなんて思った事は無い、私もお前もこの世界の住人だ。ならここで殺し合えば邪魔者を成敗できて丁度いいじゃないか」
ルーズは少しだけ残っていた親への愛情が全て殺意に変わった。自分の為にも、皆のためにも、大切なニアの為にも、こいつを殺す。そう心に決め戦闘が始まった。
第百八話「凄まじい憎悪」