御伽学園戦闘病   作:はんペソ。

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第百十九話

御伽学園戦闘病

第百十九話「終結、見直し」

 

何故か待機していた二人が来た事に瑞鶴組の生徒会メンバーは驚いている。

 

「あっちは私とこの子がやるからあなた達はその船に集中しなさい」

 

そう言って初代はキャラトーと共に少し遠方の岩陰からヒョッコリと出て来た巨大な戦艦の方へと走って行く、当たり前の様に水面を走っていて他の奴らは疑問にすら思わなかった。

 

「とりあえずお前ら大丈夫か?怪我は?」

 

紫苑がそう聞くと生徒会メンバーは飛び降りたが誰も怪我が無い事を数秒で説明した。そして全員戦えると知るや否やそれぞれが好きな様に動き出した。

艦内に突撃する者、機銃や砲台をぶっ壊す者、その勢いは凄まじくそこそこ大きい巡洋艦の装備がものの十分で全壊してしまった。外はもう壊す物も無いので内から壊す事になる。

 

「TISの奴らは中でやっているらしい。私達は適当に穴でも開けてから中にいる人を助け出そうか」

 

香奈美が指示を出した。その瞬間全員自分の真下に攻撃を始めた、すると一部の場所から水が入って来たのか悲鳴がより一層強くなる。すぐに助ける為に艦内に入って行く。

怯える乗組員を丁寧に連れて外に出て行く。

 

「来るなぁ!!」

 

光輝が助けようととすると一人の乗員がそう強く反発する。

 

「早く逃げないと!僕たちは人は殺さないようにって言われてるんです!だから早く!」

 

「でも今死にかけてるのはお前らのせいじゃないか!」

 

「良いから!!死にますよ!?」

 

光輝は無理矢理その人を掴み船を出た。外には救助用のボートがありそこに乗組員は乗っていた、皆怯えているようで何か違和感を覚える。

 

「なんでみんなあんなに怯えてるんだ?」

 

「そ…そりゃ今から殺されるんだろ…?アルデンテに行って…」

 

「いや?そんな事無いですけど?」

 

光輝が即答で否定するとその男は少し顔色を変えた。そして少し考え込んでから少しだけ頼みごとをする。

 

「君の名前は」

 

「[穂鍋 光輝]ですけど」

 

「光輝、アルデンテの王。フロッタ・アルデンテと話をさせてくれないか」

 

「え?俺にそんな力は...」

 

「頼む!確実に有益な情報を渡す!」

 

「…分かりました。一応掛け合ってはみます。だけど今はボートに乗ってアルデンテに向かってください、後貴方の名前は?」

 

「[佐嘉(サガ) 正義(マサヨシ)]君と同じ日本人さ」

 

「分かりました。それじゃあボートに」

 

「あぁ頼むよ」

 

正義は光輝の目を数秒間見つめてからボートに乗った。そしてそれとほぼ同時に全員が四個に分かれたボートに乗ったようで水面を歩く雅羅挐姫に連れられてアルデンテへと向かって行った。

すると少し遠方から爆発音が聞こえる。そちらを向くと初代が一人で戦艦をボコボコにしていた、一人と言っても降霊術で白い(カラス)と二足歩行の大きな狸も一緒にだが。そしてキャラトーが救助をしていた。

 

「にしても異様だよな、なんで全員助けなくちゃいけないんだよ」

 

須野昌が悪態をつくと美玖が突っ込む。

 

「人は殺す物じゃないよ。須野昌、あんた洗脳されてる」

 

「は?別に戦争なんだから人の一人ぐらい...」

 

「エンマがなんで人を殺すなと命令したか分かる?」

 

「んー情報を吐く奴がいるかもしれないから?」

 

「違う。苦しみを知っているから、能力者戦争を体験したエンマは身近な仲間や家族が死んでいくのがどれだけ辛い事か知っているんでしょう。そして一度死を体験し黄泉に来た者だろうと同じ思いはしてほしくない、そう言う事でしょう。須野昌はやっぱ考え方がおかしい、狂ってるよ」

 

「なんだと眼鏡女、俺が正常だ」

 

「あんたがおかしい」

 

「はぁ?もう一回言ってみろよ」

 

喧嘩になりそうになっていると二人に謎の恐怖が振りかかる。元凶を辿ると真澄が『威圧』を発動させていた、そして無言の圧で「喧嘩するな」と言っている。二人はいたしかたなく喧嘩をやめた。

 

「さて私達もずっとここにいては危ない、移動...」

 

香奈美が提案すると遠くからある音が聞こえて来る。零戦がやって来た、迎えに来たのだろうと感じ止まるのを待つがよく考えると着地する場所が無い。そして零戦も止まる気配が無い、全員察した。掴まれと言う事なのだろう。

 

「あーマジ?」

 

蒿里や礁蔽、一部の生徒会メンバーは無理難題を押し付けられ少し戸惑っている。だが零戦はすぐそこだ、意を決して急降下する零戦に掴まった。戦闘機しがみ付き組は見事に全員掴まることが出来た。

あまりにトンデモな行動にドン引きしながらも残りの生徒会メンバーも脱出を図る。来た時と同じように香奈美が霊を出して移動することにした。零戦の動きを見ると一度引き返すようだ。

初代とキャラトーぶっ壊した船に乗っていた者もキャラトーに先導されて既に移動している様だ。他の艦艇が乱入してこないか不安だがひとまず撤退を行う事となった。

赤城と瑞鶴は既に帰っていた。戦闘機を回収しないのは頭がおかしいと思いながらもしがみ付き組は戦闘機が着陸するのを待つ。

 

「ん?どうしたのリアトリス」

 

蒿里の元にリアトリスが飛んできた。そしてリアトリスと会話を始めた。内容はもう少しで着陸すると言う事だ。その事を大きな声で礁蔽にも伝えた。

 

「ありがと。じゃあ戻っても良いよ」

 

リアトリスはすぐに紫苑の中に還って行った。そしてそのすぐ後、零戦が降下し始めた。どこに着地するのか不思議に思っていると見えて来たのはアルデンテ宮殿だった。まさかそのまま突っ込むのかと思われたその時宮殿の窓から一人の少女が飛び出した、そして能力を発動する。その瞬間零戦に乗っている者達と零戦だけがある世界に移動した。

 

「やっほ。私は和三代目[宮界(グウカイ) きなこ]。今この空間は私の能力でおかしくなってる。ここにいると元の方では姿が消えているの、けど時間は経過してるから。ちなみに飛行機も止まってるから安心して。それで、今から宮殿に突っ込むよう指示されてると思うの。でも危ないからおじさん達は緊急脱出、お姉ちゃんお兄ちゃん達は飛び降り降りてね。安心して飛び降りて、エンマが待ってる。それじゃバイバイ」

 

きなこは手を振ると能力を解除した。その瞬間全員が元の世界に送還された。パイロット達はすぐに緊急脱出を行いエスケープと三人の生徒会メンバーは飛び降りた、真下ではエンマが待ち構えている。そしてエンマは触手を放ち全員を掴まえた。

 

「あ…えぇ…」

 

礁蔽と兵助は放心状態だ。そんな二人の元にラックが現れた。

 

「お疲れ、生徒会の奴らもじきに帰って来る感じか。ところでTISはどうした?」

 

ラックのその質問を聞きようやく気付いた。TISメンバーが誰一人としていない、艦艇を破壊した時から見ていない。ラックは大きなため息を吐いてからエンマと同時に居場所を言う。

 

「「敵国のアジトか」」

 

「被せんな」

 

「いやそっちが被せて来たんでしょ~」

 

「とりあえずそんな事どうでも良い。あいつらがやらかしたらヤバイことになるぞ。折角殺さないで海戦は終わったのに…」

 

ラックが頭を悩ませていると目の前に佐須魔が現れた。そして佐須魔は敵国の王を連れている。

 

「連れて来たよ、話したいんだろ?なんでクソみたいな作戦に付き合わされた挙句こいつを連れて来なきゃいけないんだよ...」

 

「ありがと~じゃ早速行こうか」

 

エンマは丁重に国王を連れて宮殿に入って行った。いつの間にかフェリアも隣に立っていて秘書の様に付いて行く。

三人は玉座の間へ到着する。そしてエンマはオーラを放ちながら玉座に座った。そして敵国王はその少し遠くの正面に座らされている。

 

「さて、話をしようか。僕は能力者戦争を体験したとはいえどう言った風に終わらせればいいかは分からない。だから和解、しようじゃないか」

 

「…」

 

「僕は君達の国と争いたくない、むしろ共存したいんだ。どうだい?被害は戦艦、巡洋艦が一隻ずつだけで今後も物資などを分けてやろう。植民地にもしない、どうだい?この条件、呑むかい?勿論断っても良いよ。その場合他の手段を共に探そう」

 

敵国王はあまりに良い条件に半信半疑のようだ。そして五分程考えてからある提案をした。

 

「エンマさんよ、もう少し、恵んでくれねえか?」

 

「?」

 

「俺ら一般人様がお前ら異常者たちと一緒に暮らしてやるからよ、奴隷になれよ。そしたら許してやるよ」

 

その瞬間エンマの雰囲気が変わる。今までのしっかりとしつつも緩い雰囲気では無く殺意と霊力だけを纏い圧を掛ける。そして玉座から立ち上がり国王に近付いて行く、一般人とも言えど多少霊力はあるので圧が凄い事だけは分かる。

 

「もう良いよ。僕らの同胞を何人も殺した上にこの状況で舐めた提案。ふざけているとしか思えない、ホスピタル王国は大丈夫さ。これまでアルデンテの政治をしていた初代ロッドに任せる。僕は君を許せない、二回目だよ。これを使うのは」

 

そう言って能力を発動した。すると国王の目の前に白を基調とした禍々しくも美しい門が現れた。その門とは地獄の門だ。学園の島にあったものとは非常にデザインが変わっていて別物だ。

 

「一億...いや、無限だ。無間地獄、行け」

 

命令した瞬間国王は門の方へと吸い寄せられて行く。そしてそれと同時に門が開く、その中には今にも這い出てきそうな亡者達の姿があった。エンマが食い止めようとするとある人物が脇を通る。

 

「あんたらは黙ってそこにいなよ。精々刑期を終えて精神が壊れてから出て来るんだね」

 

初代ロッドがゴミを見る様な目で亡者たちを蹴飛ばした。そして国王が完全に吸い込まれ悲鳴も聞こえなくなると門はしまり姿を消した。

 

「お見事です、お父様、初代様」

 

「も~フェリアは可愛いな~」

 

エンマと初代二人でフェリアを撫でる。フェアリはとても嬉しそうだ、そんな中ノック音が鳴り響く。エンマが入るよう促すとそこには光輝と一人の海兵が立っていた。

 

「エンマさん。少し話が」

 

「ホスピタルの海兵か、どうしたんだい?何でも言ってみなさい」

 

「ありがとうございます!…それでは。私達の国は貧富格差が凄まじいのです、上級国民だけが美味な汁をすすり庶民は兵に出されて捨て駒扱い。それも男だけじゃなく女性や…子供...」

 

「それは本当かい」

 

再び態度が変わる。エンマは男の名前を聞き、正義(マサヨシ)と確認した。そして子供までもが戦争に参加させられていた事は本当なのかと問い詰める。正義はれっきとした態度で本当だと写真を取り出した、それは自分の子どもの様で訓練をしている姿を隠し撮りしたものらしい。それを見た瞬間エンマは怒りを露わにする。

 

「やっぱりあいつはあそこに入れておいて正解だった。もう二度と出すことは無いだろうな」

 

「え…?」

 

「気にしないでくれ。そして君はこの待遇を救ってほしい、と?」

 

「そうです。図々しい事このうえないのですが…どうか…どうかお願いします!」

 

正義は床に頭を叩きつけ懇願する。エンマは屈んで正義の顔を上げさせた、そして約束する。

 

「大丈夫さ。数年前までこの国の王だった初代ロッドをホスピタルの王にしようとしていたんだ、誰も反対はしないだろうと思ってね。そして是非良かったらなんだが君が右腕になってやってくれないかい?子孫たちの誰か一人は派遣しようと思っているが情勢などは把握できないだろう。だから君が手伝ってあげてほしい、君はとても良い志と信念、そして精神力がある」

 

「私も大丈夫、女王するなんて聞いてなかったけどね」

 

「アハハ…それで、君は良いかい?[佐嘉 正義]」

 

「はい!!よろしくお願いします!!!」

 

再び強く頭を床にぶつけた。初代は今後の事を娘達や兵士、そして側近の正義から聞く為一番デカい会議室に人を集め始めた。

一方エンマは生徒会メンバーとエスケープチーム、そしてTISを玉座の間に集合させる。

 

「戦争は終わったんでしょ?早く帰らせてよ~俺らやらなきゃ行けない事増えたんだってば~」

 

佐須魔が文句を言うとエンマは少しなだめてから話を始める。

 

「ここ数日間、とても迷惑をかけた。細かい事は僕らがやるから心配しないでくれ。当初の狙いである強化合宿は上手くいっただろう、最初は隠していたが数人にはバレていたようだよ。そして君達はとても大きな教訓を得られたと思うよ、今後に生かしてくれたまえ。今回はここらへんで帰ってもらおうと思う、既に現世では一週間半以上経っているだろうからね。

今から返す事になる、TISはTISの基地に、学園の子達は学園に、ニアちゃんと流くんはそれぞれが望んでいる場所に飛ばす。それで良いかい?」

 

その場にいないニアと流以外は全員賛同した。そしてすぐにでも帰る事になった。

 

「最後に一つ教えておこう。争いは何も生まない、だが大義名分を抱えた暴力こそは正義だ。君達は正義でいてくれ、拳をふるうなとは言わない、誰も傷つけるなとは言わない、だが絶対に意味のない暴力だけは駄目だ。分かったかな」

 

誰も返事をすることは無かった。だが目を見れば分かる、しっかりと理解しているだろう。エンマはニコッと笑い冥福を祈ってから指を鳴らした。

 

「それじゃ健闘を祈っているよ、子供達」

 

その瞬間の視界が暗転した。そして学園組は学園の校庭に飛ばされた、生徒達が注目し騒ぎ出したことで教師たちが出て来る。

 

「大丈夫だったか!?」

 

薫や崎田、兆波も出て来た。そして残りの教師達も心配して様子を見に来てくれた。ただ全員どこも怪我は無い、だが何があったか説明する為に会議を開く事になった。エスケープチームからは[櫻 流]と[ニア・フェリエンツ]を抜き、生徒会は[フルシェ・レアリー・コンピット・ブライアント]を含めたメンバーで。その会議は相当長い物になるのだった。

 

 

「ふーみんなお疲れー」

 

「お帰りなさい~」

 

「お!伽耶じゃん!久しぶり!」

 

「久しぶりです~」

 

「とりあえず何があったかみんなに話したいからご飯用意してって原に頼んできて」

 

素戔嗚がすぐに原に伝達しに行った。すると遠くの方から原の驚く声が聞こえてくる、そして走って佐須魔達の方へ向かってきている事にも気付いた。

 

「佐須魔さん!!お帰りなさい!!」

 

「ただいま~詳しい事はご飯食べながら説明しよっか。とりあえず黄泉に行った奴らは休憩で良いよ」

 

全員シャワーに向かって行った。佐須魔もご飯が出来るのには少し時間がかかるだろうと思いシャワーを浴びに行く、そして脱衣所で素戔嗚と鉢合わせた。

 

「佐須魔様、お先に入ってください」

 

「別に何個も設備あるんだから気にするなよ…素戔嗚。今なら戻っても良いんだぞ」

 

「…戻れないですし戻りたくもありません。私の居場所は、ここだけですから」

 

素戔嗚はそう言って俯いてしまった。佐須魔は微笑みながらため息をつき珍しく素戔嗚を励ました、そしてその日はTISの中でも説明で終わってしまうのだった。

だがある一人だけは嫌な予感を感じ取っていた、[杉田 素戔嗚]。ただその事件が起こるのは数か月後のことなのだが。

 

 

流、ニアの二人はそれぞれ全く別の場所へと転送されていた。ニアは仮想世界でアリスを倒すチャンスが到来するまで訓練を積む事を決めていた。

流は日本の"本土"だ。何をするかは決まっていた。長くなるかもしれない、だが確実に達成しなくていけない事だ。自分のパワーアップの為にも、過去の事象の再確認としてもだ。

 

流の目的はそう『旧櫻家を探す』事なのだ。

 

 

第百十九話「終結、見直し」

 

被害

[軽傷,重傷者]完治

[死者]

[行方不明者]櫻 流-御伽学園高等部一年生、ニア・フェリエンツ-御伽学園中等部二年生

 

第四章「別世界へと」 - 第五章「黄泉の(アルデンテ)王国」 終

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