御伽学園戦闘病   作:はんペソ。

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第七章「TIS本拠地急襲作戦」
第百二十五話


御伽学園戦闘病

第百二十五話「とある提案」

 

ゆっくり、ゆっくりと歩む。シックな色合いのタイルを靴で踏み進んでいく、始めてくる場所なので正確には分からないが強大な霊力のおかげでそこに向かうだけで迷うことは無い。

すると初対面のパッと見未成年の小柄な女が刀を向けて来る。

 

「なんで入って来てんの、そもそもここをどうやって知ったの」

 

「退け、僕はお前なんかに興味は無い」

 

「そう言う訳にもいかない。私だってここに住んでるんだから、害がある者は追放しなきゃ。殺さないで上げるから早く出て行きなよ」

 

「退けって言ってんだよ、佐須魔に会う。それにお前にだって有益な情報を僕は抱えている、ここで追い払うメリットよりデメリットの方が多いと思うが?」

 

女は剣をおろさずに少し考える、最悪何かあれば殺せばいい、そう結論が出たので剣をおろし後ろから追跡する形で共に歩き始めた。

少し歩いたところで女が口を開く。

 

「この先は少し特殊な構造をしてる、まぁ佐須魔に言えば良いんだけど寝てる可能性あるから普通に行こうか」

 

ただそこまで言った時一人の男が視界に入る。その男はとても大柄で何も言わずに殴りかかって来る。だがヒョイと交わし反撃を繰り出そうとしたが女が止めた。

 

健吾(ケンゴ)やめて!!」

 

その男は健吾と言うらしい。健吾は何故止めるのか訊ね何があったのかを聞く。そしてその情報と言うのががとても気になるので佐須魔の元へ連れて行く事とした。

女が後方、健吾が前方で進む。ある場所で健吾が立ち止まった。そして思い切り拳を振り上げ壁をぶん殴った。その瞬間前方の壁がグニャりと歪みそのまま壁が消え去った。

 

「よし。行くぞ」

 

健吾は普段からやっている事の様で何も気にしていない。女も全く気にしていないようで歩みを止めない。

三分程歩き続けた、再び健吾が立ち止まった。その前方には今までの扉よりも一回り大きい特別感溢れる扉がある。

 

「んじゃ行くか」

 

扉を開いた。部屋の中は見覚えのある場所だった、エスケープチームの四人が工場地帯に向かい帰る時に見た。佐須魔と話をして素戔嗚とも話をした部屋、そう玉座の間だ。

そして部屋の奥には三つの玉座が佇んでいてその中央に佐須魔が頬杖をつきながら座っている。健吾が事情を説明しようとしたが佐須魔は言わなくて良いと止めた。

 

「僕は能力で心が読めるからね、君が何をして、何を見て、何を思い、何を伝えたいかも分かっているさ。ねぇ流君」

 

「そうか。分かってるなら言わなくても...」

 

「いや。みんなの為に言葉にしてあげてくれ」

 

佐須魔は流の後方を指差した。そこには数人のTISの重要幹部格が流の言葉を待ち構えていた。流は事情を把握し説明を始める、と言う訳では無くまずある提案を持ち掛けた。

 

「僕が今から渡す情報はとても、お前らにとても有益な情報だ。僕だって無償で渡すわけにはいかない。だから一つやってほしい事がある。そんな難しい事じゃない、とても簡単。お前らが毎日のようにやっている事さ」

 

「早く言いなよ」

 

案内してくれた女がその提案を早く言うよう促す。流はペースに飲まれないよう絶対返答せず自分のペースで発言した。

 

「簡単な事さ、僕をTISに入れろ」

 

一瞬にして雰囲気が凍り付く、そして背後で話を聞いていた原が口出しする。

 

「ちょちょちょ!それってエスケープとか生徒会、咲ちゃんを捨てるって言う事ですか!?今ならまだ引き返せ...」

 

「原」

 

「はい?」

 

「この世界は力が無くてはなにも出来ない。ただその力を持つと周りに不幸が降りかかる、他人がその力を恐れ精神から弱らせようとしたり虐めにあったりするからだ。

だったらその力を無くせばいいかもしれない、だが僕にはある目的がある。仲間を、友達を、妹を置き去りにしてでも叶えなくちゃいけない願いだ。

そしてその願いには莫大な力が必要となる。そうなるとさっき言った通り周りに不幸が降りかかる、僕はそれが嫌だ」

 

「なら!」

 

「そう思っていたんだ。だが今はもうどうでも良い、TISに入れば力が手に入る。僕は僕の為に生きる、誰かの為になんか生きてやらない。自分の目的の為、二人の人間(ゴミ)を始末するために生きる。そう決めてここに来たんだ、その時手ぶらで来るのは流石に申し訳ないと思った。だから情報を持って来たんだ」

 

そう言っている時の流はまるで別人だった。佐須魔は変化があったとは言っていたがここまでだとはだれも思っていなかったのだ、流はそのまま持って来た情報を暴露した。

 

「言うぞ、しっかり聞け」

 

緊張が走る。あまりにも重い雰囲気に少し胃が痛くなって来る者さえいる、だが流は気にせず発した。

 

「今日から三日後、九月一日にここTIS本拠地が襲撃にされる!来る奴らの詳細は分からないが参加するチームは判明している!生徒会、エスケープ、中等部少数、教師、突然変異体(アーツ・ガイル)少数、能力取締課だ。

そして突然変異体(アーツ・ガイル)と能力取締課は誰が来るか判明している。突然変異体(アーツ・ガイル)は[霧島 透]、[大和田(オオワダ) 佐伯(サハク)]の二名だ。

能力取締課かたは[name ハンド]、[name ハック]、同様二名だ。

生徒会は恐らくフル稼働、教師も最大で一人学園に護衛を付けるぐらいで出陣するだろう。そして中等部は未だ不明だ。最後にエスケープも四人フル稼働だと思われる」

 

すぐに一人の女性が流に駆け寄りある事を訊ねる。その女の名は[霧島 伽耶]、襲撃の時の兵助を起こす際に戦闘を交えた事がある。そしてその伽耶はこう言った。

 

「透が来るんですか!?」

 

黙って頷く。すると伽耶は少し下を向いてから何かやらなくてはいけない事が出来たよう部屋を飛び出して行った。

流は様々なメンバーから質問責めに会う。だがその場には來花と素戔嗚、蒿里は居ないのだった。その後は佐須魔に正式に迎え入れられた。

 

「んーっと個室空きあるかなー」

 

佐須魔は適当な霊を呼び出してそいつに乗りながら移動する。流も付いて行き部屋を出た、少し進んだ所にそれぞれの個室がある様だった。扉の隣に名札が付いていて死んでいるはずの[神兎 刀迦]の文字と書かれている名札も見つけた。

 

「あ、あったあった」

 

そのまま部屋開き中に招き入れた。右隣は[西条(サイジョウ) 健吾(ケンゴ)]、左隣は[桐生 叉儺]と書かれていた。正面の部屋は[原 信次]とある。

 

「部屋の中は好きに使って良いよ。まぁ知ってるだろうけど部屋大きくしたりしても良いからね。ここ外とか無いから。あと指紋認証があるよ、中からは簡単に開けれるから。ちなみに自動ドア」

 

「分かった。それにしても周囲が重要幹部だらけだが僕の階級は何だ?」

 

「ん?そりゃ重要幹部だよ、だって普通にトップレベルに強いもん今の流」

 

「そうか。何かここでのルールとかはあるのか」

 

「基本的に無いね、ちょっと構造が複雑だからそこは随時誰かに聞いたりしてもらえればいいかな。後出来るだけ喧嘩はしないでね、戦闘したいなら修練場でやってね。そこなら好き勝手やって良いからさ」

 

「了解。飯とかはどうするんだ」

 

「大体誰かが作ってくれてる、基本原とかそこらが作ってる。食堂があるから好きな様に調理して食ってくれ」

 

「あ、あと一つ」

 

「何だい?」

 

「僕はお前の味方になった訳じゃない。力が欲しいだけだ。それだけは勘違いするなよ。それもこれも全部お前が理由だって分かってるだろ、覚悟しとけ」

 

そう言いながら流は指紋認証の設定を済ませて横開きの自動ドアを取って部屋に入って行った。佐須魔は少し複雑そうな顔をしてから食事を取るために食堂へ向かった。

一方流はベッド以外何も無い部屋の中である作業をし始めた。何か音を立てているようだ、それが何か明かされるのは相当後になる事だろう。

 

一方全く別の場所で一人の男がある遊びにふけっていた。その男の名は[語 汐(ユー シー)]、TISのメンバーであり上の上位三人の中の一人である。そんな汐は毎日雀荘に通っていた。

汐は生粋の麻雀好きで本当にずっと麻雀をしているのだ。賭け麻雀はやらない、いややれない。何故なら強すぎて毎回勝ってしまうので他の連中が賭けたがらないのだ。

だが汐は金を稼ぐために麻雀をしている訳では無い。それに極力目立ってはいけないのだ、世間に正体がバレたら雀荘に通えなくなりTISの仲間としか対局できなくなってしまう。そんなのは嫌なので目立たないようたまに雑用を行い後はずっと雀荘にいるのだ。

 

「123000点、私の勝ちです」

 

今日も絶好調だった。ただもう夜も更けて来たのでそろそろ雀荘を出る事にした、夜の東京の街を進む。反吐が出る様な醜い性の売買、お山の大将でイキっている恐喝、自信以外は何もなくろくな実績を積んで来たわけでも無いのに成功すると確信しているナンパ。様々な健常者が同じ空の元彷徨っている。

 

「やはり嫌いだ。麻雀仲間は麻雀以外では雑談程度しかしないから良いのだが一般人を見ていると怒りが湧いて来る。私もいい加減力を付けなくてはいけないな。佐須魔様の為にも」

 

口を動かしながらも足は止めない。ある場所を目指す、そこはあるボロアパートだった。日の当たりも悪くろくに手入れもされていない駐車場、都内にしては安すぎる家賃、だが汐はそこで暮らしている訳では無い。

あくまで『通り道』として物件を借りているのだ。そのボロアパートは薄汚い路地を抜けた先にある。

 

「まだ飯は残っているのだろうか…まぁ無かったら作ればいいか」

 

そう言いながらドアを開け中に入り閉じた。その瞬間汐はこの世から姿を消した。それは死んだと言う事では無い、転送されたのだ。仮想世界に。

TIS本拠地は仮想世界に存在している。佐須魔の神にも近い力を使い現世と仮想世界を繋ぐポータルを生成しているのだ。それはそれぞれが決めた位置にあって汐は借りている物件の玄関先に設置しただけの事なのだ。

靴はそのままで食堂へ向かおうとしたその時背後から殺気を感じ取った。防御体勢に移りながら振り返る。するとそこには高く足を振り上げて蹴ろうとして来ている流がいた。

 

「敵襲か!!」

 

まだ加入したと言う事を知らない汐は基地の場所がバレて襲撃されているのだろうと思い込み戦闘体勢に入ろうとする。だがすぐに一人の男が止める。

 

「やめろ汐」

 

島の襲撃時に流達がよーくお世話になった[エンストロー・クアーリー]だ。クアーリーは事情を説明し流が敵ではないと説得した、汐は納得した様で流に謝った。

 

「こっちも悪い。敵襲かと思った。それより知らない奴だけど名前は何て言うんだ」

 

「[語 汐]だ。能力はまぁ三日後に分かるさ。入って初日で私を超すとは少し癪だがまぁ良い、よろしく」

 

汐は手を差し出した。流も同様に手を出し握手を交わした。するとクアーリーは二人を食堂に連れて行く、二人共飯を食べていないだろうと言う事で作ってくれるらしい。

流はこうして着実にTISメンバーと知り合っていく、今後は仲間なのだ。今までの事を消す事は出来ないだろうが上書きすることは出来る、今は信頼を得るのが先だ。そうしなくては力を得る方法を教えてもらうことが出来ないだろう。

こうして新しいTIS重要幹部、[櫻 流]としての生活が幕を開けた。学園側がこの事を知るのはもう数日の事だった、当然だろう。あちらから来てくれるのだから。

迎え撃つ、それまでの話だ。

 

 

第百二十五話「とある提案」

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