御伽学園戦闘病   作:はんペソ。

128 / 147
第百二十八話

御伽学園戦闘病

第百二十八話「掴んだ道筋」

 

その少年は男の腕を掴みながら言う。

 

「すいません。僕の弟なんですけど昔家族が僕とその子以外能力者に殺されてしまって…その時に少しおかしくなっちゃたんです。なので離してあげてください」

 

男は事情を納得した様で二人に謝罪と追悼の意を述べてからその場を去った。他の者も能力者では無いと知るとすぐさま散り散りになった、少年は漆を連れて人気が少ない所に逃げ込んだ。

 

「あ、ありがとう…君も能力者?」

 

「あぁ。元TISだ。一年半前の騒動の時に抜けた、だから安心しろ。お前に手出しする気は無い。ただ一つ忠告しておく、逃げた方が良い。死ぬぞ」

 

少年はそれだけ言い残して何処かに行ってしまった。漆は後々感謝をしようと思い今は皆と合流するのが先だ、すぐに捜索に出かけようとしたその時体が沈んでいく。

影が来たのだ、そう思い流れに身を任せる。視界が真っ黒になり数秒間体が硬直する、そして数秒経つと体と視界が元に戻った。前方には影が立っていてどうやら焦っているようだ。

 

「無事でしたか!?あれ程の霊力、捜索対象の[語 汐]と遭遇したんですか!?」

 

「あ、いや違くって…」

 

漆は何があったか全てを説明した。影はマズいと判断しすぐに通信機に霊力を流し込み通信を図った。どうやら影は霊力操作が出来る様で通信を開始した。

何があったかを説明すると薫もある事に納得したようだ。

 

「こっちもハックの能力でお前らそれぞれを監視してたんだが漆だけ映像が乱れてな…そういう事だったのか。にしても元TISがいたのか…どんな特徴だった?」

 

「黒髪で、中学生ぐらいの男の子で、狐の面を被ってて、右耳に風鈴の髪飾り左耳に安全第一って書かれた御守りをぶらさげていました」

 

「…そう言う事か。なんで新宿の霊力高いか分かった。そいつは元TIS重要幹部[久留枝(クルエダ) 紀太(キタ)]だ、確かな[アリス・ガーゴイル・ロッド]と仲が良かったんだ。ホントに家族みたいな感じだったはずだ、だから今も一緒に居るんじゃないか?

重要幹部格が二人もいればそりゃあ高くなるはずだ…にしても最悪のパターンだな。霊力だけで判別出来ないとなると厄介すぎる。まぁ新宿に居るのが分かっただけでも成果がある、漆は一旦こちらに帰すよう莉子に頼む。少し待っていろ」

 

そう言って通信を切った。二人は安全な暗闇の世界で待機しているとベロニカからの通信が来る。

 

「莉子さんの通信が取れません。恐らく漆さんと同じ状況なのでしょう。ただ莉子さんが落とされると非常にマズいです、菊さんとポメちゃんとは連絡が取れているので今は莉子さんを探してください。

ただ語 汐を見つけた場合すぐに報告をお願いします、それでは」

 

非常に嫌な展開になった。莉子が死んだら突撃にも時間がかかってしまうし非常事態に基地に逃げ帰る事が出来なくなってしまう、今莉子が死んで全員の霊力操作が封じられた瞬間ほぼ詰みなのだ。

漆の場合は霊力操作を行うのが部下にする時だけなのでスズメが帰ってきたが影は闇の世界に留まるにも霊力を使うので影も封じ込まれたら完璧に逃げの手段がなくなる、と言う訳だ。

 

「すぐに行きましょう!莉子さんとは能力柄良く共に居るので分かります!影の世界で行きましょう!」

 

「分かりました。僕は出来れば菊さんの所へ行きたいので通りかかった所に菊さんが居たらならばそこで通常世界に戻してください」

 

「分かりました。それでは行きますよ」

 

二人は影の世界を移動し始めた。影は足を沈ませ凄い勢いで移動する、漆はその影に引っ付いて共に移動する。

 

「僕思うんです、あいつは常に雀荘に居るとの事なのに何故僕の元にいたんでしょうか…まさか急襲がある事を知っていて本拠地の位置がバレないよう対策しているのでは無いでしょうか?」

 

「それだったら大分苦しいですね。ただそうなると何処から計画を聞きだしたのでしょうか?タレコミをした人を捕まえて情報を引き出したのでしょうか」

 

「僕も検討が付かないんですよ。ただ事実は一つです、語 汐は僕らの存在に気付いている!」

 

その事だけは変わらない。恐らく莉子も霊力操作を封じられているのだろう、とても危険な状況だ。二人はすぐさま莉子の元へと足を運ぶのだった。

 

 

[エスケープ基地視点]

 

「ひとまず漆の無事は確認した。ただ相手が厄介だなこれ、俺も能力の詳細を全く知らないからどうするべきか…」

 

「もう無理矢理やるしかないんじゃないか?」

 

兆波がそう言うが薫は否定で返した。絶対市民にはバレたくないのだ、今はあまり能力者に批判が行ってほしくない。大会は近いので少しでも株を上げておかなかければ能力者を平和に導けない、今は世間の目からは逃れつつTISの頭数を減らすのが最適解である、

 

「とりあえず一度撤退させたい!全員に連絡を入れろ!漆、莉子にも入れておいてくれ!」

 

薫の指示通り操縦役の五人はそれぞれ一人ずつに連絡を入れようとした。だが三人かからなかったのだ、莉子と漆、そして菊もだ。

完全にやられた、今繋がるのは影とポメのみ。ポメは何を言っているかが分からないので生存確認ぐらいしか出来ない、影も今は通常世界の方に出ないようにして欲しい。莉子を見つける手立てが無い。

 

「やばいねこれ…」

 

翔子が焦りながらも操作を続ける。すると少し後ろで座ってパソコンをいじっていたハックが声を上げる。

 

「俺も霊力使えねぇ!」

 

基地内が凍り付く、まさか基地の中にもいるのかもしれない。違ったとしてもどうやって霊力操作を封じたのかが全く不明だ。今送って来られる情報は影の通信機のみだ、すぐに影と通信を繋ぎ常に霊力を流し込んでおくよう命じた。特に何も音は無く雑音が続いていた、だが唐突にその雑音が消え無音になった。

パソコンのファンの音だけがなる。皆の鼓動がハッキリ聞こえる程静かだ。半田が恐る恐る通信機に手を掛けた。

 

「影、聞こえてるか?」

 

だが返事は無い。すぐに薫は指示を出す。

 

「ポメとも通信を取れ!」

 

翔子が通信を図った。すると元気な鳴き声が聞こえて来た、どうやらポメは無事らしい。だが他のメンバーは全員通信が取れない、と思っていたその時だった。漆から通信が来る。

 

「やっと直った!影さんは霊力が流せなくなってしまったようで今は表の世界の人通りが少ない道路です!僕は能力も霊力も元通りです!」

 

一安心だ。時間が経てば効果が切れるのであろう、ならば莉子の生存もその内判明するはずだ。ただ今は探しに行かなくてはならない。引き続き莉子と菊を捜索するよう命じた、続いてポメにも同じ指示を出してから一度パソコンから手を離して考える。

 

「どう言う事だ?影に直接干渉出来るわけがない…範囲にいるなら誰にでも能力を使えるのか?いや…だとしたら効果が切れる漆にも再度能力を使うだろう…分からないな」

 

「どうするの薫、結構苦しい状況だと思うんだけど」

 

「プラスで送るしかないか…ただ他の奴らって霊とか出さなきゃ捜索できない。どうするべきか」

 

「知らないわよ!リーダーのあんたが何とかしなさい!」

 

「あー分かった分かった。ただ実際掴みかけた尻尾を放そうとしている、捜索班が全滅したとしてもあいつの居所は特定しなくてはならない。

新宿に追加で送る、ただすぐには飛ばさないから準備しておけ。送るのは[管凪 礁蔽][空十字 紫苑][ラック・ツルユ]のエスケープ三人だ。俺が飛ばしてやる、莉子よりは精度が悪いが新宿内になら飛ばせる」

 

三人は軽いウォーミングアップを始めた。そんな三人を置いて操縦組は更に情報を探す、雀荘を探したり各地の監視カメラを漁って捜索組の姿が無いか探しているのだ。

ただ全く情報は無く今手に入れることが出来るのは漆の頭上にあるハックの定点カメラと通信機のみだ。とても重要な情報源なので絶対に手放してはいけない。

 

「先生!漆から通信が来ました!ただ一瞬で切れてしまい何て言っているか分かりません!」

 

薫のヘッドセットに音を流した。耳を凝らして聞くと一瞬だけ漆の悲鳴の様な声が聞こえたがすぐに音が途切れてしまった、すぐさま指示を出した。

 

「三人を連れて行く!俺は一瞬場を離れる!頼むぞ!」

 

席を立ち三人の元へ向かった。そして佐須魔が使っているのとほぼ同じゲートを生成した。まず薫が中に入って何処に出るかを確認した、全く問題の無い場所だったのでそのまま三人の送った。そして通信機は急ぎで作った物なので三人分は無いと説明してから基地に戻りゲートも閉じた。

 

「よし。送った、何かあったら礁蔽が戻って来るだろう。ハック!定点カメラ三人分出来るか!」

 

「出来る。ただどの端末に出せばいい?」

 

「翔子と兵助、ベロニカのモニターに出してくれ。その三人は絶対に何も見逃さないように見ていろ!俺と兆波、半田は他の奴らの定点カメラと通信機、街中の監視カメラをチェックしてくれ」

 

それぞれ言われた通りの行動に出る。操縦組ではないメンバーも目を凝らして見落としが無いか探り続ける、そして三人が向かって二分程度が経った時だった。

 

「先生!影先輩から通信が来ました!」

 

すぐに繋げ会話を始める。

 

「私は直りました!ただ漆さんがいつの間にか姿を消していて…私は今の所暗闇の世界に入っているので大丈夫です。ただ先程この世界の中に居るのに能力の干渉を受けたのでまた通信が取れなくなるかもしれません!」

 

そこまで言った所で隣の半田が薫の肩を叩く。影の通信は切らないよう言ってから半田の要件を訊ねる。すると半田は通信機から莉子、菊の声が聞こえて来たらしい。菊の声は兆波に、莉子の声は薫が聞く。

 

「菊!大丈夫か!?」

 

「私は大丈夫だ。なんか霊力が使えなくなってな、私の付近にいるかもしれない」

 

菊は通信が取れていなかったので事情を把握できていない様だ、兆波が手短に説明すると菊は一つの疑問を覚える。

 

「なんで同時に三人なんだ?」

 

「俺も分からない、ただ漆だけは今も連絡が取れないんだ。出来るならば皆の監視をして欲しい。そして出来るだけ語 汐と距離を置き霊力操作を封じられないようにしてくれ!」

 

「了解。三人も来たなら位置が分かるように誰か霊力放出した方が良いんじゃないか?」

 

「そうだな。ただ俺では判断しかねるから薫に指示を仰ぐ」

 

「おっけー分かった。じゃあ一旦切るぞ、私は漆を最優先で探す」

 

菊は兆波の言う事も聞かず通信を切った。兆波は不安になるがひとまず薫に全てを連絡しようとする、だが薫は莉子の話を聞いている。少し待つことにした。

一方薫は莉子とある話をしていた。

 

「私の背後に語 汐がいたの。ただあいつは攻撃してくるんじゃなくてただ触れて私の身体から何か抜き取った、私はすぐにテレポートで逃げ出したんだけどその直後霊力操作が効かなくなった。

傷とかは無いけどこのままこんな事をされてたららちが明かない、ホントに誰か一人を犠牲にしてでも...」

 

「いや、勝てる」

 

「え?」

 

「分かった気がする。追加で向かわせた三人にも定点カメラを付けた。だが今紫苑と礁蔽は砂嵐状態になっている。これはお前らが霊力操作を封じられている時と全く同じだ。ただ同行しているラックは無事っぽい。

これとさっきまでの事を含めると一つ分かる事があるんだ。」

 

「何!?分かる事って!」

 

「あいつは最初漆、影、莉子の霊力操作を封じていた。だが少しして影、莉子、菊に変化した。そして次は漆、礁蔽、紫苑だ。全部三人なんだよ、あいつは『三人以上に同時に干渉できない』、そう捉えていいだろう。今から本格的に指示を出す。連絡がつながる奴には全員通信機をつけっぱにしてもらう。

さぁやるぜ特定作業(ゲーム)の開始だ!」

 

 

第百二十八話「掴んだ道筋」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。