御伽学園戦闘病   作:はんペソ。

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第百三十八話

御伽学園戦闘病

第百三十八話「お話/開戦」

 

『それは私の性格が悪い、とでも言いたいのかい?』

 

『そう言っているよ。だってあんなに良い子だった蓮君にわざわざ自分の手を使って戦闘病を発症させた。性格が良い訳が無いだろう?』

 

『やっぱマモリビトと言ってもニンゲンだね。まず大前提として君達が生きている世界は私が作ったんだよ?作った者に対して作られた者が性格云々を語るなんておこがましいとは思わないのかい?』

 

『思わないね。君が僕らの上位存在である事は分かっているがだから何だって話だ。殺せるなら殺せばいい、その場合僕の"魂"を求めて佐須魔が飛んで来るよ

そうなったら流石の君でも困るはずだ。なんせ彼は超異常個体、規格外の強さだ。もしかしたら君と同等の神にさえなってしまうかもしれない存在だからね』

 

そう流暢に語っているとエンマの身体が一気に重くなる。地面に叩き伏せられ強制的に頭を下げられた。だが少しでも抵抗しようと顔を上げる。

仮想のマモリビトはその行為が気に入らないようで更に圧を強くする。だがエンマは絶対に潰れずに耐え続ける。意味が無いと悟ったのかエンマを解放した。

 

『なんだい急に』

 

『私は見方でもないし敵でもない。その時、その戦況で好きな方にサポートする。今のあんたがちょっとムカついただけ』

 

『…君もニンゲンじゃないか』

 

エンマがそう呟いた。その瞬間神は目を見開きエンマの首を掴んで持ち上げた、そして半端ない力で首を絞め上げる。だがエンマは能力を使って首の部分だけクラゲに変えた。そのせいで神はエンマを掴むことが出来なかった。だが座っているエンマに無意識に圧をかけながら口を開く。

 

『私をあんな下等生物と同じだと言うのかい?私はいつだって君の事や君の周りの者、世界だって壊せる事を忘れていないか』

 

『そうやってすぐ怒りに逃げる所がニンゲンらしいって言ってるんだぜ?』

 

あまりに舐め腐っている態度に腹を立てた神はエンマを思い切り殴った。音速をも超えるスピードで放たれたパンチに対応できずエンマを腹部にフルパワーでくらった。

言葉にできない激痛と一気に押しよせる徒労感、そして冷えて行く背筋と頭。その痛みは治まる事を知らないどころか謎の力によって更に痛みが増して行く。限界が来て死にそうになったその時だった。

 

「な~にしてるの~」

 

聞き覚えのある声。神に最も近いニンゲン、最強の能力者。佐須魔だ。

 

「俺達の家の近くで喧嘩しないでよ~」

 

『そもそもあなた達が私の仮想世界に突撃してきて許可を取る前に勝手に家作ったんだじゃない』

 

「そ~だけどさ~分かるでしょ?僕ら今ピリピリしてるの。あんまり紛らわしい霊力とか音出さないでもらえる?」

 

佐須魔が呆れながらそう言うと神とエンマは落ち着き喧嘩はしないと言った。佐須魔は感謝してから本拠地へと戻って行った、神とエンマはその後何も話すわけでも無く解散する、だが両者共頭が痛くなるほどの霊力を放ちながら、だったが。

 

 

[学園]

蓮の病を抑制してから十数時間が経った。休みももう終わりだ。八月三十一日、突入の前日。基地に集まったメンバーは少しピリピリしていた。

蓮の件もあるし何より突入の緊張で一杯なのだ。それは教師も同じで普段冷静な元や乾枝でさえもソワソワしている。そんな空気を透がぶち壊した。「うぃーっす」何て言いながら本室に入って来た。

後ろには佐伯とハンド、パラライズもいる。

 

「よし。全員揃ったな。それじゃあ今日の流れを説明する。

まず突入をするのは九月一日零時ぴったしだ。それまではひたすら待機、二十三時半から新宿に数人送って本拠地に突入できそうかどうかを確認する。そして零時になった瞬間に佐須魔が生成した本拠地へとつながるゲートに突撃する。

そこからはもう自己責任だ。何があっても自分で身を守ってくれ、死んでも俺らは責任は取らない。まぁここに集まってくれた時点でその覚悟は出来ているんだろうがな。

そんで新宿に送るメンバーは俺、兆波、莉子、絵梨花、元の五人だ。何かがあったらすぐ逃げるか報告を頼むぞ。そんで本拠地の場所は後々伝える、今伝えるのはデメリットしかないからな」

 

「おい薫、一つ質問良いか?」

 

「良いぞ透」

 

「蓮は連れて行くのか」

 

「あぁ。行かせる、一人で置いておくのは危険だ」

 

「まぁ分かった。後一つ、俺らの目的はなんだ。何をしたら退避すればいい」

 

「重要幹部を三名以上殺せたら撤退だ。三獄を一人でも倒せたらならもうその時点で撤退もありだと思っている。

ただ勝ちだけじゃない。被害によっては俺が退避命令を出す。だからTIS、生徒どちらでも死者を見つけたり倒したりしたらすぐに阿吽で連絡してくれ。

他に質問はあるか」

 

名乗り出る者はいなかった。後々疑問に思う事はあるかもしれないが今は緊張のせいで頭が良く回らないのだ。

薫は質問は後からでも良いと言ってからリラックスするよう自由時間だと言って大きなモニターのパソコンをハックと共に触り始めた。いつもはだらけている薫がとても真面目な姿を見ると更に緊張が増してゆく、正直は話誰も休憩などできなかった。これから起こる事や死ぬかもしれないという恐怖に直面していたのだ。

 

「どんな奴とやらなくちゃいけないんだろう…」

 

「安心しろ水葉。何かあったら私が行く」

 

「それはありがたいけどさ…流石に三獄は来ないだろうけど重要幹部は絶対に当たると思うの。でもこっちは能力知らない可能性もある訳で…不安」

 

「そうだな。誰が死ぬかも分からない、何が起こるかも分からない。だが今気張る必要は無い、少し外にでも行こうか、水葉」

 

「うん。外行こ、外」

 

二人は外に出て行ってしまった。それと入れ替わりで一人の女性が基地に入って来る。メイド姿のリオだ、事情を知っている透や薫達は蓮を連れて外に出ようかと思ったがリオは二人にさせてほしいと頼みんこできた。

だが何かあったらいけないので断ろうとしても絶対に引いて来ない。呆れた透が自己責任でなら二人にしてやっても良いと言った。するととても嬉しそうに感謝してから蓮を連れて外に出た。そして散歩をしながら話す。

 

「坊ちゃま、能力は使えないんでしたよね、私が支えますよ」

 

「うん、ありがとう。それにしてもよく分からない感覚だね。家では霊力温存のために使わない事が多かったけど、使えないって言うのはあんまり体験しないから」

 

「仕方ないですよね。坊ちゃまは全く悪くないですから」

 

「そうかな?僕の手にはまだあの感触が残ってるよ、殺した時の。楽しくは無い、けど辛くも無いし怖くも無かった。なんか義務みたいな…体が勝手に動いたと言うか…謎だったよ」

 

「それでも坊ちゃまは悪くないですよ。あれは仕方のない事ですので」

 

「まぁいいや。それでリオは何を話したいの?帰って来てからで良いのに」

 

「…坊ちゃまは楽しかったですか?私やご家族、お友達の皆様との生活」

 

「うん。みんな良い人だし楽しいよ。母さんや父さんだって別に僕を縛り付けたくてやってたわけでもないんだろうし。生徒会のみんなだって凄く良い奴らだよ、僕の霊力が足りなかったりしたときに一緒に付いて来てくれたり普段の任務の時もしっかり気を配ってくれたり、何より友達になってくれた。

最初の友達だったルーズは先に言っちゃったけど僕もその内逝く事になる。黄泉の国でまた会える、次に会える時が楽しみだよ」

 

「そう…ですよね。なら良かったです」

 

「ねぇなんでさっきからそんな含みのある言い方なの?」

 

そう質問するとリオは黙ってしまう。そして歩を止め蓮の顔を見ながらゆっくりと、詰まらせながら口を開いた。

 

「坊ちゃまはこの作戦が終わったら透さんの所で引き取られるらしいです。もうこの島に居ることは出来ないと透さんが理事長さんや薫君に話して…二人共承諾したらしいです。

私は…嫌です…ですけど万が一の事を考えても透さん達と共に暮らす方が安全だと…言われて…何も言えなくて…」

 

「リオとか他のメイドや執事とも離れ離れ?」

 

「…はい」

 

「そっか…まぁ仕方無いよ。どうせまた会える、この作戦が終わったら僕は強くなろうと思ってたし。むしろラッキーぐらいだよ」

 

蓮は見えていないはずのリオを見ながら笑った。その瞬間リオの頭に今までの出来事が蘇って来る、たった四年されど四年。地獄の四年前2008年から共に時を過ごしてきた、だがこんな事故とも言えてしまうような出来事でもう会えなくなってしまうのだ。そう思うと何処か淋しくなって来る。

 

「そうですよね。また…会えますよね。絶対、生きていてくださいね」

 

リオも頑張って笑いながらそう言った。蓮は感情の部分がおかしくなっているので何故リオが泣きそうになっているのかは理解できなかった。だが別の場所で暮らす事になると思うと少しだけ心の中が冷たくなったような気がした。

 

「蓮じゃないか、それとさっきのメイドさん?何してるんですか、こんなところで」

 

丁度帰路に着いていた香奈美と水葉と遭遇する。リオは最後に話しておきたかったのだと伝えた。そしてもう言う事は無い、とも言った。

 

「そうですか。では危ないので私が基地に連れて行きますよ」

 

「分かりました。ありがとうございます」

 

二人が蓮を連れて行く事になった。これで本当の別れになる、蓮の最後の言葉とても短く特別感の無い物だった。だがリオにとってはとても大切な言葉となるのだった。

 

「それじゃあまたね!」

 

リオは返事をしなかった。ただ礼をして背中を向け目雲宅へと向かって行く、残った三人は雑談をしながら基地へと戻る。

エレベーターに乗り、面倒くさい手順でボタンを押して本室へと到着した。三人が帰って来たのを見た薫は一つ言い忘れていた事があると言って学園の生徒のみを集めて話しを始めた。

 

「そう言えばまだ授業でやってなかったから教える。この世には『死』と言う事象があるだろう?だがこの時お前らは健常者、いや無能力者が思っている死を想像するだろう。

だが能力者からすると『死』は一つではない。二つあるんだ」

 

元々知っている者以外全員頭に?を浮かべる。そして質問をしようとするが薫は無視して続ける。

 

「『通常死』と『完全死』、この二つに分類されるんだ。まず通常死、これはお前らが想像している死だ。死んだ時に魂が抜けてどんどん上へと上がって行きその後黄泉の国へと送還される。

そしてもう一つ、完全死。これはその魂までもが死ぬことだ。まずお前らは魂が昇ると言うのを比喩表現だと思っているかもしれない、だが実際に死ぬと魂は天へと昇って行く。本当に昇るんだ、こればかりは見ないと分からないだろうがな。

それでその魂は昇って行くときは無防備だ、そしてその魂は"霊と同じ判定"になる。簡単に言えば"持ち霊が喰える"ようになるんだよ。

そしてその魂を喰った場合はその魂の人物が持っていた能力を継承したり基礎の力がぐんと上がる。常時覚醒状態みたいになるんだ。

ただ喰った場合はその者は完全に死んで黄泉の国にすらいけない。何処に行くかは分からないが虚無にでも行くのかもしれない。これが完全死だ」

 

そう説明はしたものの誰もピンときていない。薫は経験しないと分からない事だと割り切って質問タイムに移った。色々な人が分からない点を聞いて薫や他の教師が答えて行く。まずは香奈美。

 

「その魂とは持ち霊でなくとも私達の様な生身の人間が喰っても吸収できるんですか?」

 

「出来る。俺がやったから分かる」

 

次は拳。

 

「その魂ってのを喰わずにぶっつぶしたらどうなるんだよ」

 

「誰にも吸収されずに完全死だ。助からないと思ったら喰ってやる方が良い、その方が本人のためだ。せめて力に変えてやれ」

 

次はファル。

 

「その魂が出なかったら相手は死んでないって事!?」

 

「そうだ。あと声量下げろ、うるさい」

 

そんな単純な質問が終わったその時最後に須野昌が最後の質問を投げかけた。

 

「俺は香澄の魂を喰った、って事になるのか?」

 

「いや、ちょっと違うな。香澄の魂を喰った狐霊を須野昌が使役しているだけだ。だから別に香澄を喰ったわけじゃない」

 

「ふーん。あんがと」

 

それで質問は終わった。その後は時間になるまで休憩を取る事となった。仮眠を取ったり適当に散歩したり普通に雑談したり様々な方法で暇をつぶした。その間も薫とハックはずっと二人でパソコンをいじっていた。

そして時間が経った。時刻は二十三時二十分、全員が本室に集まって薫の指示を待つ。ようやく作業が終わったらしい薫は伸びをしながら立ち上がった。

 

「よし。それじゃあ新宿に行く奴らは準備しとけ。通信機は無いからな」

 

薫以外の四人は準備万端だ。すぐにでも新宿に行ける状態となっている、薫は他のメンバーにも準備をしておくよう伝えてからハックと何か話し合い始めた。

そして五分程何かを話してから再び指示に戻る。

 

「突入する時は阿吽で伝える、恐らく莉子が基地に戻って来るか俺のゲートが生成されるからすぐに本拠地まで来てくれ、良いな?」

 

大丈夫そうだ。そして薫、兆波、莉子、絵梨花、元の五人は新宿へと転送されることとなった。

 

「それじゃあ、行って来る。待っててくれ」

 

その瞬間五人は姿を消した。

 

 

[新宿]

五人は同じ場所に飛ばされた。場所は雀荘緑川の路地、語 汐が消えた場所だ。ただそこに用は無く莉子が来た事のある場所なのでテレポートしただけだ。

用があるのはとあるアパート、語 汐が借りていてそこに本拠地へとつながるゲートがあるらしい。そう言いながら薫はどんどん進んでいく。

場所が分かっているとは言っていたがあまりにも迷いや警戒心が無い。流石に心配になった元がその事を聞こうとしたが薫は黙るようジェスチャーをした。その時元もやった理解できた、霊力を放出するなと言う意味だろう。周りに語 汐がいようが誰が居ようが能力で位置が特定されない限り霊力を放出しなければそうそう見つかる事は無い。

 

「…は?」

 

薫が立ち止まる。ただ周囲には何もなく霊力の反応も無いのに何故か立ち止まったのだ。そして周囲を見渡しながら呟く。

 

「誰もいない…だと?」

 

そう、新宿にはTISメンバーが誰もいないのだ。違和感があり過ぎる、何故こんなにもフリーな状態なのだろうか。

まさかTISは不意打ちなどはせず正々堂々本拠地に攻め込んできた所を迎え撃とうとでも言うのだろうか。薫達は混乱する、普段は敵の一人ぐらい送り込んでくるはずだ。なのにも関わらず全く気配が無い、時間稼ぎなどもする様子は無い。

 

「マジで迎え撃つ気かなのか?」

 

「わかんねぇな!!でも私達に自由に動かせると思うか?」

 

「そうなんですよね。私がいる時点で簡単には手を出せないとは分かっているでしょうけど手を出さないとは思えないんですよね…」

 

変に考え込んでしまう。だがそんな中兆波が一つの提案をした。

 

「もう変にからまわるだけだから何も考えず敵が来たらぶっ殺すか莉子の能力で逃げるとかにすれば良いんじゃないか?」

 

渋々だが納得した。実際ここで考え込んでも意味は無い、最悪の場合アリスや紀太が来てくれれば何とかなるだろう。

五人はどんどん進んでいく、様々な通路を抜けて、道に出て、再び通路を渡って、と思ったら道を戻って。などという行動を繰り返していいる、薫のよく分からない道案内に疑問を持ちながらも進んでいく。

 

「やっぱ|旋転球(せんてんきゅう)は駄目だなぁ。昔に作ったやつで精度も悪いから軌道がぐちゃぐちゃだ」

 

薫は旋転球の軌道を辿っているらしい。そして歩き始めて二十五分、そろそろ到着しなくてはまずい時間だ。

すると立ち止まる。影に包まれほこりがまう路地を抜けた先。あまりにも酷いボロアパートが建っていた、建築基準法なんて守っているようには見えない建築だ。

だがそのアパートの一階の一番右端の部屋の扉の前に鉄球が一つ落ちている事に気付いた。もう確定だ、ここにゲートがある。

時刻は二十三時五十八分、もう何かを話したり相談している暇は無い。すぐにでもメンバーを集めなくてはいけない。すぐに莉子に指示を出した、その瞬間莉子は姿を消した。

そして二十秒後全員を連れて戻って来た。あまりにも醜い建物に驚く生徒達を他所に薫は扉を開いた、すると玄関の少し先にゲートがある。

 

「あった…本当に…これで佐須魔を…」

 

そんな独り言呟いている薫を絵梨花が叩く。そして突入まで残り三十秒だと伝えた。薫は急いで生徒達を玄関先に集め一言だけ残す。

 

「死ぬなよお前ら!!」

 

そして第一陣を切ってゲートに飛び込みながら叫んだ。

 

「TIS本拠地急襲作戦、開始!!!」

 

全員が突入した。するとそれぞれ違う場所に転送された。全員一人ずつで転送される、本当に全然違う場所に飛ばされたりもしたが全員TIS本拠地の中にいるのは分かる。

 

「来たか。じゃあ始めようお前ら、本気で良いよ。戦闘病もフル活用だ!!やるぞ!!迎え撃て!!!」

 

佐須魔は口角を最大限まで上げながらそう指示を出した。その瞬間今回戦闘をするTISの奴らは動き出した、本拠地内にはとんでもない量の霊力が溢れ出す。

そして早速数名は対峙する、始まった。殺し合いと言う面を被った大会に向けての準備運動が。

 

 

第百三十八話「お話/開戦」

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