御伽学園戦闘病   作:はんペソ。

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第三章「工場地帯」
第三十話


御伽学園戦闘病

第三十話「遠征準備」

 

TISの襲撃を退けてから一ヶ月が経った。エスケープチームも生徒会も普通に授業を受け、普通に帰り、普通に生活をしていた、ただルーズは未だ見つからず諦めかけていた頃にエスケープチームが理事長室に呼び出された。エスケープチームは授業中ながらすぐさま理事長室に集合する。流が到着する頃にはもう全員集まり、ソファに座っていた。流もソファに座ったところで話が始まる。

 

「授業中に集めてしまってすまない」

 

「俺と礁蔽は抜け出してたから大丈夫っす!」

 

礁蔽はまさに「それ言うか」と言う顔をして紫苑を見つめる、そんな二人を置いて理事長は話を進める。

 

「そうか、では本題に入ろう。君達が戦闘を交えた後行方不明になったルーズ君は未だ足取りが掴めない。だがほんの少しの情報になる事があるかもしれない、と遠征をしているメンバーから先程緊急連絡があった」

 

「兄さんの!?」

 

「あぁ、ただ彼らは別件でそこに行っている。だからルーズ君の情報に関しては君達に捜索してもらいたいと思っている。」

 

「初めての遠征ちゅーわけか」

 

「ただ君達全員を連れて行くわけにはいかない。そこでこのメンバーの中からニア君を含めた四人で行ってもらう事にした。ルーズ君のためにも早く情報を引き出したい、そのため明日の昼頃には出発してもらう。取り急ぎ遠征に向かうメンバーを決め、持って行く物を決め荷物をまとめておいてほしい。話はそれだけだ」

 

話はもう終わるかと思われたが流が口を挟む。流は遠征の事がよく分からないので話に着いて行けていなかった。流石にこのままで部屋を出るのは不都合が生じるので遠征とは何か訊ねる。理事長は特に何も言わずに説明してくれる。

 

「遠征と言うのは生徒会メンバーや優秀なチームメンバー少数で日本本土や外国の能力関連事件、能力が必要な雑用、そして能力取締課だけでは対応できないTISや犯罪者を捕まえたりする事だ」

 

流も完全に理解した様で礼を言うが理事長は特に反応しない。理事長が他に質問はないか聞くが誰も無いと答えた、そして用は済んだので荷物をまとめるためもう帰る事を許可された。

全員席を立ち、そそくさと部屋を立ち去ろうとしてドアを開け部屋を出ようとした。

 

「授業はちゃんと受けなさい」

 

理事長が低い声で出て行こうとしている礁蔽と紫苑に言った。

 

「は、は〜い…」

 

礁蔽は汗を流しながら退室しすぐに扉を閉めた。そしてそのまま全員で基地に向かう、その途中で礁蔽が遠征に行ける事を喜び惚気ていると素戔嗚が後の三人は誰が行くのか聞く。礁蔽は少し考えてから口を開く。

 

「自由枠は三人やろ?ならまずリーダーのわいやろ」

 

「待て待て待て」

 

蒿里が一瞬で止めに入る、蒿里はリーダーなど関係無いと言う。すると礁蔽は「わいは移動役やから」と蒿里がヤバい奴みたいな目を向けながら言い返した。蒿里は最初からそう言えと怒る。

 

「すまんすまん。次に判断力が高いラックやろ、で最後に強い素戔嗚やろ!」

 

なのでメンバーはニア、礁蔽、ラック、素戔嗚と言う事になる。文句がある者はいないか訊ねるが誰も文句無いどころか最初からそうしようと思っていたと礁蔽を褒める、礁蔽は少し照れながら何を持って行くのかも早めに決めておく。

 

「トランプとか持って行こう」

 

そんな事言う素戔嗚に兵助が「修学旅行じゃないんだぞ」と注意する。素戔嗚はションボリとしてから真面目に考え始める、結局は礁蔽が扉を経由して取りに戻る事が可能なので携帯食料や携帯、そして何も無いとは思うが一応の保険のための戦闘用具に決まった。

 

「というかニアがいなくなっちゃったらご飯どうするの?」

 

「僕が作るよ、紫苑も出来るだろうし。元々料理役だったしね」

 

兵助が作る事になる。そして流が楽しみにしているとある事に気付く、呼び方だ。

 

「兵助君…よく考えたら年上だしさんの方がいいのかな」

 

「まぁ好きに呼んでくれ」

 

「じゃあ兵助君で」

 

「素戔嗚もわいも蒿里も家庭科でとんでもない物作ってなんとか消滅させる為に大井が出動したぐらいやもんな!」

 

チーム創立時のメンバーは兵助以外料理が壊滅的なのだ。あまりの暗黒物質(ダークマター)ぶりに一人ぐらいならぶっ殺せるだろうと話していると基地に着く。素戔嗚がパスワードを唱えエレベーターが現れて乗ろうとした所で礁蔽が思い出したように言う。

 

「よう考えたらわいの荷物はわいの部屋にあるやん!」

 

「あ、我もそうだった」

 

「そういや俺もだ」

 

流石の兵助もドン引きしている、とりあえず三人は荷物をまとめる為に各々の家へ向かう事になった。その間にニアが昼飯を作ると言うと三人とも少し嬉しそうにする。

流は礁蔽の部屋には行かず基地で待つと言ってエレベーターに乗り込んだ。

 

「ほいじゃ後でな〜」

 

エレベーターには蒿里、ニア、紫苑、流、兵助が乗り礁蔽、素戔嗚、ラックは各々の家の方向に体を向け歩き始めた。

エレベーターが降り切って、扉が開く。基地の中に入ったニアと紫苑は真っ先にキッチンに行き、他三人はソファに座った。そこで流が今まで気になっていた事を聞いてみる。

 

「一つ質問いい?」

 

「どうしたの?」

 

「所々で降霊術の神格~とか上~とか聞くんだけどそれってなんなの?」

 

「そうかそうか知らないのか!ならばこの蒿里が説明してあげよう!まず降霊術の霊は大まかに四つの分類分けがされるの、まず一番弱い[()]、これは流のスペラとかぐらいの強さの霊を分類する、単純に弱い霊とか攻撃性がない奴はここに属す。

でその次に強い[(ジョウ)]、人を殺せるぐらいの強さを持ち合わせていればここに分類されるね。

そして[神格(かみかく)]これがまた複雑で神格の霊は世界に五体しか存在しないの、と言うか五体しか存在できないの」

 

「と言うと?」

 

「神格は世界の中の強さトップ5の霊達の事を言う、ただし同じ種族で既に神格がいた場合はその種族の神格の霊の強さを超えなくちゃいけない」

 

流は頭に?を浮かべる。

 

「えーと今の神格は鳥、猫、犬、人、狐なの。その中で一番弱いのは猫なわけ、でその五種類以外の持ち霊を神格にしたい場合は一番弱い猫神の強さを超えれば猫神は[上]へと下がってその持ち霊は[神格]へと上がるの。だけどさっき言った通り同じ種族が先に神格になっていた場合その種族の神格の強さを超えなきゃいけない。例えば流のスペラを鳥神にしたいとするね、その場合猫神の強さを超えても元々神格の中には鳥神がいる、だから猫神を超えても鳥神を超える事が出来ないと神格にはなれないよって事」

 

「多分、分かった」

 

「まぁ神格になった時にギフト的な感じで強さが底上げされるからどんどん越えるのは厳しくなってくけどね」

 

「神格とその種族の中の一番強い上ってどれぐらいの実力があるの?」

 

「もう違うんだけど…一番近くて現鳥神と会長の旧持ち霊が一番実力が近かったんだけどそれでも二倍ぐらいの実力はあったらしいよ」

 

「超えるのは難しいのか…」

 

「で、最後の[神話霊]。神話で出てくる霊の事を指す。エジプト神話でも日本神話でもいい、ただその霊は他の霊みたいに多数いるわけじゃなくて神格みたいに世界に一匹の存在なの。朱雀は生徒会にいる灼しか持ってないし、ラーは薫しか持っていない、って感じ」

 

霊の階級の話が終わると同時にニアと紫苑がキッチンから出てくる。今日は何か蒿里が聞くと青椒肉絲と言う答えが来た、蒿里は精一杯喜ぶ。

そんな話を他所に紫苑は眠いと呟く、兵助が昼寝を提案すると紫苑は眠そうにニアにある事を要求する。

 

「ニア〜いつものして〜」

 

蒿里は一瞬で嫌な予感を感じ取り紫苑を睨む。ニアは「いいですよ〜」と優しい声で受け入れる。

ニアは誰も座っていない方のソファに座り膝のところをポンポンと叩く、蒿里は察したがまさかと思い見つめる。だがそのまさか紫苑はその膝に頭を乗せた、そう膝枕だ。その瞬間当事者二人を除いた三人が思った事は全く同じだった。

 

「「「溢れ出る犯罪臭」」」

 

その考えのすぐ後、蒿里はもう一つの思考が浮かび上がった。

 

「ちょっと待って今“いつも”って言った?」

 

ニアはその質問によくやってあげていると答える。蒿里は紫苑をそこに置いてから反対のソファに座るよう促す。ニアは何のためか分からないがとりあえず紫苑と離れ向かいの流と兵助が座っているソファに座った。蒿里は深く息を吸ってから思いっきり紫苑を蹴った。

 

「グェ」

 

「ほんっとにあんたは!犯罪者予備軍!ペドフィリア(ロリコン)!歩く幼女の脅威!」

 

紫苑を罵倒しながら何度も何度も蹴りつけた。十回程蹴ってからさっきニアがいた場所に座り「私で我慢して」と言ってから紫苑の頭を太ももに乗せた。

兵助が蒿里は優しいなと言うと蒿里は淡々と釈明する。

 

「いや私は高校一年生男子が中学二年生女子に膝枕されてるのがヤバいって思ってる訳で紫苑が嫌いなわけではないよ」

 

「え…告白…?」

 

「ほんっとキモいな!」

 

「まぁ俺は寝るわ」

 

「はいはいおやすみー」

 

紫苑はそのまま目を閉じ寝息をかきながら蒿里の膝枕を受けながら昼寝を始めた。

紫苑が昼寝を始めたと同時に[紫苑の部屋]と書かれた部屋から礁蔽が出てくる。礁蔽はどう言う状況か分からず困惑し状況の説明を受けた。結局分からず諦めた。

 

「礁蔽さんは何を持って行きますか?」

 

「鍵と携帯食料と携帯だけやな」

 

ニアもそれと同じぐらいの荷物にしようと決める。そんな話をしているとエレベーターが開き、ラックと素戔嗚が同時に入って来た。

礁蔽が何を持って行くか訊ねるとラックはスマホと携帯食料、素戔嗚は面と刀だけだと回答した。

ニアが全員揃ったし昼食にしようと昼飯を持って来る。

 

「紫苑起きてー」

 

「ふぁあ〜おはよう」

 

「はいおはよう。そして早く頭を退かして」

 

「分かった〜」

 

紫苑が起きたと同時にニアがキッチンから炊飯器と中華スープ、青椒肉絲を持ってきた。美味そうな飯を目の前に耐えきれずが食べ始める。目の前の食事にがっつきながら流が礁蔽に質問した。

 

「ねぇ礁蔽君達が遠征に行ってる間って僕ら何してればいいかな?」

 

「まぁとりあえず授業を受けてもらうとして紫苑と体術の練習してればいいと思うで」

 

「紫苑君って体術できるの?」

 

「俺のバックラーの能力的に俺が戦える又は戦闘できる奴が周りに一人以上いる、っていう状況じゃないと戦えないから自分を強くしようと思って兆波に稽古つけてもらった」

 

「紫苑君の霊の能力って何?」

 

「触れた相手の遠近感を崩す」

 

その後は紫苑の霊の話をしながら白飯とおかずを全て平らげた。そして休憩中に礁蔽が飯の事を訊ねる、遠征組は変わらずニアが、学園組は兵助と紫苑が作る事に決まった。

そして紫苑は日課のゲームをしながらある提案をする。

 

「一人になるし誰かの家に泊まりたいな」

 

「僕の部屋でも来るか?」

 

兵助のその誘いに嬉々として承諾する。

 

「行くわ!気になる」

 

「よかったな!僕の部屋は何故か未だに学生寮に住んでる薫と同部屋だから毎日が楽しいぞ!」

 

「まじ…?」

 

「じゃあ早速荷物まとめよっか」

 

「いやだ…いやだ!」

 

基地内は昼から楽しげな雰囲気で包まれ各々が考えている事、思った事を率直に口に出して笑い合ったりツッコミをしたりする。そんな状態が二時間ほど続いた。少し空が紅色になり始める、時計を見た礁蔽が立ち上がりもう帰ると言って席を立った。

 

「そろそろ帰るわ」

 

「僕も一緒に帰るよ」

 

「じゃあ私も帰るかな」

 

「我は日が暮れるぐらいまでいよう」

 

「俺もポメを菊に渡さなきゃいけないから帰る」

 

「分かりました。さようなら、また明日会いましょう!」

 

「さいなら〜」

 

「ばいばーい」

 

「そんじゃ」

 

素戔嗚、兵助、ニア、紫苑を置いて全員エレベーターに乗り基地から出て行った。そこに残った四人は少しだけ雑談をしてから個人個人で行動を始めた。ニアは食器を洗いにキッチンに行き、紫苑はスマホゲームのデイリーをこなし、素戔嗚は刀の手入れを、兵助はぼーっとしている。

 

「あ!薫のご飯準備しなきゃいけないからそろそろ帰る」

 

兵助はやらなくてはいけない事を思い出し急いで帰る準備をする。三人とも別れの挨拶をした。

 

「紫苑は服とかまとめといてね、明日から同部屋だから」

 

「あ…うん…」

 

兵助はそのままエレベーターに乗り、学生寮へと歩いて行った。基地内はキッチンにいるニアと特に話す事もない素戔嗚と紫苑だけになった。

 

「そういえばなのだが」

 

「ん?」

 

「紫苑は何故年下が好きなんだ?」

 

「なんでって言われても…なんて言うか年下だと恐怖感がないというか自分が上に立っている感覚がして安心する…って感じかな」

 

「過去に何かあったのか…?」

 

「まだ外にいた頃だけどな、能力者って事が判明したら直ぐに孤児院に送られたんだ。けどその孤児院からも追い出されて路頭に迷ってる時に年上のお姉さんが拾ってくれて、家付いてったらダメな人でそれが未だにトラウマでな」

 

「孤児院から追い出されたのは知っていたが後にそんな事があったのか」

 

「まぁ年上と言っても蒿里ぐらいの年齢差なら大丈夫だけどな」

 

「そう言われると蒿里は年上と言うイメージが無いな」

 

「バカだからじゃね」

 

「我にも勝てるレベルには強いんだけどな」

 

「俺も普通にボコボコにされた」

 

二人が楽しげに会話しているとキッチンから戻ってきたニアが何の話をしていたか聞いてくる、紫苑は何を話していたかを説明する。するとニアは蒿里の悪口を言っていたと解釈し少し引く、紫苑は焦って弁明を始めた。

素戔嗚も楽しそうに笑っている。基地内は人数が減ろうとも賑わいが衰えず完全に日が暮れるまで三人で雑談に花を咲かせていたのだった。

 

 

「ほい着いたで」

 

礁蔽と流は自分たちが住んでいる部屋に到着し、鍵を開けてそのまま部屋に入った。荷物を置き床に座り会話を始める。

 

「遠征って何日ぐらい行くの?」

 

「まぁ一週間ぐらいやないか」

 

「結構長いんだね」

 

「まぁな」

 

「あと理事長が緊急連絡入ったって言ってたけど連絡が入ったって事は先に誰かが行ってるの?」

 

「生徒会重要役員が四人行っとる」

 

「三人も?」

 

「なんか三獄の気配がしたらしくてな」

 

「え?そんなヤバい案件を生徒がやってるの?」

 

「まぁ気配がしたってだけだし取締課は人数が少なすぎて調査には出てこれないんだ」

 

流が嫌な予感がすると呟くと礁蔽もそれに同調しその後にある指摘をする。

 

「三獄の一人は佐須魔や。だけど佐須魔は気配を消せるし、万が一消さなかったとしてなんで気配をわざわざ出したんやって話なんよ」

 

「普通ならバレたくないよね」

 

「次はTISのボスなんやがボスに関しては何も情報がないし今まで表に出た事もないからこんな形で気配を出すとは思えない…」

 

「じゃあ最後の一人[翔馬 來花]なんじゃない?」

 

「それだけは無いで」

 

「なんで?」

 

「來花は約一年前に死んでるんや。TIS内で揉めたらしくてな」

 

やはり何かおかしいと頭を悩ませていると礁蔽は明日も早いのでシャワーを浴びて寝る事にした。流は少しだけ散歩をする。

礁蔽はシャワールームに、流は散歩のため玄関から外に出て行った。外は暗く、光が無い真っ暗な世界。ただ道が続く真っ暗な世界。そんな世界をどんな歩幅で歩き、どんな気持ちで歩いていたかはわからない。ただ流の心は消そうとも消すことの出来ぬ嫌な気持ちで満たされていた。

 

 

「なんで付いてくるんだ」

 

「いや〜ポメを触りたい」

 

「別に良いけどよ…」

 

「なにー?家の中に女の子を入れたく無いのかなー?」

 

からかうように笑う。ラックは顔色ひとつ変えず冷たい声で答える。

 

「いや前に入れたし俺の家には頻繁に菊と陽が来るからなんも思わん」

 

「ちぇ…」

 

「なんで不服そうなんだ」

 

「いやラックにも好きな人がいたって言ってたからそういう恥ずかしい?的な感情があるかなー?って」

 

「無くは無いが普段ずっと一緒にいるお前に特別な感情なんて抱かん」

 

そんな話をしているとラックの家に到着した。目の前にはセキュリティが万全なラックの家がある。蒿里はセキュリティなど気にせず堂々と立ち入ろうとした。その瞬間蒿里の脇腹に握り拳ほどの大きさの石がクリーンヒットした。

蒿里は声にならない声を出し、脇腹を抑えながらうずくまる。

 

「なんで先に行く」

 

「大丈夫かなって…」

 

「はぁ…ポメ開けてくれ」

 

ラックが家の中に呼びかけた。呼びかけると鍵が開いた音と共にドアが開いた。玄関口にはポメが尻尾を振りながらちょこんと座っていた。

 

「行くぞ」

 

「うん…おじゃまします」

 

ラックが家に入るとポメが餌の催促で鳴きまくる、ラックはすぐにキッチンの棚からお皿とドックフードを取り出しドックフードを入れた。そのお皿はラックが手を放すと動かさずとも勝手にポメの目の前まで移動した。そしてポメはそのままドックフードを食べ始める。

 

「可愛い〜」

 

「俺のペットだからな」

 

「撫でていい?」

 

「いいぞ。だけど尻尾は嫌がるから触るなよ」

 

「はーい」

 

蒿里はドックフードを貪るポメを撫でながら椅子に座りコーヒーを飲むラックに話しかけポメとの出会いを聞く。ラックは引っ越してすぐに地下にTISの研究所があることに気付きそこで実験台だったポメを連れ出したと言う。だが蒿里は疑問に思った事があったので率直に質問する。

 

「佐須魔にバレなかったの?」

 

「バレたけどもういらないからあげるって言って渡してきた」

 

「何それ…酷い」

 

「あぁ、そのせいで能力を授かってしまったしな」

 

「そういえば能力聞いてなかった!能力何?」

 

「『物を操る』ただそれだけだ」

 

「単純だけど強いね」

 

その後も蒿里はポメを撫で続ける。そしてドックフードを食べ終わると同時にラックが食べ終わったか聞いてくる。完食したことを伝えるとポメを菊の所に預けに行くと言ってキャリーケースを持ちながら立ち上がった。

蒿里がもう少し触っていたいと文句を言うがラックは「俺だって準備しなきゃいけない」と言って聞かない。

 

「じゃあ私も行く〜」

 

「別にいいぞ」

 

ラックはポメをケースに入れて玄関へと向かった。蒿里はそれに付いて行き共に外に出た。外は暗い、街灯はあるが暗くてほぼ何も見えない。ラックは迷いなくある方向へと歩き出し蒿里はラックの後ろにピッタリと付いていきながらどうでもいい話をし続けていた。

二十分程歩き学生寮に着いた、高等部の寮に入りそのまま菊の部屋まで向かう。立ち止まった部屋のドアの横には[松葉 菊]、[大井 崎田]と書かれていた。

 

「大井先生と同部屋なんだ」

 

「まぁ菊の方が一年上だけどな」

 

「三回留年してるもんね」

 

「それに関しては俺も人の事は言えないからノーコメントだ」

 

蒿里と会話のキャッチボールをしながらドアをノックした、数秒して制服姿の菊がドアを開けた。

 

「あ、来た」

 

「頼むぞ」

 

「はいはいー」

 

それだけ言ってポメが入っているケースを渡し、菊がそれを受け取った。そして数秒ポメを見つめた後「じゃあな」と言ってドアを閉めてしまった。

蒿里はあまりに簡素な受け渡しにがっかりするが何度も行っているので仕方が短縮されるのは当たり前だろう。

 

「留年生同士の絡みを期待してたのに…」

 

「んなもんねぇよ」

 

「じゃあなんか話聞かせてよ」

 

「別にいいけど話す場所もないからカフェでも行くか?」

 

「やったー!奢りだ!」

 

「…クソが」

 

「じゃ行こー!」

 

蒿里はラックの手を取りはしゃぎながら学生寮の廊下を走り抜け、そのまま夜の街路樹へと駆け出して行った。結局コーヒーやミルクティー等を合計三杯奢り、日を跨ぐまで色々な話をしていたがそれは別のお話だ。

 

 

そんなこんなで夜は明け、現時刻は朝の七時。エスケープチームは全員学園に集まっていた。そろそろ行く事になるのかと思い緊張してきた時、玄関から莉子と薫が出てくる。

 

「よし、全員いるな」

 

「おう!」

 

「荷物は持ったな」

 

「おう!」

 

「準備はいいか」

 

「おう!」

 

「よし。では今から[菅凪 礁蔽]、[杉田 素戔嗚]、[ラック・ツルユ]、[ニア・フェリエンツ]、計四人の遠征任務を開始する。情報を発見又は情報を見つけられなかった場合は俺に連絡してくれ。タイムリミットは十日間、それまでに見つける事が出来なかった場合直ぐに学園へと帰還してもらう。

そして同現場にいる四人に協力を求めるのは有りだ、だが四人も自分たちの任務を優先するだろうからそれは理解しておけ。説明はこれぐらいだ。今から四人を飛ばす、宿泊は自分達でなんとかしろ。後住民と喧嘩や怪我を絶対に負わせるな、いいな」

 

四人とも元気良く頷いた。大丈夫そうだと思った薫は莉子に頼む。

 

「じゃあ莉子、頼む」

 

「はいはーい!それじゃあ四人とも掴まって」

 

四人は莉子の腕に触れる。莉子は全員掴まっている事をしっかりと確認してから能力を発動した。その瞬間莉子含む五人はその場から姿を消した。

 

 

莉子が能力を発動した。その瞬間目の前の景色は一変する。

工場が立ち並び、煙が立ち込め、薄暗い空気感が漂う、そんな街。通称『工場地帯』だ。

 

 

第三十話「遠征準備」

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