御伽学園戦闘病   作:はんペソ。

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第三十一話

御伽学園戦闘病

第三十一話「考察」

 

工場が立ち並び、煙が立ち込め、薄暗い空気感、そんな街通称『工場地帯』だ。

 

「はい!到着。それじゃ気をつけてねー」

 

「分かったで」

 

「ばいばーい」

 

莉子は手を振りながら学園へとテレポートを行い、工場地帯から抜け出した。礁蔽達は周囲を見渡してみる。だがそこには工場しか見えず端の方に少しだけ団地があるだけの簡素な街と言うことしか情報を得る事はできなかった。

 

「俺の知ってる限り島に来る前にこんな場所なかったはずだが」

 

「そんな一個一個工場地帯の構図とか覚えとんのか?」

 

「ある程度は」

 

そんな事は置いておきまずは泊まる場所、つまり拠点を抑えなくてはいけない。だが何処が泊まって良い場所なのかも分からないのでひとまず先に来ている四人から情報を引き出す事になった。

 

「一人だけ来ているのは知っている。[葛木 須野昌(カツラギ スノマサ)]、二年の女たらしクズだ」

 

「須野昌が来てるのか」

 

「来てるらしいが他は誰が来てるかは分からん。とりあえず須野昌を探しつつ生徒会っぽい奴らを探そう」

 

礁蔽と素戔嗚がくだらない話をしているとラックが説教を垂れてくる。

 

「ここがどこか分からない上に須野昌達は三獄の気配があったから来てるんだ、何が起こっても分からない以上日が暮れる前に寝泊まりできる場所を確保しておきたい。くだらん話しなんかしてないで早く探すぞ」

 

「そう言われてもな…わい須野昌は名前しか知らないんや」

 

「じゃあ大体の見た目と能力の説明を素戔嗚、よろしく」

 

「我!?…まぁいいが…須野昌は高等部二年の男だ。茶髪で制服、よくマフラーをしている。能力はバックラーで能力が霊の透明化、身長が175ぐらいで結構細身だな。そして女たらしで有名だ、蒿里はあいつの事大っ嫌いと言っていた」

 

情報を得た礁蔽はすぐにでも捜索をしに行こうとする。だがラックがそれを止めある提案をした。それは二チームに分かれて行動しないかと言うものだった。ただ分かれるだけでは無く生徒会メンバーを探す二人、そして街を探索する二人に分かれる事になった。

全員納得しじゃんけんの勝ち負けでチームを決める事にした、じゃんけんの結果ニアと素戔嗚、礁蔽とラックに分かれた。

 

「じゃあ俺らが生徒会を探す、お前ら二人が街の探索とかをしてくれ。日が暮れる頃にここに集合だ」

 

「了解です」

 

「では行こう、ニア」

 

「行きましょう」

 

「じゃあわいらも行くか」

 

「あぁ」

 

素戔嗚&ニアは団地がある方とは真反対、本当に工場しかない方面に二人で歩き出した。

ラック&礁蔽は団地に向かって歩き始めた。

 

 

[ラック&礁蔽]

 

「でも何故ここに三獄の気配があったんだ?」

 

「なんか強い能力者がいて佐須魔が直接スカウトしに来たとかやないか?」

 

「佐須魔だったらやりかねないがここは外だぞ?能力取締課が一瞬で駆けつけるだろ」

 

「せやなぁ…というか三獄の奴らなら気配ぐらい簡単に消せるんやないか?」

 

「できるな。それも超簡単に」

 

「じゃあ今もこの街にいる可能性があるって事やない?」

 

その冗談混じりのふとした発言にラックは驚愕する。そして焦りながら生徒会を早く探し出せと命令する、礁蔽は急に焦り出したラックを不思議に思い何故焦っているのか訊ねた。ラックは急ながらも説明はしてくれた。

 

「気配を消せるってことが頭から抜けていた…まだこの街にいる可能性が高い!」

 

「は…?なんでそういう結論になるんや?」

 

「気配を消すのを忘れていて既に帰っているならそれでいい、だがわざと気配を出して俺らを誘き寄せている可能性もある…そうじゃなかったとしてもわざわざ帰る時だけ気配を消すのは訳が分からない…あいつらの思考や目的とかも考えてもまだここにいる可能性が十分あるってことだ!」

 

ラックがそう言うが礁蔽はどうしても納得出来ない。何故こんな何も無い工場地帯に来たかだ、だが少し前の会話を思い出し心当たりがある事に気付いた。ある事を恐る恐るラックに聞く。

 

「なぁラック…お前が来たのって一年前だよな」

 

「あぁ」

 

「で島に来る前までの地形や工場地帯とかは全部覚えてたんだよな」

 

「あぁ」

 

「でこの工場地帯、ラックは知らないって言ってたよな」

 

「あぁ…」

 

「わいな…半年前にふと耳に挟んだ事があるんや…」

 

「何をだ!?」

 

「あの島に行く事の出来なかった戦闘可能能力者だったり有能な能力者は能力取締課に行く、けど戦ったりできない能力者は行き場が無く社会問題になってたから政府がそう言う能力者を隔離する地域を作ったって…」

 

「まさか…」

 

「政府はくそや…能力者を人扱いしない奴が多い…だったら隔離して奴隷のように年柄年中労働させて骨の髄までしゃぶりつくそうって意見が出て来てもおかしくない…そしてここは工場と小さい団地しかない…娯楽があるようには見えない…まるで奴隷のような生活をしていないか」

 

「俺が知らないって事とも辻褄が合う…まさかここは能力者を隔離する区域なのか…じゃあ三獄が潜んでいても」

 

おかしくは無いのだ。二人とも完全にその思考に染められた。ラックは今日中に生徒会メンバーを探し出さないと危険だと言い走り出そうとする、だが礁蔽は引き止め一度学園に帰って助けを呼ぼうと言う。だがラックは「無駄だ」と一蹴し理由も述べる。

 

「一つの県や州に遠征を出せるのは緊急事態を除き最大で八人までと決まっている。生徒会の四人、そして俺ら四人時で上限だ!」

 

「いやでも…緊急事態やろ!」

 

「気配がしただけであのクソ政府が緊急事態だと認識すると思うか?あいつらが言う緊急事態は自分たちの身に何かがある時の事を指している」

 

「くっそ!」

 

「とりあえず住民に生徒会の奴らが来てないか聞くのが一番速いと思う。団地に行くぞ」

 

二人は全速力で足を踏み出しできるだけのスピードで団地へと走り出した。だがどこに行っても工場が邪魔してきて団地まで行く事ができない。路地裏を通っても行き止まり、道路を走ってみても前方には工場、そして工場。団地に着く気配が全くしない。

 

「なんやここ!ぜんっぜん着く気配がしないんやけど!」

 

「工場の配置すら適当なのか…」

 

「本当にここは人が住んでんのか?人の気配すらしないんやが」

 

「でも工場内の機械の音はするぞ」

 

「くっそ…どうすれば」

 

ラックは少し悩んだ後礁蔽にしっかり掴まる様促す。礁蔽は何をするか分からなかったがとりあえず言われた通りにラックの手を握る。ラックはその手を強く握って目を閉じ、深呼吸をした後目を見開き工場の屋根までジャンプした。

 

「あええええ!?」

 

「なんとか届いたな」

 

「ちょ…マジでびっくりしたやんけ!」

 

「まぁ身体強化ぐらい察してくれ」

 

「分かるか!」

 

「…にしても工場の配列が雑だな」

 

当たりを見渡し、見える道路を目で追っても全て工場で道が塞がっている。団地につながっている道路は一本も見つけることができなかった。礁蔽もあまりの酷さにドン引きしていると遠くも団地の屋上に堂々と立って話している二人組に指を差す。

ラックは褒めながら強制的に礁蔽も手を掴んでもう一度跳び立った。力強く屋根を蹴って走り出す、するとあっという間に二人がいるところまで到達した。

 

「おい!」

 

「ん?…あぁラックじゃん…それと誰だ」

 

「一年の礁蔽やよろしゅう」

 

「一年なら敬語を使え」

 

「そんなことどうでもいい!とりあえずお前らに伝えなきゃ行けない事がある!」

 

ラックは三獄がいる可能性がある事を言おうとしたが須野昌は言われる前にラックの心の中と全く同じ事を口にした。須野昌はさっき情報を整理している時に気付いたと付け加えた。

そしてどうするか悩んでいると礁蔽が二人しかいない事を追求する。

 

「俺と蒼、後二人は別行動中だ」

 

「分かった。それで今はどこまで三獄の情報を持っているんだ」

 

「なーんにもない」

 

「は?」

 

「この街から出て行った気配すらないしここにいる気配もない。本当にふと気配が消えている。」

 

ラックは頭を抱える。須野昌も何も分かっていないようで正直お手上げ状態なのだ。そんな二人を差し置いて礁蔽はもう一人も男に指を差しながら須野昌に訊ねる。

 

「そこにずっとしゃがんでいるやつは誰や」

 

「知らないのか?こいつは[和也 (カズヤ ソウ)]。三年のやつだ」

 

「はえー何してるん」

 

「いやいや無理無理!三獄とやり合うなんて無理無理無理無理」

 

蒼は涙目になりながら頭を抱えぶつぶつと言っている。須野昌は「蒼はこう言う奴だから気にするな」と言い添えてから蒼の背中をさすり始めた。

ラックは二人が何処で寝ているかを聞く、だが思っていたより酷い回答が返ってきた。

 

「何言ってんだ。俺らはまともに寝てねぇぞ。ここ数週間平均二十分しか寝てない」

 

「流石にもうちょい寝ろよ」

 

「俺らはここで三獄がどこに行ったかを探り当てるために来たんだ。ほんの一分でも遅れたらここに住んでる奴らが全員死ぬ可能性だってある。だったら寝る時間なんて削って探索しなきゃいけないんだ」

 

無理だけはしないように注意してから住民の事について問う。団地方面にも通路などにも人の気配が無く気になっていたのだ。須野昌はこう答える

 

「誰も家には住んで無いぞ」

 

ラックは頭に?を浮かべている。須野昌はため息を吐いて一から説明する。

 

「ガキも女も大人も関係なくずっと工場で働かされている。そして工場で少し寝て再び仕事をする、そう言う生活をしてるんだここの奴らは」

 

礁蔽は本当に奴隷のような扱いを受けている事に心が痛む。だが須野昌は少しでも道を間違えたらここにいたかもしれない、島に居れる事を感謝しよう。と言って住民に届かぬ感謝の意を伝えた。

そんな所でラック達は別の場所の探索のため場を離れる。

 

「分かった。何かあったら頼れよ」

 

「あぁ。じゃあ行くぞ礁蔽」

 

「へいへい」

 

須野昌は二人が離れていくのを見送ってから自分達の仕事を再開した。

ラックと礁蔽は団地ゾーンから抜け、再び工場が並び、煙が立ち込めるゾーンへと足を踏み入れた。そこはただただ陰鬱な空気が漂う、まるでコンクリートの海の様だ。時間になるまで周囲を探索する二人は色々な工場内を見て回る事にした。

 

 

第三十一話「考察」

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