御伽学園戦闘病   作:はんペソ。

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第三十二話

御伽学園戦闘病

第三十二話「少年」

 

[素戔嗚&ニア]

 

「工場しかないけどここはなんなんだろうな」

 

「分かりませんがテレビとか教科書とかでは見たことないですね」

 

「ニアって成績どれぐらいなんだ」

 

「体育以外オール4です」

 

「中等部の体育って何してるんだ?こっちは薫と兆波にボッコボコにされてるだけんなんだが」

 

「こっちも同じ様なものです。薫先生や長波先生が能力にあった訓練と軽い基礎体術を教えてくれています。」

 

「で、体育はなんなんだ」

 

「…2…です」

 

それもそのはずあの二人の授業は戦闘向けの能力では無い生徒は体作りがメインなのだ。だがニアは単純に身体能力が良く無いので評価が低い訳である、それに加え怪我をするとルーズがモンペの様に文句を言ってくるので恥ずかしくて極力怪我をしないよう注意していたからと言うのもある。

 

「そんな話は置いておきましょう。ところで工場しかありませんが泊まる場所とかあるんでしょうか」

 

「やはりラック達が行った団地になりそうだな」

 

そうは言うがあそこは立ち入って良い場所なのかも分からない。結局は生徒会の奴らを探さなくてはいけないのだ。だがそれを探すにも情報が足りない、工場内に人は見えるが全員黙って単純作業をしていて話しかけようにも話しかけられる雰囲気では無い。

どうするか悩んでいるとニアが関係ない事を呟く。

 

「何か違和感というかここを知っているような雰囲気はあるんです…ですけどその違和感が何か思い出せないんですよね」

 

「来たことはないよな?」

 

「来たこともないし見たこともないはずです」

 

「何か思い出したらすぐに言ってくれ」

 

「分かりました」

 

他愛もない会話をしつつ周りを見渡しながら迷路のような街を二人で歩いてから一時間ほどが経った。その瞬間素戔嗚が振り返りながら刀を抜いた。ニアは驚きながら振り向いく、するとそこには素戔嗚と鍔迫り合いをしている謎の紋様が背後に浮いている赤髪の男と髪と二つの目があった。

 

「おお!反応出来るのか!」

 

「なんで攻撃してくる」

 

「別にいいでしょ。刀を携えてる能力者がいたらとりあえず気配をモロに出して斬りかかりたくなる」

 

「はぁ…とりあえず剣をしまえ」

 

男は大人しく剣をしまった。ニアが困惑していると素戔嗚が二人を紹介した。

 

「生徒会の奴らだ。赤髪が[木ノ傘 英二郎(キノガサ エイジロウ)]、現状目と髪しかないやつが[クルト・フェアツ]」

 

「こんにちわ」

 

「初めましてー」

 

「あ、初めまして。[ニア・フェリエンツ]と言います。中等部の二年生です」

 

英二郎はルーズの情報を得る事は出来たかと訊ねるが今は宿泊地を探していると説明した。次は期間を訊ねられる、十日間だと伝えるとフェアツがある情報を伝える。

 

「団地の部屋でも借りれば?お金はかかるけど」

 

「空き部屋なんてあるのか?」

 

「空いてるというか使われてない」

 

「なぜ」

 

「ずっと働いてるから。帰れる人はいないの」

 

「奴隷か」

 

「まぁそんなところ」

 

ニアは良い事を聞いたとどうやって部屋を借りるのか聞く。フェアツは「適当な人に話しかけてお金渡して部屋番号聞く。私たちは二人ずつに別れて行動してて英二郎と二人で部屋借りた」と言った。ニアは感謝してからルーズの情報があるかもしれないと言う緊急連絡の事を追求する。

 

「僕らが三獄の件で聞き込みをしている時に『フェリエンツ』って家族の事が出てきてな。結構な人数がその事を行って来た」

 

「詳細は」

 

「この工場地帯は島に行く事が出来ない能力者を隔離するために半年前ぐらいに作られた街だ。ただここを作るだけなのに能力者の為に自然を破壊するとは到底思えない、それでこの街が出来る前は何があったか聞いたら元々普通の街があったが能力者に壊された、と言っていた。

それが『フラッグ・フェリエンツ』ってやつらしくてな。ルーズと苗字が同じだったから連絡を入れたってことだ」

 

ニアは考え込んでしまう。英二郎とフェアツは聞き込みをしなくてはいけないのでと別れた。

英二郎とフェアツと別れて再び二人で道に沿って歩き、行き止まりに立ち会ったら裏路地を通ったりして色々なルートで探索を進める。

その時素戔嗚がある言葉をこぼす。

 

「フェリエンツか…」

 

「何か知っている事はありませんか?」

 

「知ってる事といえばさっき話題に出てた[フラッグ・フェリエンツ]って男と[クレール・フェリエンツ]って言う夫婦が喧嘩で能力を使ったマジバトルをして嫁のクレールが死んだっていう噂?小話?的なやつしか聞いたことがないな」

 

「心当たりがありませんね…」

 

「でも心当たりがあっても嫌だろ」

 

「なんでですか?」

 

「自分の親が喧嘩で殺し合いして母親が死んでるって間抜けすぎないか」

 

「それもそうですね」

 

ニアは微笑みながら綺麗に電柱にぶつかった。素戔嗚の方を向いていたので前方不注意だったのだ、おでこを抑えながら座り込んだニアの怪我を見ようと素戔嗚が近寄ろうとしたその時、電柱にぶつかった音を聞いたのかニアがうずくまっているの見てなのかは知らないが近くの工場から一人の少年が出てきた。その少年は黒髪で低身長、そして目に生気が宿っていなかった。

 

「大丈夫ですか」

 

「大丈夫ですぅ…」

 

「わざわざ来てくれたのか!ありがとな」

 

素戔嗚は少年の頭をわしゃわしゃとかき乱した。少年はどこか嬉しそうな表情を浮かべた後に直ぐに真顔に戻り素戔嗚達に背中を向け工場に戻ろうとした。だが素戔嗚は折角の住民だからと引き止め話を聞くことにした。

 

「ちょっと待ってくれ!」

 

「ん?なんですか」

 

「名前は」

 

「[兎波 生良(トパ キラ)]です」

 

「生良か。なぜお前は工場に行こうとしてるんだ」

 

「何故って…仕事をする為ですけど…」

 

「ここは子供も仕事をしているのか!?」

 

「えぇ…まぁはい。年柄年中休みなしで」

 

素戔嗚はあまりの境遇に顔をしかめた。そして能力者を閉じ込めている区域なのだと聞いていたので何の能力者か問いかける。生良は降霊術師だと即答した。素戔嗚は霊を見せくれないかと懇願する、特に害も無いので承諾した。

そして手を兎の形にして唱える。

 

『降霊術・神話霊・干支兎』

 

唱え終わると生良の頭には顔丸々一個分程度の丸い兎が現れた。素戔嗚は霊の方は見ずに目を見開き生良に大きな声で訊ねる。

 

「お前干支神使えるのか!?」

 

「え…あ…はい」

 

「こんな所にもいるのか」

 

「戻っていいよ」

 

生良がそう言うと兎は一瞬にして生良の中に還って行った。素戔嗚は数十秒考え込んで結論を導き出し、生良を工場に戻した。生良は挨拶だけして急ぎ足で機械音や鉄の音が足繁(あししげ)く鳴る工場内へと戻っていった。

 

「あんな逸材もいるんだな…」

 

「干支神を使える人がいるなんて驚きです」

 

「これはいい発見だな!帰ったら学園に言って島に来れないか交渉してみよう!」

 

「そうですね!」

 

「…というかそろそろ帰ったほうがいいな。迷路みたいな道だし暗くなり始めた」

 

確かに日が沈んで来ている。帰るのにも時間が掛かるだろうと言う事で二人は体の向きを百八十度変え先程まで通ってきた道を遡り、小さな広場へ向かって歩き出す。その時ニアはまだ九日もあると思い気を楽にしていた。

ただ実際のところは残り二日も無かったのだった。

 

 

第三十二話「少年」

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