御伽学園戦闘病   作:はんペソ。

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第三十七話

御伽学園戦闘病

第三十七話「和刀と洋刀」

 

「なん…で…」

 

「全くあのクズは印象を下げた上にあの方達の名前までも…」

 

「ニア…さん…?」

 

ニアは返答せずただ目を開けながら血を流し倒れたままだった。生良は尻もちをつき青ざめながら震えている、素戔嗚はそんな生良の方を向いた。床にへたり込んでいる生良から見ると素戔嗚は非常に背が高い血まみれの刀を持った大男にしか見えず、ただ首を横に振って些細な抵抗をする事しか出来なかった。

 

「悪いな。これを見られた以上そのまま返す訳には行かない」

 

そう言いながら刀を振り上げた。生良は泣きながら許しを請う。だが耳を傾けず刀を振り下ろそうとした瞬間だった。この街全体に重苦しい霊力が充満し始めた。その霊力を感知した素戔嗚は何かに気付き刀を鞘にしまって全速力で地下と地上を繋ぐ梯子を登り地上へと出ていった。それを見た生良は安堵や恐怖等様々な感情が入り乱れ脳がオーバーヒートを起こし意識を失った。

 

地上に出た素戔嗚は工場の壁を思い切り蹴り穴を開けてそこから外に出た。外はより一層霊力が増しているせいか息が少々苦しい。なので走るスピードを少しだけ下げた。だがスピードを下げようがなんだろうがこの迷路とも言える街の構造を知らない素戔嗚は行き詰まっていた。

道路に沿って走っては埒が明かないと思い、犬神を呼び出す。その犬神に掴まり周囲を確認するため煙突まで登った。確認してみると街の中央部には大穴とそこに浮く一人の男、他の場所には黒い体に赤い目をした怪物が大量にいた。一瞬で状況を把握し中央部へと移動するため犬神に再び掴まろうと腕を伸ばした時だった、足元が大きく揺れた。地震かと思い確認してみたがそうではない、すごく簡単な話だ。ただ煙突が折れたのだ、いや斬られたのだ。すぐさま犬神を引っ込め受け身を取りながら工場に着地した。何が起こったのかと顔を上げる。するとそこには一つの手袋が転がっていた。何故手袋があるのかと数秒考えた後に刀に手をかけ体勢を立て直した。

素戔嗚の目の前には一人の青年がいた、赤髪で自分よりは小柄ながら充分過ぎる体格を持ち合わせ、腰に剣を携えている男[木ノ傘 英二郎(キノガサ エイジロウ)]だ。

 

「これは…そういうことだな?」

 

「あぁ、受けるか?決闘」

 

「いいだろう。あの二人なら俺が行く必要さえもない、俺は一番厄介なお前を殺す」

 

「そうか。殺すか、僕に一度たりとも勝ったことが無いのに大口を叩くね。“現”重要幹部No.1の素戔嗚さん」

 

「お前俺をおちょくってるのか?」

 

ものすごい剣幕と気迫で問う。

 

「おちょくる?僕はそんな事しないよ、事実を述べただけさ」

 

「俺はもう師匠より強い」

 

「そうは見えないな。だって『アレ』すら貰えていないんだろう?」

 

「黙れ!この…」

 

「そろそろやろうぜ」

 

その声はいつの間にか対面している二人に挟まれるように立っていた人物が発した言葉だった。その人物は他の誰でも無い佐須魔だ。だが今までの佐須魔とは違い殺意や霊力は微塵も感じなかった。

 

「佐須魔様!」

 

「いいから早くやってくれよ長引くとサーニャ達が来る可能性があるからよ」

 

「そうだな。僕も出来れば邪魔されたくない」

 

「じゃあ僕は見てるだけだから気にしないでね〜」

 

そう言って佐須魔は何処かへ消えてしまった。佐須魔がいなくなり再び二人だけになったが先程とは違い両者黙って刀剣を抜き構えた。そしてそのまま三ヶ所目での戦いが始まった。

先手を取ったのは素戔嗚で勢いよく飛び出し残像が見える程の速さで四連撃をかました、英二郎は動きもせずただ腕と剣だけを動かし全ての攻撃を受け流した。だが負けずと再び四連撃を行う、英二郎は見切ったかと言わんばかりに剣で受け流す事すらせずフィジカルで全ての攻撃を交わした後に少し屈んだ素戔嗚の脳天に向かって剣を振り下ろした。

 

『降霊術・唱・犬神』

 

素戔嗚が唱えると犬神が飛び出し英二郎の剣に向かって噛み付いた。その噛みつきはとても犬のものとは思えず英二郎がどれだけ引き剥がそうとしても離れることは無い。結果的にただ隙を晒すだけになってしまった。

素戔嗚は刀を胸元目掛けて突き出した。英二郎は引き剥がす事に夢中で突かれた事に気付いていない様子だ、素戔嗚は勝ちを確信した。だがそんなすぐに決着がつくことは無く英二郎は刀の方を見る事すらせずに左手で刀を掴んで止めてしまった。

 

「あまり僕を舐めるなよ。これぐらいなら出来る」

 

「犬神!こっちに戻って戦え!」

 

舌打ちをしながら指示を出すと離れる気が見えなかった犬神が一瞬にして素戔嗚の真横まで移動していた。

 

「やっぱり霊って便利だね、僕も欲しいよ」

 

そう言いながら一秒も経たないうちに素戔嗚の懐に入り込み顎を切り付けるため剣を振り上げた。素戔嗚はその攻撃をなんとか交わし少し後ろに下がったと思うと英二郎は目にも見えぬ速さで背後に回り込み剣を振り翳した。

素戔嗚は凄まじいスピードで動くと発生する微かな風切り音を聞き取り、刀を構えながら振り返りその攻撃を受けた。その場には鉄と鉄が強い力でぶつかり合った音だけが響き渡ったかと思うと素戔嗚の後ろに隠れ機会を伺っていた犬神が満を持して英二郎の喉に噛み付く。素戔嗚は勝ち誇ったように笑い数秒間力強く噛ませた後に犬神を離し、還らせた。

英二郎は傷から血を流し、咽せるように血を吐き出した。そんな弱った状態の英二郎を見た素戔嗚は早く終わらせてやろうと刀を振り上げうなじを削り取った。その瞬間に英二郎は意識を失い倒れ込んだ。

 

 

ここは…あぁまたここか

 

そこは白くもあり黒くもあり紫でもある世界。常に変色する空気に包まれ体を動かすことも出来ない謎の空間。宙に浮いるはずなのだが地に足を着けている感覚、普段なら気持ちが悪くなりそうな場所だがこの空間には痛覚や嗅覚、触覚さえも感じることのない世界。感じることが出来るのは目が痛くなるような世界を捉える視覚、そして何もなっていないながら使えることが分かる聴覚だけだ。

そんな空間で一人、ただぼーっと色を眺めていた。その世界は白いはずなのだがたまに黒に見えたり緑に見えたり謎の歪みが発生していたり、と言った謎の現象も起きている。この世界に来てから何分続いたかも分からない、もしかしたら何年もいや何十年もこうしていた様な感覚を覚えた頃だった。声が聞こえた、綺麗でも汚い訳でもないただの声、いやただの声ではない。この声は女性の声のはずだが脳はその声を男性の声とも捉える。実に不思議な声だ、そんな声が語りかけてくる。

 

やっほー!久しぶり、一年ぶりぐらいかな。元気してた?

 

英二郎は口に出して答えようとしたが声が出ない。そうここは声も出せない世界だ、完全に忘れていた。なんせ一年程来ていなかったのだこの世界の常識など忘れていてもおかしくはない。

 

あれー?また声に出そうとしてたのー?

 

(すいません。久々に来たもので)

 

まぁいいよ、で君は負けた。

 

(はい。少し油断しすぎました、これは負けても仕方がありません)

 

そうかなー?あいつも大分成長してるように見えたしもしかしたら本当に負けちゃってたかも…

 

(それはありません。僕は『エクスカリバー』の力を使いませんでしたからね)

 

あっはは!そんなむきにならないでよ、冗談だから。大丈夫、私は君が強いのを知ってる。だからこそ今ここに呼んだの

 

(それはありがたい)

 

では始めましょう。『[審判]』を

 

(審判…?)

 

大丈夫大丈夫私の質問に答えればいいだけ、特に何も考えず思った通りに答えてね

 

(分かりました…)

 

では、<問一>君は何故負けたのでしょう

 

(油断しすぎました)

 

では<問二>どうすれば勝てると思いますか

 

(エクスカリバーの力を貸していただけると素戔嗚の…)

 

はいはい次、<問三>負けた時どんな事を思いましたか

 

(…ただ…負けた…と)

 

分かりました。では今から五分だけエクスカリバーの力を解放します。じゃあ頑張ってねー

 

(え!?…ちょ!)

 

 

その声の主は姿を見せなかったが手を振っている様に思え白い世界がぐにゃぐにゃと歪み目を覚ました。

英二郎はゆっくりと体を起こし再び構える。素戔嗚は驚くという次元を超え何も感じずに刀を構え問う。

 

「何故だ」

 

「そんなのどうでもいいだろう。なぁ素戔嗚」

 

「なんだ」

 

「刀剣だけで勝負しようぜぇ」

 

「いいだろう、師匠の次に強いお前を刀で殺す」

 

「じゃあ頼みます神様」

 

そう呟いた後に剣を天に翳しながら大声で叫んだ。

 

『聖剣・エクスカリバー』

 

すると剣には金色のオーラが纏われ英二郎の顔つきは変わり、瞳の奥では火花が飛び散った。

そうして本気の戦いが始まった。

 

 

第三十七話「和刀と洋刀」

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