御伽学園戦闘病   作:はんペソ。

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第三十八話

御伽学園戦闘病

第三十八話「手数」

 

「やるとはいえど君は飛べないだろう」

 

「逆になんでお前は飛べるんだよ!!」

 

「君も知ってるはずだ、私は一度死んでいる、そして生き返った。だから人間の様に振る舞う事が出来るが『霊』という事らしい」

 

「じゃあなんであの赤髪も浮いてたんだ」

 

「神は人間ではない」

 

「は?」

 

「まぁいい、君が知ってどうにかなる話でもない。さっさと始めて終わらせよう」

 

「じゃあ俺から行くぞ!」

 

ラックは極限まで高めた身体能力で地面を蹴り、跳んだ。だがジャンプだと空中で体勢を変えたり移動する事は不可能と言っても過言ではない程制御が効かない。それに対し來花は浮遊する事が出来るので空中での機動力は圧倒的だ。

ラックもそのぐらいの事は理解している。だからこそジャンプしそのまま地上戦に持ち込もうとしていたのだ。なんとか足首を掴む事に成功する、來花はなんとか振り解こうと足を動かすが放す気配は皆無でどうにかしなくては、と考え身体強化でここまで粘っているならその身体強化を封じればいいという結論が出た。さすればする事は一つ。

 

『呪・封』

 

それを唱えたのは來花ではなくラックだった、ラックはニヤリと笑い來花は目を見開き顔に少し血管を浮かべた。

 

「何故もっと早く使わなかった…」

 

「長期戦にすれば俺でも勝てるからよ、出来るだけ体力の消費を少なくしたい。だからと言って外堀を埋めると体力が足りなくなるからよ出てきたら杭を速攻で打つ。こうすることに決めた」

 

「そういうのは言わない方がいいぞ」

 

「そーかよ」

 

來花は能力が使えないので掴まれていない方の足でラックの手を何度も何度も蹴った。ラックは更に力を込めて絶対に離すまいと足首の骨が折れてしまいそうな程強く握りしめる。來花は蹴落とす事を諦めて嫌そうな顔をしながら懐から『コトリバコ』を取り出した。それを見たラックは今までとは比べ物にならない体重をかけ始める。そして少しだけ降下した來花の体を蹴り踏み台にして地上へと着地した。

 

「それは使えるのか?」

 

「まぁな」

 

「どうすればいいんだよクソが」

 

「力を貸せ神(シン)」

 

來花が呟いたが何かが起こる訳では無く少し考えてからコトリバコを懐に納め、ゆっくりと高度を落としラックの正面に降り立った。

 

「今私が出来る事は君を物理的な力でねじ伏せる事だけだと判断した」

 

「それはありがたいな。地上での肉弾戦なら負ける気はしねぇ。ぜってえ勝ってやるよ」

 

「いくぞ」

 

來花は勢いよく突っ込みラックの腹を蹴った。ラックは吹っ飛び工場の壁にぶち当たる、壁は凹みラックは口内を切ったのか口から少し血が垂れてきていた。ラックは直ぐに立ち上がり次の攻撃を待ち構えた。だが來花はいつまでたっても動こうとしない。それどころかラックが動くのを待っていた。

 

「何がしたい」

 

「君とは記憶を消しても戦うことになるだろうからな。今のうちに実力を見ておこうと思っただけだ」

 

「…舐めてんじゃねぇぞ!」

 

來花の顔を蹴ろうとした。だがその足は來花の顔に届く事はなく片手で軽々受け止められてしまう、ラックの蹴りを受けた來花は「蹴りというのはこうやるんだ」と説きながら先程蹴ろうとしてきた箇所を蹴った。

ラックは再び吹っ飛んだ。そして今度は鼻血が出てくる、外れかけた眼鏡を戻し立ち上がる。立ち上がると同時に走り出し今度こそ來花の顔を蹴った、蹴ったはいいがダメージを受けている様子は無く來花はただ立ち尽くしていた。

 

「なんでだ…!」

 

「私は霊だ。君の攻撃にはまるで霊力が籠っていない、そんな攻撃で霊にダメージが入ると思っているのか」

 

「…まじか。そういうところも霊なのかよ…出来るだけ霊力の消費を抑えたかったがやむを得ないな…」

 

そう言うとラックは右足に微々たる物だが霊力を込めた。それを見た來花は驚きと称賛の言葉を与えた。

 

「完全な一点集中とはなかなか出来ることではない!やはり君は素晴らしいな。どうだ?今からでも遅くはない、TISに入らないか?君なら重要幹部のTOPを取れる可能性も…」

 

「だから入らねぇって言ってんだろボケ」

 

完全に油断していた來花のみぞおちにはラックの拳が強く衝突していた。みぞおちを抱えながら少しだけ狼狽えた來花に絶え間なく蹴りや殴りをくらわせる。來花はなんとかガードをしていたが少しの隙が更に隙を生み右足のすねに一発、左足のすねに二発特大級の蹴りをくらってしまった。流石に痛み後ろに下がろうとした來花を逃す訳もなくラックが距離を詰めようと走り出したその時だ。

 

「そろそろ終わりにしよう」

 

『呪・封』

 

ラックは忘れていた。この『呪・封』は数分で効果が切れてしまう呪いだった事を。

呪いをかけられたラックはたちまち体が重くなりスピードが激減した。激減したとは言え元の身体能力が高いラックはなんとか來花に食らいつこうと足は止めない。そんなラックとは反対に本調子に戻った來花は本気で戦いを終わらせに来た。

 

『呪・自心像』

 

それは神が須野昌達に使った呪、自分自身の心の奥底にへばりついているモノを体現する呪だ。

すると來花の傍に中学生ほどの大きさで、和服を着て、顔には黒い紙を付け、手には薄い赤色の和傘を持っている呪いが現れた。

 

「やってくれ」

 

來花がそう言うとその呪は音も立てず、目にも止まらない速さでラックの脇腹に和傘を刺していた。身体強化をかけていないラックにはあまりにもダメージが大きくへたり込む。

そんな状態のラックなんてお構いなしにその呪いは和傘を振り上げ、ラックの首を斬った。

 

 

第三十八話「手数」

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