御伽学園戦闘病   作:はんペソ。

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第四十三話

御伽学園戦闘病

第四十三話「怒り+信頼=支配」

 

「始めようかone-sided gameを」

 

そう言うと隙を突いて召喚しておいた犬神が咥えて来た刀を手に取り、振り上げた。英二郎は天啓が切れ、力を大幅に失ったが諦める事はせず、なんとか剣を動かし刀を受け止めた。素戔嗚は無表情で力を強め、英二郎の抵抗を突き破ろうとしたが刀が届くことはなく結局力勝負では英二郎に軍配が上がった。なんとか距離を取って息を整えて、剣を構えた。そんな英二郎に向かって素戔嗚が一つ問いかける。

 

「もうお前に戦う力はないだろう」

 

「何言ってんだ、僕単体でも戦えるさ」

 

「そうか。だがお前単体なんて怖くもない」

 

「じゃあどっちが先に力尽きるか勝負しよう」

 

「その必要はない。お前は俺に斬られる、次は俺のターンだ」

 

そう言いながら犬神と同時に英二郎に攻撃を仕掛ける、英二郎は防御せず相手の攻撃に合わせて自分も攻撃を仕掛けた。素戔嗚は上から、英二郎は下から刀剣を振る。当然両者防御はしていないので斬られて英二郎は左肩にダメージを受けた、だが英二郎の剣は犬神にせき止められ素戔嗚は傷を負わなかった。

少し考える、今のように共倒れを狙っても相手には犬神がいるから一方的にダメージをくらうだけ。だったらどうすれば素戔嗚にダメージを与えることが出来るか、方法としては二つだ。

一つ目が圧倒的な技量で勝利する、二つ目が犬神を先に倒す。考えた結果後者は素戔嗚がいる状況で犬神を倒すのは無理だと結論付ける。なので圧倒的な技量で勝利する事に決め剣を構えた。

先に動き出した犬神の少し後に踏み込み、犬神に気を引かせてから自分が斬ろうと考えていた。だが英二郎はその作戦を感じ取り犬神の攻撃をガードせず、素戔嗚の刀攻撃を止めた。このままではらちが明かないと考えた素戔嗚は最終手段を取る事にする。

 

干支術(えとじゅつ)干支神化(えとしんか)

 

そう唱えると犬神は数段大きくなって、毛も異様に伸び霊力も増した。英二郎は素戔嗚が唱え出した瞬間から犬神に何度も剣を刺していたがその場を離れる事はなくそのままデカい牙で噛みついた。激痛に襲われながらもしっかりと素戔嗚から視線は外さない。

 

「これで犬神の攻撃も防がなくてはいけないな」

 

「まーじか…やばいなぁ」

 

そう言いながら犬神を引き剥がそうと躍起になっている英二郎に向かって刀を振り上げた。"ある事"に気付いた英二郎は犬神を引き剥がす事は諦め、素戔嗚の攻撃をひたすら剣で受け流す事とした。

街には大きな金属音が何度も何度も鳴り響く、それはまるで自分の位置を知らせる電波の様に、街全体に鳴り響くのだ。そしてその音はしっかりと一人の少年に届いた。すると寸前まで少しのブレもなく刀を振っていた素戔嗚が体勢を崩し倒れた。素戔嗚はすぐに理解する、これはあいつの能力だ。

 

「ニアをやったのはお前か」

 

そう重苦しい声が聞こえる、素戔嗚は黙って刀を拾うと手を伸ばす。だがその手は青年の靴の下敷きとなった。青年はそのまま素戔嗚の顔を蹴り上げ再び訊ねる。

 

「ニアを刺したのはお前か」

 

素戔嗚は笑いながら返答した。

 

「そうだ!俺がやった!それにしてもお前如きの霊にも気付けないなんて気を抜いてたなぁ!俺は!」

 

笑いながら見上げた視線の先には今までにない怒りと殺意を込めた顔をしている[空十字(クウジュウジ) 紫苑(シオン)]が立っていた。もう何も言わんと只ひたすらに素戔嗚の顔を蹴り続ける、何十回と蹴ってから再度問いかけた。

 

「なぁ素戔嗚、お前は本当にこんな事をしたかったのか?」

 

「俺の意思など関係ない、あの方の命令なのだ」

 

「お前は佐須魔達に操られる人生でいいのか?今ならまだ…」

 

「操られる?何を馬鹿な事を言っているんだ、あの方達は俺に居場所をくれた。生き甲斐をくれた。俺はあの方達に付いていく、とうの昔にそう決めたんだ」

 

「そうか…じゃあ最後だ。ニアをどう思っている」

 

「あんな小娘どうでもいい」

 

そう答えた瞬間に場の空気が一変した、紫苑からは抑えきれない程の殺意が感じ取る。

 

「お前がさっき言った事と同じで俺の生き甲斐はチームの奴らと、いやニアと一緒にいる事なんだ。お前はそんな俺の生き甲斐を壊そうとした、だから俺はお前を殺す。俺の生きる意味を無くさない為に」

 

「そうかよ…お前なんかに俺はやれない」

 

そう言いながらゆっくりと立ち上がった。そして犬神に英二郎から離れる様に指示して刀を持って来させた。

英二郎は千載一遇のチャンスと言わんばかりに剣を持って距離を詰めようとする。だが制止される。

 

「なぁ英二郎、ここから退()いてくれないか」

 

「は?何故…」

 

「これはこいつと俺の問題だ」

 

「だが!」

 

「さっさと消えろって言ってんだよクソTIS野郎」

 

その言葉を聞いた英二郎は哀しそうな顔をしながら剣をしまい紫苑の無事を祈りながら足を引いた。

 

「いいのか?お前だけでは勝てないだろう」

 

「どうでもいい」

 

「そうか、じゃあ行くぞ!!」

 

紫苑は何故だか分からないが今までに感じたことのない複雑な感情に触れた、それは二割の殺意、一割の怒り、そして残りの全て、いやそれ以上を占める復讐を果たせるという高揚感だ。その感情は到底抑える事が出来るものではない、その感情を真摯に受け止めパートナーを召喚した。

 

「さぁ行くぞ[リアトリス]」

 

そう呟くとともに街には冷たい雨水が降りかかりはじめた、日が落ち始め少し暗くなってきた。時刻は十六時二十分、空十字 紫苑は初めて人を殺す決断を下した。

 

 

さぁ憎みなさい、妬みなさい、怒りなさい。その怒りとパートナーへの信頼は次第に[支配]へと変わる、バックラーが一番強い状態はパートナーと共存しようとしている時ではない、パートナーを支配した時なんだから。

 

 

そんな声が聞こえたかの様に感じた。だがもうそんな事どうでも良い、気にする必要なんて無い。戦闘が始まった。

 

 

第四十三話「怒り+信頼=支配」

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