第四十八話
御伽学園戦闘病
第四十八話「消失」
工場地帯への遠征から帰還して二週間が経った、未だニアは目を覚ます気配がなく島に唯一存在している病院に入院していた。ただ遠征が終わり変化したのはそれだけではなかった、シカトを決め込んでいた政府も遂に能力者の件に触れ出し今回の事はニュースにも取り上げられ能力者への警戒や軽蔑はより一層濃くなってしまった。
理事長は学園とTISの関係性を説明しろと押しかけよう島に来そうになっていると記者達を全て跳ね除け島に侵入させなかった。だが世間ではその対応に対して文句で溢れた。なので理事長は会見を開き素戔嗚はスパイだった事、TISとの関係性は何ら無い事を断言した。
そのおかげでひとまず学園側の能力者が悪役にされる事だけは避けた。だが能力者へのヘイトは確実に高くなっている、このほとぼりが冷めるまで遠征は行わず外の事は能力取締課に任せる運びとなった。その間生徒達は普通の学園生活を送る事となる、だが一部の中等部員とエスケープチームのメンバーは"一つの助言"を受け取るため今回もまた血を流すのだった。
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第四章「別世界へと」
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紫苑はかかさず毎日ニアのお見舞いに行っていた、他のメンバーもほぼ毎日行っていたが紫苑はどんな事があろうが毎日通っていた。だがニアは眠ったままで唸り声すらも出す事はない、本当に死んでしまったかのような状態だった。だがいつかは治ると自分に言い聞かせて日々を過ごしている。
一方礁蔽は素戔嗚が裏切って二日程は酷く落ち込み水も喉を通らない有様だったがケロッと立ち直り今までの礁蔽に戻った。おかしくなったのではと思いラックが話を聞いたが特に異常は無かったらしくメンバーも少し心配していた。
素戔嗚が裏切ったと知った兵助は何も言わずに
エスケープチームはなんとか通常運行でやっていけていた。二人を除いて、だが。
そんなある日中等部の中のチームメンバーがある日パタリと姿を現さなくなった。何かおかしいと思った中等部の教師三人で寮や学園の使われていない部屋など捜索したが髪の毛一本も見つかる事はなく緊急会議を取りおこなった結果、脱走をしようとしているのではないかと結論が出た。
そして手始めに菊の動物達で隅々まで捜索して大体の位置を掴む事になり、総勢二千匹を超える動物や虫たちで三日間ぶっ続けで探した。にも関わらず見つかる事はなく流石におかしいと生徒会とエスケープチームも含めて再び捜索する事になった。
エスケープチームは針葉樹の森へと向かっていた。
「ぜっんぜん見つからないやないかい!」
「やはりもう脱走したんじゃないか?」
ラックは半ば諦めているようにも見えるが誰よりも真剣に捜索をしていた。
「うーん…とりあえず一回休憩しない?」
蒿里の提案に賛成する。六人は手を止めて適当な場所に座った。数日間こんな状態が続いていて疲労が溜まりに溜まって限界が近い。だが中等部の奴らに何かあってはいけないと言う一心で捜査は続けられていた、幸い任務などもない。
そして休憩を続けていると薫が空から落ちて来た。そして緊急会議が開かられるらしくエスケープも参加させられるらしい。やっとこの生活が終わるのかと歓喜しているメンバーをよそにラックは唸りながら考え込んでいた。薫が声をかけるとハッとしたように顔を上げ「さっさと帰ろう」と言って立ち上がった。とりあえず学園とは距離があるので住宅街に抜け、適当な扉と礁蔽の能力を使ってテレポートする事になった。
数分歩いて住宅街に到着し、一番近かった家の鍵を開け七人まとめて校門まで転送された。休む間はなく会議室へと向かう。会議室には既に生徒会と教師が集まっていた、残りの七人が来ると早速会議が始まった。
「早速ですが本題に入ろうと思います」
そう語るのは主に中等部二年生を受け持つ[
誰も文句は言わずそれどころか一秒でも早く向かおうとソワソワしている。と言う事で理事長、教師、生徒会、エスケープチームで学園私有地へと向かう事にした。莉子の能力で全員を学園私有地のすぐそこまでテレポートし早速突入する。
十分程歩くと
「何かあったか?」
その兆波の質問には良い返答が帰って来た。
「あそこにいたな、草が掻き分けられてた。ただ急に跡が消えてる。それだけが気になるな」
「とりあえずもう少し詳しく調べようよ」
水葉の提案によりもう少し調べてみる事になった。ただ何十分探してもそれ以上の情報を得る事は出来なかった。
そして次の進展があったのは日が落ち始め、今日の捜索は終わりにしようとなった夕方の時だ。皆が帰り道の方を向いていると後方から女の声がする。
『やっほー』
声の主に一番近かった兆波が咄嗟に回し蹴りをする。だがある所でピタッと動きが止まった、全員振り向いてその状態を見て驚愕する。なんたって兆波の蹴りが人差し指一本で止められているのだ。薫が確認の意味を含め一つ質問する。
「なぁ兆波先生、出力何パーセントですか」
「100%だ…」
「…おいお前」
『なーに?』
「お前は俺らの敵か?」
『いいや、敵じゃないし味方じゃないよ。気分によって変わるし』
じゃあ、と水葉が剣に手をかけながら黒狐を呼ぼうとしたが唐突に体が動かなる。だがこれはあの女の能力ではなく真澄の能力だろう、何故動きを止めるか畏怖的感情マシマシで訊ねると真澄は「話を聞こう」と言う。確かに兆波のフルパワーを人差し指で止められているのでそこにいる全員よりも圧倒的な力を持っているのは確かである。
その女は話を聞いてくれと言って兆波を解放してから少し距離を取った。
『よーしじゃあ話をしよう。まず君達は中等部の子を探しているでしょ?私はその子たちの行方を知ってるし今私の手元にいる』
そう言うと薫はズカズカと近付きその女の胸ぐらを掴み今すぐ返せ、と強く言うが女はその発言を無視して続ける。
『それで今あの子達が私の元に来た理由はただ一つ、ある助言を受けるため。だけどその助言を受けるにはこの学園からもう一チーム必要なの。だから今すぐ、ここで私の元に来るチームを決めて』
「助言を受けるとして…お前に預けて安全なのか?」
『断言はできないね』
「じゃあ俺ら教師で行ってすぐ連れ帰って来る。異論はないな?お前ら」
そう聞くと後方にいる全員が頷く。だが女は少し不満そうにした後付け加える。
『助言の内容はなんでも良いよ。中等部の子達は起きない少女がどうすれば目を覚ますか、ってのを聞きに来たみたいだよ』
その言葉を聞いた瞬間エスケープチームの顔が変わった。そして紫苑が女に近付きながら本当にその助言は当たるのかと言及する。女は勿論頷いた。そしてエスケープチームが来ないかと提案する。薫はその提案を跳ね除け、自分たちが行くと言おうとした。その瞬間紫苑が割り込んで「俺らが行く」と言って薫を睨んだ。
薫と紫苑はどちらが行くかで揉めていた、だが理事長の一声でその喧嘩は終わった。
「薫先生、行かせてあげましょう」
「ですが…」
「彼らの成長に繋がります。そしてニア君も…」
「そう言う事だ。俺らが行く」
『わかった。じゃあ行こうか』
そう言うと女の後方に扉が現れた。紫苑達はその扉へと向かっていく、寸前で薫が引き止めた。そしていざという時に食えと一粒のチョコを投げ「ちゃんと帰ってこいよ」と六人を見送った。六人は「行って来る」とだけ言って扉へと入っていった。
六人が入った後に女が手を振りながら扉へと入ると同時にその扉は消滅した。生徒会と教師達はエスケープチームと中等部員の安全を願いながら待つ事しか出来なかった。
第四十八話「消失」