御伽学園戦闘病   作:はんペソ。

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第五十二話

御伽学園戦闘病

第五十二話「同業者」

 

[紫苑視点]

転送されてから周りを見渡してみる。するとそこは波の音が響き渡り磯の匂いが漂う崖だった。紫苑は急いで地図を開きここがどこか特定しようとする。だがこんな岩だらけの崖なんて見つからなかった。

だが紫苑は大きな島に色々な気候や特徴がある地帯が振り分けられている中、本土から少し離れた北西に小さな[岩島(イワジマ)]と書いてある島がある事に気付く。今自分がいる場所はおそらくここなのだろうと推測し行動する事にした。

とりあえず崖に沿って歩いてみる。磯の香りを堪能しつつ長期戦になった場合に必須な食料、魚や動物なども探す事にした。

二十分ほど探索して分かった事が二つあった。

一つ目が付近に生物はいない、魚も鳥も、虫さえも見当たらない、食料は本土に飛ばされたメンバーに任せる事にした。

二つ目がここは岩島と確定した。崖に沿って歩いていると遠方に沢山の山がそびえ立っているのを微かに捉える事が出来たからだ。

 

「な~んもいねぇしあっちの方が楽しそうだな~ここ岩がゴツゴツしてて歩きにくいし」

 

紫苑が俯きながら悪態をつく。紫苑の言う通りそこら中が出っ張っていて歩きづらい。この島の中央の方は木が生えているが何故かその木は岩から生えている。

だが悪態をついていてもしょうがない。どうやって本土に行こうか考える。無難にリアトリスを出して運んでもらうのが良いだろうと考えた紫苑はリアトリスを呼び出した。

 

「あそこまで運べるか?」

 

そう聞かれたリアトリスは首を横に振る。

 

「えー!無理なのかよ!」

 

リアトリスは地平線に指を差す。紫苑はそちらに何かあるのだろうかと崖の際まで詰め寄る。すると何かにぶつかった、霊がいるのかと思った紫苑はすぐに後ろに引いて戦闘体勢に入る。だが何かがあったはずの場所を見ても何かがいるどころか物体さえなかった。

恐る恐る近付いてみると再び何かに阻まれ崖から外に出る事が出来ない。目に見えない壁のようなものがあるのだ、紫苑は冷や汗を垂らしながら呟く。

 

「これ、出れなくね?」

 

そう言いながらリアトリスの方を向く、リアトリスは遠い空を見ている。紫苑はとりあえず霊力の消費を抑える為にリアトリスを戻した。

島から脱出しなくては何も始まらない。なので木が多い茂っている中央へと入って行った。

相変わらず地面はゴツゴツしたままで足裏が痛くなる。ただ木陰になっているので少しは休憩が出来そうだ。ほぼ中心まで来た頃何か音が聞こえてくる、足を止め耳を澄ませてみる。どうやら火の音のようだ。

紫苑は警戒しながら音がする方向へと向かう。すると同時に良い匂いも漂ってくる。今すぐ飛び出したい気持ちを抑えゆっくりと木の陰から音の正体を観察してみる事にした。

するとそこにはセーラー服で緑髪、体の至る所に包帯や絆創膏を貼っている華奢な少年が七輪に火を点け、串に刺してある魚を直火で焼いていた。

紫苑は何故この場でそんな事をしているのかという事を考えようとし末理解が追いつかずフリーズした。すると少年はフリーズした紫苑を発見した様で話しかけて来る。

 

「そんな所でどうしたの紫苑君?」

 

話しかけられたからかすぐに正気を取り戻し、何をしているのか聞き返す。少年は魚を焼いているとしか答えなかった。

紫苑は何故焼いているのかと聞くが少年は優しい目をしながら「食べたいんだね」と手をつけていない魚を一匹渡した。

 

「ちげぇよ!食うけど!」

 

そう言って紫苑は手渡された魚にかぶりつく。一口食べてから冷静になり会話を始めた。

 

「お前もここに飛ばされたのか[躑躅(ツツジ)]」

 

「うん。それで何でか七輪と魚が置いてあったから焼いて食べてるの」

 

そう言いながらも躑躅は淡々と魚を焼いている。紫苑が焼く作業を始めると、躑躅が食べながら話す

 

「というかこの島からどうやって出るんだ?」

 

「分からない。僕達も別の場所で待機させられてて紫苑君が来る三十分前ぐらいに急に飛ばされて。出れない事に気付いてからお魚見つけたから焼いてるってだけだから」

 

なんの収穫もない。とりあえず美味い魚を二人で食べながら色々な話をした、誰が来ているのか、いつから来ているのか、他の子の体調は大丈夫か等の他愛も無い話だ。そんなこんなであっという間に魚を平らげてしまった。

 

「少しの間にそこそこ食べるようになったな」

 

「うん、成長期だから。これで背も伸びればこんな格好をせずに…」

 

少し嬉しそうにしている躑躅に向かって紫苑が嫌な現実を叩き込む。

 

「俺はこの体格であいつに女装させられても可愛かったから無理だぞ!諦めろ!」

 

躑躅は少し悲しそうな顔をしながら硬直した。紫苑は構わず別の話題を振る。

 

「ところでよ、結局は俺ら戦わなくちゃいけないよな」

 

今までのおちゃらけた雰囲気とは違ってあまり見せることのない真剣な表情をしている。その表情に応えるように躑躅も口を開く。

 

「そうだね」

 

少しの間沈黙が流れた、普段から仲良くしている中等部員を傷付けてまで自分達の願いを優先するのは少し気が引ける。すると紫苑が口を開く、だが躑躅も同時に話そうとして被ってしまった。紫苑が先に話す。

 

「やるってなったら俺は手加減しないからな」

 

躑躅は受けて立つと豪語する。そして次に躑躅が少し微笑みながら紫苑に質問する。

 

「今から、やる?」

 

紫苑はその言葉の意味を理解できなかった。どう言う意味か聞き返すと今までのおとなしい躑躅からは想像できない程血の気の溢れた顔をしながら紫苑に顔を近づけもう一度聞く。

 

「今から、やる?」

 

二度目にして理解する事が出来た。どうやら躑躅は戦闘をするかどうかを聞いてきているらしい。紫苑は意味を理解すると共に口角を上げ嬉々として受け入れた。

だがドーム外でやってもどちらにもデメリットしかないとだけ伝える。すると躑躅はキョトンとしてから納得した様で立ち上がって叫ぶ。

 

「ドーム展開」

 

その瞬間躑躅の真上を中心として透明にいなっていた半円状の壁が色付き不透過性の壁となった。そしてその現象はどんどん連鎖して遂には岩島全体を包み込んだ。

紫苑はこの島全体がバトルドームだったのかと理解して立ち上がる。すると上空から女の声がドーム内に響く。

 

『ちなみにー勝ったらこの島から出れるから頑張ってね』

 

女が言い終わる前から既に躑躅は動き出している、紫苑は迎え撃とうと戦闘体勢に入った。

躑躅は紫苑に攻撃するように見せかけ目の前まで来た所で一気に後ろの引き返した、紫苑は何がしたいのか分からず固まっている。すると急に後方から衝撃を受けて転けた。だが後方を見ても誰もいない。気を取り直して躑躅の方を見る。ひとまずリアトリスを召喚した。

そして気付く。

 

「そういや同業者だもんなぁ」

 

躑躅の背後には主人より何段かデカい男の霊が浮遊していた。そう[城山 躑躅(シロヤマ ツツジ)]は紫苑と同じバックラーだ。

そうして初撃は躑躅が奪い取った。だがここからが本番だ、ゴツゴツとした岩の上で空十字 紫苑VS城山 躑躅による二戦目が開幕となった。

 

 

第五十二話「同業者」

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