御伽学園戦闘病   作:はんペソ。

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第五十六話

御伽学園戦闘病

第五十六話「一年前の約束2」

 

菊とラック以外のメンバーで行われた会議では結局どうすればいいかは決まらなかった。今まで突出している問題児は菊だけだったが菊は何かと言いながらも仕事はするし、いつの間にか何処かに行っているだけで対処はしなくても良かった。

なのでラックの様な本物の問題児をどう扱うか誰も分からない。かと言って元(ハジメ)は問題児には触れずに自由にさせるタイプの教師なので当てにならない。

 

「とりあえず日も暮れてきた、今日はそろそろ帰ろう」

 

呆れ果てた香奈美の一声を仕切りに全員帰宅を始めた。

 

「そうですね」

 

影も呆れ果てており、策は後日再度話し合う事となった。

そしてそれぞれの好きなタイミングで帰っていく、最後に香奈美が戸締りをしてから部屋を出て行った。

香奈美は寮へ直行する。寮は入ってすぐに共同キッチンがあるのだが、そこで水葉が料理をしていた。水葉は「もう少しで出来るから待ってて」と言ってコンロの方へ視線を戻す。

 

「火を使ってるのにマフラーをしてちゃ駄目だろう」

 

そう注意しながらマフラーを外す、水葉は少し不満げにしながらも料理を続けた。香奈美は共同キッチンにあるテーブルに座り、一息ついてから今日の会議に菊が参加していなかった事を思い出す。

ほぼ中身は無かったが何を話したかなどを伝える為に一回の最奥の部屋へ向かう。すると菊の部屋から薫の声が聞こえてきた。何かあったのかと覗いてみると、菊と薫が真剣な顔で何か話し合っていた。そしてその横でラックがベッドで眠っている。

何を話しているのか聞いてみようとした時薫が扉の方を向き話しかけてくる

 

「香奈美か。どうしたんだ」

 

「今日の会議に菊さんが出席しなかったので様子を見に来ただけです」

 

「そうか、とりあえず俺は学園に戻る。菊はこいつをどうにかしておけ」

 

「りょーかい」

 

ラックを任せて薫は部屋を出て行った。香奈美も部屋にいる二人を気に掛けながらも今は自分の出る幕では無いことは察したのでゆっくりとドアを閉め、晩ご飯を食べに共同キッチンへと戻って行った。

 

 

そのまま何時間か経った。すると自分の名を呼ぶ声がする。その声を聞きゆっくりと体を起こす。そして声の主を探した。どうやら風呂場から菊が呼んでいるようだ。ドアの前まで行くとそれに気付いた菊が聞く。

 

「お前髪の手入れ出来るか?」

 

「お前ぐらいの髪なら出来る」

 

「まじか!じゃあやってくれ」

 

「分かった」

 

ドアを開いた。中には風呂椅子に座ってまだかまだかと待ち望んでいる菊の姿があった。ラックは腕を捲りテキパキと髪の手入れをしていく。黙って手入れされるのにムズムズしたのか菊が話を持ちかけた。

 

「にしても躊躇わずに入ってきたな」

 

「…何人の裸見てきたと思ってんだ」

 

「え?お前プレイボーイだったの…?」

 

「ちげぇよ、お前なら分かるだろ」

 

菊は地雷を踏みかけたと自覚し、黙ってしまった。ただ当人は特段気にせず髪の手入れを続けた。

そのまま髪の手入れが終わるとさっさと出て行ってしまった。菊は何も手を出さないのかと少し驚きつつも手入れをしてもらった髪を触って遊んでいた。そのまま何分かして菊が風呂場から出てくる。

 

「いやーサンキュー私やり方知らなかったから」

 

「マジで言ってんのか…?」

 

「そんなことよりお前って寮住みなのか?」

 

「いや家建てたからそこに住んでる」

 

「ほんとか!行こうぜ!」

 

ラックは菊の言葉がどういう意味か理解できず考え込む。だがどう考えても自分の家に行きたいという意味としか捉えられない。念の為聞いてみると菊は髪留めをして、イヤリングを付けて風呂に入って即外出する気の様だ。

嫌だと断ろうとするが菊が無理矢理付いて来る。ただ強く突き放すにも先程暴力を振るってしまったのではばかられる。最終的に菊を招き入れることにした。

家の前まで付くとラックは厳重なセキュリティを解除して菊を家の中に入れた。

内装は非常にシンプルで無駄な物がない完璧空間だった。あまりの綺麗さに菊はドン引きしている。そしてリビングの隅にある水槽に入っている魚に話しかけた、数秒会話をしてからラックに「この魚達腹減ってるって」という伝言をして餌を与えさせた。

ラックはその時『生物と話せる』能力だと言う事が本当だと確信した。

菊は何も言わずに堂々とソファに座り、飲み物をねだる。ラックは呆れつつもコーヒーを二杯淹れ、差し出した。

 

「なぁラック。勿論無糖派だよな?」

 

そう言い、コーヒーを飲みながらラックの方を向くとラックは当たり前のように砂糖をドバドバ入れている。菊は目をまん丸にしてその動作を見つめる。

砂糖を入れ終わるとカップを持ち上げコーヒーを飲み始めた。そして菊に飲まないのかと訊ねる、菊は砂糖を入れたラックに怒りを覚えたのかまぶたをピクピクとさせている。

 

「砂糖入れたのがそんなに気に食わなかったか?別に人それぞれだしいいだろ」

 

「まぁ…そうだな」

 

「それでなんの為に俺の家に来たんだ?」

 

「いい年した生娘と男の子が二人っきりの家ですることんなんて…わかるだろ?」

 

「二十歳にもなって…そうか…そこは突っ込まないでおこう。やる事ってのは分かってる、動物話だろう」

 

菊は言い当てたラックに詰め寄り目を輝かせ嬉しそうに手を掴む。

 

「すげぇ!何回かこれやってきたけど全員当てらんなかったんだよ!!今までこう言うと変な勘違いするやつばっかだったから困ってたんだ!さっきの発言はむかついたが聞かなかったことにしてやろう!さぁさぁ動物話で一晩明かそうぜ!」

 

二人は動物話に花を咲かせた。いつの間にか菊の部屋にいた動物達もラックの家に集合してもふもふを堪能しながら楽しい夜を過ごした。

 

 

いつの間にか眠っていた、ラックは小鳥の鳴き声で目を覚ます。目を開けるとそこには鳴き声をあげる鳥がいた。凝視していると鳥はどこかに飛んでいってしまう。

そういえば昨日は一晩中菊と話していたなと思い、周囲を確認してみると部屋中に犬猫の毛や鳥達の羽毛が乱れ、汚れに汚れ切っていた。

掃除が大変だなと思いながら菊は起きているか確認する。菊はベランダでタバコを吸っていた。ラックが起きているのを見ると手招きをしてこちらに来いと合図している。

ラックは合図されたた通りベランダに出た。すると菊は既に六本もタバコを吸っていた。

 

「肺が壊れるぞ」

 

「いんだよ。どうせ大体十年以内に死ぬ」

 

「大会か?」

 

「あぁそうだ。私がいなかったら生徒会の戦力は半減すると言っても過言ではないからな!だから前回の大会は出なかったんだ、今の奴らだけに託すのはあまりに身勝手だ。だから留年してる、あいつらはまだ未熟だ。私が引っ張ってやんなきゃいけないんだ」

 

「なんでそんなあいつらに執着してるんだ」

 

「やっぱそうか…執着してるように見えるよなぁ…私はそんな気ないんだけどなぁ」

 

そう話していると菊の肩に一匹の鳩が舞い降りてきた。菊は数秒話した後ラックに身支度を整えるよう指示を出した、ラックは嫌々身支度を整えた。

身支度を終えると菊が玄関前で待機していた。ラックはセキュリティを解除すると共に菊を追い出す。その後鍵をしめて自分も外に出た。

今日は快晴だ、朝特有のいい匂いが立ち込めている。ラックは軽く息を整える為深呼吸をした。そして前を向くと既に距離を離されていた。すぐに追い付き、一緒に歩く。途中で学園へ向かっている事が分かった、ので一応聞いておく。

 

「学園か?」

 

「あぁ、初めての仕事だぞ」

 

「は?嫌なんだが」

 

「まぁまぁそう言わずに…と言うか歩くのめんどくさいな」

 

そう言いながら口笛を吹いた。すると遠くから凄い勢いで綺麗な芦毛の馬が走ってくる。すぐそばに来ると菊は慣れた手つきで馬に乗った、ラックは何故こんなに速い馬が島にいるのか理解できず困惑している。

 

「あ?どうした?馬乗れねぇのか?」

 

「いや…乗れるが…なんでこんな速いやつがここにいるんだ?普通に重賞取れるだろ…」

 

「いやーそれがこいつ知らん奴が乗るとメチャクチャ機嫌悪くなって動かなくなるんだよ。でも私は騎手出来るほど上手くねぇし。そもそも免許持ってないしな」

 

「そうか。とりあえずこいつに乗ればいいんだな」

 

ラックが搭乗すると馬は唸って嫌がる。ただ菊が話しておやつをあげるという交換条件を提示すると一瞬にして動き出した。

だが二人乗りなので近付いてきた時よりもスピードは大分落ちてしまっている。ただ歩くよりは格段に速いのですぐに学園に到着した。

お礼におやつをあげると馬は何処かに走って行ってしまった。それと同時に学園内から勢いよく兆波が飛び出してきた、菊の前まで来ると距離を詰めて問い詰める。

 

「なんで昨日許可なく外泊した」

 

「あっわりぃ!許可取ってなかったわ!」

 

ヘラヘラしている菊に対する説教を終えるとラックの方をチラッと見て、ギザギザの歯を輝かせながらウインクをして学園内に入って行った。

 

「うぜ~まぁいい。とりあえず生徒会室行くぞ」

 

そのまま二人は生徒会室へと向かう。

ノックをすると元が入るよう促す、菊は返事が来る前に扉を開く。部屋の中には元と香奈美、そして莉子がいた。菊はそそくさと椅子に座り、タバコを出したが元の「吸うな」という視線を受け、怪訝な顔をしながらタバコをしまった。

そしてラックも座るよう言われたので菊の隣に座ると早速元が口を開く。

 

「さて。今回の遠征内容は毎年数回行われる本土からの能力者運搬、それは一日前だったのだが一人行方不明の子が出たらしい。

なので今回はその子を見つけ出し連れてきて欲しい…のだが今回は菊さんに相方を一人連れてきてくれと言った……本当にラック君で良いのかい?」

 

「あぁ。行くなら早く行きたいんだが」

 

「今回は変な事するなよ菊」

 

香奈美の忠告を受けてもヘラヘラとしてまるで聞く気が無い。

 

「へいへーい。今回は動物使っていいのか?」

 

「大丈夫ですが違和感がない程度に頼みますよ」

 

「はーい。じゃ行こうか」

 

そう言って立ち上がると莉子が近寄って来た。飛ばす場所は本州にある船着場との事だ。莉子は「触れて」と言って二人がしっかりと触ったのを確認してから能力を発動した。

すると三人は潮の匂いが立ち込める船着場に転送された。転送されるとすぐに菊はある事に気付く。

 

「あ!名前とか見た目聞いてねぇ!」

 

莉子が呆れたように一枚の写真を取り出して説明を始めた。

 

「名前は[コルーニア・スラッグ・ファル]女の子。金髪長髪背は150cmぐらい。これだけしか情報はない、動物を使ってでもいいからどうにかして探し出してね」

 

そして少ない情報を伝え、写真を手渡すとすぐに学園に戻っていってしまった。いなくなったのを確認した菊は悩んでから行き先を決める。

 

「うーん…考えるには糖分がほしいなぁ…そうだ!カフェにでも行こうぜ!」

 

「いいぞ。俺もここ経由で学園に行ったからな。ここら辺の店は大体知ってる、美味いコーヒーがある店行くぞ」

 

ラックはノリノリで仕事を放棄した。

 

 

第五十六話「一年前の約束2」

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