御伽学園戦闘病   作:はんペソ。

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第五十七話

御伽学園戦闘病

第五十七話「一年前の約束3」

 

二時間程休憩を取った二人は店を出た。お昼時というのもありそこそこ賑やかだ。ひとまず静かな場所へ移動することにした。とりあえず堤防は静かだろうから堤防に向かう。到着するとすぐに鳥や魚が集まってくる。

菊は人が来てもバレない程度に話している、数分するとそこにいた動物達はいなくなっていた。それと同時にタバコを吸い始める、ラックは今なら話せるだろうと思い、任務の話をする。

 

「探せって言われてもどうすればいいんだか」

 

「とりあえず今寄ってきた奴らに探すよう頼んだ。まぁどちらにせよ私らも探さなきゃいけないだろうし何処を探すかだけは決めとこうぜ」

 

「とりあえずこの店が沢山あるエリアはくまなく探す。他は…順次決めるとしか言いようがないな。ここら周辺は結構森が多いから。とりあえず変な事件とかに巻き込まれてないとありがいたがな」

 

「霊力反応があったらすぐに行く」

 

「あぁ頼もしけど私の方が強いから安心しろ。とりあえず路地裏とかを探すぞ」

 

二つの重い腰が持ち上がった。日が暮れる頃にはもう一度この堤防に集合する事を決定してからそれぞれ捜索を始めた。

菊は動物達を森の方に、自分は店の従業員や立ち行く人に聞き込みを行う。時にはタバコミニュケーションを使って情報を引き出そうとするが一向に足取りを掴む事は出来なかった。

ラックは『血流透視』を使って一帯を駆け抜け不審な動きはないかと確認する。ただ特に気になる血流は無かったので菊と同じ様に聞き込みをする。ただ菊と同じく手がかりになりそうな話を得る事は出来なかった。

そうして日が暮れ出す、二人は何の手がかりも得られるずに堤防に戻る。何もなかった旨を伝え休憩を取る、菊はタバコを吸い始める。

 

「いやーこりゃめんどくさい事になりそうだなー」

 

「動物は使わなかったのか?」

 

「山を捜索させた。多分そろそろ帰ってくるぞ」

 

そう言った通り遠くから十匹程のカラスやスズメ、ハトが飛んできた。その鳥達は菊に止まって報告を始めた。撫でながら幾多の方向から飛んでくる報告を全て完璧に聞き、餌を与えてから「明日も頼む」と言って飛び立たせた。

ラックが報告を伝えろと要求する。だが動物達も何かを見つける事は出来なかったそうで、情報は皆無だそうだ。

 

「どうするんだ。何も情報がないとなるとここにはいない説まであるが…」

 

「そんな事は無いと思うけどな」

 

「なんでそう言える?」

 

「だってあの船はこっちに住んでる能力者にとっては最後の希望みたいなもんだ。こっちでは能力者は差別されたり迫害されたりして死んだり欠損するやつも少なく無い。

現に最近入ってきた小さい奴らは大半が満身創痍だった、抵抗もできないから何としてでも船に乗って逃げたいって事だ。なのに高い倍率を突破してまで乗るのを拒否して逃げ出すと思うか?」

 

「そう言われるとそうだな…となればやはり何かに巻き込まれているとしか…」

 

「やっぱその説が有力だよな~となると寝てる暇は無いな~」

 

「あぁ。この店が沢山あるエリアには確実にいないから森の方を探すか」

 

「あ?なんでいないって分かるんだ?」

 

「俺の能力で見た。絶対にいない」

 

「そういや知らないな。どんな能力なんだ」

 

「…お前になら教えても大丈夫そうだな…俺は複数持ちだ、まず身体強化、説明不要だな。二個目が血流透視、正確には念能力。ちなみに他にも何個か使える。

そんで血流透視は名前の通り建物とかが透過されて血の流れが透けて見えるって感じだ。強いし便利だが壁に当たったりするし何より霊力の消費が激しすぎるからあまり使わない」

 

「その能力使っていないって言えるなら本当にいないんだろうな。そんじゃ夜行性の動物達に捜索してもらうよう言わなきゃいけないからもう行くぞ」

 

菊は立ち上がって森の方に歩き出した、ラックも後を追う。森に入ると菊の傍にはリスやフクロウなど普段ではお目にかける事が出来ない動物達がワラワラと集まっていた。

普通に会話を行い、捜索を行うよう頼んだ。すると全員散り散りになって行く。

 

「やっぱすげぇな」

 

「まぁ動物が嫌いな奴なら基本使い道はないが、私は動物が好きな上好かれやすいからな。そりゃ強いさ」

 

「菊は生徒会で一番強いのか?」

 

「いいや?一番は勿論会長だ、ありゃ格が違う。次に英二郎っていう今遠征中の奴だな。そんで三番手に私だ、でもまぁ来年に確定で入ってくる会長の妹が滅茶苦茶強いから抜かれるだろうな~って感じ。

他にも伸びしろしか無い奴らだし、いつのまにか最弱になっててもおかしくないし、むしろ成長が嬉しいぐらいだよ」

 

「妹ってのはどんな奴なんだ」

 

「ありゃすごい。まず降霊術、黒狐を持ってる。しかも仲がいいから厄介だ、何よりこっくりさんで呼び出したって言うんだぜ?やばすぎる。まぁこの強さは見ればわかるさ。

そんで体術、下手な身体強化持ちより強い、才能と血反吐を吐くような一ヶ月の努力だな。

次に剣術、秀でている体術を組み合わせて使うから避けれない技を連発してくるくせして一発一発が凄い重いんだ。私も一回生身で模擬戦した事あるけど速攻で右腕吹っ飛んだ」

 

「すげぇ奴だな」

 

「じゃあ無駄話はここらにして探すぞ。私は右探すからお前は左探せ」

 

菊はタバコを取り出して火をつけながら右方向に歩いて行った、闇夜に消えて行く菊を見て、ラックはあくびをしながらも足を進めた。

森の中を捜索し始めてから三十分が経った。動物達の音以外は何も聞こえない、人影すら無い状態だ。もう月明かりも差し込まない程奥深くまで来ていた。

すると視界に入る建物があった、小屋だ。その小屋はボロボロでまるでホームレスが建てたかのようにツギハギだ。耳を澄ますと小さいが物音が聞こえる。

誰かいると確信し、近付いていくと音は止む。どうやら足音を気付かれたようだ。だが今更引いて時間を置いて再度来る、みたいな事をしている時間も余裕も無いのでゆっくりと近付いていく。

壊れ掛けているドアノブに手をかけゆっくりと開いた。中は真っ暗で小汚いただの小屋といった感じだ。するとその瞬間ラックの顔の前に足が飛び出てくる。

瞬時の判断で後ろの反って避ける、追撃をくらわないよう後ろに下がる。それと一緒に小屋の中から一人の少女が出てきた。その少女は莉子に渡された写真と全く同じ少女だった。

名前を呼んで攻撃を止めようとするがラックが口を開く前に少女は走ってくる。全然弱い素人の蹴りをしてきたので普通に避けた。すると少女は次の行動に移らず倒れ込む。

 

「落ち着け。俺は能力者だ」

 

「嘘だ!そう言って私を攫おうとしてるんだ!」

 

「違う!落ち着け!」

 

だがファルは体を起こし突撃してくる、ラックはやむを得ず身体強化を発動した。次の瞬間ファルがラックの腹部を殴る、だがラックは怯むことさえせず立ち尽くす。ファルは驚きなが見上げる。

 

「ほらな」

 

「ほんとに能力者なの…?」

 

「だからそうだと…」

 

そう言いかけたところでファルが泣き出した。とりあえずファルを泣き止ませようとするが中々泣き止まない。こんな所で小さい女の子が泣いていると通報が入るかもしれないので、どうにか泣き止ませる為ポケットから赤い水性ペンを取り出してファルのほっぺに二つずつ赤い線を描いた。

ファルは何をしているのか気になって泣き止み、これが何かを訊ねるとラックは説明始めた

 

「これは俺との約束の線だ。お前はこれからの人生で俺と四つ約束をしていい。だが一つ約束する度に赤い線を一つづつ消していくんだ。俺はお前との約束を絶対に守る、だから今は泣き止んでくれ」

 

ラックはどうせくだらない事ばかりだろうと思い、無理矢理泣き止ませた。思惑通りファルは泣き止む。そして頬を少し触った後本当に叶えてくれるのかを確認する、ラックは「勿論だ」と答え何があっても約束を守ると言った。その言葉を聞いたファルは小さい声で言う。

 

「じゃあ早速一個目…いい?」

 

「あぁいいぞ」

 

「私が強くなったら…私ともう一回戦って!」

 

そんな願いでいいのかとキョトンとしている、だがファルは本気の様だ。そこまで難しい願いでもないので快く承諾した。するとファルは大喜び跳ね回る。だが急にピタッと動きを止め、小屋に戻っていった。

ラックはファルを追いかけて小屋の中に入る。するとある事に気付いた。小屋の奥に傷を負っている桃色髪の少女が横たわっていたのだ。

すぐに駆け寄り消毒をして綺麗な包帯で応急手当をした、ファルは感謝してからその少女との関係を説明する。ファルの説明によると船の出航日に傷だらけで誰かから逃げているのを発見した。そして能力である身体強化を発動して、少女を担ぎ逃げ出しここに籠っているらしい。少女はファルが駆けつける瞬間に気を失いそれ以降目を覚ましていないようだ。

 

「相当危ない状況なのかもしれない、早めに菊を呼んで…」

 

するとその少女が唸り出す、ラックはすぐに体に異常がないか確認しようと近寄った瞬間少女が目をゆっくりと開けた。ファルは意識を取り戻した少女に驚きながらも喜んでいる。

少女は完全に目を覚ましたようでキョロキョロと周りを見渡す。そして二人が視界に入ると咄嗟に立ち上がり戦闘体勢を取った。ただラックが事を説明すると落ち着いたようでへたり込んだ。

 

「痛いところはないか?」

 

「はい。大丈夫です」

 

「それなら良かったとりあえず外の空気でも吸うか」

 

ラックは少女に肩を貸しながら立ち上がった。そして三人で外に出る、外は冷たい空気が漂い満月の光がほんの少しだけ差し込んでいる。ラックは少ししてから名前を訊ねた。

桃色髪で、和服を着て、雨も降っていないのに和傘を差す少女はこう言った。

 

「私は名前は[櫻 (サクラ サキ)]です」

 

 

第五十七話「一年前の約束3」

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