御伽学園戦闘病   作:はんペソ。

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第五十八話

御伽学園戦闘病

第五十八話「一年前の約束4」

 

「そうか(サキ)か。ところで何故追われていたんだ?」

 

「あまり詳しい事は言えませんが私は能力者です。そしてTISが私の能力を欲して追いかけ回されていたんです」

 

「TIS!?おいおい今まで無事だったのか?」

 

「何度か死にかけましたが能力を使って切り抜けてきました。もう一年は逃げ続けています」

 

「は!?そんなに逃げ続けてんのかよ…そうだ!折角ならお前も島に来ればいいんじゃないか?一人ぐらいなら理事長も許してくれるだろ」

 

提案された咲は少しだけ俯き、しっかりと考えてから引きつった笑顔を浮かべ丁重にお断りした。その返事に二人は困惑する、本来なら行きたくても行けない場所なのに、断るなんて思ってもみなかったのだ。

ラックとファルはどうにか島に来ないかと説得を試みるが咲は断り続ける、何分もそんな状態が続きラックもそこまで言うならと諦めかけた瞬間咲の頬が切れて血が垂れだした。

すぐに振り向く、するとそこには緑髪でメガネをかけ、背中から口や目が着いた触手を四本生やしている男がいた。ラックもファルも即座に咲を追っているTISの奴だと理解して戦闘体勢に入る。

男は触手を使って咲に攻撃しようとしたが見知らぬ輩が二人いるの見ると攻撃を中断した。そして少し遠くの二人に自己紹介を始める。

 

「僕の名前は[コールディング・シャンプラー]。TISです」

 

「おいおいおいなんで(ジョウ)のトップ帯なんかが一人の少女を追いかけてるんだ?」

 

「今は関係ない事でしょう。ひとまずあなた達には邪魔をされたくありません。戦闘、しますか?」

 

ラックは返事さえもせず一瞬でシャンプラーの懐に潜り込んで殴ろうとした。だがその拳はシャンプラーに届く事はなかった。何故か拳に痛みを感じ、視線を落とすと拳は触手に噛まれ飲み込まれようとしていた。

すぐに引き抜こうとしたが鋭い牙に引き裂かれ右腕は手首から上が持って行かれた。

 

「くっそ!菊を…」

 

「遅いですよ」

 

シャンプラーがそう言った瞬間触手達が目に負えない勢いでラックに飛んで行く。ラックは勢いに負け、避ける事が出来ない。終わったと思った時前方の触手が全て跳ねて逃げ帰っていった。目の前にはいつの間にかファルと咲が立っていた。ファルは身体強化を使って生身で、咲は傘を使って攻撃をしたようだ。

 

「しっかりしてよ!あ、えっと…名前知らないや」

 

「[ラック・ツルユ]だ。あんがとよ、俺も最近一人の教師としか戦ってなかったしな。ちょっと本気を出すよ」

 

身体強化を発動すると共に霊力を少しづつ放出する。まずファルが先陣を切って突っ込んだ、触手達はファルを喰おうと必死に飛び回るが綺麗にかわされ、シャンプラーの懐に潜り込んだ。

そのままアッパーをかます。とても訓練をしていない女子中学生が出せるとは思えない怪力だ。そして鈍い音を立てシャンプラーの顎の骨を砕いた、痛そうに顎を抑えているが触手達は怯まない。

未だ振り上がっているファルの腕に噛みつきを試みたがラック左手だけで全ての触手を掴み、阻止した。

 

「二度目はねぇよ馬鹿が」

 

「馬鹿はどちらでしょうね」

 

ラックは手に違和感を覚えすぐにそちらに視線を戻す。すると掴んでいたはずの触手達はラックの腕に巻き付き、侵食してきている。手放そうと力を抜くが触手達が逃すはずもなく既に肩まで移動してきている。

ファルがどうにか引き剥がそうとするが触手達は絶対に放さまいとガッチリ巻きつく。その間にもどんどん進行する、首を突破し口から侵入してきそうになった瞬間シャンプラーに何十匹ものフクロウやミミズクが突撃してはUターンして、再び突撃する。

触手達は一斉にラックから離れ、シャンプラーの元へ向かうがラックとファルが掴んで移動を止めた。シャンプラーは鳥達に突撃されながらも冷静に呟く。

 

覚醒

 

だが遅かった、身体中の力が抜けていく、一瞬にして立つ事も出来なくなってしまう。その直後背中が蹴られる、その攻撃は凄まじいものだった、筋肉を通り抜け骨に直接当たったのだ。

シャンプラーは吐血し、うつ伏せになる。そして蹴った人物が判明した。

 

「一丁上がり」

 

やはり菊だ、だが菊の少し後ろにはもう一人男がいる。茶髪で後ろで少しだけ髪を結んでいる長身の男だ。

 

「よっし見つけたんなら帰ろうぜラック」

 

「ちょっと待てそいつは誰だ」

 

「あー知らないか。自己紹介してやってくれ」

 

「初めまして[乾枝 差出(カラエダ サシデ)]と言います。国語の担当をしてるんだけどここ半年はTISの動向を伺う遠征を行なっている、能力は『筋肉の活動を停止させる』だ。

ひとまず僕はまだ仕事があるから君達は帰りなさい」

 

「乾枝な、覚えておく。じゃあ行くぞ菊、ファル」

 

「そのピンク髪の奴はなんだ?」

 

「俺らには関係ない、とりあえず早く帰るぞ。眠い」

 

「は~いはい」

 

菊は咲の方を見て立ち尽くしているファルを抱き上げ、歩き出した。ファルは何も言わずに一点を見つめている。ラックは少しファルを気にかけながらも、自ら拒否した咲を無理やり連れて行こうとはしなかった。だがファルは視線を外さずに呟くような声で言う。

 

「ねぇラック、もう約束使っていい?」

 

「いいぞ」

 

ラックは体をの向きを反転し、咲の方を向く。ファルは続ける。

 

「咲ちゃんを、連れてって」

 

速攻で距離を詰める。咲は驚き、逃げようとするがラックは身体強化を発動してまで距離を詰め、捕獲して担ぎ上げた。咲が降ろすよう要求するがラックは無視して菊の方へ向かう。そしてそのまま咲を担ぎ、堤防へと連行する。

菊はファルを降ろしてから煙草を取り出す、吸うのかと思うと真上に投げた。その瞬間目の前に莉子が現れる。

 

「お疲れ……事情は後で聞くから四人転送するね」

 

ラックと菊は莉子に触れる。そしてファルも真似するように触れる。だが咲だけは頑なに触れようとしなかった。痺れを切らした莉子自身が触れ、能力を発動した。

五人はたちまち職員室に送られる。職員室には薫、元、兆波の三人が待っていた。薫はすぐにファルと咲を保健室へ誘導する。いつの間にか莉子もどこかに行ってしまっているようだ。

残った二人に元と兆波が労いの言葉をかけ乾枝から既に連絡があった[コールディング・シャンプラー]の件を説明するよう言われる。特にやましい事も無いので包み隠さず二人は時間をかけて、全て説明をするのだった。

 

 

「あぁ覚えてるぞ。まさか一生で四回しか出来ない約束を初日で半分も消費するとは思ってもいなかったがな」

 

「そうだね、だけど私は咲ちゃんを連れて行けて良かったと思ってるよ。それで…」

 

ファルは言葉を詰まらせる、何故か声が出てこないのだ。心配したラックが声をかけようとするがファルは振り絞った「大丈夫」と言う言葉をぶつける。そして顔を上げ、立ち上ってドームの中心へ歩いていく。ラックはただそれを見つめるだけだ。

ゆっくりと歩き、中央まで来た所でファルが口を開く。

 

「今、約束を果たしてくれますか」

 

ファルは涙目になっている。だがラックはその事に関して心配しなかった、何か懐かしい物を感じたのだ。だがそんなの過去の事などお構いなしに『叶えてやりたい』その想いが先行する。しっかりとファルの目を見て返答する。

 

「勿論だ」

 

その瞬間ドームが展開された。熱に包まれ、あの日とは真逆の快晴の元

コルーニア・スラッグ・ファル 対 ラック・ツルユ

の第三戦が始まった。

 

 

第五十八話「一年前の約束4」

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