御伽学園戦闘病   作:はんペソ。

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第六十二話

御伽学園戦闘病

第六十二話「おかたづけ?」

 

[兵助視点]

 

目を開けるとそこは肌寒い空気が立ち込め、辺り一面が真っ白な雪原地帯だった。とりあえず暖まる場所を探すそうと、適当に歩いてみる事にした。

とても柔らかい雪に足を埋め、音を楽しみながら兵助は少し前の事を思い出す。このバトルロイヤルはドームファイトという要素を落とし込んだ事以外はまんまあの大会と同じだ。

最初にランダムな場所に転送され、そこから戦いを行う、それだけの簡単なルールだがその勝負でわざと負けたり霊力の消費を抑えたりしなくてはいけない場合がある為色々と覚えておかなくてはいけないこともあるのだ。

 

「いやー前は佐須魔にやられちゃったからなぁ…たった数年であそこまで強くなってるとは思わないじゃん…でもあいつらを倒すためには僕も戦える様にならなくちゃいけないな。よし!今回は日和らず戦闘をしてみよう!」

 

兵助は戦闘をすると決めて敵を探す。だが何分探しても人影はおろか木の一本も見つからない。まっさらな雪原に困り果て、休憩をするため適当な場所に座ろうとした。

その時だ後方からモップが物凄い勢いで飛んできた。だが兵助もそれぐらいなら気付いて避ける事が出来る。かわした後に誰が投げてきたか確認すると目に入ったのは数分前まで一緒にいたベロニカだった。ベロニカは再び攻撃をしてこようとしたので慌てて攻撃を止める様促す。するとベロニカはどこか不服そうに攻撃の手を止め、兵助の傍まで寄ってから話しかける。

 

「なんで攻撃してはいけないんでしょうか」

 

「いやいや流石に出オチは嫌だよ」

 

「はぁ…でも私としてはあなたがいると回復されて厄介なので今すぐにでもお掃除したいのですが」

 

「でも…僕も復活してから最初の戦闘を少しは楽しみたいなー…なんて思ったりしてるんだけど…」

 

「戦闘は楽しむものではありません、義務です。私たちは淡々と人を傷つけていればいいんです」

 

「いやーそんな事はないよ。僕のお婆ちゃんからの受け売りだけど『戦闘は楽しんだ奴の勝利』だと思う、だから少しは楽しんでみるのもいいんじゃない?」

 

「頭大丈夫ですか?戦闘を楽しんでいる様な人に勝利は傾きません」

 

兵助はズバッと言われて困った様な顔をする。それでも祖母の教えを説くように戦闘の楽しさを熱弁する。ベロニカはどこか遠い所を見ながら雪にダイブして遊び、耳から耳へと聞き流している。

ある程度区切りが付くとベロニカは立ち上がり雪を払う。その後兵助に投げたモップを拾い上げる。そして突き立てながら

 

「そろそろ終わりにしましょう」

 

とだけ言って再びモップを投げつようとする。

 

「ストオオオオップ!!!!!」

 

そう全力で叫ぶとベロニカは再び攻撃の手を止めた。そして少しだけ嫌そうな顔をしながら再び半分悪口の様な言葉を浴びせる。

 

「急に大声を出さないでください、嫌な旦那になりますよ」

 

「いや…ごめん。けど急に攻撃するのはやめてくれない!?せめてドームで戦うとか…」

 

「あなたは負けるのが分かっているのにドームで戦うのですか?それは敵にヒントを与えるのと同義ではないでしょうか」

 

「…忘れてた…ドームファイトするなら負けちゃいけないのか」

 

「はい、なのでドーム外の戦闘で敗北すれば私にヒントは与えられません。私なりの優しさですよ」

 

その言葉を聞いた兵助はハッとして少しの時間思考に浸る。今ここで戦闘をして敗北すれば相手の体力や霊力を消費させれる上にヒントは無い。

だがドームファイトをして万が一勝てば自分がヒントを得る事が出来る。ただベロニカはどうしてもドーム外で戦いたいらしい。ならば中学生の言う事を受け入れるのも大人のお兄さんとしての役目だと割り切る事にした。

 

「分かった。ここでやろう」

 

両者が戦闘体勢に入る、数秒間見つめ合った結果、結局先に動いたのは兵助だった。ベロニカの方に突っ込み、かかと落としを行うがベロニカはヒョイと横に避けてモップで兵助の腰を思い切り叩く。

とんでもない威力で吹っ飛ぶされた。ただ薫や兆波がやっていた動きを脳内に浮かべ、上手く受け身を取り瞬時に体勢を整えた。

兵助は力強さから能力は身体強化だろうと仮説を立てて戦うことにする。ならばと昔薫に教えてもらった戦術を使うことにした。その戦術とはひたすら距離を取って相手が疲れた所で一気に畳み掛けるという物だ。

非常にくだらないがそれぐらいしか出来る事が無い。それ故その作戦を執り行う以外に選択肢はないわけだ。

距離を取ろうとするがベロニカは目にも止まらぬ速さで距離を詰めてくる。流石にヤバいと思い、回避行動を取るが既に遅かった。ベロニカはモップを振りかざす。ベゴッっともベキッとも聞こえる鈍い音した。

すると鼻から大量の血が流れて来る。そして鼻が完全に折れているのを確認した。

 

「女子中学生が出す力じゃないな」

 

「私だって女の子ですよ。そんな私の力がゴリラなんて言わないでください」

 

「そんな言い方してないよ」

 

少しだけ笑みを浮かべながら否定する。続いてベロニカは容赦なくモップで叩き続ける、兵助は顔を守って攻撃が収まるのを待った。数十秒して攻撃が止んだのですぐに立ち上がり逃げようとするが目の前にベロニカが移動してきた。すぐに進路を変えるがベロニカも付いて来る。

今度は真反対を向いて走るがベロニカは兵助の脚をモップで掬い、転ばせた。すっ転びながらもベロニカの方を向いて聞く。

 

「君、身体強化じゃないね。よく考えたら薫と兆波はもっと筋肉をつけて基礎のパワーをあげるはずだ…それに比べて君はあまりにも一般的な体つきすぎる…」

 

「そういうの分かるんですね。ご褒美に教えてあげますよ、私の能力は『家事を完璧にこなす』能力です。

一見弱そうに見えますが私が家事だと思えば全て家事なんです。なので私は戦闘相手をゴミだと思い、おかたづけだと思うことで完璧に勝利する事が出来るの訳です」

 

「そういう系か…勝ちの目、なくなっちゃった!」

 

「身体強化なら勝てる、とでも思ったのでしょう。ですが私の能力が身体強化だったとしても、四年近く眠っていたあなたに負ける気はしませんね」

 

「そうかもね。じゃあ僕は今回君を楽しませる事に徹底しようかな!」

 

ベロニカはため息をついてから目の前にいる兵助をぶん殴った、急な攻撃に勿論吹っ飛んでいく。ベロニカは追撃を入れようとするが、兵助は攻撃を受けながらも立ち上がりカウンターをかました。

殴られた箇所を少し触って大きな傷はできていないと確認すると再び攻撃を始める。兵助はダメージ覚悟で反撃を繰り返した。だがそのうち限界が来てフラフラとしか立てなくなってくる。ベロニカは見切りをつけて最後の攻撃を行おうとする。兵助は避けようともしない、モップを振りかざしたその瞬間ベロニカは途轍もない衝撃に見舞われる。

 

「ほーら後ろは見えないだろう」

 

兵助はいつのまにかベロニカの背後に移動していたのだ、ベロニカはただちにモップを地面に突き刺し、衝撃での移動を最低限に抑えた。

そして少しだけ笑いながら先程より何倍も速い攻撃で兵助をぶっ飛ばす。あまりの力に何が起こったのか理解できない兵助はただ体を任せている状態だ。だがすぐに事を理解して着地しようとする。が遅い、既に視界には少々引きつり気味の笑みを浮かべながら攻撃の手を緩めず、追撃を行っているベロニカが映っているのだ。

直後兵助はモップによって地面に叩きつけられた。完全に肋骨が折れている、下手をしたら内臓にまで刺さっているかもしれない。ろくに呼吸もできない状況だ。ベロニカは一呼吸ついてから兵助に問いを投げかける。

 

「私笑っていました?」

 

「あ…あぁ…楽しそうだったし可愛かったぞ…」

 

「そう…ですか」

 

「だが本心から楽しんでいるようには見えなかった、せいぜい六十点といったところかな。次までにはなんで楽しかったか考えてみると良いだろう、僕からの宿題だ…」

 

ベロニカが返事をしようとした時には既に兵助は消えていた。ベロニカは何故嫌いな戦闘を楽しんだのか熟考しながら厄介な兵助を片付けた事を報告する為、他のメンバーを探しに草原地帯へ向かうことに決めた。

数十分歩き草原地帯と雪原地帯の狭間まで来た所である人物を見つける。

その子の元まで向かい、日向ぼっこをして眠っているその少女を声をかける。

 

虎子(コジ)さん?起きてください」

 

そう声をかけると少女は目を擦り、あくびをしながら体を起こす。その少女の名前は[橋部 虎子(ハシベ コジ)]だ。上級の虎と狐を使う降霊術士だ。

そんな少女はベロニカに「おはよう」と挨拶をしてから立ち上がり歩き出す。ベロニカは何も言わずに後ろを付いて行く。どこに行くのか聞いても「適当!」としか言わない少女に困り果てながらもベロニカは後ろをピッタリと歩き続ける。

すると虎児が急に立ち止まった。

 

「どうしたんですか」

 

「ねぇベロニカ、ドーム見つけたんだけどさ…一番強い奴がいるけど…だいじょぶ?」

 

そう言って前方にあるドームに指を差す、誰がいるのか確認するとドーム内にはお日様に当たってぬくぬくと気持ちよさそうにお昼寝をしている蒿里がいる。

ベロニカは少しだけ悩んだ末、兵助からの宿題を解きたい気持ちもあったので戦闘をする事にした。

二人はドーム内にこっそりと入り、蒿里の傍まで行く。そしてベロニカが起こそうと手を近付ける、すると蒿里はその手を掴んで引っ張りまるで抱き枕かのようにベロニカに抱きついた。

 

「何してんの、抜け出せない?」

 

笑いながらベロニカを引きずり出そうとするが、蒿里は引き出そうとしている虎子の腕をも掴んで引き寄せた。そして二人をがっちりホールドする。

全く身動きが取れなくなって初めてベロニカの気持ちを理解した、虎子はどうしようかと考えたが何も策が浮かばず今は寝ようと提案してベロニカもそれに賛成した。どうしようもなくなった二人もお日様にあてられながらぬくぬくとお昼寝を始めた。

 

 

そのまま二時間ほど眠っていると蒿里がふと目を覚ました、何か違和感を覚え、そちらを見てみるとベロニカと虎子を抱えている。とりあえず二人を起こしてどういう状況かを聞き出す。そして謝罪をした、ベロニカは気にしていないようだが虎子は「ここで戦えば許してあげる」と戦闘を持ちかけた。

蒿里は「もう一人来てから」と言おうとしたが虎子がそれを遮り、二体一で戦う事を強要する。蒿里は渋々了承した。

 

「やった!じゃあベロニカも戦闘体勢に入って!」

 

ベロニカも戦闘体勢に入ると蒿里は呟た。

 

「ドーム展開」

 

その瞬間ドームが展開される。虎子はテンションが上がり大はしゃぎだ、ベロニカは淡々とモップを掴みすぐにでも蒿里に攻撃できるようにしている。続いて蒿里も戦闘体勢に入る。そして虎子が「じゃあいくよ!」と言ったところでマーガレット・ベロニカ&橋部 虎子VS樹枝 蒿里が繰り広げる初の人数非対称戦、第五戦が始まった。

 

 

マーガレット・ベロニカ

能力/念能力

家事を完璧にこなす

強さ/おそうじだと思えば生徒会上位並の力が出せる

 

第六十二話「おかたづけ?」

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