御伽学園戦闘病   作:はんペソ。

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第六十六話

御伽学園戦闘病

第六十六話「勝つ勝負の楽しさ、負けない勝負の味気なさ」

 

紫苑の煽り文句に少し苛立ち、悪手とも言える焦った行動が浮き彫りになって来た。例えば動向を窺う事もせずひたすら守りに徹している。そんな戦いをしていれば当然勝利なんて夢のまた夢。だが真浪はその事にすら気付かず、未だ勝機はあると思い込んでいた。

紫苑は一人で間髪入れずに攻撃をして、一瞬の隙ができたら体の何処か、出来るだけ顔面に殴打や蹴りを行っている。

だが真浪の体は機械というだけあって効いてはいなさそうだ、ただこのチャンスタイム中紫苑はしっかりと作戦を考えていたのだ。

そんな事は見ず知らず、真浪はずっと紫苑のハッタリに意識を引っ張られ正常な判断が出来ていない。それも相まってか訳の分からないタイミングで霊力のビームを放った。ただ適当に一直線のビームを撃った所で当たるはずもない。

そろそろ決めなくてはと思い、少し心を落ち着かせてから冷静に紫苑に向かけてビームを撃つ。明らかに精度が上がったのを確認した紫苑は攻撃の手を止めるどころか増やした。

 

「これなら・・・!」

 

真浪が距離を詰めて来た紫苑に蹴りを入れる、だが紫苑もすかさず蹴りを入れた。

すると蹴られた左足のすねに何か違和感を覚えた、一度距離を取って見てみると、なんと直径3cmほどの尖った鉄製の棒が刺さっている、いや貫通している。

だが慌てず特殊仕様の一つだろうと判断し、気にしないことにした。幸いこの程度の痛みなら普段の兆波や薫との戦闘訓練の方で慣れているので別段パフォーマンスに関わってくることは無かった。

 

「んーまぁ・・・そろそろ終わりにしようぜ」

 

紫苑がもの凄い力で真浪を殴り飛ばし、壁までぶっ飛ばされた。だが真浪はこれをチャンスと捉え、今までの中で最大火力のビームを撃った。

真浪の腕から放たれるビームはスピードが途轍もなく速い癖をしてチャージ時間などは無い。そして紫苑は真浪の方に向かって走り込んでいる。

そんな状態で完全にかわす事は不可能だ、なので妥協しつつも最善の行動を取る。それは避けないことだった。何故かと言うと真浪は自身の最大霊力量で比較すると圧倒的に“少量”の霊力でビームを放っていた。

だが今回は最大の約半分レベルの霊力を込めているだろう、となると絶対に外したく無いはずだ。だが紫苑は今までビームを避け続けた、なら今回も変わりなく避けるはずだ。そう思うだろう。ならば回避した後の予想位置に打つはずだ。なのでその思考の裏を取ったのだ。

その予想は見事に的中し、真浪の渾身のビームは紫苑の左頬を少し削る程度しかできなかった。この結果に真浪は絶望し諦めたかと思いきや笑っている、楽しんでいる。

 

「やっぱ自分で勝とうとする方が楽しいよなぁ!?あと何戦するかなんてどうでもいい!目先の戦闘を優先する!そうやって身を粉にして戦う方が楽しいよな!?」

 

「そうですね。じゃあ他の人ともこの楽しさを味わいたいのでさっさと終わらせましょう」

 

そう言いながら再度掌を紫苑に向ける。霊力は体内に一割だけ残して最後のビームを撃つ。ビームの直径は約4cm、紫苑は左手の拳をを開きビームの着弾点に立つ。あまりに異常な行動、だが真浪も紫苑もそれこそが面白いと感じた。

瞬時に着弾し、ビームが紫苑の掌を貫通。することは無く、何故か打ち消されたのだ。

真浪は唖然とする、何故ならあのビームは到底生身の人間が受け止めれるものでは無い。紫苑は何故受け止められたのかを説明する。

 

「まずこれは(リアトリス)人間(おれ)の間で霊力の流れをコントロールできる俺だからこそできた芸当だ。

手順は簡単、まず上空のリアトリスにドームの壁の中に籠っている霊力を吸わせる。このドームの壁は防音材のように霊力を吸収するんだ、だからその霊力を利用した。

そして次はリアトリスの霊力をこちらに送る。そして最後はビームを体で受ける、だ。

壁に集まったお前のビームの霊力、そして元から備わっているリアトリスと俺の霊力、合計して霊力指数380ぐらいだろう。そして最後のビームの霊力指数は多くて30程度、霊力と霊力のぶつかり合いってのはあまりに差があると低い方が打ち消されるだけ。ただこれだけの簡単な仕組みさ」

 

腑に落ちた真浪はこれ以上やっても無駄だと思い、負けを受け入れた。そして戦闘の楽しさを教えてくれた紫苑に一礼を入れてから上を向き、女に負けだと伝える。次の瞬間真浪は消えドームも薄くなっていった。女は勝利した紫苑にヒントを授ける。

 

『はーいお疲れ。ヒントは[だ]ね。もう戦闘数的にみんなで掛け合わせれば分かると思うけど・・・まぁ集まってる余裕なんて無いと思うからちゃんと出会った仲間には伝えておくことだね』

 

「おう、分かった」

 

『じゃ、もう少し頑張ってねー』

 

ドームが完全に消失するのと同時に女の声も消える。紫苑は止血をしてから流との待ち合わせ場所へと向かうため、元来た道を辿っていく。

木しか無いせいで少し迷ったが、五分ほどで無事到着しが。だがそこには一人の少女が立っていた。少し面倒くさそうに苦笑しながら、そこでまっていた少女に話しかける。

 

「なーにしてんだ美琴(ミコト)

 

[小田町(オダマチ) 美琴(ミコト)]。紫髪のミディアムヘア、服は黒めのジャージ一を着て右目には眼帯をしている。

中等部一年生ながら学園内でトップレベルの『呪い』を扱う少女。その技術は凄まじくあの薫が、TIS重要幹部の一角[空傘(カラカサ) (シン)]をも凌ぐほどの実力があるかもしれないと評価するほどだ。

 

「ん、紫苑」

 

「やりたいのかぁ?」

 

「うん。あのスズメ使いの先輩は咲ちゃんがやってくれるから。紫苑は私がやる」

 

「しゃーねーな・・・ドームは見つけてあるのか」

 

「何言ってんの。ドームなんてないよ」

 

全てを察した。この少女はヒントを得るため戦闘を持ちかけているのではない、ただ単純に紫苑に勝ちたい、負かしたいという気持ちを優先して戦おうとしているのだ。

そんな少女の願いを断れないのが紫苑という人間。だがもう一度この地帯で戦闘は行なっているので、二度目もここで戦ってもつまらないと思い、住宅街なら戦っても良いという条件を提示した。

美琴は即答し早速住宅街へと向かうことにする。なんとか賭けに勝ち、第五戦をもぎ取った紫苑だったが連戦を強いられる事となってしまった。

そんな中、高山地帯でも戦闘が巻き起ころうとしていたのだった。

 

 

鹿野 真浪(カノ マナミ)

能力/念能力

体を自由自在に機械化できる。

強さ/仕様も相まって生徒会中堅程度

 

第六十六話「勝つ勝負の楽しさ、負けない勝負の味気なさ」

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