御伽学園戦闘病   作:はんペソ。

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第六十八話

御伽学園戦闘病

第六十八話「桁外れの殺意」

 

四葉は雪原地帯へ向かう、雪原地帯での戦闘は雪に足を取られてしまわないか心配だが、あと七十回以上死ねるのだから気にしなくてもいいだろう。そんな気軽な気持ちで雪原地帯へ侵入した。

急な気候変動に身を震わせながらも周囲を見渡して一歩一歩足を進める、雪に足を取られながらドームを探し敵がいないか探し続ける。

雪原地帯に突入してから三十分が経つが何も無いし何も起こらない。ただただ寒いだけの空間に段々と嫌気が差してきた。

探索を始めて四十五分、絶対にドームはあるはずだと探し続けた成果が実ったのかドームを発見した。喜びながら駆け寄り、どんな場所で戦うことになるかを確認する。

平坦で針葉樹の木が数本、そして場所によってはとても深い積雪。これは先に地形を把握した者が勝つと言っても過言では無いほど何も無い。四葉は誰が来ても勝てるだろうと一人で勝手に豪語する。そして寒むくて敵わないので、かまくらを作って暖まることにした。

簡易的なかまくらが完成して暖まっていると、少し遠くの方からざくざくと雪を踏む音が聞こえて来る。すぐにかまくらから飛び出し、誰が何処から来ているか確認する。南方から蒿里が俯いてフラフラと歩いてきている。

だが四葉は心配などしない。何故なら蒿里は途轍もない程の霊力のオーラを纏っているので恐らく四葉の存在に気付けていない、先に不意打ちを仕掛けるべきなのだ。戦闘体勢に入った。

だが蒿里は確実に視界には入っただろうに、無視して高山地帯の方へ進んでいく。

 

「ちょっと!」

 

四葉が引き止めるようとすると、蒿里は振り向いて何か用かと訊ねた。その目の縁は赤く腫れ瞳は今までに無いほどドス黒く顔色は真っ青で生気ない。まるで雪女のような状態だ。

何故無視するのかと聞き返すが、蒿里は数秒黙ってから再び歩き出す。無視されたことに苛立った四葉は蒿里の腕を掴んで強引にも引き留めようとしたが、すぐに振り払われ尻餅をつく。そして蒿里は生気の無い顔で呟いた。

 

「着いてこないで」

 

「なんでよ!私はあんたと・・・」

 

「死にたいの?」

 

一瞬にして四葉は戦意を喪失する。霊力が何倍にも増えたように見えた、到底勝てる相手とは思えない。自分が何度死んでも辿り着けない領域に、今この人はいるのだと実感した。

だがそれでも四葉は諦めず戦闘をしろと言い聞かせる、蒿里はもう呆れかえった様子で無視し、高山地帯へ向かう。イライラが頂点に達したせいか、言ってはいけない事を口走ってしまった。

 

「そんなんじゃ素戔嗚と同じじゃない!本気を出して戦闘をせず!ただ逃げるだけ!そんなの…」

 

その刹那四葉の首が三度吹き飛ぶ

 

-三回死亡-

 

蒿里が|オーディンの槍(グングニール)で四葉の首を跳ね飛ばしたのだ。相手に戦闘の意思があるのだと思い、距離を取ろうとするが蒿里はそれを許さない。圧倒的なスピードで首を跳ね飛ばし、心臓を貫き、息の根を止める。その五秒で四葉 桑は十三回死んだ。

 

-十六回死亡-

 

蒿里は一度手を止め、ただ殺意しか籠っていない眼で四葉にこう言う。

 

「死ね」

 

その直後再び|オーディンの槍(グングニール)を振り回し何度も、何度も、何度も四葉を殺害する。だが四葉は体力のストックを消費して生き返りドンドン強くなっていく。

やがて乱暴に攻撃するだけでは死なないです程度には体が頑丈になった。その頃ようやく蒿里が落ち着き、グングニールを雪に突き刺し項垂れる。

 

-四十二回死亡-

 

今の内に急いで距離を取る。だが蒿里は停止して全く動かない。本当に生きているのかと心配になるほど動いていない。流石に心配して近付こうとしたその瞬間、蒿里の側に神話霊アヌビスが現れた。そし小さな声でアヌビスに「殺して」と指示を出す、アヌビスは頷き四葉の方へと歩を進める。

四葉は急いで離れようとするが体が動かない、本当なら動ける筈だ。だが彼女は現に動く事が出来ていない、それは何故か、答えは蒿里に怯えているからだ。

桁外れの殺意、そして圧倒的なスピード、もう負けは確定しているようなもの、本当に死んでしまう、今まで仮の死しか体験してこなかった四葉には未知の恐怖だ。絶対に自分には干渉してこないと思っていた『死』が迫ってきている、そう思うと四葉は立つことすらも出来なくなってしまう。

アヌビスはへたり込んだ少女を優しく死へと導く、それはまさに天国への道のように心地の良い道だ。だが繋がるは地獄。四葉は再び死を体感した。

 

-四十三回死亡-

 

もう詰みだ、後ろには引けない、前には死。完全に詰んだ。体が震える。アヌビスが攻撃を繰り返す、何十回と死んでパワーアップした四葉は一回死ぬのにも時間がかかってしまう。やっと死んだかと思ったら再び生き返る、まさに無限地獄だ。

「やめて」と叫ぶが蒿里は全く動かない。アヌビスは聞き入れずただひたすら四葉を殺す。

 

-六十八回死亡-

 

もう体力が底をつくと希望の光が見え始めてきた頃、その光を断ち切る言葉が発せられる。

 

「アヌビス、もういいよ」

 

絶望する、やっとこの地獄が終わると思っていたのにまだ続くらしい。

四葉と蒿里が遭遇してから実に五分、周囲の雪は血で赤く染まり、熱で溶けている。その露呈した地面を踏も、近付いていく。

もうこの地獄が終わればどうでもよかった。だが終わらせなどしない、胸ぐらを掴み顔を近付けてから恐ろしい声色で口を開く。

 

「あんたはたった五分だったけど私はそれと同じような痛みを半年間ずっと、毎日、絶え間なく受けてきた。だけどあんたもそれを受けるべきだなんて非効率でアホな考えはない。今言いたいのはただ一つ、一度本当の死を味わいなよ」

 

少し遠くへ投げた、何が行われるのか不安で心臓の鼓動が早くなる。蒿里は霊力の実に七割を使用して術を唱える。

 

『|漆式(ななしき)-|壱条(いちじょう).|血燦(けっさん)』

 

その術式は発動者の消費霊力と同じ割合分くらった者の血が膨張し、爆けるという術式だ。蒿里は七割を使用したので四葉の体内にある七割の血液が爆発していく、すると衝撃で皮などを貫通し血が飛び出すので血が煌びやかに舞う。なので『血燦』なのだ。

生涯で一番の苦しみを味わう、とんでもない痛みだ。その痛みはアドレナリンでも少しも緩和されず、ずっと身体中が爆発している痛みに苛まれる。あまりの痛みに涙さえも出てこない、何十分経っただろうか、いや実際は三分しか経っていない。

だが四葉はこの三分が一生にも感じられる程の苦痛を感じた、そして痛みから気が狂い何故か笑っている。蒿里はトドメを刺そうとグングニールを出した。

だがその時、何者かに腕を掴まれた。誰に掴まれたのか確認するとそれはあの女だった。女は四葉を見ながら蒿里を制止する。

 

「流石にやりすぎだよ。もうやめておいた方が良い、君だって人殺しはしたくないんだろう」

 

そう言われた蒿里は無言でグングニールを手放した。女は「えらい!」とだけ言って四葉と同時に消滅した、何とも言えない虚無感に襲われ、フラフラと歩く。次第に足への力が入らなくなり、へたり込むんだ。涙が出てくる訳じゃない、哀しい訳じゃない、ただ何も感じられないのだ。

昔の事を思い出すといつもこうだ、ただ息を吸って吐くだけ、生きているのに意味なんてない、だが死にたくはない。蒿里の心の中はぐちゃぐちゃだ。とても整理ができる状態では無い事ぐらい自身でも把握している。

あまりにも乱雑に様々な事が飛び交うせいで、思考能力も低下する。すると唐突に頬に伝うものがある、涙だ。だが自分の意思ではない、危険信号。これ以上深く考えると心が壊れてしまう。そういった本能からの危険信号だ。

 

「もういいや」

 

そう呟いた瞬間蒿里はいつも通りに戻る。信じられない切り替え。いや、本当の心への押し付けだ。

そしていつもの調子で周囲を見渡すと住宅街の方からある二人がこちらに向かって近付いてきている事に気付く。察した蒿里はドームの方へ向かう、そして先に待機しておき、一息ついて二人がドームに入って来るまで休憩する。

二分ほどでその二人もドーム内へと入って来た。宗太郎と、梓だ。

 

「見つけた。言われたんだよあのクソピンクに、お前と戦えって」

 

「礁蔽かぁ・・・二人で来る?」

 

「そっちが大丈夫なら二人で行きたいです」

 

「分かった。じゃあ準備はいい?」

 

梓と宗太郎は頷いた、そして蒿里は叫ぶように唱える。

 

「ドーム展開」

 

展開され再び、蒿里は人数不利な戦闘を行うことになった。

積雪の上、見るだけで寒い雪景色の中で第八戦樹枝 蒿里 VS 風間 宗太郎 & 白石 梓の戦闘が始まった。蒿里はこれが最後の戦いだろうと思い、本気で行くと決めた。

中等部の二人はただ単純に戦っても勝てない事ぐらい分かっているので、搦め手で突破すると決めたのだった。

 

 

|四葉(ヨツバ) |桑(クワ)

能力/念能力

死ねば強化される。

強さ/機械の肺の仕様も相まり生徒会上位レベル

 

第六十八話「桁外れの殺意」

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