御伽学園戦闘病   作:はんペソ。

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第八十三話

御伽学園戦闘病

第八十三話「話し合い」

 

ルーズは城や町を眺めながら流が口を開くのを待つ。流は少し言葉を詰まらせたがすぐに決意を固め恐る恐る話し始める。

 

「僕…ニアを助けれなかったんだ。ルーズに頼まれたはずなのに…約束を守れなかった」

 

「なんだそんな事かよ」

 

思いもよらぬ軽い反応に流は少し戸惑う、だがルーズは視点を一切変えず低く安心する声で続ける

 

「エンマや佐須魔から詳しく聞いた、そんな状況だったならしょうがないだろ。お前はお前なりにやらなきゃいけない事をやってたんだろ?だったら別に文句は言わないさ。見て見ぬふりをしてるとかなら許せなかったが病院にもちょくちょく行ってくれてるらしいしその内目を覚ますはずだ、心配することじゃない」

 

流はその返答に何か違和感を感じた。その違和感とは自分とは違う考え方だろう、ルーズは達観している。だが流は約束を破られたら、ましてや妹が傷ついたとなったら半殺しにしてしまうだろう。だがルーズは許してその上励ましてもくれた、何か自分とは違う精神的な差を感じた。

 

「そっ…か…でも僕はあいつを許せない。ニアを刺して、礁蔽君や兵助君を裏切ったんだ。絶対に殺す素戔嗚だけは」

 

「なんかお前変わったな…何かあったのか?」

 

流は記憶を取り戻した事や不甲斐なかった事など全てを話した。ルーズは相槌を入れたりして黙って聞いてくれた、そして全ての話が終わるとルーズは流に可哀想な子供を見る目をしながら聞く

 

「お前は何の為に生きてるんだ?」

 

流の頭の中は真っ白になる、今まで考えたことも無い事だったのだ。流は自分の意思とは違う本能的なものを答える。それは楽しむためでも無い、誰かを愛すわけでも無い、妹のためでも無い、流はこう答えた

 

「戦うためだ」

 

ルーズは悲しそうな顔をして流の目を見る。そしてルーズは暗い声で「じゃあ俺は帰るよ」と言って家の中に入って行ってしまった。流は何故あんな返答をしたのか、そしてルーズがあんな表情を浮かべたのかどちらとも理解できなかった。流は少し散歩することにして崖を離れた。

ルーズは部屋で戻る途中で待ち伏せしていたエンマと会う、そしてルーズの面持ちから何があったかは大体察してはいるがエンマはその口から聞くまで信用したくなかったので質問する

 

「もう、手遅れだったかい?」

 

ルーズは黙って頷く。エンマはルーズと同じ少し悲しそうな顔をしたがすぐに戻りルーズを励ますように話し出す

 

「しょうがないさ本能的な行動なんだ、彼は絶望を選んだんだ。出来れば僕か彼女を愛して欲しかったがね」

 

「そうですね。俺は貴方に着いていくと決めた、ならば貴方の言うことを盲信して行動するのも仕事でしょう」

 

「なーんか僕が悪いみたいな言い方をしないでくれるかーい?」

 

エンマはルーズの背中を押しながら中立陣部屋まで連れて行った。

 

流は林の中で立ち止まり適当な切り株に腰掛けた。そしてルーズの質問の意図やあの表情の事を考えているとスペラが飛び出してくる、そしてかまって欲しそうに鳴くので遊びながらずっと頭の中では解答を探し求めていた。

すると流を呼ぶ声がする、そちらを見てみるとラッセルが立っていた

 

「何をしているんだ」

 

「お前には関係ないだろ」

 

ラッセルは外にいると見つかるかもしれないからと家に入れるため手を引こうとする、だが流は手を跳ね除け怒りを露にしながら言い返す

 

「触んなよ裏切り者!お前があんなことしなければ香澄君やレアリーだって死ななかったんだぞ!」

 

流は胸ぐらを掴んで怒鳴る。ラッセルは二人のことに触れられた瞬間物憂げな表情を浮かべる、そして流の手を離しトボトボと帰って行ってしまった。流はずっとラッセルを睨み殺気を放ち続けた、するとラッセルと入れ違いである人物が家から出てくる。

出てきたのは礁蔽だった。流は礁蔽が来たことにあまり良い思いは感じなかったが何か伝えたい事があるのだろうと思い待つ、礁蔽はすぐそこまで近付くと流の頬を力強く引っ叩いた。流は何故叩かれたのか理解できずに礁蔽の方に視線を向ける、すると礁蔽は大きな声で流に語りかける

 

「あんな言い方せんでもええやろ!どうしちまったんや、流はそんな事言うような奴や…」

 

「じゃあほっといていくれよ!ろくに戦闘も出来ないような奴に言われたく無いんだよ!」

 

流はそう叫んでから林の方へ走って消えてしまった、礁蔽はあまりの流の変わりように固まってしまい引き止める事が出来なかった。礁蔽は色々言いたいことを胸の中に押し込んで一言だけ林に向かって叫ぶ

 

「待ってるからな!」

 

それだけ言うと家の中に入って行った。入り口付近にはエンマが待っていて礁蔽が来ると「あまり気にしない方がいいよ」とアドバイスをする、だが礁蔽はあくまでリーダーなので皆をサポート出来るようがんばらなくちゃいけないと言って明らかに作った笑いをしながら部屋へ戻って行った。

エンマは手を顔に当て上を向きながら「情けないなぁ」と呟く。

 

「そうですね」

 

フェリアが反応する。エンマは完全に気配を消していたフェリアに驚く、フェリアはエンマの触手に触れながら父の情けない所を大量に言う。エンマは心を抉られながらもまだまだ自分にも出来る事があるのではないかと思うきっかけになった。

 

「にしても言い過ぎだよ〜父さん泣いちゃうよ〜」

 

「そんなことで泣くなんて情けないですね」

 

エンマは撃沈した。フェリアは構わず手を引いて部屋へと戻っていく、部屋に着くと背の高い成人男性が何段か小さい娘に手を引かれて部屋に来ていると言う一見するとドン引きしてしまいそうな光景をみた四人は固まる。そして正気を取り戻した莉子が一言

 

「キモ」

 

と言いエンマは更にダメージを負った。フェリアはエンマを座らせるとお茶を持ってくると部屋を出て行った。

そこでルーズがエンマにある事を訊ねる

 

「そういやエンマさんの霊力指数ってなんぼなもんなんですか」

 

「え…あーわかんない…」

 

「あーでもマモリビトとなればカンストはしてるか!やっぱ凄いよなマモリビトって」

 

ルーズは露骨な視線を兵助とタルべに送る。二人はすぐに察知しエンマを褒め称えた、するとエンマは水を与えた枯れかけている花のようにグングンと気持ちを立て直した。そして五分も経たないうちに今までのエンマに戻った、三人は心の中で「「「チョロくて良かったー」」」と思う。

タイミング良くフェリアが部屋に入ってくる、そして一人一人にお茶を出した。お茶を飲みながらエンマは流の事を語る。

 

「流君はもう復讐と戦闘しか見えていない、もしかしたらTISに入るかもしれない」

 

全員が驚く、特に兵助は今までに見せた事のない顔をする。エンマはお茶を飲み少し間を置いてから続ける

 

「でも戦闘に目覚めたのは記憶が戻る前だ…素質があったと言うと聞こえは良いが…」

 

「ちょちょちょ待ってくれよ!あの流がそんな乱暴になるなんて事あるわけないでしょ!」

 

兵助が遮ってそう言うがエンマは俯き否定も肯定もしない、兵助は絶望とまではいかないが何か喪失感に似たものを感じた。そこでルーズがエンマの意見を否定する

 

「あいつはTISには入らねぇよ。そこだけは安心しろ」

 

ルーズはそう言うと立ち上がり夕食の下ごしらえをすると言い部屋を出ていく、エンマはお茶をすすってから話を続ける。

 

「彼の人生は彼の人生だ。親でもない僕が口を出すことでは無いのは重々承知なんだ、だが僕は百年以上生きてきてあんな生き方をしてろくな人生を歩んだ子はいない。だからせめて良い方向へシフトチェンジさせてあげられないかと思っているんだ」

 

「それはエゴではないですか、好きな生き方を選ばせあげた方が良いですよ。私もお父様にそうやって生かされてここまで完璧な娘になれたのですからね」

 

フェリアのその一言でエンマは何かが吹っ切れたようだった、そして「好きにさせてあげよう!」と言っていつものダル絡みを行ったり部屋を出てフラフラしたりして自由にする。

すると須野昌が誰かを探しているようでキョロキョロとしている、エンマが声をかけると須野昌は「やっと見つけた」と言う。何か用か聞くと須野昌は着いてこいと歩き出す、エンマは言われた通りに着いていくと家の外に出た。何をするのか疑問に思っていると須野昌が唱え出す

 

『降霊術・唱・狐』

 

その瞬間レアリーを喰ったあの狐が召喚された。エンマは手名付けたことに感心して褒めるが須野昌はどうでも良さそうに話を切り出す

 

「お前なら出来るんだろ、魂の分離」

 

エンマはニヤッと笑う。そして須野昌の頼みを受け入れる

 

「いいだろう!僕のマモリビトとしての力を見たいと言うんだね!」

 

須野昌はやっと会えると嬉しそうにしたが現実はそう甘くなかった、須野昌はまだ苦しい思いをしなくてはいけないのだった

 

 

第八十三話「話し合い」

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