御伽学園戦闘病   作:はんペソ。

9 / 147
第九話

御伽学園戦闘病

第九話「半霊と守護霊」

 

目的地を学園へと変更し足を進めてから約二時間が経った。日が沈み始め夕色に染まり始めている、戦闘の疲れからか休み無く歩いているせいかはたまたその両方かは分からないが会話は無くただ淡々と歩いている時だった、素戔嗚がふと気になった事があったのでラックに質問する

 

「なぁラック、今は警備が厳しくて学園にいけないんじゃないか?何か他の手段で…」

 

ラックは遮るように空に向かって指を差す、素戔嗚がそこを見てみると二羽のカラスがラック達とスピードを完全に合わせて飛んでいた。異様な動きに素戔嗚はすぐに[松葉 菊(マツバ ギク)]の遣いと言うことを理解した。あの(カゲ)を倒した時ぐらいから着いてきていたらしい

 

「僕がインストキラーで撃ち落としたりすれば監視の目を逃れられるかな」

 

「菊は本当に数えきれない程協力してくれる個体がいる、たった二体撃ち落としたところで変わらない。というか体力の無駄だ」

 

「じゃあどうやって学園に?」

 

「それは聞かれている可能性が高いから言わない。とりあえず学園に着くまでは一週間は少なからずかかる、まず大前提として教師の誰かが一人でも手を出してきた時点で俺らは負ける。万が一教師が手を出さないとしても俺らじゃ勝てない奴がいる、そいつが来たら終わりだ。結局の所誰が襲ってくるかの運ゲーって事だ。」

 

「やっぱり生徒会とは戦闘しなきゃいけないのかな…」

 

「生徒会はサポート役以外全員戦闘狂みたいなやつだし無理だろうな」

 

流が少し嫌そうな顔をする。そんな流の励ましの言葉をかけるわけでもなくラックは荷物を下ろす、流達は何故荷物を下ろしたか分からなかったが次の一言で理解する。

 

「俺たちは既に相手の策にハマっている」

 

素戔嗚も荷物を下ろしてラックが向いている場所と同じ場所を見つめる、流は何があるのだろうと二人の視線の先を見てみると一人の男が立っていた。どこかで見たことあるような気がする、そう思った瞬間酷い頭痛に見舞われた。十秒程で治った、治ると同時に男は話し出す。

 

「頭痛は治ったか…やぁエスケープチームのみんな君たちは俺がいることに疑問を感じてると思う。だって俺単体じゃあ強くない、なのになぜお前らの前にいるか、そう思ってるんだろ?答えは簡単、俺は囮だ」

 

そう言い終わると同時に男の背後からおびただしい量の小鳥や昆虫などがこちらに向かって飛んでくる。一瞬にして流達は虫達に囲まれ分断されてしまった。それとほぼ同時タイミングで誰かが倒れる音が聞こえた。

 

「おい!ニア!」

 

ラックがニアに返答を求めるが返答はない。何かおかしい、戦闘役ではないニアでも虫や鳥程度では倒れないし霊力があって霊は見えるはずだ。霊に攻撃されたなら何か一つぐらい言葉を残して倒れるんじゃないか?そう思ってラックに聞いてみたが「分からん!身体強化の物理戦の奴がいるのかもしれない」と言って突進してくる鳥達に傷をつけられない様対処することに専念してまともな情報は掴めなかった。

会話をしている間も鳥や昆虫達は流達に無差別に突撃してUターンをして何度もぶつかってくる。

 

「おい!眼鏡外して見てみたけど霊がいないぞ!」

 

その言葉に蒿里と素戔嗚は困惑する。

 

「は!?その能力って霊も対象だよね!?」

 

「そうだ!だけど三人の人間しかいない!」

 

「動物達を操っている奴、降霊術士又はバックラー、そして半田(ハンタ)だろう!」

 

流はとりあえずスズメを召喚して状況を確認すると面を取り出し装着して唱えようとした時肩に誰かが触れる。気にせず唱える。

 

『降霊術・面・鳥』

 

だがスズメは現れない、何度も唱えるが一向に出てくる気配は無い。するとラックが「誰かに触られてないか」と聞いてくる、何者かに肩を触られていると答えるとラックが言う

 

「さっきの男[葉月 半田(ハヅキ ハンタ)]は『触れたものの能力を無効化する』能力だ!触れられている以上何度唱えても霊力が持ってかれるだけで無駄だ!」

 

流がその話を聞くと手は無数の動物達の中に消えていった。だが今召喚しようとしても再び触れられて意味がないだろう、今はラック達が作戦を考えてくれるのを待つしかない。

すると素戔嗚が声を上げて報告する

 

「何かから攻撃をくらっている!」

 

そう言った所で素戔嗚への攻撃は止まり蒿里が悲鳴を上げた。ラックはどうにか反撃出来ないか聞くが蒿里は実体がない、どこから攻撃されているか分からない。そう言った直後に蒿里の声が途切れた、そして蒿里の言葉がヒントになる。見えない、霊、ラックと素戔嗚は同時にある降霊術士の名前を言う。

 

「「[浜北 美玖(ハマキタ ミク)]だ!」」

 

だが流は半霊も[浜北 美玖(ハマキタ ミク)]も分からない。どうすればこの状況を切り抜ける事が出来るか、考えた結果素戔嗚がポチを、流がスズメを同時に出せば半田(ハンタ)も追いつけずどちらかで攻撃出来るだろうと策を出してみた。素戔嗚はそれに同意し同時に出す準備をする。

流が面を被ろうとしたら素戔嗚が止めてくる。何故止めるのかを聞くと面で出すと霊の力が落ちるらしい、素戔嗚がやっている『降霊術・唱』は召喚が安定しないものの霊の力をフルパワーで出せる、どちらか片方の霊しか攻撃できないならどちらも唱で召喚した方がいいとの事だ。

それを参考に同時に唱えようとした瞬間二人の背中に手が押し当てられる。

 

「お勉強会してるとこ悪いけどよぉ俺の腕は二本あるんだよ」

 

素戔嗚は降霊を一度止め刀に手をかけた、だが半田は刀の音がした瞬間に手を離した。その内に降霊をしようと唱え始めると再び触れてくる。

うざったいとラックが悪態をつくと無数の動物達の先で少年の声が聞こえる。

 

「ごめんなさい…」

 

(ウルシ)か!やめてくれ!これは誤解なんだ」

 

「すいません…僕には出来ないんです…会長の令なので…」

 

「おい!漆!」

 

半田の怒声に(ウルシ)は謝っている、半田は呆れながら降霊術士の美玖に「決めろ」と言う。それと同時に素戔嗚に激痛が走った、切り裂かれるような痛みだ。流達は何も出来ずにただ素戔嗚が必死に抵抗している声を聞くしかなかった。そんな状態が三十秒近く続く、突然音色が変わり肉を切り裂くような鈍い音がした。

 

「悪い…油断した…」

 

素戔嗚の倒れた音が聞こえた。だが素戔嗚に呼びかけたりする暇なんてもう無い、後はラックと流の二人しか残っていない。

息をつく暇もなく次はラックに攻撃が向かう、流は動物達をかき分けラックを助けに行こうとした。だがラックは「来るな!」と一喝し流に半霊の特徴を一つ教えてくれる

 

「半霊って言うのは霊でしか倒せない!だからスズメで倒すんだ!」

 

「どうやって!?」

 

「すまないが今回はお前に託す!お前が負ければ俺らの負けだ!どうにかして…」

 

そう言いかけたラックは唐突に押し出されたような声を出して反応が消えた。そして最後の頼み綱だったラックすらも倒れてしまった。

このチームで一番弱い流がラックや素戔嗚達を負かした組み合わせに勝てるわけがない、だが勝たなくてはいけない。そう思いヤケクソになりながらもスズメの召喚を試みる

 

『降霊術・唱・鳥』

 

だが案の定肩を掴まれた。一旦降霊を止め離されるまで待ち離されてからもう一度唱えようとした時だった、一瞬にして体の力が抜ける。立つ事すらままならずその場にへたり込んでしまった、流でも分かる体力を使い切ったんだ。どうやら空振りの降霊術でも霊力はだけは消費するらしい。

 

「もう無理だ…」

 

すると見えない場所から無数の鳥や虫が飛んできている痛みとは全く違う刃物で切り付けられているような鋭い痛みに襲われる、攻撃の波を耐えきり体勢を立て直そうと足に力を入れたが動物達の向こうから声がする

 

「そろそろ終わりにしましょう」

 

妖術(ようじゅつ)斬爪(せっそう)

 

今度は先程の痛みより何倍も強い切り裂かれる痛みを感じた。体を見てみると至る所から血を流している

もう無理だ、そう思い限界が目前となった時だった。今まで感じたことのない高揚感と脱力感に見舞われる、何があったのかと前を向くとそこにはなんとも禍々しい人の形をしている“何か”がいた。その“何か”の周りに近付いた動物達は全員鳴き声を響かせ墜落した。

 

「は!?なんで霊がいるのよ!」

 

「何があった!」

 

「感知出来ない霊なんて…守護霊?いやでもこんなぽっと出の…」

 

「守護霊!?それって!とんでもない量の思念と怨念を溜め込んだ霊の事じゃ!」

 

「テヲ…ダズナ」

 

その唸り声にも聞こえる声が発された瞬間その“何か”は美玖の目の前まで距離を詰めた。美玖は青ざめ呼吸が乱れそのまま気絶して倒れた。

その“何か”を見た漆は悲鳴を上げ発狂し気絶した。すると虫や鳥たちの群れが一斉にどこかに飛んでいく、流は近くに半田がいない事を確認してから降霊術を行う。霊力は全くないはずなのに何故か降霊術はできる、もしかしたらあの『守護霊』とやらが関係しているのかもしれない

 

「うおおおお!ここで終わらせるんだ!」

 

半田は拳を振り上げながら流に向かって全速力で走り出した。流は以前同じ鳥霊の会長が使っていた技を思い出し一か八かで唱える

 

妖術(ようじゅつ)上風(じょうふう)

 

その指示は通ったらしくスズメは朱雀の様に羽を丸め一気に開いた。すると風が発生し半田を少しだけ足止めできる。だが半田はこれぐらいではやられず流の顔を掴む、能力は不発動となりスズメは流の体に還っていった。勝ちを確信した半田は少し余裕そうな表情を浮かべながら言う

 

「そんぐらいでやられるわけねぇだろ!」

 

「何故弱いスズメを出したと思う、その答えは簡単油断させるための囮さ!近付いたのが運の尽きだ!」

 

流は思いっきり足を上げ半田の腹部を蹴り上げる、そして隙を見せずに顔面を殴り怯んでいる半田の胸ぐらを掴み民家の垣根に投げた。半田は何が起こったのか理解できず流れのまま石壁に頭をぶつけ気を失った。

今回は“何か”が現れてくれたから勝てたもののほぼ敗北と言ってもいいだろう、そう一息をつくと疲労や霊力の低下から意識が遠のいていく

 

勝ったのか負けたのかも分からない勝負だった、流はもっと強くなってラック達と一生に戦えるようにならないといけない、だが今はゆっくり休もう。初めて大手柄を上げる事が出来たこの勝負の疲れを癒すために。

 

 

麻布 康太(マフ コウタ)

能力/バックラー

霊を見てしまうと目が離せなくなる

強さ/霊自体は一般人程度

 

第九話「半霊と守護霊」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。