御伽学園戦闘病   作:はんペソ。

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第九十四話

御伽学園戦闘病

第九十四話「気持ちの変化」

 

『XI』の流と佐須魔は五時半になっても出発していなかった、それどころか佐須魔が出したご飯を悠長に食べている。流はさっさと言ったほうが良いのではないかと訊ねると佐須魔はティーカップに入っている紅茶を飲み干してから答える。

 

「俺がお前と組んだ理由はお前の力を見てみたいからだ、でも他の奴がいたらお前の真の実力を見ることが出来ないだろう?だから待つんだ」

 

「そんなことしている内に倒されないか」

 

「安心しろ、フラッグはそんなに弱くない。下手したら來花もやられるかもしれない、あいつの能力は面倒臭すぎるからね」

 

「そうか。出発しない理由はわかったが結局のところ何時に出発するんだ」

 

「七時だ」

 

「遅すぎないか」

 

「須野昌がまだいる、恐らく六時ぐらいに出発するんだと思う。そしてあいつは移動手段を持っていないので宮殿に着くのは七時だろう、そんで僕らは全速力で走って須野昌が負けた所に乱入して戦闘開始って算段だ」

 

一応しっかり考えているんだと安心した流は再び食事をする。食事中に佐須魔を見てみると意外とマナーがしっかりしている、育ちはいいのだろうか?ただ流は気にせず食事に戻る。

森の中でする食事は特別感がありいつもより美味しく感じる、十分程で完食した。少し休憩をと見晴らしのいい場所へ移動する、そこで佐須魔は心地よい風に打たれながら会話を始めた。

 

「僕らはなんで戦うと思う」

 

流は少し考える。誰かを守る為、生きる為、楽しいから、流は考えれば考えるほど分からなくなり結局「楽しいから」と答えた。佐須魔は珍しく微笑んでから再び前を向き話し始める

 

「いいや違う。僕らが戦う理由は認められるためだ。僕らは能力者という下級存在だ、だがどうにかして生きながらえなくてはいけない。だが健常者という上位存在に逆らっても殺されるだけ、それは分かっている。だから僕らは生きていていいと認められる為戦う、上位存在には出来ない芸当を見せつける、いわばサーカスの動物状態だ」

 

流はその話を聞いて佐須魔の存在が身近なものなのだと実感した。今まで圧倒的な強さで神のように見えていた佐須魔でさえこの鳥籠状態を真剣に変えようと考えていたのだ。

そう思うと佐須魔が弱々しいガキに見えてくる、流は笑い右目に少しだけ火花を散らせながら言った。

 

「馬鹿みてぇだな」

 

「は?」

 

「僕はそんなちゃちな事考えねぇんだよ、僕が考える事はただ一つ復讐。大切な仲間を昏睡状態にした素戔嗚と全ての元凶の『父親』を殺す」

 

その言葉は佐須魔の心に革新的なものを与えた、ここまで|正義(じこちゅう)に生きているやつは初めて見た。皆能力者の現状をなんとかしようと奮闘し変えようとしているやつばっかだったのに、流と来たら能力を使うことをこんなに楽しそうにしている。

佐須魔は今TISにたりていないのはこういう人材だと感じ流をスカウトする、だが流を目を見開き佐須魔に圧をかけながら言い放つ

 

「舐めたこと言うんじゃねぇよ、お前が今言っている事は僕の生きがいを潰せと言っている様なもんだ。お前らのところに正式に入るぐらいなら首を掻っ切って死んでやるよ」

 

あまりの迫力と佐須魔は人生で三度目の恐怖を感じた、そしてその恐怖をトリガーにして初めて感じた恐怖が蘇る。そしてそのおぞましい記憶を呼び起こされた佐須魔は吐き気を催し胃の中の物をぶちまけた。

流はどうしたのか聞くが佐須魔は冷静に「俺にだって思い出したくないことぐらいあるんだよ」と言い返した。流は呆れて宮殿を眺める、すると宮殿内で霊力のぶつかり合いが始まった。

そう、戦闘が始めったのだ。流はどうにか霊力の動きだけで感知できないか試すが誰が攻撃しているのかしか分からなかった、どうやら灼達『VII』が戦闘をしているようだ。相手は感じたことのない霊力なのでフラッグだろうと推測する。

 

「行かなくていいのか」

 

「あぁ、俺らはまだ待つ。どれだけ早くても須野昌が出て三十分後だ」

 

「分かった」

 

流は見る方向を変え渓谷地帯を眺める、すると何チームかが複数の渓谷を渡り渓谷地帯を抜けきっている。流がなげめているのを見た佐須魔は今ならチームを変えれるんじゃないかと言ってみる、だが流はどこか哀しそうであり強靭な目をしながら答える。

 

「僕はもう引けない、もう皆んなに辛い思いをしてほしくない。みんないい奴なんだよ、だからただ楽しく普通に暮らして欲しいんだ。だから僕は嫌われる役を引き受け皆んなを幸せにする」

 

佐須魔は流が何をしたいかを理解した、そしてそのやりたい事が達成できない事も理解した。そして救いにはならないが励ましの言葉になればと思い呟く

 

「俺と似ている、お前は学園や能力者の|正義(ヒーロー)になりたいんだな。だがそれは困難を極めるだろう、だからその役は俺らTISが買っている。お前ら子供は何もしないで好き勝手して遊んでいて欲しい、そしたら絶対に俺らが楽しく暮らせる世界を創り上げてやるから」

 

その瞬間流は佐須魔が今までどんな気持ちで自分たちを傷つけてきたか分かってしまう、本当はそんなことしたくなかったんだろう。だが世の中には正義を実行するために代償を払わなくてはならない、その代償を学園の子供達や他の能力者の人達に背負わせない、見せない、触れさせない。そうして世界を変えようとする人間の集まりがTISなのだ、流の気持ちは大幅変化した。

そして最近は光もなくつまらなさそうにしていた目を輝かせ希望に満ち溢れた昔の瞳で佐須魔に頼む

 

「僕、TISに入りたい」

 

佐須魔は驚愕する。だが駄目だと承認しなかった、何故先ほどまでは誘っていたのに否定するのか聞くと佐須魔は流が自分の目標を達成してからだ、と言う。佐須魔は自分達TISに入団させるより流が目標を達成するほうが嬉しいのだ。

 

「分かった。じゃあ目標を達成したら絶対に入れてくれよ」

 

「あぁ、約束だ」

 

佐須魔と流は拳と拳をコツンとぶつけ合い約束を交わした。二人の心に起こった気持ちの変化はこれからの展開に大きく干渉してくる物だった。

 

 

「気持ちの変化により敵として認識していた味方を今度はしっかりと味方だと認識したか」

 

仮想世界から見ているマモリビトがそう呟くと膝の上に乗っている二人の角が生えた子供がきく

 

「アルジ様どうしたんですかー?」

「ですかー?」

 

マモリビトはなんでもないよと言って再び画面に映し出される映像を見始めた。

ただマモリビトはこの双子にも聞こえないほどの小さな声で抑え切ることのできなかった言葉を悲しそうに呟く

 

「どれだけ頑張ってもどうにもならないのに」

 

 

第九十四話「気持ちの変化」

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